提出物や手続きを忘れてしまう人へ|紙は流すもの
— 紙は「持つもの」ではなく「流すもの」にします
ポイント
- 書類を出し忘れるのは、受け取った瞬間に「いつ出すか」が決まっていないから
- 受け取った直後の30秒で、締め切りをカレンダーに入れ、置き場所を1か所にする
- 書類は「保管する」より「早く手放す」ほうが失敗が少ない
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締め切りのある書類は、なくすと実害が出ます。手当の申請、更新の手続き、学校の提出物。「出したつもり」で期限が過ぎていた経験がある人向けの記事です。
なぜ紙だけ特別に危ないのか
紙には、スマホの予定と違って通知が来ません。 存在を思い出す手がかりが、目に入るかどうかしかありません。
そして成人ADHDでは、あとで行うことを覚えておく力に困難が出やすいことが実験で示されています。この力の弱さが先延ばしと部分的に結びついていることも報告されています。紙は「見えなくなった瞬間に、存在ごと消える」と考えたほうが実態に近いです。
【いちばん効く1つ】受け取った直後の30秒
紙を受け取ったら、その場で次の3つをやります。あとでやろうとすると、ほぼ確実に忘れます。
1. 締め切りをカレンダーに入れる
締め切り当日ではなく、3日前に入れます。当日に気づいても間に合わないことが多いためです。
2. 紙を1か所に置く
「提出待ちボックス」を作り、そこにだけ入れます。カバンにも机にも入れません。
3. 必要なら写真を撮る
紙を紛失しても、内容と締め切りは残ります。
30秒でできることばかりですが、受け取った直後にやることが条件です。
「提出待ちボックス」の作り方
A4が入る浅いトレイを1つ、必ず毎日見る場所に置きます。玄関のステーションか、いつも座る机の上です。
- 入れるのは、締め切りのある紙だけ。 説明書やチラシは入れません
- 提出したら即座に出す。 残っている=未提出、という状態を保ちます
- 週に1回、中身を全部見る。 日曜の夜など、時間を決めます
このボックスが埋まっているときは「やることが残っている」という意味になります。箱の中身の量が、そのままタスクの量を表すという状態を作るのが狙いです。
「もし◯◯なら出す」を決めておく
「もし〜したら〜する」と先に決めておくやり方は、目標を達成しやすくすると報告されています。
「明日の朝、玄関を出たら、ボックスの紙をカバンに入れる」 「駅に着いたら、ポストに入れる」
「今週中に出す」ではなく、いつ・どこで・何をするかまで決めてください。
デジタルで完結できるものは、そうする
役所の手続きの多くはオンライン申請ができるようになっています。
マイナポータルや自治体のサイトで、対象の手続きかどうかを一度確認してみてください。
紙をゼロにできなくても、1枚減れば1つ分のリスクが減ります。
会社の申請も、システム化されているものが増えています。紙で出す必要があるか、一度確認する価値があります。
出すまでの動線を短くする
書いてから出すまでに工程が多いほど失敗します。
| よくある詰まり | 対策 |
|---|---|
| 印鑑・切手が家にない | 切手を10枚まとめて買って、ボックスに一緒に入れておく |
| 封筒がない | 返信用封筒を捨てない。ないときは長形3号を数枚常備 |
| ポストに出しに行くのが面倒 | 通勤路にあるポストを1つ決めておく |
| コピー機の使い方が分からない | 一度落ち着いているときに試しておく |
| 書き方が分からない | 分からない欄は空欄で持っていき、窓口で聞く |
「あとで買えばいい」ものを、先に買っておくのが効きます。数百円で手間が1つ減ります。
「出す」までに何ステップあるか、数えてみてください。ステップが多いほど、途中で止まります。
切手と封筒を常備する
「切手を買いに行く」が挟まると、そこで止まります。
切手・封筒・ボールペン・のりを1つの箱に入れて、机に置いてください。数百円です。
印鑑を定位置に
探すところから始まると、やる気がなくなります。書類セットの箱に一緒に入れておきます。
コンビニでコピーできることを覚えておく
家にプリンターがなくても、コンビニでコピー・印刷ができます。「プリンターがないからできない」を理由にしない。
提出物や手続きを忘れてしまう人へ/種類別
種類別
会社の申請書
受け取ったその場で書ける欄だけ書く。 全部埋めようとすると止まります。
学校のプリント
受け取った日にカレンダーへ。 プリントは必ず埋もれます。写真を撮って捨てる、でも回ります。
役所からの通知
期限があるものが多いです。開封したその場で締め切りをカレンダーに入れてください。
返信用はがき
切手が要るかどうかを確認してください。切手を貼るだけの手間で止まることがあります。
契約書・重要書類
署名して返送するものは、返送用の封筒とセットで保管してください。
病院の書類
診断書、紹介状、保険の請求書類。期限があるものが多いので、受け取ったその日にカレンダーへ。
たまってしまったら
すでに山になっているなら、まず分けるところから。書類が山になっている人へに手順を書きました。
締め切りが過ぎているものは、まず窓口に電話してください。
- 役所の手続き → 遅れても受け付けてもらえることが多いです
- 会社の申請 → 早く言えば対応してもらえます
- 支払い → 相談すれば分割にできることがあります
放置がいちばん悪い結果になります。 相談すれば、たいてい選択肢が出てきます。
出す場所と出す日を1か所にまとめる
書類が出せない原因は、バラバラの場所に、バラバラの期限で存在していることです。
「未処理」の箱を1つだけ作る
届いた書類は、開けたらすぐこの箱に入れます。
- 郵便物
- 学校のプリント
- 職場から渡された紙
机の上、カバンの中、車の中に散らばらせない。 1か所にあれば、探す時間がゼロになります。
箱の中を週に1回だけ見る
毎日見なくていいです。曜日を決めて、週1回。
そのとき、期限のあるものだけカレンダーに書きます。
期限は「出す日」で書く
「10月31日締切」ではなく、「10月25日に出す」とカレンダーに書きます。
締切日に書くと、その日に忘れて終わりです。余裕を持った日を、実行日として書く。
その場で出す
いちばん確実なのは、受け取った瞬間に書いて出すことです。
- 学校のプリントは、その場で記入して連絡袋へ
- 職場の書類は、その場で書いて提出
- 病院の問診票は、その場で
持ち帰った時点で、忘れる確率が跳ね上がります。
「あとでゆっくり」と思ったものが、そのまま出てこないのが現実です。
