メモを取っても後で読めない人へ|あとで使えるメモの取り方
— きれいに書くのではなく、あとで見つかる形にします
ポイント
- メモが使えないのは、書く場所がバラバラで、あとで探せないからです
- 書く場所を1つに固定するだけで、大半が解決します
- きれいに書くのをやめて、「あとで自分が読んで分かるか」だけを基準にします
目次を開く(10項目)
メモは取っている。でも、あとで見返すと何が書いてあるか分からない。そもそもどこに書いたか分からない。
付箋が机に散らばっていて、どれが有効なのかも分からない。
メモが役に立たないのは、書き方の問題より「場所」の問題です。
なぜメモが使えないのか
1. 書く場所がバラバラ
紙のメモ帳、スマホのメモ、付箋、手帳、パソコンのファイル。書くたびに違う場所を使っていると、あとで探せません。
そして探すのが面倒になって、そのうち見なくなります。
2. あとで読むことを考えずに書いている
会議中は「分かっている」ので、単語だけ書きます。でも3日後の自分には分かりません。
メモは、未来の自分あての手紙です。
3. 書いたあと、見返す機会がない
書きっぱなしになっているメモは、存在ごと忘れます。ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究があります。
見返すタイミングを決めていないと、メモは死にます。
4. 書くことに必死で、聞けていない
全部書こうとすると、書くほうに意識が持っていかれます。聞くと書くを同時にやるのは、けっこう高度な作業です。
【いちばん効く1つ】場所を1つに決める
これだけで大半が解決します。
メモは1か所にしか書かない。 紙かデジタルか、どちらかに決めてください。
紙を選ぶ場合
- 1冊のノートだけ使う。 用途で分けない
- 時系列で、前から順に書く。 ページを分けない
- 日付だけ必ず書く
「仕事用」「プライベート用」と分けると、どっちに書いたか分からなくなります。全部1冊に、時系列で。
デジタルを選ぶ場合
- メモアプリを1つ決める
- 1日1ページでその日の分を全部書く
- 検索できるので、分類しなくていい
デジタルの強みは検索です。フォルダ分けに時間をかけないでください。探すのは検索で十分です。
どちらが向いているか
| 紙が向く人 | デジタルが向く人 |
|---|---|
| 書くと覚えられる | 字が汚くて読めない |
| 画面を見ると気が散る | あとで検索したい |
| 手を動かすほうが集中できる | 持ち歩くのを忘れる |
両方使うのがいちばんダメです。 どちらかに決めてください。
いちばんよくある失敗は、メモがあちこちに散らばることです。
- 手帳
- 付箋
- スマホのメモ
- ノート
- 紙の裏
どこに書いたか分からなくなった時点で、メモは機能していません。
場所を1つに決める
紙かスマホ、どちらか一方に決めてください。
- 紙が合う人:書く動作で覚えられる、開くのが速い
- スマホが合う人:検索できる、なくさない、いつでも持っている
両方使うなら、役割を分けてください。 「その場の走り書きは紙、保存はスマホ」のように。
付箋を使うなら、貼る場所を決める
付箋は便利ですが、貼る場所がバラバラだと必ず失くします。
「ノートの決まったページに貼る」「モニターの縁だけ」と決めてください。
あとで読めるメモの書き方
5. 主語を書く
「9/15」だけでは分かりません。「納期が9/15」と書きます。
未来の自分は、そのときの状況を覚えていません。
6. 自分がやることに印をつける
メモの中で、自分の担当だけ目立たせます。
- 「★」をつける
- 四角で囲む
- 行の頭に「自分:」と書く
あとで見たときに、やることだけ拾えるようにするのが目的です。
7. 日付と場面を書く
「9/3 田中さんと打ち合わせ」の一行があるだけで、思い出しやすさがまったく違います。
8. 疑問をその場で書く
「あとで確認」と思ったことは、その場で「?」をつけて書きます。
- 「?納期は営業日か暦日か」
- 「?予算の上限は」
分からないことを記録しておくと、あとで聞けます。
9. きれいに書かない
