休職から復職するのが不安な人へ|戻り方の設計
— 休む前と同じ働き方に戻さないための準備です
ポイント
- 復職は元に戻ることではなく、働き方を組み直す機会だと考えると準備しやすくなります
- 戻る条件は口約束にせず、勤務時間や外す仕事を紙に書いて共有しておきます
- 手続きの流れも制度の名前も会社によって違うので、就業規則の確認が出発点になります
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主治医から「そろそろ戻れそうですね」と言われた日から、逆に落ち着かなくなる。カレンダーの復職日が近づくほど、朝が重くなる。眠りも浅くなる。
頭に浮かぶのは、休む前の最後の1か月のことです。あの状態にまた戻るのかと思うと、体が動かなくなる。かといって、このまま休み続けるわけにもいかない。
先に結論を書きます。復職は、休む前の自分に戻ることではありません。 同じ働き方に戻れば、同じ結果になりやすいからです。復職は、働き方の条件を決め直す場だと考えてください。
そしてもうひとつ大事なことがあります。復職の手続きは、会社によって違います。 この記事に書くのは一般的な流れです。あなたの会社での正解は、就業規則と人事の説明のほうにあります。
なぜ復職前に不安が大きくなるのか
理由は、だいたい3つに分かれます。分けると、相談する相手も変わります。
1つめは、見通しが立たないことです。いつ何が決まるのか、誰が決めるのか、断られたらどうなるのか。分からないものは、いちばん重く想像されます。
2つめは、体調が戻りきっているか自分でも分からないことです。家で過ごせることと、通勤して働けることは別です。ここは主治医と一緒に見るところです。
3つめは、環境が変わっていないことです。休むことになった原因が職場の側に残っているなら、また同じことが起きると予想するのは当たり前です。これは弱気ではなく、正しい読みです。
ここに、もうひとつ重なることがあります。休んだこと自体を「逃げた」と感じてしまう気持ちです。休職は、制度として用意されている手続きです。 使ったことを引け目に思う必要はありません。ただ、その気持ちがあると、条件の相談がしにくくなります。まずここを切り離しておいてください。
働き続けるための支援については、研究をまとめた分析があります。ただし研究の数も質もまだ十分ではないと、その分析自体が書いています。「この戻り方が正解」と決まっているわけではないということです。だから、自分と会社で条件を作るしかありません。
【いちばん効く1つ】戻る条件を、紙にして共有する
面談で口約束をしても、たいてい消えます。担当者が変わると、なおさら残りません。紙にして、双方が同じものを見ている状態を作ってください。
書くのは5つです。
- 復職日と、最初の1か月の勤務時間
- 通常の勤務に戻すまでの段取りと、それを判断する日
- しばらく外してもらう仕事(残業、突発の対応、出張など)
- 困ったときの相談先(誰に、どの方法で伝えるか)
- 見直しの日(1か月後と3か月後など)
会社が用意してくれないこともあります。そのときは、自分で作ってかまいません。面談のあとに内容をまとめて、メールで送るだけでも記録になります。
「本日うかがった内容をまとめました。認識の違いがあればご指摘ください。」
これで、決まったことが文字になって残ります。あとで言った言わないにならないのが、いちばんの効果です。
休職から復職するのが不安な人へ/復職までの一般的な流れ
復職までの一般的な流れ
多くの会社は、だいたいこの順番です。
- 主治医に、戻ることを考えていると伝える
- 会社(人事や上司)に復職の意向を伝える
- 主治医の診断書を提出する
- 産業医や人事と面談する
- 会社が復職の可否と条件を決める
- 復職。短い時間の勤務から始めることが多い
- 決めた日に、勤務の形を見直す
この順番も、必要な書類も、会社によって違います。 診断書に会社指定の書式があることもあります。書いてあるのは就業規則の「休職」「復職」の項目なので、先に読めるなら読んでください。
手元にないときは、人事にこう聞けば十分です。
「復職の手続きの流れと、必要な書類を教えてください。」
聞きにくく感じるかもしれませんが、これは当然の質問です。 会社側も答える前提で用意しています。
診断書は、頼んでからできるまでに日数がかかります。戻ろうと思った時点で、次の通院のときに相談してください。 「復職を考えているので、診断書をお願いできますか」と伝えれば通じます。
なお、主治医が見ているのは体調で、会社が見ているのは働ける状態かどうかです。同じ言葉でも、基準が違うことがあります。 主治医が可と書いても、会社がもう少し様子を見たいと判断することはあります。断られた形に見えても、条件を詰め直せば進みます。
