「空気が読めない」と言われる人へ|すれ違いを減らすやり方
— 読めないのではなく、伝え方がかみ合っていないだけかもしれません
ポイント
- すれ違いは片方のせいではなく、お互いのかみ合わせの問題という見方があります
- 「読む」練習より、確認する・言葉にするほうが早くて確実です
- 全員に合わせる必要はありません。合う人といる時間を増やすのも対策です
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悪気はまったくないのに、言ったあとに場が固まる。あとから「あれはまずかった」と気づく。
「そういうところだよ」と言われるけれど、どこがどうまずかったのか分からない。
この記事では、「読む力を鍛える」以外の方法を書きます。
「読めない」のではないかもしれない
面白い研究があります。
伝言ゲームの形式で、情報がどれだけ正確に伝わるかを調べたものです。結果は、自閉スペクトラム症のある人どうしのグループは、そうでない人どうしのグループと同じくらい正確に伝えられました。
いちばん情報が落ちたのは、両方が混ざったグループでした。
つまり、うまく伝わらないのは「片方の能力が足りない」からではなく、お互いの伝え方・受け取り方がかみ合っていないからだ、という見方ができます。
これは「だから相手が悪い」という話ではありません。片方だけが必死に合わせる必要はない、ということです。
何が起きているのか
「空気が読めない」と言われる場面には、いくつかのパターンがあります。
1. 言葉どおりに受け取っている
「今度ごはん行こう」は社交辞令のこともあります。「大丈夫?」は心配ではなく確認のこともあります。
言葉と意図がずれている場面で起きます。くわしくは言葉をそのまま受け取って傷つく人へに書きました。
2. 正しいことを言ってしまう
会議で「その計画は無理だと思います」と言う。事実として正しくても、言うタイミングと場によっては、場が固まります。
内容ではなく、言い方と場の問題です。
3. 相手が求めているものがちがう
相手は共感してほしいだけなのに、解決策を出してしまう。相手は愚痴を言いたいだけなのに、正論を返してしまう。
「聞いてほしい」と「解決してほしい」は別です。
4. 話が長い・自分の話になる
自分の得意な話になると止まらなくなる。相手の話を自分の経験に置き換えて返してしまう。
くわしくはつい話しすぎてしまう人へへ。
5. 表情や声の調子が伝わっていない
こちらは普通に話しているつもりでも、表情が硬い、声が平坦だと、怒っていると誤解されることがあります。
逆に、相手の表情から気持ちを読み取るのが難しいこともあります。
【いちばん使える1つ】確認する
読むのが難しいなら、聞けばいいです。
会話の入口で確認する
「これ、聞いてほしいだけ? それとも一緒に考えたほうがいい?」
この一言で、返し方の大半が決まります。 共感してほしい相手に解決策を出す、という事故が防げます。
発言の前に確認する
「いま言っていいことか分からないんですが、◯◯について気になっていて」
前置きを1つ置くだけで、突然感がなくなります。
あとで確認する
「さっきの発言、まずかったですか? 分からなかったので教えてもらえると助かります」
聞ける相手が1人いると、かなりラクになります。 職場でも友人でも、「教えてくれる人」を1人見つけてください。
場面別|こう言えば伝わる
相手が愚痴を言っているとき
解決策を出さない。 まず受けてください。
「それはしんどいね」 「大変だったね」
そのあとで、「何か手伝えることある?」と聞けば十分です。
反対意見を言いたいとき
いきなり否定から入らないでください。順番を変えます。
✗「それは無理だと思います」 ○「なるほど。ひとつ気になるのは、◯◯の部分なんですが、そこはどう考えていますか?」
「質問の形にする」と、角が立ちません。
相手が間違っていると気づいたとき
その場で全員の前で指摘すると、相手のメンツが潰れます。
あとで個別に伝えるか、「自分の理解が違うかもしれないんですが」と前置きしてください。
誘われたけど行きたくないとき
「誘ってくれてありがとう。今回は行けないけど、また声かけて。」
理由を細かく説明しなくていいです。「ありがとう」を先に言うと柔らかくなります。
相手が黙ったとき
黙ったのが「怒っている」のか「考えている」のか分からないときは、待つのが安全です。
どうしても気になるなら、「いま、何か気になることありましたか?」と聞いていいです。
冗談が通じなかったとき
「冗談です」と言い添えるだけで、その場は収まります。冗談が伝わりにくいなら、そもそも減らすのも手です。
「ちょっといい?」と呼ばれたとき
たいていの場合、何か言われるサインです。構えすぎず、メモを持っていってください。
職場
- 会議で思いついたことは、メモしてから発言する
- 人の評価に関わる話には、乗らない
- 雑談は聞き役でいい
飲み会・食事の場
内容より、場の空気で成り立っている場です。
