つながる 💬 人と話すとき 家族伝え方人間関係

家族に特性を分かってもらえない人へ|伝え方の順番

— 「発達障害だから」だけでは、たいてい伝わりません

この記事の出どころ
  • 研究で検討
  • 専門家・公的情報
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画像枠/img/banner/kazoku-tsutaeru.webp1200×675px(@2x で 2400×1350px)「家族に特性を分かってもらえない人へ」の記事バナー。「発達障害だから」だけでは、たいてい伝わりません

ポイント

  • 「診断名」から話すと、たいてい「そんなの誰でもある」で終わります
  • 困っている場面と、してほしいことを具体的に言うほうが伝わります
  • 全員に分かってもらう必要はありません。1人でも味方がいれば違います
目次を開く(14項目)
  1. なぜ伝わらないのか
  2. 伝える順番を変える
  3. 使える言い方
  4. 話す以外の伝え方
  5. 相手別の伝え方
  6. よく言われることへの返し方
  7. 分かってもらえなかったとき
  8. 伝えないという選択もある
  9. 伝える前に決めておくこと
  10. 話すタイミングと場所
  11. 相手の反応別の対応
  12. 資料を渡すという手
  13. まず今週、これだけやってみる
  14. この記事について

親に「片づけられなくて困っている」と言ったら、「だらしないだけでしょ」と返された。

パートナーに「疲れやすい」と言ったら、「みんな疲れてる」と言われた。

分かってもらえないのは、伝え方の順番が原因のことがあります。


なぜ伝わらないのか

1. 診断名から入っている

「自分はADHDかもしれない」から話し始めると、たいてい「そんなの誰にでもある」と返されます。

家族は医学の話を聞きたいわけではありません。目の前の困りごとにしか反応できません。

2. 「困っている」だけで終わっている

「つらい」「しんどい」だけだと、相手は何をすればいいか分かりません。分からないと、否定するしかなくなります。

3. 相手の中の「あなた像」と合わない

家族はあなたの過去を全部知っています。だから「昔からそうだった」「いまさら何を」となりやすいです。

4. 相手も余裕がない

家族が忙しい、体調が悪い、機嫌が悪い。タイミングが悪いだけのことがあります。


伝える順番を変える

順番はこれです。診断名は最後、または言わなくていいです。

順番内容
① 場面どんなときに朝、家を出るとき
② 何が起きるか具体的に持ち物が決まらなくて、いつも10分遅れる
③ やってみたこと努力の証拠前の日に用意しようとしたけど、疲れて寝てしまう
④ してほしいこと1つだけ夜、寝る前に一声かけてもらえると助かる