あわせて確認しておきたいのが、休職できる期間の上限です。期間が決まっている会社が多く、そこから逆算して動くことになります。休んでいる間の収入については、健康保険の傷病手当金という仕組みがあります。条件や金額、受け取れる期間は加入先によって違うので、健康保険組合か会社の担当に確認してください。
産業医や人事との面談で話すこと
産業医は、働ける状態かどうかを医学の立場から会社に助言する人です。主治医とは役割が違います。 治療をする人ではなく、判断の材料を集める人だと考えてください。
産業医がいない会社もあります。働く人が50人以上いる職場では産業医を置くことが決められていますが、それより小さい会社にはいないことが多く、その場合は人事や上司と直接話す形になります。
面談で聞かれるのは、たいてい生活の様子です。用意しておくと楽になります。
- 起きる時間と寝る時間(1か月分の記録があると強い)
- 日中に外出できているか、通勤の練習をしたか
- 何がきっかけで休むことになったか
- 戻ったあと、しばらく外してほしいこと
言い方は、事実と数字で十分です。
「この1か月、平日は毎朝7時に起きて、図書館まで往復できています。」 「休む前は、突発の電話と締め切りが重なる日が続いていました。そこの配分を見直せると続けられると思います。」
きっかけを話すときは、人の悪口ではなく、仕組みの話にしてください。 「◯◯さんがきつい」ではなく「予定の変更が多く、そのたびに手が止まっていました」と言うほうが、調整の話につながります。
反対に、「もう絶対に大丈夫です」と言い切るのはおすすめしません。無理な条件で戻ると、しんどくなったときに言い出せなくなります。言える範囲で、正確に。 それで十分です。
面談は、評価の場ではありません。うまく話せなくても不利にはなりません。うまく話せる自信がないときは、紙に書いて持っていって、そのまま読んでください。読み上げるのは、まったく問題ありません。
その場でメモを取るのも、断られることはまずありません。「あとで確認したいので、メモを取ってもいいですか」と一言だけ添えれば十分です。決まったことを持ち帰れると、次の面談が楽になります。
診断名をどこまで伝えるかは、別の判断です。伝えなくても働き方の相談はできます。
休職から復職するのが不安な人へ/少しずつ戻す方法
少しずつ戻す方法
いきなり通常勤務に戻すと、最初の2週間で消耗します。多くの会社に、段階的に戻す仕組みがあります。
呼び方は会社によって違います。試し出勤、リハビリ出勤、短時間勤務、慣らし勤務。名前も中身も、制度があるかどうかも会社ごとに違います。 給与の扱いも変わるので、必ず先に確認してください。
進め方の一例です。あくまで例で、体調と仕事の内容によって変わります。
- 週3日・1日4時間から始める
- 2週間ごとに、日数か時間のどちらかだけを1段階上げる
- 1〜3か月かけて、通常の勤務に近づける
大事なのは、上げる日を先に決めておくことと、上げない判断も選べるようにしておくことです。進める道しか用意していないと、つらくなったときに止められません。
「次の段階に上げる日は◯日ですが、そのとき体調を見て、もう2週間このままにする選択もありますか。」
この一言を、最初の面談で入れておいてください。あとから言うより、ずっと通りやすくなります。
復職の前に、通勤だけ試しておくのもおすすめです。復職日と同じ時刻に家を出て、職場の最寄り駅まで行って帰る。これを何回かやると、当日の負担がかなり読めるようになります。 途中でしんどくなったら、そこが調整する場所です。時間をずらす、乗り換えを1回減らす、座れる経路にする。使える手はいくつかあります。
そして最初の1か月は、成果を出そうとしないでください。出勤して、帰る。それが仕事です。
再発を防ぐための取り決め
戻ってしばらくすると、調子のいい時期が来ます。ここで無理が積み上がると、また同じところに戻ります。先に決めておきます。
早めのサインを3つ書く
自分がしんどくなる前に出る変化を、具体的に書き出します。
朝の準備に、いつもの倍の時間がかかる 人の話が頭に入らなくなる 休みの日、ずっと寝ている
サインが2つ出たら相談すると決めておくと、判断に迷いません。
言い出す文を、先に作っておく
しんどいときに、言葉は出てきません。書いて持っておいてください。
「復職のときにお話しした調整の件で、相談させてください。いま、サインが2つ出ています。」
仕事の量に、数の上限を持つ
「同時に持つ案件は3件まで」のように、数で決めておくと交渉しやすくなります。感覚で伝えると、多い少ないの話になって終わります。
定期の面談を残す
調子がよくなると、面談は自然になくなりがちです。残しておくほうが、言い出しやすさが続きます。 3か月に1回でも十分です。
1日1行の記録を続ける