- 正確さを求めない
- 話がずれていても訂正しない
- つらければ早く帰っていい
家族・親しい相手
近い相手ほど、遠慮がなくなって言いすぎることがあります。
「言い方がきつくなることがあるから、そのときは言って」と、先に伝えておくのも手です。
「空気が読めない」と言われる人へ/相手のサインを、言葉以外から拾うコツ
相手のサインを、言葉以外から拾うコツ
「読む」のが苦手でも、分かりやすいサインだけ覚えておくと実用になります。全部読む必要はありません。
話が終わりたいサイン
- 時計やスマホを見る
- 荷物を持ち直す、体が出口のほうを向く
- 相づちが短くなる(「はい」「ええ」だけになる)
このどれかが出たら、「じゃあ、また」と切り上げて大丈夫です。
話題を変えたいサイン
- 「まあ、それはそうと」
- 話を最後まで聞かずに別の話を始める
- 相づちが薄い
深追いしないのが安全です。
怒っているかもしれないサイン
- 返事が短くなる
- 目を合わせなくなる
- 「べつに」「大丈夫です」を繰り返す
「大丈夫です」は、大丈夫じゃないことがあります。 気になるときは、あとで個別に「さっき何かありましたか」と聞いてください。
冗談か本気か分からないとき
判断できないときは、本気として受け取るほうが安全です。冗談だったら「冗談だよ」と言ってもらえます。
覚えるのは3つまで
サインを全部覚えようとすると疲れます。自分がいちばん困っている場面のサインだけ、1〜3個覚えてください。
「読めない」を前提にした付き合い方
読む力を鍛えるより、読まなくて済む関係を作るほうが早いことがあります。
言葉にしてもらうようお願いする
「察するのが苦手なので、思っていることは言葉で言ってもらえると助かります。」
近い関係の人には、一度伝えておく価値があります。 これを言うだけで、あとの何十回分かの誤解が減ります。
定期的に確認する場を作る
パートナーや同僚と、月に1回「最近どう?」を話す時間を作っておくと、たまった不満が爆発しにくくなります。
誤解が起きたときのルールを決めておく
「言い方がきつく聞こえたら、その場で言ってほしい」「怒っていないときは、そう言ってほしい」。
先にルールを決めておくと、起きたときに対処できます。
通訳してくれる人を持つ
職場に1人、「いまのどういう意味でしたか」と聞ける人がいると、かなりラクになります。全部を自分で解読しなくてよくなります。
「合わせる」をやりすぎない
まわりに合わせて、自分のやり方を抑えて、場に馴染むようにふるまう。これは心理的な負担がともなうことが、研究でも整理されています。
一日中これをやっていると、家に帰るころには何もできなくなります。
全員に合わせなくていい
合わない人はいます。 その人に合わせるために自分を削るより、合う人といる時間を増やすほうが、結果的にうまくいきます。
周囲に受け入れられている感覚と、心の健康が関係しているという研究もあります。
合わせる場面を絞る
- 仕事で必要な場面 → 合わせる
- プライベート → 素でいられる相手を選ぶ
全部で100点を取ろうとしないでください。
「疲れる」を認める
人と会ったあとにぐったりするのは、変なことではありません。回復する時間を、予定に入れておいてください。
くわしくは人といると異常に疲れる人へに書きました。
職場で困っているとき
自閉スペクトラム症のある人の働き方を調べた研究では、役割や手順がはっきりしていることが働きやすさに関わると報告されています。
「空気を読む」が求められる職場は、そもそも難易度が高い職場です。
- 指示を口頭ではなく文字でもらう
- 判断の基準をはっきりさせてもらう
- 「察してほしい」ではなく言葉にしてもらう
これは配慮としてお願いできることです。伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へに書きました。
言われて傷ついたとき
「空気読めよ」「そういうところだよ」と言われるのは、けっこうこたえます。
- 具体的に聞き返していい。 「どの部分でしょうか。次から気をつけたいので」
- 全部を自分のせいにしない。 説明しない側にも責任はあります
- 何度も同じ人に言われるなら、距離を取る選択もある
人格を否定されるような言い方をされているなら、それは指摘ではありません。 記録を残して、相談してください。
「空気が読めない」と言われる人へ/発言する前の3秒
発言する前の3秒
言ってから後悔するパターンを減らすには、言う前に一拍おくのが効きます。
3秒だけ待つ
思いついたことを、すぐ言わない。 3秒だけ黙る。
その3秒で、「これは今言うことか」が判断できることがあります。
その場で言わなくていいことを覚えておく
- 事実の訂正(間違いを指摘するのは、あとでもできます)
- 過去の話の蒸し返し
- 相手の外見の話
「言わなくても困らないこと」は、言わないという選択肢があります。
場が読めないときの安全な行動
分からないときに、やっておけば大きく外さない行動があります。