出し忘れたときの対応
すぐ連絡する
気づいた時点で連絡してください。遅れるほど、相手の手間が増えます。
「申し訳ありません、提出が遅れています。今日中に出します。」
理由の説明より、いつ出すかを先に言うほうが、相手は助かります。
期限が過ぎても出せることが多い
役所も学校も職場も、期限を過ぎたら受け取らない、ということはあまりありません。
「もう遅いから」と放置するのが、いちばん悪い結果になります。
罰則があるもの
税金、保険、更新手続きなど、遅れると実害が出るものは、カレンダーに二重で入れてください。
- 1か月前に「準備する」
- 1週間前に「出す」
家族の書類も同じ場所に
子どもの学校の書類、家族の手続き。人ごとに分けず、まず1か所に集めるほうが、抜けが減ります。
集めてから、人ごとに分けてください。
提出物や手続きを忘れてしまう人へ/出したかどうか分からなくなるとき
出したかどうか分からなくなるとき
「出した気がするけど、自信がない」がいちばん困ります。
出す前に写真を撮る
提出した書類を、封筒に入れる前に1枚撮る。 あとで内容も確認できます。
出したらチェックを入れる
紙のリストでも、スマホのメモでもいいです。消す動作が記録になります。
控えをもらう
役所の窓口なら、受付印を押した控えをもらえます。 「控えをいただけますか」と言うだけです。
出す先ごとに分けておく
提出先がいくつもあると、混ざって分からなくなります。
- 学校
- 職場
- 役所
- 病院
クリアファイルを4枚用意して、名前を書いてください。 届いた紙を、その場でどれかに入れます。
入れるだけ。整理しなくていいです。
期限のあるものだけカレンダーに入れる
全部を管理しようとすると続きません。期限があるものだけでいいです。
そして、締切日ではなく「出す日」を入れてください。
「10/25 提出する」(締切は10/31)
余裕を持った日を実行日として入れるのがコツです。
くわしくは締め切りをいつも守れない人へへ。
書けなくて止まっているとき
「書く内容が分からない」で止まっている書類は、忘れているのではなく、詰まっています。
- 分かるところだけ先に書く
- 分からないところは、聞く相手を決めて聞く
- 窓口に電話して「書き方を教えてください」と言っていい
役所も学校も、聞けば教えてくれます。 白紙のまま放置するのが、いちばん時間を失います。
関連する困りごと
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紙がたまる → 書類の山が片づかない人へ
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期限を落とす → 締め切りをいつも守れない人へ
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約束を忘れる → 約束を忘れて信用をなくす人へ
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支払いを忘れる → 支払いを忘れて止められる人へ
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紙がたまる → 書類の山が片づかない人へ
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期限を落とす → 締め切りをいつも守れない人へ
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約束を忘れる → 約束を忘れて信用をなくす人へ
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支払いを忘れる → 支払いを忘れて止められる人へ
記入をラクにする
書くこと自体で止まる場合の対策です。
- よく書く情報をスマホのメモに入れておく(住所、電話番号、マイナンバー、口座番号など機微でないもの)
- 印鑑・ペン・のりを1つの箱にまとめて、机に置く
- 記入例をもらう(窓口で「記入例をください」と言えばもらえます)
探す時間と思い出す時間がゼロになると、書けるようになります。
※マイナンバーや口座番号など、人に見られると困る情報は、スマホのメモではなく安全な場所で管理してください。
家族の分をまとめて処理する
子どもの学校の書類、家族の手続き。人ごとに分ける前に、まず1か所に集めてください。
集めてから、週に1回まとめて処理する。そのほうが、抜けが減ります。
まとめ:出し忘れを減らす5つ
- 受け取ったら、その場で書いて出す
- 出せないものは「提出待ち」の1か所に入れる
- 期限は「出す日」でカレンダーに入れる
- 切手・封筒・ペン・印鑑を1つの箱にまとめる
- 遅れたら、理由より「いつ出すか」を先に伝える
1番ができれば、あとはほとんど要りません。
この記事について
ADHDのある大人は、「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。また、この力の弱さが先延ばしを部分的に説明するという研究もあります。
紙は通知が来ないので、目に入らなくなった瞬間に、あることごと忘れやすくなります。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。「玄関を出たらカバンに入れる」は、この考え方です。
そのうえで、「提出待ちボックス」「締め切りの3日前に通知」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。
手続きが滞って困っているときは、窓口に相談すると待ってもらえることがあります。相談先・公的窓口をご覧ください。
紙をもらった瞬間が勝負です。カバンに入れた時点で、その紙は行方不明予備軍になります。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討「あとでやることを覚えておく力」は、ADHD症状と先延ばしの関係を部分的に説明する
(原題:Prospective memory (partially) mediates the link between ADHD symptoms and procrastination)
この研究でわかっていること:先延ばしの一部が「やること自体を思い出せない」ことに由来しうると言えます。
ここはまだ分かっていません:横断的な関連が中心。対策の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。