話しかけられると作業が全部飛ぶ人へ|戻れるようにする準備
— 覚えていられないのは当たり前です。外に残します
ポイント
- 割り込みで飛ぶのは、頭の中に置いていたものが消えるからです
- 離れる前に「次にやること」を1行残すだけで、戻る時間が大きく減ります
- 割り込みそのものを減らす工夫も、あわせてやると効きます
目次を開く(13項目)
資料を作っている途中で「ちょっといい?」と声をかけられる。5分話して席に戻ると、さっきまで何をやっていたか分からない。
思い出すのに10分かかって、また別の人に話しかけられる。そして一日が終わる。
これは記憶力の問題ではありません。
なぜ全部飛ぶのか
作業をしているとき、頭の中には次のようなものが一時的に置かれています。
- いま何をしているか
- 次に何をするか
- さっき決めたこと
- 途中まで考えていたこと
これは机の上に広げた書類のようなもので、別のことを始めると片づけられてしまいます。
作業を切り替えるときには手間がかかることが、研究で整理されています。さらに、ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究もあります。
つまり、頭の中に置いておくやり方が、そもそも向いていないということです。
【いちばん効く1つ】離れる前に1行残す
割り込みが来たら、返事をする前に1行書いてください。
「次:3章の図を差し替える」 「次:田中さんに納期をメールする」 「途中:見積の計算、消費税まで入れた」
書くのは5秒です。これがあるだけで、戻ったときに思い出す作業がなくなります。
書く場所を決めておく
毎回ちがう場所に書くと、それをさがすことになります。場所は1つに固定してください。
- 作業しているファイルのいちばん上に書く
- 机に付箋を1枚だけ貼る場所を決める
- スマホのメモの決まったページ
「返事の前に書く」を先に決めておく
声をかけられると、反射的に顔を上げてしまいます。先に決めておかないと間に合いません。
「『ちょっといい?』と言われたら、1行書いてから顔を上げる」
行動を先に決めておく方法は、目標達成の研究でも支持されています。
最初は忘れます。 それでいいです。何回かに1回できれば、その分だけ得をします。
割り込みそのものを減らす
1. 「いま手が離せない」と言っていい
「いま作業中なので、10分後でもいいですか?」
これは失礼ではありません。中途半端に聞いて間違えるほうが迷惑です。
言いにくい人は、「あと5分でキリがつくので、そのあとでもいいですか」のように、時間を示すと角が立ちません。
2. 集中したい時間を宣言する
「午前中は資料を作っているので、急ぎでなければ午後に声をかけてください」
朝に一言言っておくだけで、割り込みが減ることがあります。
3. 見た目で分かるようにする
- ヘッドホンをつける(つけているあいだは話しかけないでほしい、と伝えておく)
- 「作業中」と書いた小さな札を置く
- 会議室や別の席に移動する
自閉スペクトラム症のある人の働き方を調べた研究でも、職場の物理的な環境が働きやすさに関わると報告されています。
4. チャットの通知を切る
割り込みは人からだけではありません。通知も割り込みです。
- チャットの通知をオフにして、見る時間を決める
- メールの新着通知を切る
- スマホを机の上に置かない
5. 席を変えられないか相談する
通路のそば、出入口のそば、人の動線上。席の位置だけで、話しかけられる回数がまったくちがいます。
相談の仕方は職場に「これがつらい」と言えない人へに書きました。
6. 質問をまとめてもらう
自分が質問される側なら、「まとめて聞いてもらえると助かります」と伝えるのも手です。
「1日1回、この時間に聞いてください」と決めると、お互いラクになります。
「作業中」が見える形にする
- ヘッドホンをする
- 小さい札を立てる
- チャットのステータスを変える
言わなくても伝わる仕組みがあると、お互いラクです。
「あとで」と言う
「これが終わったら伺います。10分後で大丈夫ですか。」
断っているわけではありません。 順番をずらしているだけです。
これを何回か使うと、周りも「今は声をかけないほうがいい時間がある」と分かってきます。
まとめて聞いてもらう
「細かい確認は、15時にまとめて伺ってもいいですか。」
割り込みの回数そのものが減ります。
通知を切る
- メールの新着通知
- チャットの通知
- スマホの通知
まとめて見る時間を決めて、それ以外は切る。 くわしくはチャットの返信が追いつかない人へへ。
割り込みの種類ごとの対処