聞き役に回る
- うなずく
- 「そうなんですね」
- 質問する
話すより、聞くほうが安全です。 そして、聞き上手だと思われます。
周りを見る
- みんなが笑っていたら、冗談
- みんなが静かなら、まじめな場面
- 誰かが困った顔をしたら、話題を変える
表情を読むのが苦手でも、「静かか、にぎやかか」は分かります。 それだけでもかなり判断できます。
迷ったら黙る
沈黙は失礼ではありません。 無理に埋めなくていいです。
言ってしまったあと
早めに一言
「さっきの言い方、きつかったですよね。すみません。」
早いほど、こじれません。 数日たってから謝ると、相手はもう忘れていて、逆に気まずくなります。
謝りすぎない
何度も謝られると、相手のほうが気を使います。1回でいいです。
落ち込みすぎない
相手はそこまで気にしていないことがほとんどです。
気にしすぎてその人を避けるようになるほうが、関係にとってマイナスになります。
全部読めなくていい
空気を完璧に読める人はいません。
読めないことを直そうとするより、
- 聞き役に回る
- 分からなければ確認する
- 言ってしまったら早めに謝る
この3つを持っておけば、たいていの場面は乗り切れます。
くわしくは言葉を額面どおりに受け取ってしまう人へ、雑談が続かない人へへ。
まず明日、これだけやってみる
- 相手が困った話をしてきたら、「聞いてほしいだけ? 一緒に考える?」と聞く
- 反対意見は、質問の形にして言う
- 「教えてくれる人」を1人見つける
空気を読む練習より、確認するほうが早くて確実です。
この記事について
伝言ゲームの形式で情報の伝わり方を調べた研究では、自閉スペクトラム症のある人どうしの伝達は、そうでない人どうしと同じくらい正確でした。いちばん精度が落ちたのは、両者が混ざったときです。すれ違いを片方のせいにしなくていい、という根拠になります。
また、まわりに合わせて自分を抑えることには心理的な負担がともなうことが、たくさんの研究をまとめた分析で整理されています。周囲に受け入れられている感覚と心の健康の関係を示した研究もあります(ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません)。
職場については、役割や手順がはっきりしていることが働きやすさに関わると報告されています。
そのうえで、ここに書いた具体的な言い方は、研究で確かめられたものではありません。 相手や場によって合う・合わないがあります。
人間関係でずっとしんどい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「空気読めよ」と言われても、空気は目に見えないんですよね。見えないものを読めと言われても困ります。だったら、言葉にしてもらうほうが早いです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討自閉スペクトラム症のある人どうしの情報の伝わり方は、とても正確である
(原題:Autistic peer-to-peer information transfer is highly effective)
この研究でわかっていること:すれ違いは片方の能力不足ではなく、相互のかみ合わせの問題として説明できます。
ここはまだ分かっていません:実験のなかでの結果です。日常の会話すべてに当てはまるとは言えません。
研究で検討自閉スペクトラム症における「特性を隠す・補う行動」:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Camouflaging in autism: A systematic review)
この研究でわかっていること:「普通に見えるようにふるまう」ことに消耗が伴うと言えます。
ここはまだ分かっていません:隠すのをやめれば楽になる、とどちらが原因かまでは分かりません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における「受け入れられた経験」と心の健康
(原題:Experiences of Autism Acceptance and Mental Health in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。
研究で検討働いている自閉スペクトラム症のある成人の経験:系統的な検索とまとめ
(原題:The Lived Experience of Autistic Adults in Employment: A Systematic Search and Synthesis)
この研究でわかっていること:明確な役割・理解ある上司・感覚環境が働きやすさに効くと示せます。
ここはまだ分かっていません:質的統合であり、どの配慮が最も効くかの順位づけはできません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。