「適当にやっといて」で固まってしまう人へ|聞き返し方のテンプレ
— 確認するのは失礼じゃありません。やり直しのほうが困ります
ポイント
- 手が止まるのは理解力の問題ではなく、判断に必要な情報がそろっていないだけ
- 聞くべきことは「完成の形・いつまで・優先度・どこまで自分で決めるか」の4つ
- 全部作ってから見せるより、3割の時点で見せたほうが、お互いラクになります
目次を開く(13項目)
「これ、いい感じにやっといて」 「適当にまとめといて」 「なるはやでお願い」
言われた瞬間、頭が真っ白になる。何をどこまでやればいいのか分からない。でも「分かりません」とは言いにくい。そのまま時間だけが過ぎて、あとで「そうじゃないんだよ」と言われる。
このループ、しんどいですよね。
先に言っておきます。足りていないのは、あなたの理解力ではありません。判断するための情報です。
この記事では、何を聞けばいいのか、どう聞けば角が立たないかを、そのまま使える形で書きます。
なぜ固まってしまうのか
「いい感じに」と言われたとき、実は次のことが全部あいまいなままです。
- どんな形になっていれば終わりなのか
- いつまでにやればいいのか
- いま抱えている他の仕事より先なのか
- どこまで自分で決めていいのか
これを全部、自分の想像で埋めないといけない。想像で埋めた結果がずれていたら、やり直しになります。
だから、固まるのは正しい反応です。情報が足りないのに動き出すほうが危ないんです。
ちなみに、仕事の手順がはっきりしていることは、働きやすさに関わるという研究があります。あいまいな指示は、職場の側の問題でもあります。 全部を自分のせいにしなくて大丈夫です。
聞くのは4つだけ
覚えるのは4つです。これだけ埋まれば動けます。
| 聞くこと | ひとことで言うと |
|---|---|
| ①完成の形 | 何ができていれば終わりか |
| ②いつまで | 日付と時間 |
| ③優先度 | いまの仕事とどっちが先か |
| ④決めていい範囲 | どこまで自分で判断していいか |
いちばん抜けやすいのは④です。 そして、やり直しの原因になりやすいのも④です。
「デザインは任せます」と言われていたのに、細かく直された。逆に「勝手に決めるな」と言われた。これは④が決まっていなかったせいです。
そのまま使えるテンプレート
「分かりません」と言うより、こちらから案を出して確認するほうがずっとスムーズです。相手はゼロから説明しなくて済むので、答えるのがラクになります。
①完成の形を聞く
「A4で2枚くらい、目次と結論を入れた形をイメージしていますが、それで合っていますか?」
「箇条書きでざっくりまとめる感じでいいですか? それとも文章にしたほうがいいですか?」
「前回の◯◯と同じ形で作って大丈夫でしょうか?」
前回のものを引き合いに出すのがいちばん速いです。相手も想像しやすくなります。
②いつまでかを聞く
「なるはや、というのは今日中でしょうか? 今週中でしょうか?」
「◯日の午前中までに出せば大丈夫ですか?」
「なるはや」は人によって意味がちがいます。必ず日付と時間に変換してください。
こちらから期限を提案する形にすると、相手も答えやすくなります。
③優先度を聞く
「いま A と B を持っているんですが、今回のものはどのあたりの順番でしょうか?」
「Aを止めてこちらを先にやったほうがいいですか?」
相手に決めてもらう形にすると、あとで「そっちを先にやってほしかった」が起きません。これは自分を守るためでもあります。
④決めていい範囲を聞く
「細かいところは自分で決めてしまって大丈夫ですか? それとも一度見ていただきますか?」
「迷ったときは、どこまで自分で判断していいでしょうか?」
全部まとめて聞きたいとき
「確認させてください。A4で2枚、金曜の17時まで、いまのBより優先、細かい部分は一任、という理解で進めて大丈夫ですか?」
1文にまとめて、相手には「はい」か「ちがう」だけ言ってもらう。 これがいちばん短く済みます。
聞くのが気まずいときの言い方
「何回も聞いて悪いな」と思ってしまう人向けです。
「認識合わせ」という言葉を使う
「認識を合わせておきたいのですが」
これを頭につけると、質問が「確認作業」に見えます。分かっていない人ではなく、丁寧な人に見えます。
自分の理解を先に言う
「◯◯という理解で進めようと思っているのですが、合っていますか?」
間違っていたら直してもらう形にすると、相手の手間が減ります。
一度にまとめて聞く
小分けに何回も聞くと、相手の作業が止まります。メモしておいて、まとめて聞くほうが喜ばれます。
メールやチャットで聞く
口頭だと聞き返しにくい人は、文字にしてください。相手も自分のタイミングで答えられるので、実は喜ばれます。
