約束や予約をすっぽかしてしまう人へ|覚えておくのをやめる
— 大事な約束でも忘れます。大事さと記憶は別です
ポイント
- 予定を忘れるのは記憶の使い方の問題で、誠実さの問題ではありません
- 予定の入り口を1本にしないと、どれだけ通知を設定しても抜けます
- 通知は「その場で動ける時刻」に置きます。前日と直前の2段構えが実用的です
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歯医者の予約を忘れる。友人との約束が飛ぶ。会議の時間を間違える。
何度もやると、自分の誠実さを疑い始めます。「自分は人を大事にできない人間なんじゃないか」と。
でも、これは誠実さの話ではありません。
大事さと、思い出せるかどうかは別
成人ADHDを対象にした実験では、あとで行う予定を覚えておく力に困りごとが出やすいことが確かめられています。
「大事な約束なら忘れないはず」というのは、残念ながら成り立ちません。大事かどうかと、その瞬間に頭に浮かぶかどうかは、別の話です。
さらに、この力の弱さが先延ばしの一部を説明するという研究もあります。「やること自体を思い出せていない」状態が、先延ばしに見えていることがあります。
だから対策は、思い出さなくても済む形にすることになります。
【いちばん効く1つ】入り口を1本にする
予定が複数の場所に散っていると、どこかが必ず漏れます。
| 散りやすい場所 | どうするか |
|---|---|
| 紙の診察券に書かれた次回予約 | 受付を離れる前にスマホに入れる |
| メッセージアプリでの約束 | その場でカレンダーに入れる |
| 職場のグループウェア | 個人のカレンダーに同期するか、手で転記 |
| 頭の中 | 入り口として認めない |
| 机の付箋 | カレンダーかタスクリストへ移す |
カレンダーに入っていない予定は存在しない、というルールにしてください。
やり方は予定が抜ける人へにまとめました。
「その場で入れる」を徹底する
約束が決まった瞬間に入れます。「家に帰ってから入れる」は、まず失敗します。
病院・美容院の予約
受付でその場でスマホを出してください。 診察券に書いてもらった時点で満足すると、家に帰るころには存在ごと消えています。
紙の診察券を見返す機会は、次に行くときしかありません。
メッセージで日程が決まったとき
返信する前にカレンダーへ入れてください。 「了解です!」と返した瞬間に、その予定は完了したことになってしまいます。
会話中に決まったとき
「ちょっとカレンダーに入れますね」と言って、その場で入れてOKです。失礼にはなりません。
むしろ「ちゃんとしている人」に見えます。気まずさより、すっぽかしのほうが失礼です。
口約束は口約束のまま置かない
「来月あたり飲みましょう」のような曖昧な約束は、予定として数えなくていいです。
日付が決まったら入れる。それまでは何もしない。中途半端に覚えておこうとすると、消耗します。
忘れる原因のほとんどは、「あとで入れよう」です。
- 電話中でも、その場でカレンダーに入れる
- 立ち話でも、スマホを出して入れる
- 紙で予定をもらったら、その場で入れてから紙をしまう
「あとで」は来ません。
その場で出すのが気まずいとき
「予定を入れますね。少しお待ちください。」
一言添えれば、失礼になりません。 むしろ、きちんとした人に見えます。
通知は「動ける時刻」に置く
通知が来ても動けない時刻に鳴ると、消して終わりになります。そのとき何かできる時刻に設定してください。
2段構えが実用的
- 前日の夜(例:20時) 持ち物の準備、経路の確認、キャンセルが必要なら連絡ができます
- 当日の出発45分前 支度を始められます
「開始5分前」の通知だけでは、気づいた時点でもう遅刻が確定しています。
通知を減らす
通知が多すぎると、通知そのものを無視するようになります。本当に動く必要がある予定だけに絞ってください。
「毎日鳴っているが、実際には従っていない通知」は削除します。守れない通知が残っていると、通知全体の信頼度が下がります。
予定に「移動」も入れる
会議が14時なら、カレンダーには13時20分から「移動」という予定も入れます。
14時だけを見ていると、13時55分まで別の作業をしてしまいます。
所要時間の見積もりがずれやすい人ほど、この一手が効きます。くわしくは「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へへ。
準備の時間も入れる
外出する予定なら、支度の時間も予定として入れてください。「14時に出る」なら「13時30分から支度」。
予定と予定のあいだを空けておくと、崩れにくくなります。
約束や予約をすっぽかしてしまう人へ/種類別|忘れやすいものへの対処
種類別|忘れやすいものへの対処
数か月先の予約
いちばん忘れます。入れた瞬間に、前日と当日の通知を両方設定してください。
半年に1回の歯科検診などは、繰り返し予定として登録しておくのも手です。
毎月・毎年の手続き
支払い、更新、健康診断。繰り返し予定で登録すれば、以後は自動です。
年に1回のものほど忘れるので、必ず入れてください。
人との約束
相手がいるので、すっぽかしの被害がいちばん大きいです。
決まった瞬間に入れるを徹底してください。そして前日に相手に一言送ると、お互い確認になります。
子どもの行事
学校のプリントで来るものは、受け取った日にカレンダーへ入れてください。プリントは必ず埋もれます。
返却期限があるもの
図書館の本、レンタル、借りたもの。借りた瞬間に返却日を入れてください。
すっぽかしてしまったとき
やってしまうことはあります。そのときの動き方を先に決めておくと、被害が小さくなります。
気づいた時点ですぐ連絡する
遅れれば遅れるほど、言いにくくなります。 気づいた瞬間に送ってください。
理由を長く説明しない
「申し訳ありません、予定を失念していました。次回の日程をご相談させてください。」
これで十分です。長い言い訳は、かえって印象を悪くします。
同じ相手に2回目をやったら、仕組みを見直す
謝罪より、仕組みのほうが効きます。「次から気をつけます」を2回言ったら、それは効いていないということです。
