優先順位がつけられない人へ|何から手をつけるかの決め方
— 全部が同じ重さに見えるとき、外側にルールを置きます
ポイント
- 全部が同じ重さに見えるのは、頭の中だけで比べようとしているからです
- 「重要そう」で決めない。締め切りと、人を待たせているかで機械的に決めます
- 今日やる3つだけを紙に書く。それ以外は今日は見ません
目次を開く(17項目)
やることが5つある。どれも大事に見える。どれから手をつけていいか分からない。
考えているうちに時間が過ぎて、結局いちばん簡単なものだけやって一日が終わる。あるいは、何も手につかないまま夕方になる。
「全部が同じ重さに見える」というのは、けっこう多い困りごとです。
この記事では、自分の感覚で決めるのをやめて、ルールに決めてもらう方法を書きます。
なぜ順番が決められないのか
頭の中だけで比べようとしている
5つのタスクを頭の中で並べるには、5つ全部を同時に覚えておく必要があります。これはかなり負担が大きい作業です。
書き出すだけで、かなりラクになります。 頭の中の作業を、紙に外に出すということです。
「重要度」で決めようとしている
「どれがいちばん重要か」を考えると、答えが出ません。重要かどうかは、見る角度で変わるからです。
重要度で決めるのをやめてください。 もっと機械的な基準を使います。
大きさがバラバラのまま比べている
「メールを1本返す」と「企画書を作る」を並べて比べても、意味がありません。大きさがちがうからです。
大きいタスクは、先に割ってください。やり方は大きい仕事を前に固まってしまう人へに書きました。
全部が「急ぎ」に見えている
まわりから来る依頼は、全部「急ぎ」の顔をしてやってきます。でも本当に急ぎなのは、そのうちの一部です。
【手順1】まず全部書き出す(5分)
紙でもスマホのメモでもいいので、いま抱えているものを全部書きます。
- 仕事のこと
- 家のこと
- 手続きのこと
- 「そのうちやらなきゃ」と思っていること
頭の中に置いておかないでください。 書き出すだけで、量が思ったより少ないと分かることがあります(逆に多すぎて驚くこともありますが、それも分かったほうがいいです)。
【手順2】3つの質問で機械的に並べる
書き出したものに、上から順にこの質問をしていきます。考え込まないでください。1個5秒です。
質問1:「今日やらないと、誰かに迷惑がかかるか?」
はい → 最優先
人を待たせているものは、いちばん先です。自分の作業が遅れるより、他人の作業が止まるほうが影響が大きいからです。
- 自分の返事待ちで相手が動けないもの
- 自分が出さないと次の人が始められないもの
- 今日中に返事をすると約束したもの
質問2:「締め切りが今日か明日か?」
はい → 2番目
締め切りが近いものです。自分の感覚ではなく、日付で決めます。
質問3:「5分で終わるか?」
はい → すきま時間にやる
5分で終わるものは、順番を考えるより先にやってしまったほうが速いです。考えている時間のほうが長いこともあります。
- 短い返信
- 承認ボタンを押す
- 予約の電話(内容が決まっているもの)
残り → 今日はやらない
質問1〜3のどれにも当てはまらないものは、今日は見ません。 明日また同じ質問をします。
【手順3】今日やる3つだけを書く
並べ終わったら、上から3つだけを別の紙に書いてください。
そして、それ以外のリストはしまってください。 見えていると気になります。
なぜ3つか。 4つ以上あると、また「どれから?」が始まるからです。3つなら、上から順にやるだけです。
3つ終わったら、リストを出してまた3つ選びます。終わらなくても問題ありません。 3つのうち1つでも終われば、進んでいます。
判断に迷ったときの追加ルール
上の3つの質問で決まらないときのための、追加のルールです。
人を待たせているものが複数あるとき
待たせている時間が長い順にします。3日待たせている人が先です。
締め切りが同じ日に複数あるとき
時間がかかるほうを先にします。短いほうは後ろに詰められますが、長いほうは詰められません。
上司から2つ言われたとき
聞いてください。 「AとB、どちらを先にやりましょうか」と。
自分で決めなくていいことは、決めない。 これも大事なやり方です。
やりたくないものが後ろに残り続けるとき
自分で選ぶと、やりたくないものは永遠に残ります。そういうものは、朝いちばんに置いてしまうのが確実です。
