人の声や生活音がつらい人へ|音を減らす道具と使い方
— 「気にしすぎ」ではありません。減らせます
ポイント
- ASDのある人は、音に過敏になることがあります。慣れることを目指さなくていいです
- まず数百円の耳栓から。合うと分かってから高いものを買えば十分です
- 音の種類によって効く道具がちがいます。低い音と人の声では別のものが要ります
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隣の席の人のキーボードの音。誰かがガムを噛む音。エアコンのうなり。子どもの声。テレビの音量。
まわりは平気そうなのに、自分だけが耐えられない。そして「気にしすぎだよ」と言われる。
気にしすぎではありません。 ASD(自閉スペクトラム症)のある人は、音に過敏になることがあります。
音の種類で、効く道具がちがう
ここを間違えると、高いものを買っても効きません。
| 音の種類 | 例 | 効きやすい道具 |
|---|---|---|
| 低い連続音 | エアコン、電車、車、換気扇 | ノイズキャンセリングのイヤホン |
| 人の声・話し声 | 隣の会話、オフィスのざわめき | 耳栓、または声をかき消す音を流す |
| 突発的な音 | 物が落ちる、ドアの開閉、子どもの声 | 耳栓(全体の音量を下げる) |
| 特定の音だけ耐えられない | そしゃく音、鼻をすする音 | 耳栓+物理的な距離 |
ノイズキャンセリングは「人の声」には弱いことが多いです。ここを知らずに買って「効かない」と感じる人がけっこういます。
【道具】安い順に試す
1. 耳栓(数百円〜)
まずこれです。全体の音量を下げます。
形がいろいろあるので、合うものを見つけるまで何種類か試す価値があります。
- スポンジタイプ(安い・遮音性が高い・慣れが要る)
- シリコンタイプ(着け心地がよい・洗える)
- フランジタイプ(耳の形に合わせやすい)
耳が痛くなるなら、サイズが合っていません。 別の形を試してください。
2. 音楽用の耳栓(2,000〜4,000円)
音質を保ったまま、音量だけを下げるタイプです。ライブや飲食店で、会話はできるけどうるさすぎない、という状態が作れます。
3. デジタル耳栓(5,000円前後)
音楽を流さずに、まわりの音だけ小さくする道具です。「音楽を聴きたいわけじゃない」人向けです。
4. ノイズキャンセリングのイヤホン(1万〜3万円)
低い連続音にいちばん強いです。電車、飛行機、エアコンの音で消耗する人には効きます。
人の声には弱いので、そこを期待して買うと失敗します。
5. イヤーマフ(3,000〜8,000円)
耳全体を覆うタイプです。遮音性は高いですが、見た目が目立ちます。家や作業中には強い味方です。
6. 音を流してかき消す
耳栓で消えない音は、別の音でかき消す手もあります。雨の音、環境音、ホワイトノイズ。
ホワイトノイズやピンクノイズについては、子どもと若者を対象にした研究がありますが、大人については分かっていません。 試してみる価値はありますが、効かなくても不思議ではありません。
くわしくは音が気になって集中できない人へへ。
【環境】道具を使わずにできること
席・場所を変える
- 壁を背にする(背後の音が減ります)
- エアコンの真下を避ける
- 出入口、通路、コピー機から離れる
- 窓際を避ける(外の音が入ります)
席が変わるだけで、消耗の量がまったく違います。
家の中の音を減らす
- 冷蔵庫や洗濯機の音がつらいなら、置き場所や運転時間を変える
- カーテンや布を増やすと、反響が減ります
- 引き戸や扉に緩衝材を貼ると、閉まる音が小さくなります
- テレビをつけっぱなしにしない
時間をずらす
同じ場所でも、時間帯で音の量が変わります。空いている時間に行くのがいちばん確実です。
場面別の対処
職場
- イヤホン・耳栓の使用許可を取る
- 静かな場所で作業する時間をもらう
- 席の移動を相談する
言い方は「うるさいので」ではなく、影響を具体的に言うと通りやすくなります。
「まわりの話し声があると内容が頭に入らなくて、やり直しになることが多いんです。イヤホンを使わせてもらえませんか。」
くわしくは職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
電車・バス
- 時間をずらす
- ノイズキャンセリングのイヤホン
- 端かドアの横に立つ(人との距離が取れます)
飲食店・カフェ
- 壁際か個室を選ぶ
- BGMの大きい店を避ける(自分の中で「行ける店リスト」を作っておくとラクです)
- ピークの時間を外す
家族の生活音
いちばん言いにくい相手ですが、言わないと続きます。
「テレビの音がつらいときがあるので、字幕にしてもらえると助かる」 「ごはんのときだけ、静かな環境がありがたい」
相手を責める形にしないのがコツです。
子どもの声
親御さんの場合、逃げ場がないのがつらいところです。
- 短時間でも一人になる時間を作る
- 耳栓をつけたまま過ごす(声は聞こえる程度に)
- 家族に「30分だけ代わって」と頼む
