人といると異常に疲れる人へ|合わせ続けることの負担
— 家に帰ったら動けなくなるのは、気のせいではありません
ポイント
- まわりに合わせ続けることには、心理的な負担がともなうと研究でも整理されています
- 疲れているのに気づけないと、限界まで行ってから倒れます
- 全員に合わせるのをやめて、素でいられる相手を増やすのがいちばん効きます
目次を開く(16項目)
飲み会は楽しかった。でも翌日はまったく動けない。
職場では普通にしているつもり。でも帰ったら着替えもせずに寝てしまう。
休みの日に人と会うと、そのあと2日は何もできない。
「楽しかったのに疲れる」は、矛盾していません。
何にエネルギーを使っているのか
人と一緒にいるとき、会話の中身以外にも、たくさんのことを同時にやっています。
- 表情を作る
- 声の調子を整える
- 話す量を調整する
- 相手の反応を見る
- 言っていいことか判断する
- 沈黙を埋める
- 場の空気に合わせる
会話しながら、これを全部やっています。
まわりに合わせて自分のやり方を抑え、場に馴染むようにふるまうこと——これには心理的な負担がともなうことが、自閉スペクトラム症を対象にしたたくさんの研究をまとめた分析で整理されています。ADHDについても、特性を隠す行動とその負担を扱った国内のレビューがあります。
つまり、疲れるのは自然なことです。
「急にできなくなる」ことがある
合わせ続けた結果、できていたことが急にできなくなる状態が起きることがあります。
自閉スペクトラム症のある人へのインタビュー調査では、次のような状態が報告されています。
- ずっと消耗している感じが抜けない
- これまでできていたことができなくなる
- 音や光などの刺激に、前より耐えられなくなる
これは医学的な診断名ではありませんが、当事者から報告されている状態です。
「怠けている」わけでも「甘えている」わけでもありません。使いすぎた結果です。
【回復のとり方】
1. 予定のあとに、何もしない時間を入れる
人と会う予定を入れるとき、そのあとの回復時間も一緒に予定に入れてください。
- 飲み会の翌日は、予定を入れない
- 大きい会議のあとは、1時間空ける
- 週末に人と会ったら、日曜は何もしない
「回復に時間がかかる」を前提に組むと、崩れにくくなります。
2. 刺激を減らす時間を作る
疲れているとき、いちばん効くのは刺激を減らすことです。
- 暗い部屋で横になる
- 音を消す(耳栓、ノイズキャンセリング)
- 誰とも話さない時間を作る
- スマホを見ない
寝るだけが回復ではありません。 「何も入ってこない時間」が要ります。
3. 予定を減らす
回復が追いつかないなら、そもそも入れる量が多すぎます。
週に人と会う回数の上限を決めてください。「週2回まで」のように数字にすると、判断がラクになります。
くわしくは予定を入れすぎて後で潰れる人へへ。
4. 一人になれる場所を確保する
家に自分だけの空間がない人は、外に確保してください。
- 車の中
- 図書館
- カフェの隅
- 公園のベンチ
- トイレの個室(職場で逃げ場がないとき)
5分でも一人になれる場所があると、持ち直せることがあります。
【負担そのものを減らす】
回復だけでは追いつきません。使う量を減らすほうが根本的です。
5. 素でいられる相手を増やす
全員に合わせる必要はありません。
- 気を使わなくていい相手
- 沈黙が気まずくない相手
- 変な人だと思われても平気な相手
こういう相手と過ごす時間を増やしてください。周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関係しているという研究もあります。
6. 合わせる場面を絞る
- 仕事で必要な場面 → 合わせる
- それ以外 → 素でいく
全部で100点を取ろうとしない。 落とすところを先に決めてください。
7. 断る
行きたくない集まりは断っていいです。断り方は頼まれごとを断れない人へに書きました。
「付き合いが悪い」と思われるのが怖いかもしれませんが、毎回参加して倒れるより、たまに参加して元気なほうがいいです。
8. 滞在時間を短くする
全部断らなくても、「1時間だけ出る」という選択があります。
「このあと用事があるので、1時間だけ失礼します」
先に言っておけば、途中で抜けても不自然になりません。
9. 逃げ場を用意しておく
- 出口の近くに座る
- 帰る時間を先に決めておく
- 途中で外の空気を吸いに出る
「いつでも抜けられる」と分かっているだけで、負担が減ります。
10. 説明しておく
近い人には、一度説明しておくとラクになります。
「人と会うのは好きなんだけど、そのあとぐったりすることが多くて。急に静かになっても、怒ってるわけじゃないです。」
