一人だとまったく進まない人へ|だれかがいると動ける
— 研究はまだ薄い。でも試す価値はあります
ポイント
- 誰かが同じ空間にいる状態で作業する方法。当事者のあいだで広く共有されている
- ADHD成人を対象にこの方法だけを検証した研究は、現時点で見当たらない
- 国内には、外から伴走するコーチングで生活面の改善を報告した小規模研究がある
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ボディダブリング(body doubling)は、誰かが同じ場所にいる状態で作業を進める方法です。相手は何もしません。ただ隣にいる、あるいはオンラインでつながっているだけです。
当事者のあいだで広く共有されている方法ですが、この記事ではどこまでが根拠のある話なのかを先にはっきりさせます。
研究の状況を先に書きます
ボディダブリングそのものを、ADHDのある成人を対象に検証した研究は、現時点で見つけられていません。 「効果が実証されている方法」ではありません。
関連しそうな研究として、国内にはADHDのある成人10名にコーチングを行い、身辺管理などの日常生活上の困難に改善を報告した研究があります。ただしこれは10名・比較対照なしの予備的研究であり、コーチングはボディダブリングとは別の介入です。
したがってこの記事は「編集部で試行中」の内容です。効果を保証するものではありません。そのうえで、費用がほぼかからず、害も考えにくい方法なので、試す価値はあると考えています。
やり方
対面でやる
- 家族や友人に「隣で自分の作業をしていてほしい」と頼む
- カフェ、図書館、コワーキングスペースで作業する
- 職場なら、人の目がある席を選ぶ
相手に自分の作業を監視してもらう必要はありません。 相手は自分の作業をしていて構いません。
オンラインでやる
- ビデオ通話をつないだまま、お互いに自分の作業をする(会話はしない)
- 友人と時間を決めて「30分やります」と宣言し、終わったら報告する
- 有料のオンライン作業ルームサービスもあります(月1,000〜3,000円程度)
一人でやる代用
人を確保できないときの代用として、次のような方法もあります。ただし代用が同じように効くかどうかは分かりません。
- 作業配信の動画を流しておく
- タイマーを共有するタイプのアプリを使う
- 「これから◯◯をやります」とSNSや家族に宣言する
効きやすい場面・効きにくい場面
| 効きやすい | 効きにくい |
|---|---|
| 手順が分かっている単純作業 | 何をすればいいか分からない作業 |
| 始められないタスク | 内容が難しくて進まないタスク |
| 家だとダラダラしてしまうとき | 人の存在自体が気になるとき |
| 締め切りが遠くて緊張感がないとき | 感覚が過敏で人の音や気配がつらいとき |
| 片づけ、事務作業、勉強 | 深い思考が要る作業 |
人の気配が負担になる人には向きません。 カフェの音や人の動きがつらい場合は、無理に続けないでください。
感覚の負担については人の声や生活音がつらい人へをご覧ください。
頼むときの言い方
家族や友人に頼むとき、目的を説明しておくと続けやすくなります。
「作業中に隣にいてもらえると、なぜか手が動くんです。話しかけなくていいので、自分のことをしていてもらえませんか。」
監視してほしいのではないことを伝えるのが大事です。監視だと相手も気を使い、こちらも緊張します。
一人だとまったく進まない人へ/組み合わせると効きやすいもの
組み合わせると効きやすいもの
時間を区切る
「30分やって10分休む」と決めて始める。くわしくはポモドーロが続かない人へへ。
最初の動作を決めておく
相手が来る前に「最初にファイルを開く」まで決めておく。くわしくは最初の一歩がどうしても踏み出せない人へへ。
終わったら報告する
「できた/できなかった」を伝えるだけでも、区切りができます。
場所別
カフェ
人の目があり、適度な音があり、居られる時間に上限がある。 この3つがそろっているのが強みです。
ただし音がつらい人には向きません。
図書館
静かで無料。ただし飲食や通話ができないので、長時間には向かないことがあります。
自習室がある図書館なら、そちらのほうが集中しやすいです。
コワーキングスペース
作業する人しかいないので、集中しやすい環境です。月額または時間貸し。
「お金を払っている」こと自体が、動く理由になる人もいます。
家に来てもらう
いちばん気を使わずに済みます。片づけを手伝ってもらうときにも有効です。
職場
人の目がある席を選ぶ、上司の近くに座る。見られていると動くタイプの人には効きます。
逆に、見られていると緊張して動けない人もいます。自分がどちらかを試してみてください。
人を頼まなくても、人がいる場所に行くだけで同じ効果が出ることがあります。
- 図書館
- カフェ
- コワーキングスペース
- 職場の共有スペース
「見られているかもしれない」という状態が、そのまま働きます。誰とも話さなくて構いません。
どの場所が合うかは人による
- カフェの適度な音が合う人
- 図書館の静けさが合う人
- 人が多いと逆にダメな人
2〜3か所試して、いちばん進んだ場所を「作業場所」に決めてください。
音が気になる人はまわりの音が気になって集中できない人へもご覧ください。
オンラインでやるときのコツ
カメラはつけたほうがいいか
つけたほうが効く人と、つけないほうが集中できる人がいます。
つけるなら、顔ではなく手元を映すという手もあります。作業しているのが見えるだけで十分です。
会話はしない
始まりと終わりだけ挨拶して、あいだは無言。これがルールだと最初に決めておいてください。
話し始めると、そのまま雑談になります。
時間を決める
「30分やって10分休む」を2セット、のように終わりを決めて始めてください。
相手を選ぶ
気を使う相手だと、逆に消耗します。 沈黙が気まずくない相手を選んでください。
離れていてもできます。むしろ、こちらのほうが頼みやすいという人が多いです。
- ビデオ通話をつないだまま、それぞれ作業する
- カメラは顔でなく手元でもいい
