やらなきゃいけないのに手がつかない人へ|先延ばしの止め方
— やる気を待っていると、一生始まりません
ポイント
- やる気は「始めたあと」に出てきます。待っていても来ません
- 手がつかないのは、最初の一歩が「動作」になっていないことが多いです
- 自分を責めても次は早くなりません。責める時間を、1行メモに使ってください
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やらなきゃいけないのは分かっている。締め切りも知っている。なのに手がつかない。
そして直前になって一気にやって、消耗する。終わったあとに「もっと早くやればよかった」と思う。次もまた同じことをする。
このループにいる人は多いです。そして、自分を責めても、次のループは止まりません。
この記事では、やる気に頼らないで始めるやり方を書きます。
先延ばしの正体は「やりたくない」だけじゃない
先延ばしというと「面倒だから避けている」と思われがちですが、実際にはもっと単純な理由が混ざっています。
1. その瞬間、頭になかった
いちばん多いのがこれです。避けていたのではなく、思い出していなかった。
ADHDのある人では、「あとでやることを覚えておく力」の弱さが、先延ばしの一部を説明するという研究があります。やりたくないのではなく、頭に浮かばなかっただけ、ということがけっこうあります。
2. 最初に何をすればいいか決まっていない
「企画書を作る」というタスクがあったとき、最初にやる動作は何でしょうか。パソコンを開く? フォルダを作る? 前回の資料をさがす?
これが決まっていないと、その場で考えることになります。考えているあいだに、別のことに気が移ります。
3. 完璧にやろうとしている
「ちゃんとやらなきゃ」と思うほど、始めるのが重くなります。100点の完成形が頭にあると、0点の状態から始めるのが怖くなるからです。
4. 内容が分かっていない
「分からない」が正体のことがあります。分からないまま進めようとすると、どこかで必ず止まります。
5. 過去に嫌なことがあった
そのタスクで怒られた、失敗した。だから見るのもつらい。これは意志の問題ではありません。
自分がどれに当てはまるかで、対策が変わります。 全部が「やりたくない」ではありません。
やる気は「始めたあと」に来る
多くの人は、順番をこう思っています。
やる気が出る → 始める
でも実際には逆です。
始める → だんだん乗ってくる
「始めたら意外と続いた」という経験、ありませんか。あれです。
いちばん重いのは、始めるところです。 だから対策は「やる気を出す方法」ではなく、「始めるまでの手間を減らす方法」になります。
【始めるための7つのやり方】
1. 最初の一歩を「動作」まで小さくする
タスクリストに書いてあることは、たいてい動作ではありません。
| 書いてあること | 実際の最初の動作 |
|---|---|
| 企画書を作る | 前回の企画書のファイルを開く |
| 部屋を片づける | 床のものを1つ拾う |
| 確定申告 | 国税庁のサイトを開く |
| 病院に行く | 電話番号を検索する |
| メールを返す | メールを開いて、宛名だけ書く |
| 勉強する | テキストを机に出す |
右の列は、考えなくてもできることです。ここまで小さくすると、体が動きます。
2. 「5分だけ」で始める
「終わらせる」を目標にすると重すぎます。5分だけやると決めて、タイマーをかけてください。
条件が2つあります。
- 5分でやめていい。 本気でそう決めます
- 5分後に、続けるか決める
たいてい続きます。続かなかった日も失敗ではありません。5分ぶんは進んでいます。
3. 「いつ・どこで」を先に決める
「今週中にやる」は始まりません。日時と場所まで決めてください。
✗「今週中に企画書を作る」 ○「水曜の10時に、会議室で、前回の企画書を開く」
こうしておくと、その場で「いつやろう」と考えなくて済みます。考える余地があると、そこが先延ばしの入口になります。
4. 邪魔になるものを先にどける
始める直前に小さな障害があると、それだけで止まります。
- 机が散らかっている → 片づける工程が挟まる
- 必要なファイルがどこにあるか分からない → さがす工程が挟まる
- パスワードを忘れた → そこで終わる
- プリンタのインクがない → 買いに行くことになる
前の日に、必要なものを机に出しておく。 これだけで始めやすくなります。
5. 「終わりの形」を紙に書く
完璧を求めて始められないなら、60点の完成形を先に書いてください。
「A4で1枚。箇条書き5行。誤字があってもいい。」
どこまでやれば終わりかが見えると、始められます。
6. 誰かがいる状態を作る
一人だと始められないけど、人がいると始められる。この人はけっこう多いです。
- カフェや図書館に行く
- 友だちとビデオ通話をつないだまま、それぞれ作業する
- 「これから30分やります」と誰かに宣言する
くわしくは一人だとまったく進まない人へに書きました。
7. 順番を変える
いちばん重いタスクから始めようとすると、そこで止まります。軽いものを1つ終わらせてからのほうが、勢いがつくことがあります。