耳栓をしながら子どもを見ていても、問題ありません。 完全に音を消さなければ、呼びかけには気づけます。
特定の音だけどうしても無理
そしゃく音、鼻をすする音、ペンをカチカチする音。特定の音にだけ強い不快感が起きることがあります。
- 物理的に距離を取る
- 音を流してかき消す
- その人の近くの席を避ける
「気にしないようにする」はほぼ効きません。距離と道具で対処してください。
- 耳栓を常に持ち歩く(ポーチ、財布、カバンに1つずつ)
- ノイズキャンセリングイヤホンを充電しておく
- 混む時間を避ける
- 座る場所を選ぶ(壁側、出入口から遠い場所)
「持っている」というだけで安心感がちがいます。
人の声や生活音がつらい人へ/耳栓・イヤホンを「つけていいか」問題
耳栓・イヤホンを「つけていいか」問題
道具はあるのに、つけられない場面がある——これがけっこう大きな壁です。
職場でつけにくい
先に説明しておくのが確実です。
「集中したいときにイヤホンを使わせてもらっていいですか。音楽を聴きたいわけではなく、まわりの音を減らすためです。」
「音楽を聴いている」と誤解されるのが心配なら、耳栓かデジタル耳栓のほうが説明しやすいです。
話しかけられたときに気づけない
- 片耳だけにする
- 完全に消さず、音量を下げるタイプにする
- 「肩を叩いて呼んでください」と周りに言っておく
「呼ばれても気づかない人」と思われるのが不安なら、先に伝えておくと防げます。
見た目が気になる
耳栓は小さいので、髪で隠れることもあります。肌色や透明のものを選ぶと目立ちません。
学校・研修などでつけられない
一時的に耐えるしかない場面もあります。そのときは、
- 前もって疲れることを想定して、前後の予定を空ける
- 休憩のたびに、静かな場所へ行く
- 終わったあとの回復時間を確保する
「その場を乗り切る」より「あとで回復する」に重心を置いてください。
音がつらい日と、平気な日がある
同じ音でも、日によって耐えられたり耐えられなかったりします。これはおかしなことではありません。
つらくなりやすいのは、
- 寝不足のとき
- 人と会ったあと
- 疲れがたまっているとき
- 体調が悪いとき
波があることを前提に予定を組むと、崩れにくくなります。つらい日は予定を減らしていいです。
「昨日は平気だったのに」と自分を責める必要はありません。
同じ音でも、日によってつらさが変わります。 これは普通のことです。
- 疲れている日
- 寝不足の日
- すでに音を浴びたあと
つらい日は、量を減らしてください。 予定を減らす、早く帰る、静かな作業に切り替える。
くわしくは気づいたら限界になっている人へへ。
買う前に試す
高い道具を買う前に、まず0円でできることを試してください。
- 席を変える/場所を変える
- 時間をずらす
- 数百円の耳栓を試す
これで足りなければ、ノイズキャンセリングを検討する。この順番なら、無駄になりません。
家の音を減らす
家で回復できるかどうかで、翌日がまったく違います。
音の出どころを減らす
- テレビをつけっぱなしにしない
- 冷蔵庫や洗濯機を回す時間を変える
- 換気扇の音が気になるなら、使う時間を決める
反響を減らす
何もない部屋は、音が響きます。
- カーテンを厚くする
- ラグやマットを敷く
- クッションや布を増やす
布を増やすだけで、部屋の音がやわらかくなります。 数千円でできます。
扉や引き出しの音
閉まる音がつらいなら、緩衝材(クッションテープ)を貼ってください。100円ショップにあります。
人の声や生活音がつらい人へ/同居している人がいる場合
同居している人がいる場合
音を完全に消すのは無理です。時間で分けるのが現実的です。
「21時以降は、動画を見るときイヤホンにしてもらえると助かる」
「うるさい」ではなく「こうしてもらえると助かる」と言うのがコツです。相手を責める形にすると、話が進みません。
自分の逃げ場を作る
別室、押し入れ、車の中。どこでもいいので、静かになれる場所を1つ決めておいてください。
我慢しなくていい
「これくらいで」と思う必要はありません。
同じ場所にいても、受け取っている音の量は人によって違います。 あなたの感じ方が正しいです。
耳栓やイヤホンを使うことを、わがままだと思わないでください。 メガネをかけるのと同じことです。
痛みを感じるほどつらい、日常生活に支障が出ている。こういうときは、相談先の探し方をご覧ください。耳の病気が関係していることもあります。
我慢を続けても、たいてい慣れません。むしろ、疲れているときほどつらくなります。
疲れる → 音がつらくなる → もっと疲れる、という循環が起きます。
だから、やることは「慣れる」ではなく「減らす」です。
そして、音の負担は小さな問題ではありません。感覚の敏感さと暮らしにくさに関係があることや、外出のしづらさにつながることが、研究でも報告されています。
まず今日、これだけやってみる
- 数百円の耳栓を買って、カバンに入れておく
- いちばんつらい場所を1つ書き出して、席か時間を変えられないか考える
- 家でテレビをつけっぱなしにするのをやめてみる