④が入っているかどうかで、まったく違います。

「分かってほしい」ではなく「これをしてほしい」。相手は動けるようになります。


使える言い方

頼みごとの形にする

「朝、出る前に『持った?』って一言だけ聞いてもらえると助かる。」

具体的で、5秒で終わる頼みごとにすると、通りやすいです。

責める形にしない

✗「いつも分かってくれない」 ○「うまく説明できてなかったと思うんだけど、聞いてもらえる?」

相手を悪者にしないほうが、話が続きます。

「怠けているわけではない」を具体的に言う

「やる気がないんじゃなくて、始めるのがすごく重いんだ。始まったら普通にできる。」

抽象的に「特性です」と言うより、中で何が起きているかを説明するほうが伝わります。

タイミングを選ぶ

  • 相手が忙しくないとき
  • 食後など、落ち着いているとき
  • けんかの最中には言わない

大事な話ほど、タイミングで結果が変わります。

一度に1つだけ

伝えたいことがたくさんあっても、1回につき1つにしてください。いくつも並べると、どれも残りません。

診断を伝える

「病院で調べてもらったら、発達障害の傾向があると言われた。困っていたことに説明がついて、少し楽になった。」

「悪い知らせ」ではなく「分かってよかったこと」として話すと、相手も受け止めやすくなります。

助けてほしいことを言う

「一度にいくつも言われると、抜けてしまう。1つずつ言ってもらえると助かる。」

「口で言われたことを覚えていられないから、書いてもらえるとありがたい。」

「できない」より「こうしてもらえると助かる」のほうが、伝わります。

何もしてほしくないとき

「特にしてほしいことはないんだけど、知っておいてほしくて。」

これを先に言っておくと、相手が過剰に心配したり、対策を押しつけてきたりするのを防げます。

話す以外の伝え方

口で言うのが難しいなら、別の方法があります。

文章にする

手紙、メッセージ、メモ。その場で反応されないぶん、落ち着いて読んでもらえます。

言い返される心配がないので、こちらも書きやすいです。

公的な情報を見せる

自分の言葉だと「甘え」と受け取られるなら、外の情報を挟む手があります。

国立障害者リハビリテーションセンターの「発達障害情報・支援センター」など、公的なサイトのページを見せると、受け取り方が変わることがあります。

一緒に相談に行く

家族と一緒に、支援センターや医療機関に行くという方法もあります。第三者から説明されると納得することは、実際によくあります。

動画や本を渡す

読んでくれるかどうかは相手次第ですが、「これを読んでみて」と渡すだけなら負担が少ないです。


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家族に特性を分かってもらえない人へ/相手別の伝え方

相手別の伝え方

パートナー

生活を一緒にしているので、具体的な分担の話にできます。

「洗濯は続けられるけど、たたむところで毎回止まる。たたむのを代わってもらえたら、洗濯は全部やる。」

得意と苦手を交換する形にすると、対等な話になります。

すれ違いが続いているときはパートナーとの関係で消耗しているときも見てみてください。

いちばん難しい相手かもしれません。「育て方が悪かったのか」と受け取られることもあります。

  • 責める形にしない(「あのときこうだった」を持ち出さない)
  • 「いま困っていること」に絞る
  • 全部分かってもらうのを目標にしない

分かってもらえなくても、生活は変えられます。 説得は目的ではありません。

子ども

子どもには、シンプルに事実だけ伝えるのが伝わります。

「お母さんは音が大きいと疲れちゃうから、テレビの音を少し小さくしてくれると助かる」

理由を言えば、子どもはけっこう協力してくれます。

きょうだい

近い距離なので、比較されやすい相手です。「同じようにできない」ことを説明するより、具体的な頼みごとにするほうが摩擦が少ないです。


よく言われることへの返し方

家族から返ってきがちな言葉と、その受け止め方です。言い返して勝つ必要はありません。 会話を続けるための返し方です。

「みんなそうだよ」

「そうだと思う。ただ、自分の場合は仕事に支障が出ていて、そこをなんとかしたいんだ。」

否定せずに、程度の話に持っていくのがコツです。

「甘えでしょ」

「甘えだとしても、いま困っていることは変わらないんだ。これだけ手伝ってもらえないかな。」

言葉の定義で争わない。 頼みごとに戻します。

「気の持ちようだよ」

「気持ちでどうにかしようとして、うまくいかなかったから相談してる。」

「昔からそうだったじゃない」

「そうだね。ずっと困ってた。いまやっと言葉にできるようになった。」

否定しないほうが、話が続きます。

「病院なんて行かなくていい」

「行ってみて、何もなければそれで安心できるから。」

行く理由を「安心のため」にすると、通りやすくなります。

「そんなの言い訳だ」

ここまで来ると、その場では難しいです。いったん引いて、日を改めるか、別の人に相談してください。


分かってもらえなかったとき

全員に分かってもらう必要はない

1人でも味方がいれば、かなり違います。 家族全員を説得しようとしなくていいです。

周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関係しているという研究もあります。受け入れてくれる人と過ごす時間を増やすほうが、説得より効きます。

家の外に味方を作る

家族に分かってもらえないなら、外に理解者を作るのも手です。

  • 支援センターの相談員
  • 同じ立場の人の集まり
  • オンラインのコミュニティ

距離を取る

否定され続けると、消耗します。距離を取る選択もあっていいです。

会う回数を減らす、話す話題を選ぶ、住む場所を変える。逃げではありません。

説得を目標から外す

「分かってもらう」を目標にすると、うまくいかないときにつらくなります。

目標は「自分の生活が回ること」です。分かってもらえなくても、工夫はできます。

伝えないという選択もある

全員に話す必要はありません。伝えないほうがラクな相手もいます。

伝えなくていい相手

  • 話しても否定されると分かっている相手
  • 情報を他の人に広める相手
  • 関係が浅く、これから深くする予定もない相手

「分かってもらう」は目的ではありません。 生活が回ればそれでいいです。

部分的に伝える

全部話さなくても、必要な部分だけ伝える手があります。

「音に敏感なので、静かなところだと助かります」

診断名も、経緯も、全部の困りごとも、言わなくていいです。その場で必要なことだけ。

あとから伝えてもいい

いま言わなくても、関係が続いていれば、いつでも言えます。急いで伝えなくて大丈夫です。


言わないという選択も、まったく問題ありません。

  • 関係が悪くなりそう
  • 話しても変わらないと分かっている
  • 今は自分に余裕がない

言わなくても、あなたが困っている事実は変わりません。 対策は一人でも進められます。

伝えられる相手が一人もいないなら、外部に相談先を持っておくほうが現実的です。相談先の探し方をご覧ください。

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家族に特性を分かってもらえない人へ/伝える前に決めておくこと

