締め切り直前まで動けない人へ|着手する日を決める
— 締め切りを書くだけのリストは、直前まで何も教えてくれません
ポイント
- 締め切りだけを管理すると、「まだ先」の期間が空白になって直前に全部が来ます
- 締め切りではなく「着手日」を予定に入れると、動き出せる確率が上がります
- 複数の案件が並んだら、締め切り順ではなく着手日順に並べます
目次を開く(18項目)
締め切りは知っている。カレンダーにも入っている。でも前日まで手が付かない。
そして徹夜して、なんとか間に合わせて、消耗する。「次はもっと早くやろう」と思うのに、次も同じことをする。
締め切りを落とす人には2タイプいます
対策が違うので、まず自分がどちらか確かめてください。
タイプ1:締め切り自体を忘れる
これは記憶の問題です。ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究があります。
対策は約束や予約をすっぽかしてしまう人へと同じで、予定の入り口を1本にすることです。
タイプ2:分かっているのに動けない
こちらのほうが多い相談です。締め切りは知っている。カレンダーにも入っている。それでも前日まで手が付かない。
ADHD症状と「あとでやることを覚えておく力」と先延ばしの関係を調べた研究では、この力の弱さが先延ばしを部分的に説明することが報告されています。
「やること自体は覚えているが、いつやるかが決まっていない」状態が、先延ばしを生んでいるということです。
だから、いつやるかを先に決めます。
【いちばん効く1つ】着手日を書く
タスクリストに書く内容を、こう変えます。
| よくある書き方 | 変えた書き方 |
|---|---|
| 9/10 企画書提出 | 9/3(火)10:00 企画書の構成を書く / 締切 9/10 |
| 9/15 経費精算 | 9/8(月)帰宅後 レシートを集める / 締切 9/15 |
| 9/20 資格の申込 | 9/5(金)昼休み 申込ページを開く / 締切 9/20 |
ポイントは3つです。
1. 着手日を、締め切りよりかなり前に置く
目安は、締め切りまでの期間の3分の1が過ぎたあたりです。
10日後が締め切りなら、3〜4日目に着手日を置きます。
2. 着手日の「最初の一歩」を書く
「企画書を作る」ではなく「構成を書く」。動作が小さいほど始められます。
くわしくは最初の一歩がどうしても踏み出せない人へへ。
3. 着手日をカレンダーのブロックとして入れる
タスクリストに書くだけだと、その日に見ないことがあります。カレンダーに「作業する時間」として入れてください。
行動を時刻や場面と結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
複数の案件が並んだら「着手日順」に並べる
締め切り順に並べると、いちばん近いものだけが目に入り、少し先の仕事が見えなくなります。
そして見えなくなった仕事は、期限の前日に突然戻ってきます。
着手日順に並べると、「今週やること」が正しく見えます。
締め切りが遠くても、量が多いものは着手日が手前に来ます。これが本来見たかった情報です。
「量」を先に測る
着手日を決めるには、どれくらいかかるかの見当が要ります。
でも見積もりはずれるので、着手日には「作業する」ではなく「量を測る」を置くという手があります。
量を測る作業の例
- 資料に目を通して、必要なページ数を数える
- 必要な作業を箇条書きにする(5行でいい)
- 誰かに確認しないと進まない部分を洗い出す
- 前回同じことをやったときの記録を見る
1時間で終わると思っていたものが実は6時間かかると分かるのは、早いほど助かります。
途中で見せる
締め切り前に一度、3割の状態で見せてください。
「途中ですが、この方向で合っていますか?」
方向がずれていたら、この時点で分かります。 完成してから直すより、はるかに軽く済みます。
そして、見せる予定を先に入れておくと、そこが中間の締め切りになります。締め切りが2つあるほうが、動き出しやすくなります。
締め切り直前まで動けない人へ/締め切りが自分だけのものだと守れない
締め切りが自分だけのものだと守れない
「自分で決めた締め切り」は、いくらでも後ろにずらせます。
人に言う
「◯日に出します」と誰かに伝えると、動く理由ができます。
誰かと共有する
進捗を報告する相手を1人決めておく。週に1回、1行送るだけでも効きます。
予約を入れる
