財布やスマホをどこかに置き忘れる人へ|場面別の防ぎ方
— 「置いたことを覚えておく」のは、そもそも無理です
ポイント
- 置き忘れが起きるのは「一度置いて、別のことをした」場面にほぼ限られます
- 机やカウンターに置かないと決めるだけで、大半の場面が消えます
- 財布を小さくしてキャッシュレスに寄せると、持ち物そのものが減ります
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レジで支払ったあと、カウンターに財布を置いたまま出てしまう。飲食店のテーブルにスマホを忘れる。電車の座席の横に置いたまま降りる。会議室の机に置いてくる。
そして、戻って探して、見つかって、ほっとする。あるいは見つからない。
この場面、実はかなり限られています。
置き忘れが起きる条件は1つ
置き忘れは、「一度どこかに置いて、そのあと別のことをした」ときに起きます。
- レジで払う → 財布を置く → お釣りを受け取る → 商品を袋に入れる → 出る
- 飲食店 → スマホを置く → 食べる → 会計する → 出る
- 電車 → 座席の横に置く → スマホを見る → アナウンスを聞く → 降りる
置いたあとに別の作業が挟まると、置いたことは頭から消えます。
ADHDのある大人は、「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究があります。さらに、置いたあとに別の作業へ注意が切り替わります。切り替えには手間がかかることも研究で整理されています。
つまり、「置いたことを覚えておく」という前提の対策は、最初から分が悪いということです。
【いちばん効く1つ】そもそも置かない
対策はシンプルです。置かないと決めてください。
そして大事なのは、「置かない」だけでは続かないということです。代わりにどこへ入れるかまで決めます。
「支払いが終わったら、右の前ポケットに入れる」 「食事のときは、カバンの中に入れる」
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
戻す場所を1か所に固定するのがコツです。「ポケットかカバンか」と2つあると、そこで判断が発生します。
場面別|こう防ぐ
レジ・コンビニ
財布をカウンターに置かない。 片手で持ったまま支払います。
そのためにも、財布は小さいほうがいいです。大きい長財布だと、置きたくなります。
支払いのあとの流れも決めておいてください。
- 財布をポケットに戻す
- そのあとで商品を受け取る
順番を固定すると、飛ばしにくくなります。
飲食店
テーブルに置かない。 ここは置き忘れの名所です。
- スマホはポケットかカバンへ
- 財布も同じ
- 荷物は足元ではなく、椅子の上か背もたれに(足元は忘れます)
そして席を立つ前に、必ず一度、座っていた場所を見てください。
思い出すのではなく、目で見て確認するのがポイントです。思い出す作業がいちばん失敗します。
電車・バス
座席の横に置かない。 膝の上か、カバンの中に入れてください。
降りる駅が近づいたら、降りる前に一度、座席を見る習慣をつけます。
網棚に荷物を上げたときは、特に忘れやすいです。上げたら、降りる駅をスマホのメモに書くくらいの用心があってもいいです。
会議室・打ち合わせ
会議のあとは、次の予定のことを考えているので忘れやすいです。
立つ前に机を見る。 これだけです。
資料、ペン、スマホ、カップ。一度視線を落とすだけで、かなり防げます。
トイレ
意外な忘れ物スポットです。棚に置いたスマホや、フックに掛けたカバンを忘れます。
手を洗う前に、持ち物を持つという順番にすると防げます。
職場の自分の席
自分の席は安全だと思いがちですが、別のフロアや会議室に移動するときに忘れます。
移動するときは、必ずカバンごと持つと決めておくとラクです。
車の中
車に置き忘れるのは防犯上も危険です。降りる前に助手席とドアポケットを見る習慣をつけてください。
持ち物そのものを減らす
忘れる可能性は、持ち物の数に比例します。
財布を小さくする
- カードを減らす(使っていないポイントカードは家に置く)
- 現金を減らす
- 財布そのものを小さくする
ポケットに入るサイズにできれば、そもそも置く必要がなくなります。
理想は、片手で握れる大きさです。ポイントカードはアプリに移せるものが多いので、それだけでかなり薄くなります。
キャッシュレスに寄せる
財布を出す回数が減れば、置き忘れる場面も減ります。
スマホだけは忘れにくい(いつも使うので)という性質を利用する方法です。
ただし、スマホをなくしたときの被害は大きくなります。 後で書く「なくした日の準備」とセットにしてください。
スマホにストラップを付ける
首から下げる、手首に通す。手から離れない状態にすると、置く場面そのものが減ります。
見た目が気になるなら、短いストラップでも効果があります。
カバンを1つに固定する
カバンを変えると、その日に忘れ物が出ます。くわしくはカバンを変えると必ず忘れ物をする人へへ。
紛失防止タグを併用する
財布に入るカード型のタグがあります。スマホから音を鳴らせるので、家の中で見失ったときに効きます。
もっと効くのは「置き忘れ通知」です。持ち物から離れると通知が来るので、店を出た直後に気づけます。
効かない場面もあるので、選び方はなくし物が多い人へにまとめました。
財布やスマホをどこかに置き忘れる人へ/なくした日のために、先に用意しておく
なくした日のために、先に用意しておく
いつかは忘れます。そのときの被害を小さくしておくのが現実的です。
スマホの「探す」機能をオンにする
- iPhone:設定 → 自分の名前 → 探す
- Android:設定 → セキュリティ → デバイスを探す
設定を1回オンにするだけです。今すぐやってください。
カードの停止番号を、スマホ以外にも控える
スマホと財布を同時になくすと、番号を調べる手段がなくなります。
紙に書いて家に置くか、家族のスマホに登録しておいてください。
交通系ICを記名式にする