清書しようとすると、書くのが遅れて聞き逃します。字が汚くていいです。 自分が読めればいいです。
10. 全部書かない
会議なら、拾うのは「決まったこと」「自分がやること」「次回」の3つだけです。くわしくは会議の内容が頭に入らない人へに書きました。
単語ではなく、動作で書く
「田中さん 資料」ではなく、「田中さんに見積もりをメールで送る(金曜まで)」。
あとで読んで、何をすればいいか分かる形にしてください。単語だけだと、翌日には意味が分かりません。
日付を書く
これだけで、あとから探せるようになります。
期限を書く
期限のあるものは、メモに書いた時点でカレンダーにも入れる。 メモは見ないことがありますが、通知は来ます。
メモを取っても後で読めない人へ/メモを見返す仕組みを作る
メモを見返す仕組みを作る
書いただけで終わらせないための工夫です。
11. 見返す時間を決める
「毎朝、席についたら昨日のメモを見る」のように、動作とセットで決めます。
行動を先に決めておく方法は、目標達成の研究でも支持されています。
1日1回、3分でいいです。
12. やることはメモから外に出す
メモに書いた「やること」は、その日のうちにカレンダーかタスクリストに移します。
メモは記録の場所、タスクリストは実行の場所。 役割を分けてください。
移すのを忘れると、メモの中でやることが埋もれます。
13. 終わったものに線を引く
処理したものに線を引いておくと、残っているものだけが見えるようになります。
14. 付箋を使うなら、場所を決める
付箋は便利ですが、散らばると最悪です。貼る場所を1か所に決めてください。
- ノートの決まったページ
- モニターの右下だけ
- 小さいボードを1枚用意する
そして終わったら剥がす。 貼りっぱなしにすると、どれが有効か分からなくなります。
書いたメモを見返さないなら、書いていないのと同じです。
朝と夜に見る
- 朝:今日やることを確認
- 夜:明日の準備と、書き足し
1日2回、1分ずつで十分です。
週に1回、整理する
- 終わったものを消す
- まだ残っているものを、今週のリストに移す
- もういらないものを捨てる
日曜の夜がおすすめです。
場面別のメモ
電話中のメモ
聞きながら入力するとミスが増えます。紙に殴り書きにして、切ってから整えてください。
書くのは「誰から」「何の件」「折り返しの要否」「電話番号」の4つです。
口頭で指示されたとき
その場でメモして、あとで文字にして送るのがおすすめです。
「先ほどの件、A4で2枚、金曜17時まで、という理解で進めます。」
認識のずれがその場で分かるうえ、記録にも残ります。くわしくは「適当にやっといて」で固まってしまう人へへ。
思いついたことのメモ
作業中に「あ、あれもやらなきゃ」と思ったら、その場で1行書いて、いまの作業に戻ります。
覚えておこうとすると、そちらが気になって手が止まります。
買い物・持ち物のメモ
これは別のリストにしていいです。買い物リストは買い物アプリのように、使う場面が決まっているものは分けても混乱しません。
手順のメモ
一度教わった手順は、次に自分がやるときに読める形で残してください。
- 番号をつける
- 画面のスクリーンショットを貼る
- 「ここで詰まった」も書いておく
2回目の自分を助けるのが、いちばん効くメモです。
会議中
聞きながら書くのがつらい人は、キーワードだけ書いてください。
- 決まったこと
- 自分がやること
- 期限
この3つだけ。全部書こうとすると、話が聞けなくなります。
くわしくは会議で話を聞き漏らす人へへ。
電話中
- 相手の名前と用件だけ書く
- 「あとでメールでいただけますか」と頼む
- 録音の許可をもらう
思いついたとき
歩いているとき、風呂の中、寝る前。思いつきは、その場で残さないと消えます。
- スマホの音声メモ(話すだけ)
- ホーム画面にメモアプリを置く
- 風呂用の防水メモもあります
取り出すのに10秒以上かかると、書きません。
「あとで探せない」をなくす
メモがあるのに見つからない。これがいちばん時間を食います。
日付を必ず書く
デジタルなら自動で入りますが、紙は自分で書く必要があります。日付があるだけで、記憶からたどれます。