打ち合わせや面談を入れてしまうと、その日までに形にする必要が生まれます。
落としそうになったとき
早く言う
前日に「間に合いません」と言うのと、3日前に言うのとでは、相手の選択肢がまったく違います。
3日前なら、手伝ってもらう、期限を延ばす、範囲を減らす、といった手が打てます。
代案を1つ添える
「◯日までなら出せます」 「一部だけ先に出せます」 「品質を落としてよければ間に合います」
「できません」だけだと、相手も困ります。
理由を長く説明しない
相手が知りたいのは、いつ出るかです。
落としたこと自体より、報告の遅さが信用を失う
これは覚えておいてください。落とすこと自体は、誰にでもあります。 黙っていることのほうが問題です。
すぐ連絡する
気づいた瞬間に。 早いほど、相手に手が打てます。
「◯◯の件、当初の予定より遅れそうです。現時点の見込みは△日です。申し訳ありません。」
「いつになるか」を必ず入れる。 これがないと、相手は待ち方を決められません。
途中まで出す
全部揃わなくても、できているところまで出すという選択肢があります。
「まだ完成していないので出せない」が、いちばん時間を失います。
締め切りを「やる日」に変える
カレンダーに締め切り日を入れても、その日には間に合いません。
入れるのは、「やる日」です。
| ✗ | ○ |
|---|---|
| 10/31 提出締切 | 10/25 提出する |
| 10/31 締切 | 10/20 一通り書く |
| 10/15 材料を集める |
逆算した日付を、全部入れてください。
締め切り日そのものも入れておきますが、行動する日は別に立てるのがポイントです。
自分の締め切りを3日前にする
本当の締め切りの3日前を、自分の締め切りにしてください。
- ずれても間に合います
- 見直す時間ができます
- 相手に早く出せて、印象もよくなります
「3日前に出す」と決めたら、本当の締め切り日は忘れていいです。
長い仕事の進め方
数週間かかる仕事は、途中で必ずずれます。
週に1回、確認の日を作る
「毎週金曜の16時に、進み具合を確認する」とカレンダーに入れてください。
ずれていたら、その時点で相談する。 締め切り直前に言うのが、いちばん迷惑をかけます。
最初の1日で「最後まで通す」
完璧でなくていいので、一度、最初から最後まで雑に作ってみてください。
- どこが難しいか分かります
- 足りない材料が分かります
- 残りは直すだけになります
最初から完璧に作ろうとすると、途中で止まります。
締め切り直前まで動けない人へ/直前にならないと動けないとき
直前にならないと動けないとき
「締め切り直前でないと集中できない」という人は多いです。
これは、無理に直さなくてもいいかもしれません。ただし、危険が大きすぎます。
締め切りを前倒しで作る
自分の締め切りを3日前にすれば、「直前」が3日前に来ます。 本番までに余裕が残ります。
人に締め切りを作ってもらう
「金曜に一度、途中経過を見ていただけますか。」
他人との約束は、自分との約束より強いです。
小さく区切る
大きい締め切りが1つより、小さい締め切りが5つあるほうが動けます。
くわしくはやることが大きすぎて手がつかない人へへ。
「締め切り直前のほうが集中できる」という人もいます。それ自体は悪いことではありません。
ただし、次のどれかが起きているなら、やり方を変えたほうがいいです。
- 徹夜して、翌日以降が使えなくなる
- 質が落ちて、やり直しになる
- 体調を崩す
- 家族や同僚に迷惑がかかる
直前型でいくなら、「直前」を人為的に作ってください。 中間の締め切りを設定して、そこで一度出す形にします。
締め切りのない仕事
期限が決まっていない仕事は、永遠に始まりません。
自分で締め切りを作って、人に宣言してください。
「金曜までに案を出します。」
言った時点で、締め切りができます。
まず今週、これだけやってみる
- いま抱えている締め切りを全部書き出す
- それぞれに「着手日」と「最初の一歩」を書き足す
- 着手日をカレンダーに入れる(締め切りではなく、着手日を)
締め切りを書くのをやめる必要はありません。 着手日を足すだけです。
締め切りを人と共有する
自分との約束は破れますが、他人との約束は守れます。
「金曜に一度、途中経過を見ていただけますか。」
見せる約束を先に作る。 これだけで、直前まで手がつかない問題がかなり減ります。
見せるものは、完成品でなくていいです。「ここまで作りました」で十分です。
