作業の切り替えができない|次に移れないときの手順
— 切り替えは、誰にとってもコストがかかる
ポイント
- 切り替えにコストがかかるのは誰にでも起きることです。特性の問題だけではない
- 切り替える前に「戻る場所」を1行残すと、再開が早くなる
- 切り替えの回数そのものを減らす設計が、いちばん効く
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いま書いている途中なのに会議が始まる。会議から戻ったら、さっき何を書いていたか分からない。別の作業に移ったのに、前のことが頭から離れない。
切り替えは誰にとっても高くつく
課題を切り替えるときにコストが発生することは、研究のまとめで整理されています。これは特性の有無に関係なく起きる、一般的な性質です。
ただし、そのうえで次の要素が重なると、負担はさらに大きくなります。
- 場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいこと(ADHDを対象にした研究で検討)
- 深く入り込んだ状態からの離脱が難しいこと(過集中。ただし定義は研究間で揃っていません)
「切り替えが苦手」という感覚には、実際の根拠があるということです。
【いちばん効く1つ】回数を減らす
切り替えのコストを下げる最良の方法は、切り替えないことです。
同じ種類の作業をまとめる
- メール返信は1日2回に固めて、その時間だけやる
- 電話をかける時間をまとめる
- 会議を同じ日に寄せる
- 午前は1種類だけにする
「1日中いろいろやる」より「午前は書く、午後は打ち合わせ」のほうが、同じ時間でも消耗が少なくなります。
予定を細切れにしない
会議が1時間おきに入っている日は、その日まるごと何も進みません。
「会議は火曜と木曜にまとめたい」と相談してみる価値はあります。
疲れの原因は、切り替えそのものです。回数を減らすのがいちばん効きます。
午前と午後で役割を分ける
- 午前=頭を使う作業(切り替えない)
- 午後=人と話す、事務作業
一日を2つに割るだけでも、切り替えが減ります。
切り替える前に「戻る場所」を残す
中断するときに、次の一手を1行書いてから離れます。
「次:3章の図を差し替える」 「次:田中さんに納期を確認するメール」 「途中:見積の計算、消費税まで入れた」
これがあると、戻ったときに「どこまでやったか」を思い出す作業が消えます。思い出す作業がいちばん重いので、ここを省けるのは大きいです。
書く場所は1か所に固定してください。毎回ちがう場所に書くと、それをさがすことになります。
中途半端なところで切る
きりのいいところまでやろうとすると、切り替えが遅れて遅刻します。
文の途中で切るほうが、再開しやすいという面もあります。書きかけの状態が「続きはここから」という合図になるからです。
「移ったのに前のことが残る」とき
新しい作業を始めたのに、前のことが頭から離れないタイプの困りごとです。
- 紙に書いて外に出す。 気になっていることを1〜2行書いて、机の端に置く
- 戻る時刻を決める。 「15時にまた見る」と決めると、それまで置いておけることがあります
- 体を動かす。 立ち上がって水を汲む、階段を1階分歩く
場所を変えると切り替わりやすくなります。
割り込みへの対処
自分から切り替えるのではなく、人から切り替えさせられる場合は別の対策が要ります。
- 「いま手が離せないので、10分後でもいいですか」と言っていい
- 集中したい時間を宣言しておく
- チャットの通知を切る
くわしくは話しかけられると作業が全部飛ぶ人へへ。
予定変更が苦手な場合
急な変更で1日全体が崩れる、というタイプの困りごともあります。
この場合は切り替えの技術というより、変更が来ることを前提に予定を組むほうが効きます。
- 予定を詰めない(予定を入れすぎて後で潰れる人へ)
- 「変更があったらこうする」を先に決めておく
- 変更が起きたとき、全部やり直さずに「今日やる1つ」だけ決め直す
全部を組み直そうとすると、そこで力尽きます。
作業の切り替えができない/切り替える前後にワンクッション
切り替える前後にワンクッション
いきなり切り替えると、頭が前の作業に残ります。