あらかじめ言っておくと、その場で気を使わなくて済みます。
場面別|こう乗り切る
飲み会・懇親会
- 一次会だけで帰る
- 端の席に座る(真ん中は逃げ場がありません)
- 帰る時間を先に宣言しておく
- 翌日に予定を入れない
職場での雑談
- トイレや飲み物で席を外していい
- イヤホンをつける(許可を取って)
- 昼休みは一人で過ごしていい
昼休みまで人と過ごすと、午後がもちません。
大人数の場
刺激の量が多いので、いちばん疲れます。
- 人の少ない場所に移動する
- 5分だけ外に出る
- 端にいる
家族といる時間
いちばん逃げ場がない場所かもしれません。自分の部屋か、一人になる時間を確保してください。
家族に伝えるときの言い方は家族に特性を分かってもらえない人へに書きました。
オンラインの会議・通話
対面より疲れるという人も、その逆の人もいます。
疲れる場合は、カメラを切るだけで負担が減ることがあります。表情を作らなくて済むからです。
人といると異常に疲れる人へ/「合わせるのをやめる」の現実的なやり方
「合わせるのをやめる」の現実的なやり方
「素でいけばいい」と言われても、いきなりは無理です。少しずつ減らすほうが現実的です。
まず、やめても困らないものから
合わせている行動を書き出して、やめても実害がなさそうなものから1つずつ外します。
| やめやすい | やめにくい |
|---|---|
| 興味のない話に大げさに反応する | 会議で意見を求められたら答える |
| 全員の飲み会に参加する | 上司への報告 |
| 相手の話に無理に共感する | 取引先での言葉づかい |
| 沈黙をあわてて埋める | 挨拶 |
左から順に、1つずつ減らしてみてください。
「反応を薄くする」から始める
急に素になるのではなく、リアクションの大きさを1段階下げるだけでも、消耗はかなり減ります。
相手を選んで、少しずつ出す
いきなり全部見せる必要はありません。信頼できる人に、1つだけ話してみるところから。
「実は人といると疲れやすくて」くらいから始められます。
「変な人」と思われても大丈夫な場所を作る
趣味の集まり、オンラインのコミュニティ、当事者の集まり。評価されない場所が1つあると、支えになります。
疲れに気づけないとき
いちばん危ないのは、疲れている自覚がないまま動き続けることです。
体の内側の感覚(疲れ、空腹、喉のかわき)に気づきにくいことがある、という研究もあります。
対策は、感覚ではなく時間で区切ることです。
- 予定と予定のあいだに、必ず休憩を入れる
- 「疲れたら休む」ではなく「◯時に休む」と決める
- 予定の総量に上限を決める
くわしくは気づいたら限界になっている人へに書きました。
職場での消耗を減らす
一日の大半を過ごす場所なので、ここが変わるといちばん効きます。
休憩を確保する
昼休みは、人と過ごさなくていいです。一人で外に出る、車で休む、静かな場所に行く。
「付き合いが悪い」と思われるのが気になるなら、週に2回だけ一人にする、でも構いません。
席の環境を変える
人が目に入る席、通路のそば、音の大きい場所。環境だけで消耗の量が変わります。
相談の仕方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
在宅勤務を使う
週に1日でも在宅の日があると、回復のペースが変わります。「対人の負担が減る」ことを理由に相談していいです。
予定を分散させるか、まとめるか
会議や来客を同じ日にまとめると、その日は倒れます。逆に分散させると毎日が薄く疲れます。
多くの人は「まとめて、翌日を空ける」ほうが合います。 どちらが自分に合うか試してください。
どこで演じるかを、自分で決める
全部の場面で同じようにする必要はありません。強弱をつけてください。
力を抜く場面を作る
- 家では取りつくろわない
- 一人の時間を必ず確保する
- 気を使わなくていい相手を1人でも持つ
1日のうちに「素でいられる時間」がゼロだと、必ず壊れます。
力を入れる場面を絞る
- 初対面のとき
- 大事な打ち合わせ
- 面接
ここだけ、と決めておくと、消耗が分散します。
その場でできる回復
演じ続けている最中に、こまめに抜くのがコツです。
- トイレの個室で3分、目を閉じる
- 建物の外に出て、深呼吸する
- 飲み物を買いに行く(理由になります)
- 車の中で座っている
「一人になる口実」をいくつか持っておくと、抜けやすくなります。
早く帰る
最後までいなくていいです。 「先に失礼します」で十分です。理由は言わなくていいです。
人といると異常に疲れる人へ/疲れの出方を知っておく
疲れの出方を知っておく
演じている最中は、疲れに気づきません。あとから来ます。
- 帰宅後、何もできない
