引き出しや扉を閉め忘れる人へ|開けっぱなしを仕組みで直す
— 閉める動作をなくせば、忘れようがありません
ポイント
- 開けっぱなしは、注意力ではなく「次の行動に移った」ことで起きます
- 気をつけるのではなく、閉めなくていい形に変えるのがいちばん確実です
- 火・水・鍵だけは、忘れても大丈夫な仕組みを先に作ってください
目次を開く(16項目)
引き出しを開けたまま次のことを始める。冷蔵庫の扉が半分開いている。蛇口を出しっぱなしにする。
家族に「また開いてる」と言われて、そのたびに「気をつけよう」と思う。それでも直らない。
気をつけて直るものなら、とっくに直っています。
開けっぱなしは、注意力の問題というより、「次の行動に移った瞬間、前の行動が終わったことになる」ことで起きます。だから、思い出す機会がありません。
なので、閉めるのを覚えるのではなく、閉めなくていい形に変えるのがいちばん確実です。
なぜ「気をつける」では直らないのか
閉め忘れが起きる流れは、だいたいこうです。
- 引き出しを開ける
- 中のものを取る
- そのものを使う次の行動が始まる
- 頭の中では、引き出しの用事はもう終わっている
3の瞬間に、前の行動は終わったことになります。 だから「閉めていない」という自覚が生まれません。
これは、「あとでやること」を覚えておく力の問題として整理されることがあります。目の前に手がかりがなければ、思い出す機会がないままになります。
つまり、「意識が足りない」ではなく「思い出す機会がない」のです。
だから対策は2つに分かれます。
- 思い出す機会を作る(貼り紙、振り返る、声に出す)
- 思い出さなくていい形にする(自動で閉まる、そもそも閉めない)
後者のほうが確実です。
効果が出やすい順
| 順 | やること | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 1 | フタ・扉を外す(開けっぱなしでいい形に) | 0円 |
| 2 | 閉めながら「閉めた」と声に出す | 0円 |
| 3 | 貼り紙をする | 0円 |
| 4 | ゆっくり閉まるレールを後付けする | 1,000〜3,000円 |
| 5 | スマートロックにする | 1万〜3万円 |
| 6 | 自動で消えるコンロ・IHにする | 数万円〜 |
0円でできる1〜3から始めてください。 それで足りないところだけ、道具にお金を使えばいいです。
出しっぱなしにしない工夫
引き出しに「開けたら閉める」を貼る
いちばん単純ですが、目に入る場所に文字があると、思い出します。
自動で閉まるものに変える
- ゆっくり閉まる引き出しレール
- バネで閉まる扉
- ふたのないゴミ箱、ふたのない収納
閉める必要がないものに変えるのが、いちばん確実です。
「閉める」という動作をなくしてしまえば、忘れようがありません。
開けっぱなしでも困らない収納にする
- 扉を外す
- オープンな棚にする
- カゴに入れて並べる
見た目が気にならないなら、これがいちばんラクです。 閉める動作がゼロになります。
「使ったら戻す」を軽くする
戻すのが面倒だから、出しっぱなしになります。戻す手間を減らしてください。
定位置を「近く」にする
使う場所と、しまう場所が遠いと戻しません。
- ハサミは使う机の引き出しに
- 爪切りは座る場所の近くに
- 充電器はよく使う部屋に
同じものを2つ買って、両方の場所に置くのもありです。数百円で解決するなら安いです。
フタをなくす
ふた付きの箱は、開けるのが面倒で使わなくなります。フタのないカゴにすると、放り込むだけで済みます。
「とりあえず箱」を1つ置く
どこにしまうか分からないものを入れる箱を、1つだけ置いてください。
床に置くよりずっといいです。週に1回、中身を見ればいいです。
開けっぱなしと、出しっぱなしは、同じ原因で起きます。戻す手間が大きいと、戻しません。
- 使う場所の近くにしまう(5歩以上離れていると戻しません)
- フタのないカゴに放り込むだけにする
- よく使うものは、出しっぱなしでいい
きれいに見せるより、生活が回るほうが大事です。
引き出しや扉を閉め忘れる人へ/火や水に関わるものは、別扱いにする