逆に「軽いものばかりやって重いものが残る」タイプの人は、朝いちばんに重いものを置くほうが合います。自分がどちらか、試してみてください。
種類別|先延ばししやすいものへの対処
電話をかけるのが先延ばしになる
- 話す内容を紙に書いてからかける。 3行でいい
- 「◯◯の件でお電話しました」の1行目だけ決めておく
- 予約や問い合わせは、ネットでできないか先に調べる
電話は「その場で考えて話す」必要があるので、負担が大きいタスクです。避けたくなるのは自然です。
事務手続きが先延ばしになる
- 必要な書類を1か所に集めるところまでを、1回目の作業にする
- 分からない項目があったら、そこで止めずに空欄にして進む
- 窓口に電話して「何を持っていけばいいですか」と聞くのを最初の一歩にする
人に謝る・報告するのが先延ばしになる
これがいちばん、遅れるほど悪化します。
- 文面を先に書く。送るのはあと
- 「事実→影響→どうするか」の3行でいい
- 完璧な文面を目指さない
言い方は報告・連絡のタイミングが分からない人へに書きました。
掃除・片づけが先延ばしになる
- 「片づける」ではなく「床のものを1つ拾う」から
- タイマーを15分にセットして、鳴ったらやめる
くわしくは部屋が片づかない人へへ。
勉強が先延ばしになる
- テキストを開くところまでを目標にする
- 机に向かえない日は、スマホのアプリだけやる
- 「今日は5分」を許可する
くわしくは資格の勉強が続かない人へへ。
病院に行くのが先延ばしになる
- 電話番号を検索するだけ、を今日の目標にする
- ネット予約ができるところを選ぶ
- 予約は「いちばん近い日」で取る。先の日にすると忘れます
自分が何を先延ばしにするか、パターンがあります。
| 種類 | 対策 |
|---|---|
| 電話をかける | 話す内容を1行書いてからかける |
| 病院を予約する | ネット予約できるところを選ぶ |
| 書類を書く | その場で書く。持ち帰らない |
| 人に断る | 「確認します」で時間をもらう |
| 大きい仕事 | 小さく割る |
「気が重いこと」ほど先延ばしになります。 そこだけ、対策を厚めにしてください。
一日のどこに置くかを決める
同じタスクでも、置く時間帯で難易度が変わります。
朝いちばん
頭がいちばん働く人が多い時間です。考える必要がある仕事はここに置きます。
ただし朝に弱い人は逆です。自分がどっちかを、1週間観察してみてください。
昼食のあと
多くの人が眠くなる時間です。考えなくてもできる作業(整理、入力、片づけ)を置くと合います。
夕方
疲れているので、判断のいる仕事は向きません。明日の準備をここに置くと、翌朝がラクになります。
夜
やる気が出ないのが普通です。「やらない」と決めておくほうが、罪悪感が減ります。
「夜にやる」と決めて毎晩できていないなら、それは計画のほうを変えたほうがいいです。
やらなきゃいけないのに手がつかない人へ/環境側を変える
環境側を変える
自分の意志を鍛えるより、まわりを変えるほうが早いです。
誘惑を物理的に遠ざける
- スマホを別の部屋に置く(作業中につい スマホを触ってしまう人へ)
- 動画アプリの自動再生を切る
- 作業する場所と、くつろぐ場所を分ける
始める場所を固定する
「この机ではこの作業をする」と決めておくと、座っただけで切り替わりやすくなります。
家だと難しい人は、外に出るのがいちばん早いことがあります。カフェ、図書館、コワーキングスペース。
締め切りを人と共有する
自分だけの締め切りは、いくらでも後ろにずらせます。人に「◯日に出します」と言ってしまうと、動く理由ができます。
誰かに聞いてもらう
「今日これをやる」と朝に誰かに送って、夜に「できた/できなかった」を報告する。それだけでも変わることがあります。
どうしても動けない日のために
動けない日は必ず来ます。そういう日のために、最低ラインを決めておいてください。
最低ライン:ファイルを開くだけ
これなら10秒です。開いて閉じてもいい。ゼロにしないことが大事です。
3日連続でゼロにすると、そのタスクは「見たくないもの」になります。1日1回、10秒でも触っておくと、心理的な重さが増えにくくなります。
それでも動けないときは、別の原因かも
- 何をやってもだるい、起き上がれない
- 好きだったことも楽しくない
- そういう状態が2週間以上続いている
こういうときは、先延ばしの工夫の話ではありません。相談先・公的窓口から、話を聞いてもらえる場所を探してください。
自分を責めるのをやめる
先延ばしをしたあと、多くの人は自分を責めます。でも、責めることで次回が早くなるという話は聞いたことがありません。
むしろ、罪悪感が強いほど、そのタスクを見るのがつらくなって、さらに避けるようになります。
責める時間があるなら、次に始めるときの最初の動作を1行書いてください。 そのほうが実利があります。
「次:3章の図を差し替える」
これがあるだけで、次に開いたときの重さが変わります。
夜ふかしとセットになっているとき
「やることを後回しにして、夜になって焦って、寝るのが遅くなって、翌日つらくて、また後回しになる」