そして文字は記録に残ります。 これがあとで効いてきます。
「適当にやっといて」で固まってしまう人へ/よくある「あいまいワード」の翻訳表
よくある「あいまいワード」の翻訳表
言われがちな言葉と、その裏で何が決まっていないのかをまとめました。そのまま聞き返す言葉もつけています。
「いい感じに」
決まっていないのは完成の形です。
「いい感じ、というのは、前回の◯◯みたいな感じですか?」
「なるはや」
決まっていないのは期限です。
「今日の何時までに出せば大丈夫ですか?」
「ざっくりでいいよ」
決まっていないのはどこまでやるかです。「ざっくり」の基準が人によってちがいます。
「箇条書き5行くらいのイメージで合っていますか?」
「常識で考えて」
決まっていないのはその職場のルールです。常識は職場ごとにちがいます。
「この会社だとどうするのが普通ですか? 前の例があれば見せてください」
「いつも通りで」
自分にとっての「いつも通り」が相手と同じとは限りません。
「前回と同じ形でいいですか? 変えるところはありますか?」
「あとはよろしく」
決まっていないのは自分の担当範囲です。
「どこまでが自分の担当で、どこからが◯◯さんの担当になりますか?」
「もうちょっと考えて」
何がダメだったのかが分かりません。
「どのあたりが足りないでしょうか? 方向自体を変えたほうがいいですか?」
「気を利かせて」
いちばん困る言葉です。何を期待されているのか、具体例をもらうしかありません。
「今回でいうと、具体的にどうするのがよかったでしょうか? 次から同じようにします」
「簡単でいいから」
「簡単」の基準がちがいます。だいたい、言った人が思っているより手間がかかります。
「どれくらい時間をかけていいものですか? 30分くらいのイメージですか?」
「みんなに共有しといて」
誰に、どの範囲で、どの手段でが決まっていません。
「チーム全員でいいですか? 手段はチャットでいいですか?」
口で言われたことは、文字に残す
これはぜひやってください。
打ち合わせで指示を受けたら、そのあとにメールかチャットで送ります。
「先ほどの件、以下で進めます。 ・A4で2枚 ・金曜17時まで ・デザインは一任 認識ちがいがあれば教えてください。」
いいことが2つあります。
- ずれていたら、この時点で分かる
- あとで「そんなこと言ってない」が起きない
責めるためではなく、自分を守るためです。相手にとっても、あとで揉めないほうがいいので、いやがられることはまずありません。
途中で見せる
これがいちばん効きます。
全部作ってから見せると、方向がずれていたときの手戻りが大きくなります。
3割できた時点で、一度見せてください。
「構成だけ作ってみました。この方向で進めて大丈夫ですか?」
「途中ですが、いったん見てもらえますか。ずれていたら早めに直したいので。」
早い段階の確認は、相手にとっても直すのがラクです。やり直しのほうが、確認より何倍も迷惑です。
「途中で見せるのは中途半端で恥ずかしい」と思うかもしれませんが、逆です。途中で見せる人のほうが、仕事ができると思われます。
何度聞いてもあいまいなとき
相手も分かっていない、ということがけっこうあります。
選択肢を2つ出す
「AとB、どちらの方向がいいですか?」
「どうしましょう」より「AかBか」のほうが、相手は答えやすいです。ゼロから考えなくていいので。
できたところまでで出す
「ここまで作りました。この先どうしましょうか?」
形になったものを見ると、相手も具体的に指示できるようになります。
別の人に聞く
前にその仕事をしたことがある人、前任者、同僚。上司より詳しい人がいることはよくあります。
過去のものを探す
社内のフォルダに、似た資料が眠っていることがあります。それを見つけて「これと同じ形でいいですか」と聞くのが最短です。
「適当にやっといて」で固まってしまう人へ/何度も同じことで困るなら
何度も同じことで困るなら
毎回あいまいな指示で困っているなら、その場しのぎではなく、やり方そのものを変えてもらう相談ができます。
「口で聞いた内容だと、あとで抜けてしまうことがあります。要点だけチャットに1行残していただけると助かります。」
「締め切りを『なるはや』ではなく、日付で教えていただけると動きやすいです。」
ポイントは、「こうしてほしい」を具体的に言うことです。「配慮してください」だけだと、相手も何をすればいいか分かりません。
言い方は職場に「これがつらい」と言えない人へにくわしく書きました。
それでも分からない仕事を渡されたとき
- 手をつける前に、10分だけ調べる。 過去の資料、社内の似た事例。それでも分からなければ聞く