「今日いちばん最初に、いちばんやりたくないものを1つ」と決めておくと、あとがラクになります。
気が乗るものだけやってしまうとき
これは自然なことです。ただ、それだけだと締め切りのあるものが残ります。
「気が乗るもの1つ」と「やらなきゃいけないもの1つ」を交互にやるという決め方もあります。ごほうびを交ぜる感じです。
優先順位がつけられない人へ/割り込みが来たときの判断
割り込みが来たときの判断
順番を決めても、途中で仕事が飛び込んできます。そのときの決め方です。
その場で引き受けない
「はい、やります」と即答すると、いまやっていることが崩れます。
「いま◯◯をやっているのですが、どちらを先にしましょうか」
判断を相手に渡すのがコツです。相手が「そっちが先でいい」と言えば、こちらは何も失いません。
「いつまでですか」を必ず聞く
急ぎに見えても、聞いてみると来週でよかった、ということがよくあります。
メモだけ取って続ける
すぐやらなくていいものは、メモに書いて、いまの作業に戻ります。 頭の中に置いておくと、そちらが気になって手が止まります。
作業が飛んでしまう問題は話しかけられると作業が全部飛ぶ人へにくわしく書きました。
場面別|こういうときはこう決める
メールがたまっていて、どれから返すか分からない
相手を待たせている順です。日付の古いものから開いてください。
内容の重さで選ぼうとすると、重いものが永遠に残ります。返信そのものが滞る問題はメールの返信がどんどんたまる人へに書きました。
家事が全部たまっている
「明日困る順」で決めます。
- 明日着る服がない → 洗濯
- 明日食べるものがない → 買い物
- 足の踏み場がない → 床のものを拾う
- その他 → 今日はやらない
きれいにするためではなく、明日を回すために選びます。
手続きが何個もたまっている
期限が決まっているものが先です。役所の手続き、更新、支払い。
期限のないもの(そのうちやろうと思っていること)は、いったんリストの外に出してください。
仕事もプライベートも詰まっている
リストを分けないでください。 1つのリストに全部入れて、同じ質問で並べます。
分けると、片方だけ見て「今日は空いている」と思ってしまいます。
やることが多すぎて、書き出す気力もない
まず1つだけ書いてください。 いま頭の中でいちばん重いもの、1つだけ。
そしてそれをやる。全部を整理してから始めようとすると、整理で力尽きます。
締め切りをもう過ぎているものがある
それを最優先にしてください。 そして、まず相手に連絡します。
「遅れています。◯日までに出します」の1行を先に送る。作業より先です。
「全部やらなきゃ」から降りる
順番がつけられない人の多くは、全部やろうとしています。
でも実際には、次のどれかになります。
| 種類 | どうするか |
|---|---|
| やらなくても誰も困らない | やらない |
| 自分じゃなくてもいい | 渡す・頼む |
| 減らせる | 60点でいいものは60点で出す |
| 遅らせられる | 相手に相談して、期限を延ばす |
| 本当に自分が今日やる | やる |
いちばん上の「やらない」を選べるようになると、かなりラクになります。
そして、予定を入れすぎている場合は、そもそも量の問題です。予定を入れすぎて後で潰れる人へも見てみてください。
続けるための小さな工夫
紙に書く
アプリより紙のほうが向いている人はけっこういます。見開きで全部見えるのが強みです。
終わったら線を引く
達成感が目に見えます。消すのではなく、線を引いて残しておくと、やった量が見えます。
朝の5分を「並べる時間」にする
毎朝、席についたら5分だけ。今日の3つを決めます。やる前に決めるのがポイントで、やりながら決めようとすると決まりません。
前の日の夜に決めておく
朝に決めるのがつらい人は、前の日の夕方に決めてしまう手もあります。明日いちばん最初にやることを1行書いておくだけでも変わります。
「重要」を判断しない
優先順位で止まる人の多くは、「どれが重要か」を考えようとして固まっています。
重要さは、あとから分かることが多いです。判断しなくていい方法を使ってください。
締切が近い順に並べる
これだけで、8割は決まります。
「重要かどうか」ではなく「いつまでか」。 事実なので、迷いません。
5分で終わるものを先に片づける
小さいタスクが残っていると、それが気になって他が進みません。
5分以内で終わるものは、考えずに先に処理する。 リストが短くなると、残りが見えやすくなります。