この循環にはまっているなら、先延ばしの対策より先に、寝る時間を整えるほうが早いことがあります。ADHD傾向と先延ばしと睡眠が関係しているという国内の報告もあります。
夜、眠れない人へ、朝どうしても起きられない人へも見てみてください。
「あとで」を物理的に潰す
5分だけやる
タイマーを5分にセットして、5分だけやります。
5分で終わっていいです。続けたければ続けてください。
「終わりが見えている」と、始めやすくなります。
最初の1動作まで小さくする
「資料を作る」ではなく、「ファイルを開く」。
2分以内でできることまで小さくしてください。
くわしくはやることが大きすぎて手がつかない人へへ。
すでにやっていることの直後に置く
- コーヒーを入れたら、机に向かう
- 昼ごはんを食べ終わったら、5分だけやる
新しい習慣は、既存の習慣にくっつけると定着します。
くわしくは「〜したら〜する」で行動が変わるへ。
やらなきゃいけないのに手がつかない人へ/人を使う
人を使う
自分との約束は破れますが、他人との約束は守れます。
- 「金曜に途中経過を見てもらえますか」と頼む
- 誰かと同じ時間に作業する(誰かがいると作業できる人へ)
- 「◯日までにやります」と宣言する
言った時点で、締め切りができます。
締め切りを前倒しする
直前にならないと動けないなら、締め切りそのものを前に置いてください。
- 自分の締め切りを、本当の締め切りの3日前にする
- そこに向けて動く
「直前」が3日前に来るので、本番までに余裕が残ります。
くわしくは締め切りをいつも守れない人へへ。
先延ばししてしまったあと
責めない
自分を責めると、その分だけ動けなくなります。
「今日は開くだけできた」と数えてください。
遅れそうなら早く言う
「◯◯が遅れそうです。現時点の見込みは△日です。」
早く言うほど、相手に手が打てます。
やらないと決める選択肢もある
先延ばしにしているもののうち、いくつかは「やらなくていいこと」です。
3か月動いていないものは、リストから外していいか一度考えてみてください。
それでも動けないとき
- 何週間も何もできない
- 気分の落ち込みが2週間以上続く
- 眠れない、食べられない
こういうときは、先延ばしの問題ではないかもしれません。相談先の探し方をご覧ください。
まず今日、これだけやってみる
- いちばん気になっているタスクを1つ選ぶ
- その「最初の動作」を1行書く(考えなくてもできることまで小さく)
- タイマーを5分にセットして、その動作だけやる
5分たったらやめていいです。始まりさえすれば、今日は勝ちです。
この記事について
ADHDのある人では、「あとでやることを覚えておく力」の弱さが、先延ばしの一部を説明するという研究があります。避けていたのではなく、思い出していなかっただけ、ということがあるということです。
また、「もし〜したら〜する」ときっかけと行動をセットで決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。この記事の「いつ・どこで」を決める話は、ここから来ています。
整理や計画、先延ばしは、大人のADHDに対する心理的な治療が扱う分野のひとつです。性格の問題ではなく、工夫の対象として扱われています。
そのうえで、ここに書いた具体的なやり方は、全部が研究で確かめられているわけではありません。 合わないものは飛ばしてください。
先延ばしのせいで生活や仕事がまわらない状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「明日の自分がやってくれる」と思うのは、明日の自分に会ったことがないからです。来るのは今日と同じ自分です。だから今日の自分でもできる形にしましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討「あとでやることを覚えておく力」は、ADHD症状と先延ばしの関係を部分的に説明する
(原題:Prospective memory (partially) mediates the link between ADHD symptoms and procrastination)
この研究でわかっていること:先延ばしの一部が「やること自体を思い出せない」ことに由来しうると言えます。
ここはまだ分かっていません:横断的な関連が中心。対策の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
研究で検討大人の注意欠如多動症の認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)
この研究でわかっていること:整理・計画・先延ばしを「性格」ではなく介入対象として扱う枠組みを示せます。
ここはまだ分かっていません:レビューであり、個々の生活術の効果量を示すものではありません。
研究で検討ADHD傾向者における先延ばし行動が睡眠に及ぼす影響の検討
この研究でわかっていること:先延ばしと睡眠が結びついていることの示唆になります。
ここはまだ分かっていません:学会抄録であり、因果関係を示すものではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。