- 翌日、起きられない
- 数日後に落ち込む
自分がどのタイミングで来るかを知っておくと、予定を組みやすくなります。
くわしくは外出したあと2日動けない人へ、気づいたら限界になっている人へへ。
回復の時間を、先に予定に入れる
疲れてから休もうとすると、間に合いません。
- 人と会う日の翌日は、予定を入れない
- 週末のどちらかは、必ず家にいる
- 大きなイベントのあとに、回復日を作る
「休む」を予定として書いておかないと、必ず何かで埋まります。
少しずつ「素」を出す練習
全部やめる必要はありませんが、信頼できる相手には、少し素を出してみる価値があります。
- 「大人数が苦手で」と言ってみる
- 「音がうるさいところが少ししんどい」と言ってみる
- 断ってみる
言ってみて、相手が普通に受け入れたら、そこは力を抜いていい場所です。
全員に言う必要はありません。1人か2人でいいです。
つらさが続くとき
演じ続けることで、気分の落ち込みや不眠が出てくることがあります。
- 眠れない
- 気分の落ち込みが2週間以上続く
- 人と会うのが怖くなってきた
こういうときは、一人で持ちこたえようとしないでください。 相談先の探し方をご覧ください。
まず今週、これだけやってみる
- 人と会う予定のあとに、何もしない時間を予定として入れる
- 人と会う回数の上限を決める(週2回など)
- 素でいられる相手を1人思い浮かべて、その人と過ごす時間を増やす
疲れをゼロにはできません。 回復する時間を先に確保するほうが現実的です。
この記事について
まわりに合わせて自分のやり方を抑えることには、心理的な負担がともなうことが、自閉スペクトラム症を対象にしたたくさんの研究をまとめた分析で整理されています。ADHDについても、特性を隠す行動とその負担を扱った国内のレビューがあります。
また、当事者へのインタビュー調査では、ずっと消耗している感じ、できていたことができなくなる、刺激に耐えられなくなるといった状態が報告されています。医学的な診断名ではありませんが、実際に語られている状態です。
周囲に受け入れられている感覚と心の健康の関係を示した研究もあります(ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません)。
そのうえで、ここに書いた回復のとり方は、研究で確かめられたものではありません。 自分に合うものを探してください。
疲れが取れない、動けない状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「楽しかったのに、なんでこんなに疲れてるんだろう」って思うことありませんか。あれは楽しくなかったわけじゃなくて、同時にずっと気を張っていたからです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討自閉スペクトラム症における「特性を隠す・補う行動」:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Camouflaging in autism: A systematic review)
この研究でわかっていること:「普通に見えるようにふるまう」ことに消耗が伴うと言えます。
ここはまだ分かっていません:隠すのをやめれば楽になる、とどちらが原因かまでは分かりません。
研究で検討ADHDマスキング行動および関連要因の分類—文献レビューによる概念化の試み
この研究でわかっていること:特性を隠し続けることに負担があると整理できます。
ここはまだ分かっていません:実際に確かめた研究がまだ少ない領域だと論文自体が述べています。
研究で検討「内側の力を使い果たし、後片づけをしてくれる人もいない」:自閉スペクトラム症の燃え尽きの定義
(原題:"Having All of Your Internal Resources Exhausted Beyond Measure and Being Left with No Clean-Up Crew": Defining Autistic Burnout)
この研究でわかっていること:「急にできなくなる」状態が当事者から報告されていると示せます。
ここはまだ分かっていません:医学的な診断名ではありません。ほかの不調との見分け方までは分かりません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における「受け入れられた経験」と心の健康
(原題:Experiences of Autism Acceptance and Mental Health in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。