火や水に関わるものは、別扱いにする
閉め忘れると危ないものは、忘れても大丈夫な仕組みにしてください。
ガス
- 自動で消える機能付きのコンロにする
- IHにする
- 火を使う料理をするときは、その場を離れないと決める
水道
- 出しっぱなしのアラームがある蛇口もあります
- 洗面所を出るとき、必ず一度振り返る
玄関の鍵
- スマートロック(自動で施錠されます)
- 出てすぐドアノブを引いて確認する
「確認した」という記憶が残る動作を入れると、あとで不安になりません。
くわしくは家を出たあと鍵が不安になる人へへ。
冷蔵庫
開けっぱなしでアラームが鳴る機種がほとんどです。鳴ったら閉める、でいいです。
忘れても困らないようにしておく
全部を防ぐのは無理です。忘れたときに困らないほうを先に作ってください。
| 開けっぱなしにするもの | 困り方 | 先にやること |
|---|---|---|
| 引き出し・扉 | ぶつかる、見た目 | 自動で閉まるものに変える |
| 冷蔵庫 | 食品が傷む | アラーム付きの機種を使う |
| 蛇口 | 水道代、水漏れ | 自動で止まるタイプにする |
| ガス | 危険 | 自動で消える機能付き、IHにする |
| 玄関の鍵 | 防犯 | スマートロックにする |
上の2つは見た目の問題ですが、下の3つは安全と防犯の問題です。 優先順位をつけてください。
場所別の対策
キッチン
いちばん数が多く、危ないものも集まっています。
- 引き出しは、ゆっくり閉まるレールに替える(後付けできる製品があります)
- 調味料はフタなしの容器に入れる
- 冷蔵庫は、アラームが鳴る機種なら鳴ったら閉めるだけでいい
- コンロは自動で消える機能付きか、IHにする
火だけは、対策を最優先にしてください。
洗面所・お風呂
- 蛇口を出しっぱなしにしやすい場所です
- 自動で止まるタイプや、レバーが戻る蛇口に替えられます
- 出るときに一度振り返る、をルールにする
玄関
鍵の閉め忘れは、防犯に直結します。
- スマートロックなら、ドアが閉まると自動で施錠されます
- 外出先からアプリで施錠状態を確認できる製品もあります
- 貼り付けタイプなら、賃貸でも使えます
くわしくは家の中で毎日何かをなくす人へへ。
クローゼット・収納
- 扉を外して、カゴを並べる
- ロールスクリーンやカーテンに替える
閉める動作そのものをなくすのが、いちばん確実です。
職場
- 引き出しに鍵がかかる職場では、施錠忘れが問題になります
- 退勤前のチェックを1つだけにしてください(「引き出しを引く」だけ)
複数の確認項目があると、全部やらなくなります。1つに絞るほうが守れます。
「開けたら閉める」を思い出す工夫
道具を変えられない場合の手です。
一度振り返る
部屋や洗面所を出るとき、ドアのところで一度振り返ると決めてください。
「振り返る」という動作をルールにすると、目に入ります。
すでにやっている動作にくっつける
- 電気を消したら、引き出しを見る
- 手を洗ったら、蛇口を確認する
新しい習慣は、すでにやっていることにくっつけると定着します。
くわしくは「〜したら〜する」で行動が変わるへ。
引き出しや扉を閉め忘れる人へ/「閉め忘れ」が心配で戻ってしまうとき
「閉め忘れ」が心配で戻ってしまうとき
閉めたかどうか思い出せず、家に戻ってしまう人がいます。
声に出す
閉めながら、「閉めた」と声に出す。
黙って閉めると、体が勝手にやったことになって、記憶に残りません。
写真を撮る
閉めた状態を1枚撮っておけば、不安になったときに見返せます。戻る往復より、はるかに速いです。
くわしくは家を出たあと鍵が不安になる人へへ。
数を減らす
そもそも、開け閉めする対象が多いほど、忘れる回数も増えます。
- 使っていない引き出しを、開けっぱなしにしておく(開いていて困らないなら、それでいい)
- 収納のフタを外す
- ものを減らして、しまう場所を減らす
くわしくはものが捨てられない人へ、部屋がすぐ散らかる人へへ。
家族に言われてつらいとき
「何度言っても直らない」と言われるのは、こたえます。