割り込みにも種類があって、それぞれ効く対策がちがいます。
人が話しかけてくる
いちばん多いパターンです。1行メモ+「あとで」と言えるようにするの2つで対応します。
相手が上司の場合、断りにくいので「はい」と聞く姿勢を見せつつ、手元では1行書く、という形になります。
電話が鳴る
電話は選べません。鳴った瞬間に出ることになります。
- 電話に出る前に、1行書くクセをつける(受話器を取るまでの3秒でできます)
- 電話中は入力しない。紙にメモだけ
- 電話が終わったら、まずメモを読んでから作業に戻る
チャットの通知
これは自分で止められます。 通知を切って、見る時間を決めてください。
「すぐ返さないと」と思いがちですが、実際には3時間以内に返せば問題ないことがほとんどです。急ぎの人は電話してきます。
急な依頼が飛んでくる
その場で引き受けると、いまの作業が崩れます。「いつまでですか」と必ず聞いてください。
聞いてみると来週でよかった、ということがよくあります。判断の仕方は優先順位がつけられない人へに書きました。
自分の頭の中から割り込んでくる
外からではなく、自分で「あ、あれもやらなきゃ」と思い出して手が止まるパターンです。
思いついたら、その場でメモに書いて、いまの作業に戻ります。 書かずに覚えておこうとすると、そちらが気になって手が止まります。
会議やチャットの通知音そのものが気になる
音に敏感な人は、通知音だけで集中が切れます。音を全部消して、視覚だけにする設定にしてみてください。
音の負担については人の声や生活音がつらい人へも見てみてください。
話しかけられると作業が全部飛ぶ人へ/在宅勤務のときの割り込み
在宅勤務のときの割り込み
家にいると、割り込みの種類が変わります。
家族が話しかけてくる
- 作業中はドアを閉める。閉めているあいだは話しかけない、とルールを決める
- 「この時間は仕事」とカレンダーを共有する
- ヘッドホンをつけているあいだは話しかけない、と決める
言わないと伝わりません。 家族には「集中しているときに話しかけられると、戻るのに15分かかる」と具体的に説明してください。
家事が目に入る
洗い物、洗濯物、散らかった床。目に入ると気になります。
作業する場所と、生活する場所を分けてください。 難しければ、机の向きを変えて、家事が目に入るものに入らないようにするだけでも違います。
宅配や来客
- 置き配にする
- 作業時間帯に届く注文をしない
- インターホンの音量を下げる
在宅勤務全体の設計は在宅勤務だとまったく仕事が進まない人へに書きました。
家族に声をかけられて進まない、というのもよくあります。
- 「この時間は集中したい」と先に伝える
- 部屋のドアを閉める、札を出す
- 時間を決める(「21時までは作業する」)
先に言っておくと、相手も気を使わずに済みます。
飛んだあとに早く戻る
1. 画面をそのままにしておく
閉じないでください。開いていた画面が、そのまま「どこまでやったか」の記録になります。
2. 中途半端なところで止める
きりのいいところまでやろうとすると、割り込みに対応するのが遅れます。文の途中で止まっているほうが、再開しやすいという面もあります。
3. 戻ったら、まず1行メモを読む
席に戻って最初にやるのは、作業ではなくメモを読むことです。5秒で状況が戻ります。
4. 戻れないときは、別のことをやる
どうしても戻れないときは、無理に戻らず、単純作業を1つ挟んでから戻るほうが早いことがあります。
メールを1本返す、書類を1枚片づける。頭が切り替わってから戻ります。
「戻れない」を減らす作業の作り方
そもそも、割り込まれても壊れにくい形に作業を組んでおく手もあります。
作業を短く区切っておく
1時間かかる作業を1つ抱えていると、途中で割り込まれたときの被害が大きくなります。
15〜20分で終わる単位に割っておくと、区切りのいいところで中断できます。割り方は大きい仕事を前に固まってしまう人へに書きました。
頭の中でやらない
計算、比較、組み立て。これを頭の中でやっていると、割り込まれた瞬間に全部消えます。
途中経過を画面か紙に出しながら進めてください。遅くなるように見えて、やり直しがない分だけ速いです。
割り込まれやすい時間帯を避ける
朝いちばん、昼休み明け、夕方。声をかけられやすい時間帯は職場ごとにあります。
集中して進めたい作業は、その時間帯を外して置いてください。人が少ない朝の時間が使えるなら、そこがいちばん静かです。
「今日いちばん大事な作業」を先にやる
割り込みは、時間がたつほど増えます。午後になるほど、まとまった時間は取れなくなります。