「先週の火曜の打ち合わせ」と思い出せれば、そのあたりを開けば見つかります。
キーワードを大きく書く
紙のノートなら、そのページの内容を表す言葉を行頭に大きく書いてください。「田中さん」「A社 見積」。
ページをめくって探すとき、これがあると一瞬で見つかります。
デジタルなら検索できる言葉を入れる
「あの件」ではなく「A社の見積」と書いてください。あとで検索する自分が、どんな言葉で探すかを考えて書きます。
写真で撮る
紙に書いたメモを、スマホで撮ってメモアプリに入れておく手もあります。紙をなくしても中身が残ります。
ホワイトボードに書かれた内容も、消される前に撮ってください。
大事なものだけ移す
全部のメモを整理する必要はありません。「これはあとで絶対に使う」というものだけ、正式な場所(タスクリスト、共有フォルダ)に移してください。
残りは、そのまま置いておいて構いません。
メモを取っても後で読めない人へ/メモが取れないとき
メモが取れないとき
書くのが追いつかない
- 全部書くのをやめる(キーワードだけ)
- 録音を併用する(許可を取って)
- 音声入力を使う
書くと聞けなくなる
書くのをやめて、聞くことに集中する選択もあります。そのかわり、終わった直後に5分で書き出してください。
字が汚くて自分でも読めない
デジタルに移してください。スマホの音声入力なら、話すだけでテキストになります。
メモを取ること自体を忘れる
ノートを閉じてかばんに入れると、存在ごと忘れます。机の上に出しっぱなしにしてください。
書くこと自体が面倒
短くていいです。 3語でも構いません。
書いたのに見ない
目に入る場所に置いてください。ノートを閉じてカバンに入れると、見ません。
きれいに書こうとして手が止まる
汚くていいです。あとで読めればいい。
続かないときのハードルの下げ方
きれいなメモ術は、たいてい続きません。続く形まで下げてください。
ペンとノートを持ち歩けない
スマホの音声入力を使ってください。話すだけで文字になります。歩きながらでも使えます。
開くのが面倒
ノートは閉じずに開いたまま机に置いてください。開く動作が1つ減るだけで、書く回数が変わります。
デジタルなら、メモアプリをホーム画面のいちばん押しやすい場所に置いてください。
何を書けばいいか分からない
迷ったら「自分がやること」だけ書いてください。それ以外は書かなくても、たいてい困りません。
分類したくなってしまう
分類は後回しでいいです。時系列でひたすら書くのがいちばん続きます。
分類に凝りはじめたら、それはメモではなく整理の作業になっています。
三日坊主になる
抜けても構いません。やめた日があっても、また書けばいいです。「今日から仕切り直し」でOKです。
まず明日、これだけやってみる
- メモを書く場所を1つに決める(ノート1冊か、アプリ1つ)
- 自分がやることに「★」をつける
- 朝、席についたら昨日のメモを3分見る
きれいに書かなくていいです。 あとで自分が読んで分かればそれで十分です。
この記事について
ADHDのある大人は、「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。メモを外に置いて、それを見返す仕組みを作るのは、この力に頼らないためのやり方です。
また、作業を切り替えるときには手間がかかることも研究で整理されています。聞きながら書くのが難しいのは、自然なことです。
行動を先に決めておく方法(「朝、席についたらメモを見る」など)は、目標を達成しやすくすると報告されています。
そのうえで、「場所を1つにする」「★をつける」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 自分に合う形を探してください。
記録が追いつかなくて仕事がつらい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
メモ帳、スマホのメモ、付箋、手の甲。全部に書いてあると、探すのが仕事になります。まず場所を1つに決めましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。