1行メモを残す
前の作業を止めるとき、「次にやること」を1行書いてください。
「次:見積もりの3行目から」
戻ったときに、ゼロから思い出さずに済みます。
30秒の空白を入れる
- 立ち上がる
- 水を飲む
- 深呼吸する
「終わった」という区切りを体に入れると、次に入りやすくなります。
割り込みを減らす
自分で切り替えるのと、割り込まれるのは違います。割り込みのほうが、はるかに疲れます。
- 通知を切る
- 「10分後に伺います」と言う練習をする
- 作業中と分かる合図を出す(ヘッドホン、札、チャットのステータス)
くわしくは話しかけられると作業が飛ぶ人へへ。
「終われない」ときの対策
切り替えられない原因が、前の作業を終われないことである場合もあります。
- タイマーで区切る
- 「今日はここまで」を先に決める
- キリのいいところを探さない(キリのいいところは来ません)
途中で止めていいです。 メモさえ残っていれば、続きから始められます。
予定の入れ方を変える
予定と予定のあいだに余白を置く
15分でいいので、必ず空けてください。
そこで、メモを書き、次の準備をします。この15分がないと、切り替えの負担が全部あとに残ります。
一日の予定を詰めすぎない
切り替えが多い日は、それだけで疲れます。予定の数そのものを減らすのが、根本的な対策です。
くわしくは予定を詰め込みすぎる人へへ。
切り替えを減らすには、そもそも一日の組み方を変えるのが効きます。
| 時間帯 | 置く作業 |
|---|---|
| 朝いちばん | 考える必要がある作業(切り替えたくない仕事) |
| 昼食のあと | 単純作業(切り替えても損が少ない) |
| 夕方 | 明日の準備、整理 |
「切り替えたくない作業」をまとまった時間に置くのがコツです。
疲れた日のリカバリー
切り替えが多かった日は、夜に何もしない時間を取ってください。
- 予定を入れない
- 情報を入れない(SNS、ニュース、動画)
- 早めに寝る
その日のうちに回復させておくと、翌日に持ち越しません。
疲れにくい一日の型
毎日ゼロから予定を組むと、切り替えが増えます。型を決めてください。
| 時間帯 | 入れるもの |
|---|---|
| 午前 | 頭を使う作業(切り替えない) |
| 昼すぎ | 会議、人と話すこと |
| 夕方 | 事務作業、片づけ、明日の準備 |
午前に会議を入れないだけで、一日の質が変わる人がいます。
場面別
会議のあと
頭が会議に残ったまま作業に戻ると、進みません。会議直後の3分で、決まったことと自分の担当をメモしてください。
そこで区切りがつきます。
家事と仕事を行き来する
在宅だと、この切り替えが1日に何度も起きます。
- 「この1時間は仕事」と決める
- 家事はまとめて1回でやる
- 洗濯機や食洗機を回すのは、切り替えのタイミングに合わせる
子どもがいる家庭
物理的に切り替えが発生し続けます。まとまった時間を作るしかありません。
早朝、夜、預けている時間。細切れでもできる作業を、その時間用に分けておくと、むだが減ります。
通知を止める
割り込みの多くは、通知から来ます。切ってください。
- メールの新着通知
- チャットの通知
- スマホの全通知
まとめて見る時間を決めて、それ以外は切る。 「10時・14時・17時にメールを見る」のように。
全部切るのが不安なら
- 特定の人だけ通知を残す
- 「名前を呼ばれたときだけ」に設定する
多くのアプリでできます。無料です。
作業の切り替えができない/切り替えが多い仕事の場合
切り替えが多い仕事の場合
電話番、受付、店頭など、切り替えが仕事そのものという職場もあります。
その場合は、「切り替えない環境を作る」のではなく、「切り替えても戻れるようにする」方向で組み立ててください。
- 1行メモを徹底する
- 開いた画面を閉じない
- 集中が要る作業を、人が少ない時間帯に寄せる
戻る速さが上がると、同じ回数の切り替えでも疲れ方が変わります。
疲れが後から来る人へ
切り替えの多い日の影響は、その日ではなく翌日や2日後に出ることがあります。
- 予定の翌日を軽くしておく
- 週末を全部埋めない
- 「今日は平気だった」で判断しない
くわしくは気づいたら限界になっている人へへ。
