カバンを変えると必ず忘れ物をする人へ|移しかえをやめる
— 忘れ物のほとんどは、カバンを変えた日に起きています
ポイント
- 忘れ物の多くは「カバンを変えた日」に起きています
- カバンを1つに固定できれば、この種の忘れ物はそもそも消えます
- 分けざるを得ないときは、中身をポーチにまとめてポーチごと動かします
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忘れ物が多い日には、共通点があります。カバンを変えた日です。
通勤用から私用に変えた日。冠婚葬祭で別のカバンにした日。ジムに行くのでリュックにした日。
その日に限って、定期券や社員証や充電器を忘れます。
移しかえは、忘れる機会そのもの
カバンを変えるとき、あなたは中身を1つずつ判断しています。
「これは持っていく、これは置いていく、これは……どうしよう」
判断のたびに注意が切り替わり、それには手間がかかることが研究で整理されています。20個の小物があれば、20回の判断です。
しかも移しかえは、たいてい出かける直前の急いでいるときに行われます。条件としては最悪です。
さらに、ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究があります。「あとで定期を入れよう」は、実行されません。
対策は1つです。移しかえという工程をなくします。
【いちばん効く1つ】カバンを1つにする
通勤も私用も、同じカバンにします。これで移しかえがなくなり、この種の忘れ物はそもそも消えます。
選ぶ基準は3つ
- A4が入る。 書類のために別のカバンを出す必要がなくなります
- 仕切りがあるが、細かすぎない。 細かすぎると「どこに入れたか」問題が起きます
- どんな服装でも許容範囲。 ここが妥協点です
3つめが難しいところですが、スーツにもデニムにも合うものを1つ選ぶと、生活が回ります。
黒か紺の、装飾の少ないものが無難です。
1つ買うほうが結果的に安い
「気に入ったものを1つ買う」ほうが、忘れ物で失うもの(時間、信用、再購入の費用)より安く済みます。
1万〜2万円の買い物になるかもしれませんが、毎日使うものなので、投資に見合います。
分けるなら「ポーチごと動かす」
どうしても別のカバンが必要な場面はあります。冠婚葬祭、旅行、ジム。
そのときは、中身を1つずつ移さないでください。
あらかじめ中身をポーチにまとめておき、ポーチごと入れ替えます。
| ポーチ | 中身の例 |
|---|---|
| 常備ポーチ | 常備薬、ばんそうこう、目薬、ティッシュ、予備マスク |
| 電源ポーチ | モバイルバッテリー、ケーブル、イヤホン |
| 身分ポーチ | 財布、社員証、印鑑(必要な人) |
移し替える単位が「20個の小物」から「3個のポーチ」に減ります。判断の回数が7分の1になるという計算です。
ポーチは中身が見えるものにする
透明か、メッシュのものが便利です。開けなくても中身が分かると、確認の手間が減ります。
色を分ける
「常備は青、電源は黒」のように色を決めておくと、見た瞬間に分かります。
バッグインバッグという手もある
「1つのカバンだと服装に合わない」という人向けです。
中身をまとめた小さいバッグを1つ用意して、外側のカバンだけ替えます。
- 中身の構成は固定されたまま
- 見た目だけ変えられる
- 移しかえは1動作
これがいちばん現実的な折衷案かもしれません。1,000〜3,000円で買えます。
カバンの中を定位置化する
カバンの中で迷子になるのも、忘れ物の一種です。「入れたはずなのに見つからない」を減らします。
外ポケットは1つの用途に固定
定期券なら定期券だけ。複数のものを入れると、そこが小さいカオスになります。
底に直接ものを入れない
底は必ずぐちゃぐちゃになります。 小物はポーチに入れて、ポーチを底に置いてください。
週に1回、全部出す
レシート、資料、飲みかけのペットボトル、何かの包み。沈殿します。