いちばん集中が要る作業を、いちばん早い時間に置いてください。
自分が割り込む側になっているとき
割り込みは、自分も他人にしています。お互いに減らせると、職場全体がラクになります。
- 質問はまとめて、1日1回にする
- 「いま大丈夫ですか?」と一言聞いてから話す
- 急ぎでないことはチャットにする(相手が自分のタイミングで見られる)
- チャットでも「@」をつけるかどうかを考える
「急ぎでなければチャットで、急ぎなら声で」というルールをチーム内で決められると、かなり静かになります。
話しかけられると作業が全部飛ぶ人へ/割り込みが多すぎる職場の場合
割り込みが多すぎる職場の場合
工夫で埋まらない量の割り込みがある職場もあります。
- 電話が鳴りっぱなし
- 常に誰かに話しかけられる
- 緊急の依頼が1日に何度も来る
この場合は、あなたの工夫の問題ではありません。
- 集中作業の時間を確保できないか相談する
- 在宅勤務の日を作れないか相談する
- 電話の一次対応を分担できないか相談する
それでも変わらないなら、その職場の働き方が合っていないという情報として受け取ってもいいです。
電話番、受付、店頭など、割り込みが仕事そのものという職場もあります。
その場合は、
- 集中が要る作業を、割り込みの少ない時間帯に寄せる
- 中断される前提で、細かく区切って進める
- 1行メモを徹底する
「集中できる環境を作る」より「中断されても戻れるようにする」ほうが現実的です。
割り込まれる前の備え
割り込みは、ゼロにできません。 戻れるようにしておくのが現実的です。
中断する前に1行書く
声をかけられたら、返事をする前に「次にやること」を1行書いてください。
「次:見積もりの3行目から」
3秒で書けます。 これがあるかどうかで、戻ったあとの時間が全然違います。
画面を閉じない
そのまま置いておいてください。探すところからやり直すのが、いちばん時間を食います。
戻ったら、まずメモを読む
いきなり作業を再開しない。メモを見る、というワンクッションを入れてください。
集中したい時間を確保する
場所を変える
- 空いている会議室
- 別のフロア
- 在宅にする日を作る
物理的に離れるのが、いちばん確実です。
時間帯をずらす
早朝や、人が少ない時間帯。同じ1時間でも、進む量がまったく違います。
カレンダーに「作業」を入れる
空いていると、会議が入ります。「資料作成」という予定を入れておいてください。
くわしくは予定を詰め込みすぎる人へへ。
まず明日、これだけやってみる
- 席を立つ前・返事をする前に、「次にやること」を1行書く
- 書く場所を1か所に決める(付箋でもファイルの先頭でも)
- チャットの通知を切って、見る時間を3回決める
1つめだけで、戻る時間がかなり短くなります。
この記事について
作業を切り替えるときには手間がかかることが、研究で整理されています。これは特性のあるなしに関係なく、誰にでも起きることです。
また、ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。頭の中に置いたものが消えるのは、意識の低さではありません。
職場の働きやすさには、物理的な環境も関わることが、自閉スペクトラム症のある人への調査で報告されています。席の位置を相談する価値はあります。
そのうえで、「1行残す」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 合わなければ、別のやり方を試してください。
割り込みが多すぎて仕事にならない状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「ちょっといい?」って声をかけられた瞬間に、頭の中のものが全部こぼれるんですよね。あれは記憶力の問題じゃなくて、置き場所の問題です。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討「車いすの人にとってのスロープのようなもの」:自閉スペクトラム症のある従業員にとっての職場の使いやすさ
(原題:"It’s like a ramp for a person in a wheelchair": Workplace accessibility for employees with autism)
この研究でわかっていること:物理環境・手順・人の3つが働きやすさを左右すると整理できます。
ここはまだ分かっていません:聞き取りをもとにした研究であり、配慮の効果量を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。