性格の問題ではなく、仕組みの問題として話すと、話が前に進みます。
「気をつけても直らないから、自動で閉まるやつに替えたいんだけど」
注意し合う関係より、仕組みを一緒に考える関係のほうが、お互いラクです。
そして、注意されたときに言い返さないのもコツです。「ごめん、直す方法を考える」で終わらせると、こじれません。
「何度言っても直らない」と言われるのがつらい、という声があります。
性格の問題ではなく、仕組みの問題として話してみてください。
「気をつけても直らないから、自動で閉まるやつに替えたいんだけど」
注意し合う関係より、仕組みを一緒に考える関係のほうが、お互いラクです。
よくある質問
全部を道具で解決するとお金がかかります
危ないものから順にやってください。ガス・水・鍵の3つが優先です。
引き出しや扉は、閉め忘れても実害が小さいので、あとでいいです。
賃貸なので工事ができません
- 貼り付けタイプのスマートロック(工事不要のものがあります)
- ゆっくり閉まるレールは、後付けできる製品があります
- 扉を外して、カゴを並べる(原状回復できます)
工事なしでできることは、意外と多いです。
「気をつける」で直った人はいますか
気をつけて減る人もいます。ただ、減るだけで、ゼロにはなりにくいです。
ゼロにしたいなら、閉める動作そのものをなくすほうが早いです。
関連する困りごと
- 鍵が不安になる → 家の中で毎日何かをなくす人へ
- 部屋が散らかる → 部屋がすぐ散らかる人へ
- 忘れ物が多い → 玄関で毎回何か忘れる人へ
- 習慣が定着しない → 「〜したら〜する」で行動が変わる
まとめ:開けっぱなしを減らす5つ
- 自動で閉まるものに替える(閉める動作をなくす)
- フタや扉を外して、開けっぱなしでも困らない形にする
- ガス・水・鍵の3つだけは、先に対策する
- 閉めながら「閉めた」と声に出す
- 部屋を出るとき、一度振り返るをルールにする
気をつけるのは、5番だけで十分です。 残りは道具の仕事にしてください。
まず今日、これだけやってみる
- いちばんよく開けっぱなしにするものを1つ決める
- そこに「閉める」と書いた紙を貼るか、フタを外す
- ガス・水・鍵のうち、対策していないものを1つ調べる
この記事について
この記事は、「気をつける」で直らない開けっぱなしを、仕組みで減らすことを目的にしています。
手順を思い出すための工夫(「〜したら〜する」の形で決めておく方法)は、行動科学の分野で検討されてきました。ただし、研究の多くは運動や食事などの健康行動を対象にしていて、「引き出しを閉める」のような日常の細かい動作をそのまま調べたものではありません。
「あとでやること」を覚えておく力(先の予定を思い出す働き)についても研究がありますが、こちらも研究ごとに対象や条件がちがいます。この記事の内容は、その考え方を日常に当てはめた工夫だと思ってください。
道具を変える方法(自動で閉まるレール、スマートロック、火が自動で消えるコンロ)は、そもそも忘れる余地をなくすやり方なので、効果が読みやすいのが利点です。
困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
引き出しを開けたまま部屋を出て、あとで「また開いてる」と言われる。悪気なんて1ミリもないんですよね。次のことに移った瞬間、前のことが消えてるだけなんです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討習慣はどうやってできるのか:日常生活での習慣づくりを追った研究
(原題:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world)
この研究でわかっていること:同じ合図と同じ行動の反復が習慣化を支えること、定着に個人差が大きいことを示せます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDを対象にした研究ではありません。「21日で習慣化」も本研究の結論ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。