通知の設定を変える、入り口を統一する。そのほうが実利があります。
自分を責めても再発は防げません
責める時間を、カレンダーの設定を直す時間に使ってください。
入れ方のルール
場所と連絡先まで書く
- 「◯◯さんと打ち合わせ」だけでは足りません
- 場所、時間、相手の連絡先、オンラインならリンクまで入れる
当日に探すことになるものを、全部入れておいてください。
通知を2つ入れる
- 前日の夜(準備できます)
- 開始の30分前(移動できます)
通知の名前は「打ち合わせ」ではなく、「家を出る」にしてください。
くわしくは予定をカレンダー1本にまとめるへ。
曖昧な約束を確定させる
「今度」「近いうちに」で終わる約束が、いちばん忘れられます。
その場で日付にする
「来週か再来週だと、いつが空いていますか。」
日付が決まらない約束は、実質ないのと同じです。
決まらないなら、決める日を決める
「来週の月曜にこちらから連絡します。」
そして、その連絡自体をカレンダーに入れてください。
忘れたときの対応
すぐ連絡する
気づいた瞬間に。 遅れるほど、相手の予定が崩れます。
「申し訳ありません、予定を失念していました。改めて日程をいただけますでしょうか。」
言い訳を長く書かない
理由の説明より、謝罪と、次にどうするかのほうが大事です。
同じ相手に繰り返さない
一度は許されても、繰り返すと信用に響きます。その相手との約束は、通知を3つにするくらいでちょうどいいです。
約束や予約をすっぽかしてしまう人へ/家族との約束
家族との約束
仕事の予定は入れるのに、家族との約束は入れない人が多いです。
- 家族の予定も同じカレンダーに入れる
- 共有カレンダーを作る
- 子どもの行事も入れる
「言ったよね」の喧嘩が減ります。
頼まれごとを忘れる
予定ではない「頼まれごと」も忘れます。
- 「これ買っておいて」
- 「◯◯さんに伝えておいて」
これも、その場でメモかカレンダーに入れてください。
期限のないものは、「今日やること」のリストに入れるのが確実です。
くわしくはメモを取っても結局見返さない人へへ。
まず今日、これだけやってみる
- いま頭の中にある予定を、全部カレンダーに入れる(30分)
- 通知を「前日の夜」と「当日の出発45分前」の2段構えにする
- 次に予定が決まったら、その場で入れる
完璧なカレンダーを作らなくていいです。 「頭の中に置かない」だけで、抜けはかなり減ります。
忘れやすい約束の型を知る
同じ種類の約束を繰り返し忘れているなら、そこだけ対策を厚くしてください。
| 忘れやすい約束 | 対策 |
|---|---|
| 「今度」で終わった約束 | その場で日付にする |
| 口頭だけの約束 | 復唱してから、その場で入れる |
| 数か月先の約束 | 前日と1週間前の2つ通知を入れる |
| 家族との約束 | 共有カレンダーに入れる |
| ついでの頼まれごと | その場でメモかリストに入れる |
復唱してから入れる
「では、来週の火曜10時に◯◯ですね。」
声に出して繰り返すと、記憶に残りやすくなります。 そして、相手の認識とずれていれば、その場で分かります。
よくある質問
その場でスマホを出すのが気まずいです
「予定を入れますね。少しお待ちください。」
一言添えれば失礼になりません。 むしろ、きちんとした人に見えます。
何度も同じ相手に迷惑をかけています
その相手との約束だけ、通知を3つにしてください。 前日、当日の朝、開始30分前。
忘れたことに気づいたのが翌日でした
それでも連絡してください。 黙って流すのが、いちばん信用を落とします。
通知が多すぎて全部無視してしまいます
2つに減らしてください。 前日の夜と、開始30分前。それ以外は切ります。
通知が多いほど、鳴っても動かなくなります。
関連する困りごと
-
カレンダーが使えていない → 予定をカレンダー1本にまとめる
-
会議に遅れる → 会議や約束の時間に間に合わない人へ
-
書類を出し忘れる → 書類の提出をいつも忘れる人へ
-
メモが機能しない → メモを取っても結局見返さない人へ
-
時間の見積もりがずれる → 「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へ
-
頼まれごとが処理できない → やることが大きすぎて手がつかない人へ
大事さと、思い出せるかどうかは別です。 忘れたのは、軽く見ていたからではありません。
この記事について
成人ADHDを対象にした実験では、あとで行う予定を覚えておく力に困りごとが出やすいことが確かめられています。予定を忘れるのは、意欲や誠実さの問題ではありません。
また、この力の弱さが先延ばしを部分的に説明するという研究もあります(横断的に調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません)。
行動をきっかけや時刻と結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
そのうえで、「通知を2段構えにする」「移動時間もカレンダーに入れる」といった具体的な設定は、研究で確かめられたものではありません。 合うものだけ使ってください。
すっぽかしが続いて人間関係や仕事がつらい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
すっぽかしたあとの気まずさは本当にこたえます。でも、覚えておこうと頑張るのは筋が悪い。カレンダーに覚えてもらいましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討「あとでやることを覚えておく力」は、ADHD症状と先延ばしの関係を部分的に説明する
(原題:Prospective memory (partially) mediates the link between ADHD symptoms and procrastination)
この研究でわかっていること:先延ばしの一部が「やること自体を思い出せない」ことに由来しうると言えます。
ここはまだ分かっていません:横断的な関連が中心。対策の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。