- マイクはミュートでいい
同じ画面に人がいる、という状態だけで効きます。
一人でやる方法
相手がいなくても、近い効果を出せることがあります。
- 作業配信の動画を流しておく
- 「一緒に勉強する」形式の動画を使う
- 家族が別のことをしている部屋で作業する
人の気配があればいいという人には、これで足ります。
相手の負担にならないようにする
続けるには、相手にとっても負担が小さいことが条件です。
- 時間を決める(30分だけ、など)
- 相手にも自分の作業をしてもらう
- お礼を言う(毎回でなくていいですが、たまには)
- 相手が忙しいときは無理に頼まない
「付き合ってもらっている」という形にしすぎると、こちらも気を使って疲れます。 対等な形にしてください。
交換にする
「今度はこっちが付き合う」という形にすると、続きやすくなります。
相手が資格の勉強をしているなら、その時間に自分も作業する。お互いに得がある形が理想です。
一人だとまったく進まない人へ/家族に頼むとき
家族に頼むとき
いちばん頼みやすい相手ですが、関係が近いぶん揉めやすい面もあります。
- 「監視して」ではなく「同じ部屋にいて」と頼む
- 話しかけないでほしいことを、先に伝える
- 相手のやりたいことを邪魔しない
「テレビを見ていてくれていい」と言っておくと、相手も気楽です。
進み具合を聞かれるのが嫌なら、それも先に言ってください。 「終わったら報告するから、途中では聞かないで」で十分です。
続けるコツ
定例にする
「毎週火曜の20時から1時間」のように、曜日と時刻を固定すると続きます。
その都度連絡して調整するのは、面倒になってやめてしまいます。
短くする
2時間より、45分〜1時間のほうが続きます。相手の負担も小さいです。
始めと終わりに一言
始めに「今日はこれをやります」、終わりに「ここまでできました」。
1分ずつでいいです。 これがあると、区切りがはっきりします。
仕事以外にも使える
作業だけでなく、動き出せないこと全般に効きます。
- 部屋の片づけ(誰かに来てもらう日を作る)
- 病院に行く(付き添ってもらう)
- 書類を書く(誰かの前で書く)
- 運動(一人だと続かないが、人と約束すると行ける)
「一人だとできないこと」を、人がいる状態に移すだけです。
とくに片づけは効果が大きいです。人が来る日を決めると、部屋が片づくのは、多くの人が経験しているはずです。
くわしくは部屋がすぐ散らかる人へへ。
相手が見つからないとき
頼める人がいない、という場合もあります。場所と時間で代用してください。
- 図書館やカフェの、閉館・閉店時刻を利用する(終わりが決まっています)
- 人がいる時間に作業する(家族が起きている時間、職場に人がいる時間)
- 作業配信の動画を流しておく
「誰かと一緒」が無理でも、「人がいる状況」は作れます。
- 有料のオンライン作業ルームを使う(月1,000〜3,000円程度)
- 作業配信の動画を流しておく
- SNSで「これから30分やります」と宣言する
- 家族に「同じ部屋にいて」と頼む(何もしなくていい)
「監視してもらう」のではなく「同じ空間にいてもらう」だけです。ここを間違えると、お互いに疲れます。
よくある質問
頼むのが申し訳ないです
相手にも作業してもらう形にすると、対等になります。「一緒に作業する時間」として誘ってください。
時間を短く(30分〜1時間)区切るのも、相手の負担を減らすコツです。
人がいると逆に緊張します
合わない人もいます。 その場合は、環境を変える方向(机に向かっても気が散る人へ)や、始め方を変える方向(最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ)を試してください。
続きません
曜日と時刻を固定してください。 「毎週火曜の20時から1時間」のように。
その都度連絡して調整するのは、面倒になってやめてしまいます。
関連する困りごと
- 始められない → 最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ
- 先延ばししてしまう → やらなきゃと思うほど動けない人へ
- 片づけが進まない → 部屋がすぐ散らかる人へ
- 勉強が続かない → 勉強しなきゃと思うほど手がつかない人へ
まとめ:人を使って動き出す5つ
- 同じ時間に、それぞれ別の作業をする
- 時間を30分〜1時間に区切る
- 曜日と時刻を固定する
- 相手がいないときは、人のいる場所に行く
- 合わなければ、別の方法に切り替える
監視してもらう必要はありません。 同じ空間にいるだけで効きます。
この記事について
ボディダブリングそのものの効果を、発達障害のある成人を対象に検証した研究は、現時点で見つかっていません。 「効果が実証されている方法」ではありません。
関連しそうな研究として、国内にはADHDのある成人10名にコーチングを行い、身辺管理などの改善を報告した研究があります。ただし10名で、比べる相手のいない研究です。コーチングはボディダブリングとは別の方法でもあります。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
したがってこの記事は「編集部で試行中」の内容です。効果を保証するものではありません。ただ、費用がほぼかからず害も考えにくいので、試す価値はあると考えています。
合わなければ、別の方法に移ってください。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 編集部で試行中
- この工夫そのものを調べた研究は見つかっていません。仕組みとしては筋が通るので、小さく試してみてください。
研究で検討ADHDのある成人に対するコーチングの効果—10名のADHD成人への臨床研究
この研究でわかっていること:外から声をかけてもらう仕組み(伴走)に意味がありうる、と示唆できます。
ここはまだ分かっていません:10名で、比べる相手のいない研究です。効果の大きさは分かっていません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。