- 「分からない」を具体的にする。 「全部分かりません」ではなく「この部分の判断基準が分かりません」
- 時間を区切って報告する。 「30分やってみて進まなければ相談します」と先に言っておくと、止まったときに聞きやすい
止まったまま何時間も過ごすのが、いちばんまずいです。 30分止まったら聞く、と決めておいてください。
逆に、聞きすぎて困っている場合
「そんなことまで聞くの?」と言われたことがある人もいると思います。聞く量を減らすコツもあります。
10分は自分で調べてから聞く
過去の資料、社内のフォルダ、前に似た仕事をした人。まず10分調べてから聞くと、質問の質が上がります。
質問をためて、まとめて聞く
思いついた瞬間に聞くと、相手の作業を何度も止めることになります。メモにためて、1日1回まとめて聞くほうが好かれます。
「はい/いいえ」で答えられる形にする
✗「これ、どうすればいいですか?」 ○「これはAでいいですか?」
相手の負担が全然ちがいます。
3回目からは記録を見る
同じことを何度も聞いてしまうなら、聞いたことを1か所にメモしてください。次からはそれを見ます。
メモが後で読めない人はメモを取っても後で読めない人へも見てください。
まず明日、これだけやってみる
- 指示を受けたら「いつまでですか?」だけ必ず聞く(これだけでかなり変わります)
- 口頭で受けた指示を、そのあと1行チャットで送る
- 3割できたところで一度見せる
全部いっぺんにやらなくて大丈夫です。1つめだけでも、やり直しはかなり減ります。
この記事について
自閉スペクトラム症(ASD)のある大人の働き方を調べた研究では、役割や手順がはっきりしていることが働きやすさに関わると報告されています。あいまいな指示で困るのは、あなただけの問題ではありません。
また、伝わらないのは片方のせいとは限りません。当事者どうしで話すと、ちゃんと正確に伝わるという実験もあります。うまくいかないのは、お互いの伝え方・受け取り方がかみ合っていないから、という見方です。
ここに書いた聞き方は、そこから組み立てたものです。全部が研究で確かめられているわけではありません。 職場によって合う・合わないがあるので、使えそうなものだけ使ってください。
仕事のことでずっとしんどい、相談できる人がいない、という状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「常識で考えて」と言われる場面ほど、確認する価値があります。常識は職場ごとに違うので、聞くのは恥ずかしいことじゃありません。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討働いている自閉スペクトラム症のある成人の経験:系統的な検索とまとめ
(原題:The Lived Experience of Autistic Adults in Employment: A Systematic Search and Synthesis)
この研究でわかっていること:明確な役割・理解ある上司・感覚環境が働きやすさに効くと示せます。
ここはまだ分かっていません:質的統合であり、どの配慮が最も効くかの順位づけはできません。
研究で検討「車いすの人にとってのスロープのようなもの」:自閉スペクトラム症のある従業員にとっての職場の使いやすさ
(原題:"It’s like a ramp for a person in a wheelchair": Workplace accessibility for employees with autism)
この研究でわかっていること:物理環境・手順・人の3つが働きやすさを左右すると整理できます。
ここはまだ分かっていません:聞き取りをもとにした研究であり、配慮の効果量を示すものではありません。
研究で検討合理的配慮(働きやすくするための調整)に基づく就労支援
この研究でわかっていること:配慮は診断名でなく本人の困りごとと職務に合わせて決める、という原則を示せます。
ここはまだ分かっていません:個別の配慮メニューの効果を比較した研究ではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある人どうしの情報の伝わり方は、とても正確である
(原題:Autistic peer-to-peer information transfer is highly effective)
この研究でわかっていること:すれ違いは片方の能力不足ではなく、相互のかみ合わせの問題として説明できます。
ここはまだ分かっていません:実験のなかでの結果です。日常の会話すべてに当てはまるとは言えません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。