合わなければやめていいです。 1つでも減れば、それだけラクになります。
よくある質問
家族の生活音がつらいです
時間で分けるのが現実的です。 「21時以降はイヤホンで」のように、具体的にお願いしてください。
「うるさい」ではなく「こうしてもらえると助かる」と言うのがコツです。相手を責める形にすると、話が進みません。
特定の音だけどうしても無理です
咀嚼音、キーボードの音、時計の秒針など、特定の音だけ強くつらいことがあります。
- その音がしない場所に移る
- 別の音でかき消す(雨音、扇風機)
- 耳栓をする
我慢して慣れることは、あまり期待できません。 距離を取ってください。
外出先ではどうすればいいですか
耳栓を常に持ち歩いてください。 ポーチ、財布、カバンに1つずつ入れておくと、いざというときに使えます。
混む時間を避ける、壁側に座る、出入口から離れる。座る場所を選ぶだけでも変わります。
関連する困りごと
- 集中できない → まわりの音が気になって集中できない人へ
- 光がまぶしい → まぶしくてつらい人へ
- 感覚全般がつらい → 感覚過敏で生活がつらい人へ
- 外出後に動けない → 外出したあと2日動けない人へ
まとめ:音のつらさを減らす5つ
- 100円の耳栓から試す
- 効いたら、ノイズキャンセリングイヤホンを検討する
- 家に布を増やして、反響を減らす
- つらい日は、量を減らす
- 職場には「聞き漏らしが減ります」と伝えて相談する
我慢して慣れるものではありません。
この記事について
ASD(自閉スペクトラム症)のある人では、感覚が過敏になることがあると、国内の研究で整理されています。感覚の敏感さと暮らしにくさの関係を扱ったレビューや、感覚の負担が外出のしづらさにつながることを示した研究もあります。
ホワイトノイズやピンクノイズについては、主に子どもと若者を対象にした研究があります。大人やブラウンノイズ、音楽については分かっていません。
そのうえで、ここに書いた道具や環境の工夫は、研究で効果が確かめられたものではありません。 合うものだけ使ってください。
音のつらさで生活や仕事に支障が出ているときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「みんな平気なのに、なんで自分だけ」と思う必要はありません。感じ方はほんとうに人によって違います。道具で減らせるなら、減らしましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討自閉スペクトラム症に見られる感覚処理障害の臨床神経生理学
この研究でわかっていること:感覚の違いが「気のせい」でも「わがまま」でもないことの裏づけになります。
ここはまだ分かっていません:個別の対策グッズ(イヤーマフ等)の効果を調べた研究ではありません。
研究で検討感覚の処理のしかたと生活の質の関係:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Relationship between Sensory Processing and Quality of Life: A Systematic Review)
この研究でわかっていること:感覚の敏感さが暮らしにくさと関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:関係があるという話で、感覚の対策をすれば生活の質が上がるとまでは言えません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における感覚の処理と、地域での活動への参加
(原題:Sensory Processing and Community Participation in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:感覚の負担が外出のしづらさにつながることを、成人対象の研究として示せます。
ここはまだ分かっていません:「対策すれば外出できる」という実際に何かを試して調べた研究ではありません。
研究で検討ホワイトノイズやピンクノイズは、ADHDや注意の困りごとがある子ども・若者の課題成績を助けるか:たくさんの研究をまとめた分析と研究をまとめた分析
(原題:Systematic Review and Meta-Analysis: Do White Noise or Pink Noise Help With Task Performance in Youth With Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder or With Elevated Attention Problems?)
この研究でわかっていること:ノイズを流す方法は、試してみる価値があります。
ここはまだ分かっていません:調べたのは主に子どもと若者。大人やブラウンノイズ、音楽については分かりません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。