優先順位がつけられない人へ/3つに絞る
3つに絞る
一日にやることは、3つまでにしてください。
多く書くほど、達成できずに落ち込みます。3つなら、終わります。
朝に3つ書く
紙でも付箋でもいいです。目に入るところに置いてください。
- 見積もりを送る
- 会議の資料を1枚作る
- 病院に電話する
終わったら消す
消す動作が、次に進む合図になります。
3つ終わったら、その日は成功
それ以上やってもいいですが、やらなくてもいいです。
人に決めてもらう
自分で決められないなら、聞いてしまうのがいちばん速いです。
「AとB、どちらを先にやったほうがいいですか。」
丸投げではありません。 選択肢を出して聞くのは、仕事のやり方として正しいです。
上司も「どっちでもいい」と思っていることが多く、5秒で答えが返ってきます。 一人で30分悩むより、はるかに速いです。
「やらないこと」を決める
全部やろうとするから、決められません。削るほうを決めてください。
- 今週やらないと決めるもの
- 誰かに頼むもの
- そもそもやめるもの
「これは来週」と書いて、リストから外すだけで、頭が軽くなります。
リストが長くなりすぎたとき
やることリストが20個以上あるなら、それは見るたびに気力を削るリストです。
分ける
- 今日やる(3つまで)
- 今週やる
- いつかやる
「いつかやる」は、見なくていい場所に置いてください。消さなくていいです。 隠すだけで効きます。
定期的に捨てる
月に1回、リストを見て、もうやらないものを消してください。
3か月動いていないタスクは、たいていやりません。
判断そのものが重いとき
疲れていると、優先順位を決める力が落ちます。
そういう日は、決めなくていいです。
- リストの上から順にやる
- 5分で終わるものだけやる
- 誰かに「今日は何をやればいい?」と聞く
決めるのを休む日があっていいです。
くわしくは気づいたら限界になっている人へへ。
まず明日、これだけやってみる
- 朝いちばんに、やることを全部書き出す(5分)
- 「今日やらないと誰かに迷惑がかかるか?」だけで並べる
- 上から3つだけ、別の紙に書いて、他はしまう
3つのうち1つ終われば、その日は成功です。全部終わらせようとしないでください。
この記事について
大人のADHDに対して、時間の使い方や整理・計画のやり方を練習する方法を調べた研究があります。そこでは、うっかりしやすさが改善したと報告されています。優先順位をつけるのが苦手なことは、性格の問題ではなく練習や工夫でどうにかできる分野として扱われています。
また、作業を切り替えるときには手間がかかることも研究で整理されています。あれこれ考えながら並べようとすると疲れるのは、当然のことです。
そのうえで、ここに書いた3つの質問や「今日は3つだけ」というやり方は、研究でそのまま確かめられたものではありません。 現場でよく使われている方法を、使いやすい形に整理したものです。合わなければ、別のやり方を試してください。
仕事の量そのものが多すぎる、いつも間に合わない、という状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
やることが10個あると、10個ぜんぶが同じ大きさに見えるんですよね。そういうときは、自分の感覚で並べようとしないほうがいいです。ルールに決めてもらいましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDに対するメタ認知療法の効果
(原題:Efficacy of Meta-Cognitive Therapy for Adult ADHD)
この研究でわかっていること:時間管理・整理・計画のスキルの練習が成人ADHDのうっかりしやすさを減らしうると言えます。
ここはまだ分かっていません:個々の道具(付箋・アプリ等)単独の効果を調べたものではありません。
研究で検討大人の注意欠如多動症の認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)
この研究でわかっていること:整理・計画・先延ばしを「性格」ではなく介入対象として扱う枠組みを示せます。
ここはまだ分かっていません:レビューであり、個々の生活術の効果量を示すものではありません。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。