記名式にしておくと、なくしても再発行できます。手続きは駅の窓口でできます。
財布に入れるものを絞る
キャッシュカード、保険証、マイナンバーカード。毎日は使わないものは、家に置いておくほうが安全です。
なくしたときの再発行の手間が、まったく違います。
手順を書いておく
あせっているときに、順番を思い出すのは難しいです。スマホのメモか紙に書いておいてください。
「財布をなくしたら
- 最後に使った店に電話
- カード会社に連絡(◯◯-◯◯◯◯)
- 交番に遺失届
- 保険証・免許証の再発行手続き」
それでも忘れてしまったとき
すぐ戻る
気づいた時点で、最後に使った場所に戻るか電話するのがいちばん早いです。
飲食店や店舗なら、たいてい預かってくれています。
遺失届を出す
警察に遺失届を出すと、届けられたときに連絡が来ます。オンラインで出せる都道府県もあります。
自分を責めない
責めても次は減りません。責める時間があるなら、設定を1つ変えてください。
「探す」機能をオンにする、財布を小さくする、置く場所を決める。そのほうが実利があります。
出る前の3秒チェック
玄関に、この3語だけを貼ってください。
サイフ・カギ・スマホ
長いリストにすると読みません。3つだけにするのがコツです。
声に出す
黙って見るより、声に出したほうが確実です。「サイフ、カギ、スマホ」と言いながら、体をさわって確認します。
恥ずかしければ小声で構いません。手で触るのが大事です。目で見ただけだと「あるつもり」になります。
ドアノブの上に貼る
貼る場所は、必ず目に入るところ。ドアの真ん中や、ドアノブのすぐ上です。
靴箱の上や壁だと、見ずに出ます。
置き場所を1か所にする
忘れ物は、置き場所が決まっていないから起きます。
帰ったらまずトレイに入れる
玄関に浅いトレイを1つ置いて、帰ったらそこに入れます。
- 財布
- 鍵
- 定期券
スマホだけは充電場所になることが多いので、充電器を玄関の近くに置くという手もあります。
「置いたら写真」はやらない
記録しようとすると続きません。場所を決めるほうが確実です。
くわしくは家の中で毎日何かをなくす人へへ。
忘れても困らない状態を作る
対策をしても、忘れる日は来ます。そのときに困らないようにしておくのが、いちばん実用的です。
スマホだけで帰れるようにする
- 交通系ICをスマホに入れておく
- スマホ決済を1つ入れておく
財布を忘れても帰れます。
千円を隠しておく
カバンの奥やスマホケースに、千円札を1枚入れておいてください。
現金しか使えない場面(病院、小さい店、コインパーキング)で助かります。
鍵を預けておく
- 家族に合鍵を渡しておく
- 実家や職場に予備を置く
- 鍵を持たないで済むスマートロックにする
「入れなくなる」がいちばん困るので、ここは投資する価値があります。
財布やスマホをどこかに置き忘れる人へ/忘れやすいものは分けて考える
忘れやすいものは分けて考える
忘れると帰れないもの
鍵・スマホ・交通費。これは対策を厚めに。
忘れると恥ずかしいもの
書類・持ち物・返却物。前の晩にカバンに入れるのが解決策です。朝バタバタして何も進まない人へへ。
忘れても買えるもの
ハンカチ、飲み物、傘。気にしすぎなくていいです。
全部を同じ強さで対策しようとすると、疲れて全部やめます。 上から順にやってください。
家族と共有しておく
一人暮らしでないなら、家族に事情を伝えておくと助かります。
「よく鍵を忘れるから、合鍵を持っていてもらえる?」
「気をつけて」と言われるより、仕組みで助けてもらうほうが、お互い楽です。
忘れたことを責めない
忘れ物が多いのは、気合いの問題ではありません。
責めると、次に忘れたときに焦って、もっとミスが増えます。
「対策を1つ足す」だけ考えてください。貼り紙、トレイ、予備の千円。1つずつで十分です。
よく忘れる場面を知る
忘れやすい場面には、パターンがあります。
- 急いでいるとき(いちばん多い)
- いつもと違う時間に出るとき
- 荷物が多いとき
- 別のことを考えているとき
急いでいるときほど、3秒チェックが効きます。 急ぐほど飛ばしたくなりますが、そこで飛ばすから忘れます。
前の晩に準備を寄せる
朝に急がなくて済むようにするのが、根本的な対策です。
くわしくは朝バタバタして何も進まない人へへ。
対策は1つずつ足す
貼り紙、トレイ、予備の千円、スマートロック。全部いっぺんにやらないでください。
1つ試して、1週間続いたら次を足す。このペースが、いちばん定着します。
忘れ物が減れば、朝の焦りも減ります。 焦りが減れば、さらに忘れ物が減ります。ここは良い方向に回りやすい部分です。
まず今日、これだけやってみる
- スマホの「探す」機能をオンにする(3分)
- 「支払いが終わったら、どこに入れるか」を1か所決める
- 席を立つ前に、座っていた場所を一度見る
3つめは無料で、今日からできて、いちばん効きます。
この記事について
ADHDのある大人は、「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。置いたことを覚えていられないのは、注意力の問題ではありません。
作業を切り替えるときには手間がかかることも研究で整理されています。置いたあとに別の作業が挟まると、置いた記憶が残りにくくなります。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。「支払いが終わったらポケットに入れる」は、この考え方です。
そのうえで、「財布を小さくする」「立つ前に振り返る」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 合うものだけ使ってください。
忘れ物やなくし物で生活に支障が出ている状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「置いたことを覚えておく」のは無理です。そもそも置かない設計にするほうが、はるかに楽で確実です。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。