出勤時間、睡眠時間、しんどさを10段階で。これだけで、面談のときに話す材料になります。記憶で話すと、直近の数日に引っぱられます。
よくある質問
同じ部署に戻ることになりました
部署が同じでも、条件は変えられます。担当する仕事、締め切りの持ち方、席の位置。変えられるところを1つずつ挙げて、面談に持っていってください。 全部を変える必要はありません。
同僚に何と説明すればいいですか
理由を細かく話す義務はありません。「体調をくずして休んでいました」で足ります。復職後の勤務時間が違う場合は、「しばらく短い時間で戻ることになりました」とだけ伝えれば十分です。詮索されたら、同じ言葉をくり返してください。
また続かない気がして怖いです
その不安は、条件を決めるための材料として使えます。「どうなったら続かなくなるか」を3つ書いて、そこを外す相談をしてください。不安を消してから戻るのではなく、不安の中身を条件に変えて戻ります。
復職しないで辞める道もありますか
あります。戻ることだけが正解ではありません。ただし、辞める判断は体調が戻ってからのほうが安全です。 しんどい時期の判断は、選べる道が少なく見えます。決める前に、社外の相談窓口で一度話してみてください。
関連する困りごと
- 戻ったあとに働き方を調整してもらう言い方は → 職場に「これがつらい」と言えない人へ|配慮のお願いのしかた
- 診断名を職場に伝えるか迷っているなら → 障害者雇用と一般雇用で迷っている人へ|オープンとクローズの比較
- 無理の積み上がりに気づきにくいなら → 気づいたら限界になっている人へ|疲れや空腹に気づけない
- 職場を変えることも考えているなら → 仕事が続かない人へ|根性ではなく環境の問題かもしれません
まず今日、これだけやってみる
- 就業規則の「休職・復職」の項目を読む(手元になければ、人事に流れを聞く)
- 起きた時間・寝た時間・外出したかを、1日1行で記録し始める
- 戻る条件のたたき台を、5項目だけ紙に書く(勤務時間・外す仕事・相談先・見直しの日・上げる判断日)
3つめは、完成させなくて大丈夫です。面談に持っていく紙が1枚あるだけで、話の進み方が変わります。
この記事について
働くことに関する制度は厚生労働省の情報、働く人の相談先はこころの耳(厚生労働省)をもとにしています。ただし、国の情報には、それぞれの会社がどう運用しているかまでは含まれません。 復職の手続きは各社の就業規則で決まります。この記事の流れと、あなたの会社の流れが違う可能性は十分にあります。必ず就業規則と人事の説明で確認してください。
段階的に戻す仕組みも同じです。名前、期間、給与の扱いは会社ごとに違い、そもそも制度がない場合もあります。ここに書いた進め方は一例です。
就労を支えるプログラムについては、研究をまとめた分析があります。ただし、研究の数と質にはまだ限界があるとその分析自体が述べていて、どの戻り方がいちばんよいかを示せる段階ではありません。
こころの耳は相談先の案内であり、医療機関の代わりではありません。働けるかどうかの判断は、主治医と相談して決めてください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
復職が不安なのは、当然なんですよね。同じ環境に同じ形で戻れば、また同じことが起きます。だから不安は、直すべき性格ではなくて、条件を決め直すための材料として使ってください。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
専門家・公的情報障害者雇用対策
この研究でわかっていること:障害者雇用の制度説明に使えます。
ここはまだ分かっていません:個々の企業の運用実態は含まれません。
専門家・公的情報こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
この研究でわかっていること:職場の悩みの相談先として案内できます。
ここはまだ分かっていません:医療機関の代わりではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人向けの就労プログラムと支援:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Employment programmes and interventions targeting adults with autism spectrum disorder: A systematic review)
この研究でわかっていること:就労支援プログラムが研究されている領域だと示せます。
ここはまだ分かっていません:研究数と質に限界があるとレビュー自体が述べています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。