自分を責めない
切り替えで疲れるのは、能力の問題ではありません。
同じ職場にいても、切り替えの回数と負担は人によって違います。回数を減らす工夫をしたほうが、はるかに現実的です。
「慣れれば平気になる」と思って回数を増やすと、悪化することがあります。
頭に残ったものを外に出す
前の作業が頭に残るのは、「終わっていない」と感じているからです。
気になっていることを全部書き出す
3分でいいので、いま抱えているものを紙に並べてください。
・見積もり(金曜まで) ・◯◯さんへの返信 ・買い物
書いた時点で、頭が「覚えておかなくていい」と判断します。
「次にやること」だけ残す
書き出したら、今やるもの以外は視界から外してください。 紙を裏返す、閉じる、引き出しに入れる。
見えていると、そこに気が向きます。
予定変更が苦手なとき
急に予定が変わると、頭が切り替わらないことがあります。
変更の連絡をもらう形を決めておく
「予定が変わるときは、できるだけ早めに教えていただけると助かります。」
「早めに」が具体的でないと伝わらないので、「前日まで」「朝までに」など、はっきり言うほうが通ります。
変更後にやることを1行書く
変わった直後に、「じゃあ今日は何をするか」を1行書いてください。
頭の中で組み直そうとすると、そこで固まります。
環境で切り替える
場所が変わると、頭も切り替わりやすくなります。
- 別の席に移る
- 一度外に出る
- 立ち上がって水を汲みに行く
同じ席に座り続けたまま切り替えようとすると、いちばん難しいです。
まとめ:切り替えを減らす5つ
- 同じ種類の作業をまとめる(メール、電話、買い物)
- 予定と予定のあいだに15分空ける
- 席を立つ前に「次にやること」を1行書く
- 通知を切って、見る時間を決める
- 切り替えが多かった日は、夜に何も入れない
全部やらなくていいです。 1つずつ足してください。
まず今日、これだけやってみる
- メールを見る時間を、1日3回に決める
- 席を立つ前に「次にやること」を1行書く
- 明日の予定に、15分の空白を1つ入れる
関連する困りごと
- 話しかけられて飛ぶ → 話しかけられると作業が飛ぶ人へ
- 同時に進められない → 複数の作業を同時に進められない人へ
- 予定が多すぎる → 予定を詰め込みすぎる人へ
- 疲れが取れない → 気づいたら限界になっている人へ
この記事について
作業を切り替えるときには手間がかかることが、研究で整理されています。これは特性のあるなしに関係なく、誰にでも起きることです。
ADHDのある人では、場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいことも研究で検討されています。
過集中については、研究ごとに定義がそろっていないことがレビューで指摘されています。
そのうえで、「戻る場所を1行残す」「中途半端なところで切る」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 だれにでも起きることを、日常の場面に当てはめたものです。
切り替えが苦手なのではなく、切り替えが高くつくだけです。だったら回数を減らすのが正解です。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討ADHDにおける、場面に応じた「思考のさまよい」の調整
(原題:Context Regulation of Mind Wandering in ADHD)
この研究でわかっていること:「気づいたら別のことを考えている」を、意志ではなく調整の問題として説明できます。
ここはまだ分かっていません:対策の効果を示す研究ではありません。
研究で検討過集中:忘れられてきた注意の領域
(原題:Hyperfocus: the forgotten frontier of attention)
この研究でわかっていること:過集中が注意の一形態として議論されていると示せます。
ここはまだ分かっていません:定義が定まっておらず、「ADHDの人は過集中する」と一般化はできません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。