よくある質問
締め切りを前倒しにしても、結局その日にやります
それでいいです。 3日前にやれば、本番までに直す時間が残ります。
複数の締め切りが重なっています
着手日で並べてください。締め切り順ではなく、始める日の順です。
締め切りがない仕事が進みません
自分で締め切りを作って、人に宣言してください。 言った時点で締め切りができます。
締め切りが多すぎて、全部は無理です
着手日で並べて、上から3つだけやってください。
全部を同時に進めようとすると、全部が中途半端になります。
関連する困りごと
-
始められない → 最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ
-
見積もりがずれる → 「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へ
-
タスクが大きすぎる → やることが大きすぎて手がつかない人へ
-
先延ばししてしまう → やらなきゃと思うほど動けない人へ
-
予定を詰め込みすぎる → 予定を詰め込みすぎる人へ
-
約束を忘れる → 約束を忘れて信用をなくす人へ
「間に合わないかも」と思った時点で言うのが、いちばん迷惑をかけません。
まとめ:締め切りを守る5つ
- 締め切り日ではなく「着手日」をカレンダーに入れる
- 自分の締め切りを、本当の締め切りの3日前にする
- 最初の1日で、雑でいいので最後まで通す
- 途中で見せる約束を作る
- 遅れそうなら、気づいた瞬間に「いつになるか」を伝える
1番と2番だけでも、落とす回数がかなり減ります。
この記事について
ADHD症状と「あとでやることを覚えておく力」と先延ばしの関係を調べた研究では、この力の弱さが先延ばしを部分的に説明することが報告されています(横断的に調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません)。
成人ADHDに対して、時間の使い方や整理・計画のスキルを練習する方法を調べた研究では、うっかりしやすさの改善が報告されています。整理・計画・先延ばしは、大人のADHDに対する心理的な治療が扱う分野のひとつです。
行動を時刻や場面と結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
そのうえで、「着手日順に並べる」「締め切りまでの3分の1の地点」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 目安として使ってください。
締め切りが守れないことで仕事がつらい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
締め切りを書いただけのリストは、締め切り当日まで何も教えてくれません。書くべきは「いつ始めるか」です。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討「あとでやることを覚えておく力」は、ADHD症状と先延ばしの関係を部分的に説明する
(原題:Prospective memory (partially) mediates the link between ADHD symptoms and procrastination)
この研究でわかっていること:先延ばしの一部が「やること自体を思い出せない」ことに由来しうると言えます。
ここはまだ分かっていません:横断的な関連が中心。対策の効果を示すものではありません。
研究で検討成人ADHDに対するメタ認知療法の効果
(原題:Efficacy of Meta-Cognitive Therapy for Adult ADHD)
この研究でわかっていること:時間管理・整理・計画のスキルの練習が成人ADHDのうっかりしやすさを減らしうると言えます。
ここはまだ分かっていません:個々の道具(付箋・アプリ等)単独の効果を調べたものではありません。
研究で検討大人の注意欠如多動症の認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)
この研究でわかっていること:整理・計画・先延ばしを「性格」ではなく介入対象として扱う枠組みを示せます。
ここはまだ分かっていません:レビューであり、個々の生活術の効果量を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。