「日曜の夜にカバンの中を全部出す」と決めておくと、重さも減ります。
立つカバンを選ぶ
自立するカバンは、中身が見やすく、出し入れしやすいです。くたっとしたトートは、中で全部が混ざります。
カバンを変えると必ず忘れ物をする人へ/「入れっぱなし」を増やす
「入れっぱなし」を増やす
持ち歩くから忘れます。カバンに入れっぱなしにできるものは、入れっぱなしにしてください。
- 折りたたみ傘(家用とは別に、カバン専用に1本買う)
- モバイルバッテリーとケーブル
- 常備薬、目薬
- 予備のイヤホン
- ハンカチ、ティッシュ
家とカバンで兼用しないのがポイントです。カバン専用に買ってしまうほうが安全です。
数百円から数千円で、忘れ物の種類が1つずつ消えていきます。
場面別
出張・旅行
普段のカバンとは別のものを使うことが多いので、いちばん危ないです。
持ち物リストを1回作って、スマホに保存しておいてください。次からはそれを見るだけです。
ジム・習い事
専用のバッグを用意して、必要なものを入れっぱなしにするのが確実です。
タオル、着替え、シューズ。行くたびに詰め直さない形にします。
冠婚葬祭
年に数回しかないので、毎回忘れます。
「冠婚葬祭セット」を作って、まとめて保管しておいてください。数珠、袱紗、黒いネクタイ、白いハンカチ。
子どもと一緒の外出
持ち物が一気に増えます。子ども用のポーチを1つ作って、それごと持つ形にすると管理しやすくなります。
通勤とジムを同じ日に
大きいカバン1つにまとめるか、サブバッグを常にカバンに入れておくか。
サブバッグ(薄くたためるトート)を1枚入れておくと、荷物が増えた日に対応できます。
うまくいかないとき
カバンが重くなりすぎる
入れっぱなしを増やすと重くなります。月に1回、全部出して見直してください。
「この3か月で1回も使わなかったもの」は外します。
服装に合わないのが気になる
バッグインバッグを使うか、同じ形で色ちがいを2つ持つという手もあります。中身の位置は同じなので、移しかえてもミスが少なくなります。
カバンを持たない日がある
近所への外出などでカバンを持たない日は、ポケットに入る最小セット(鍵・スマホ・小さい財布)を決めておいてください。
カバンの中身の基本セット
「何を入れておけばいいか分からない」という人向けに、たたき台を置いておきます。自分に要らないものは外してください。
毎日入れておくもの
- 財布(小さいもの)
- 鍵
- スマホと充電ケーブル
- モバイルバッテリー
- ハンカチ・ティッシュ
- 常備薬(頭痛薬、胃薬など、自分がよく使うもの)
- 折りたたみ傘
- 予備のマスク
人によって要るもの
- イヤホン(音がつらい人は耳栓も)
- 目薬
- 予備のメガネ、コンタクトの替え
- ペンとメモ帳
- エコバッグ
- 充電式のカイロ(冬)
- 汗ふきシート(夏)
入れないほうがいいもの
- 読みかけの本(重いわりに読みません)
- 「そのうち使うかも」の書類
- 使っていないポイントカード
- 空のペットボトル(気づいたら入っています)
重さは体力を削ります。 毎日持つものは、できるだけ軽くしてください。
中身を「セット」で管理する
1つずつ入れると、必ず何かを忘れます。まとめて入れられる形にしてください。
ポーチで分ける
- 充電まわり(ケーブル、モバイルバッテリー)
- 身だしなみ(ハンカチ、ティッシュ、常備薬)
- 仕事用(名刺、ペン、付箋)
ポーチごと移せば、中身の確認がいりません。
出張・外泊セットを作っておく
泊まりの持ち物は、専用のポーチに入れっぱなしにしておきます。
歯ブラシ、充電器、着替え。「泊まりが決まったら、この袋を入れるだけ」にすると、忘れ物がほぼなくなります。
カバンを変えると必ず忘れ物をする人へ/週に1回リセットする
週に1回リセットする
固定していても、中身は必ず沈殿します。
- レシート
- もらった資料
- 飲みかけのペットボトル
- 使い終わった書類
日曜の夜に全部出すと決めておくと、重さも減り、中身も分かります。