伝える前に決めておくこと

何のために伝えるか

目的をはっきりさせておくと、話がぶれません。

  • 助けてほしいことがある
  • 分かってほしい
  • 通院や検査のことを話しておきたい
  • 特に何もしてほしくないが、知っておいてほしい

「してほしいこと」があるなら、それを先に言うのがいちばん伝わります。

どこまで話すか

全部話さなくていいです。

  • 診断名まで話す
  • 「困っていること」だけ話す
  • 検査を受けたことだけ話す

話す範囲は、あなたが決めていいです。


話すタイミングと場所

  • 相手に余裕があるとき(疲れている夜、出かける直前は避ける)
  • 2人のとき(大勢の前で言わない)
  • 時間があるとき(15分で切れる場面では話さない)

食事のあと、車の中、散歩しながら。目を合わせ続けなくていい場面のほうが、話しやすい人が多いです。


相手の反応別の対応

「気のせいじゃないの」

否定されると傷つきますが、相手も動揺していることが多いです。

「今すぐ分かってもらえなくてもいい。ただ、そう言われたということは知っておいてほしい。」

一度で分かってもらおうとしない。 時間がかかります。

「私の育て方が悪かったの?」

親に多い反応です。

「そういう話じゃない。誰のせいでもない。」

責任の話にしないのが大事です。ここが揉めると、本題が進みません。

「もっと頑張れば治る」

「頑張ってきたけど、それでも難しかった。やり方を変えたいと思ってる。」

努力してこなかったわけではないことを、静かに伝えてください。

何も言わない

黙り込む人もいます。すぐ答えが返ってこなくていいです。

「今すぐ返事はいらない。また話せたら話そう。」


資料を渡すという手

口で説明しにくいときは、書かれたものを渡すのが有効です。

  • 公的機関のパンフレット
  • 病院でもらった説明書
  • 手紙を書く

手紙は、相手が自分のペースで読めます。 感情的にならずに済むという利点もあります。


まず今週、これだけやってみる

  1. いちばん困っている場面を1つ選ぶ
  2. 「場面 → 何が起きるか → やってみたこと → してほしいこと」の順に、紙に4行書く
  3. 相手が落ち着いているときに、その4行だけ話す

一度で伝わらなくて当たり前です。 何回かに分けて大丈夫です。


この記事について

すれ違いは片方の能力の問題とは限りません。伝言ゲームの形式で調べた研究では、同じ特性のある人どうしの伝達は正確で、混ざったときにいちばん精度が落ちました。 伝わらないのを、自分だけのせいにしなくていい理由になります。

また、周囲に受け入れられている感覚と心の健康の関係を示した研究があります(ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません)。まわりに合わせ続けることに負担がともなうことも、研究で整理されています。

発達障害の基本的な説明は、国立障害者リハビリテーションセンターの公開情報が使えます。家族に見せる資料としても向いています。

そのうえで、ここに書いた伝え方は、研究で確かめられたものではありません。 相手との関係によって合う・合わないがあります。

家族との関係でずっとしんどい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。

とら先生のひとこと

家族に話すのって、他人に話すより難しいんですよね。「昔からそうだった」を知っている相手だからこそ、「いまさら何を」となりやすい。順番を変えると通ることがあります。

この記事の出どころ

研究で検討
論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
専門家・公的情報
厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
  1. 研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における「受け入れられた経験」と心の健康

    (原題:Experiences of Autism Acceptance and Mental Health in Autistic Adults)

    Cage E, Di Monaco J, Newell V/2018/Journal of Autism and Developmental Disorders 48, 473–484(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関連することを示せます。

    ここはまだ分かっていません:ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。

  2. 研究で検討自閉スペクトラム症における「特性を隠す・補う行動」:たくさんの研究をまとめた分析

    (原題:Camouflaging in autism: A systematic review)

    Cook J, Hull L, Crane L, Mandy W/2021/Clinical Psychology Review 89, 102080(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:「普通に見えるようにふるまう」ことに消耗が伴うと言えます。

    ここはまだ分かっていません:隠すのをやめれば楽になる、とどちらが原因かまでは分かりません。

  3. 研究で検討自閉スペクトラム症のある人どうしの情報の伝わり方は、とても正確である

    (原題:Autistic peer-to-peer information transfer is highly effective)

    Crompton CJ, et al./2020/Autism 24(7), 1704–1712(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:すれ違いは片方の能力不足ではなく、相互のかみ合わせの問題として説明できます。

    ここはまだ分かっていません:実験のなかでの結果です。日常の会話すべてに当てはまるとは言えません。

  4. 専門家・公的情報発達障害情報・支援センター

    国立障害者リハビリテーションセンター/2026(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:発達障害の基本的な説明と支援情報の一次情報として使えます。

    ここはまだ分かっていません:個別の生活術を保証する情報ではありません。

制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。

合わなかったら、別のやり方を試してください

ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。