このとき、足りなくなったもの(ばんそうこう、薬、ティッシュ)を補充すると、必要なときに困りません。
出先で困らない最小セット
カバンを持たない日のために、ポケットに入る最小構成を決めておいてください。
- 鍵
- スマホ
- 小さい財布(またはスマホ決済だけ)
近所への外出で忘れると困るのは、この3つだけです。
くわしくは財布とスマホを毎回どこかに置いてくる人へへ。
それでも忘れるとき
固定しても、忘れる日はあります。忘れても困らない備えをしておいてください。
- カバンに千円札を1枚入れておく
- 予備の充電ケーブルを職場に置いておく
- 常備薬を1回分、カバンに入れっぱなしにする
「忘れたら詰む」ものを減らすのが、いちばん現実的な対策です。
カバンを選ぶときの基準
固定するカバンは、毎日使うものです。慎重に選ぶ価値があります。
- 自立する(中身が見やすく、出し入れしやすい)
- 開口部が大きい(中を見渡せる)
- 外ポケットがある(定期券やスマホ用)
- 軽い(毎日のことなので効きます)
- 肩がつらくないか(リュックのほうが体は楽です)
くたっとしたトートは、中で全部が混ざります。中身が見えないカバンは、忘れ物が増えます。
同じものを2つ買っておくと、壊れたときに探し直さずに済みます。
まず今週、これだけやってみる
- いま使っているカバンを1つに決める(新しく買わなくていい)
- 中身をポーチ3つにまとめる(常備・電源・身分)
- 折りたたみ傘とモバイルバッテリーを、カバン専用に用意する
カバンを変えなくなるだけで、忘れ物はかなり減ります。
よくある質問
カバンが重くなります
月に1回、全部出して見直してください。 「この3か月で1回も使わなかったもの」は外します。
沈殿したレシートや資料だけでも、かなりの重さになります。
服装に合わせて替えたいです
バッグインバッグを使ってください。中身をまとめた小さいバッグを移すだけなので、構成は崩れません。
または、同じ形で色ちがいを2つ持つ手もあります。中身の位置が同じなら、移しかえてもミスが減ります。
荷物が多くて1つに入りません
入れっぱなしにするものを減らしてください。 「あると安心」で入れているものが、たいてい半分あります。
関連する困りごと
- 忘れ物が多い → 玄関で毎回何か忘れる人へ
- 財布やスマホをなくす → 財布とスマホを毎回どこかに置いてくる人へ
- 朝バタバタする → 朝バタバタして何も進まない人へ
- ものが増える → ものが捨てられない人へ
まとめ:忘れ物を減らす5つ
- カバンを1つに固定する
- 入れっぱなしにできるものは、全部入れっぱなしにする
- 外ポケットは1つの用途に固定する
- 週に1回、中身を全部出す
- カバンを替えるなら、バッグインバッグごと移す
移しかえる回数を減らすのが、いちばん効きます。
この記事について
作業を切り替えるときには手間がかかることが、研究で整理されています。中身を1つずつ移しかえる作業は、切り替えのくり返しです。忘れ物が出やすいのは自然なことです。
また、ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。「あとで入れよう」が実行されないのは、意志の問題ではありません。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
そのうえで、「カバンを1つにする」「ポーチ運用」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 判断の回数を減らすという原則を、持ち物という場面に当てはめたものです。
合わなければ、別のやり方を試してください。
「今日はこっちのカバンで」と思った日に限って、定期券を入れ忘れる。あれは意志の問題ではなく、移しかえという工程が増えたせいです。工程を消しましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。