同じミスを何度もして怒られる人へ|ミスを減らす具体的なやり方
— 「次から気をつけます」で終わらせない
ポイント
- 「次から気をつけます」はミス対策になりません。同じ状況でまた起きます
- 見直しは「もう一度見る」ではなく、条件を変えて見ると見つかります
- 自分のミスの種類を1週間メモすると、対策する場所がはっきりします
目次を開く(9項目)
数字を1桁まちがえる。日付を間違える。添付ファイルを忘れる。宛先をまちがえる。
そのたびに「次から気をつけます」と言って、また同じことをやる。相手の顔が曇っていくのが分かる。
つらいですよね。
先に大事なことを言います。「気をつける」はミス対策になりません。 気をつけていない人はいません。気をつけていても起きるから困っているんです。
この記事では、気合いを使わないでミスを減らす方法を書きます。
なぜ「気をつける」では防げないのか
ミスが起きる場面には、だいたい共通点があります。
- 急いでいる
- 何かを同時にやっている
- 途中で話しかけられた
- 疲れている
- いつもと手順が違う
つまり、注意を向ける余裕がないときに起きます。そして「気をつける」は、その余裕を使う作業です。余裕がないときに、余裕を使う対策をしても効きません。
ADHDのある大人は、あとでやることを覚えておく力に困りごとが出やすいという研究があります。「送る前に添付を確認する」は、まさにこの力を使う作業です。
だから、対策は「気をつける」以外のところに置きます。
【ステップ1】自分のミスの種類を知る
これをやらずに対策すると、たいてい的外れになります。
1週間だけ、ミスをメモしてください。 スマホのメモで十分です。
書くのは3つだけ。
| 書くこと | 例 |
|---|---|
| 何をまちがえたか | 請求書の金額を1桁多く入力 |
| そのときの状況 | 電話しながら入力していた |
| 何時ごろか | 夕方17時 |
1週間たつと、かたよりが見えてきます。
- 「夕方に集中している」→ 疲れているときの作業を減らす
- 「電話しながらが多い」→ ながら作業をやめる
- 「数字だけまちがえる」→ 数字のチェック方法を変える
- 「月曜が多い」→ 週明けの手順を見直す
全部のミスを一気に減らそうとしないでください。 多い順に1つずつ潰します。
同じミスを何度もして怒られる人へ/【ステップ2】ミスが起きにくい形にする
【ステップ2】ミスが起きにくい形にする
1. 手で入力しない
数字や名前の入力ミスがいちばん多いなら、そもそも手で打たないやり方を探します。
- コピー&ペーストにする
- 前回のファイルを複製して使う
- 入力フォームの自動入力を使う
- 表計算ソフトの数式で計算する(電卓の結果を手打ちしない)
打つ回数を減らせば、打ちまちがえる回数も減ります。
2. テンプレートを作る
毎回ゼロから作るものは、毎回ちがうミスが出ます。
一度うまくいったものを保存して、次からはそれを複製して使ってください。メールの定型文、報告書の型、チェックリスト。
「毎回同じ形」にすると、違うところだけ見ればよくなります。
3. チェックリストを紙で持つ
頭の中でチェックすると、必ずどこかが抜けます。紙かメモアプリに書いて、目で追ってください。
メールなら、こんな感じです。
- 宛先は合っているか
- 添付はついているか
- 金額・日付は合っているか
- 敬称(様・御中)は合っているか
5項目までにしてください。多いと見なくなります。
4. 「ながら作業」をやめる
電話しながら入力する、話しかけられながら書類を作る。ここでミスが集中します。
作業を切り替えると、それだけでミスが増えます。 これは特性に関係なく、誰にでも起きることです。
- 電話中は入力しない。メモだけ取って、切ってから入力する
- 話しかけられたら、いったん手を止める
- 「いま手が離せないので、5分後にいいですか」と言っていい
話しかけられて作業が飛ぶ問題は話しかけられると作業が全部飛ぶ人へにくわしく書きました。
5. 疲れている時間帯に大事な作業を入れない
自分がミスしやすい時間帯が分かったら、その時間には確認の要る作業を入れないようにします。
- 夕方は、単純作業や整理にあてる
- 数字を扱う作業は午前中にやる
- 昼食の直後は、頭が回らない人が多い
「いつでも同じ精度でできる」という前提を捨てると、置き場所を変えられます。
【ステップ3】見直しのやり方を変える
「もう一度見直す」だけでは、同じミスを見落とします。さっき見たときと同じ見方をしてしまうからです。
条件を変えて見ると、見つかるようになります。
6. 時間をあける
書いた直後は、頭が「書いたつもりの文章」を読んでしまいます。1時間おくか、せめて別の作業をはさんでから見直してください。
急ぎのときは、トイレに行って戻ってくるだけでも違います。
7. 形を変えて見る
- 印刷して紙で読む
- 画面の表示を拡大する
- フォントを変える
- 声に出して読む
見た目が変わると、脳が「新しい文章」として読み直します。 これがいちばん効きます。
8. 後ろから読む
誤字を探すときに使えます。最後の行から1行ずつ上に読んでいくと、内容に引っぱられずに文字だけを見られます。
9. 数字は指でさして読み上げる
金額や日付は、指でさして声に出すのがいちばん確実です。目だけで追うと飛ばします。
「いち、まん、にせん、さんびゃく、よんじゅう、えん」と区切って読むと、桁のまちがいに気づけます。
10. 送信を遅らせる
メールソフトには「送信を◯秒遅らせる」設定があります。30秒に設定しておくと、送った直後に気づいて取り消せます。
これは設定を1回変えるだけで効く、いちばん手軽な対策です。
11. 添付は先につける
メールの本文を書いてから添付すると、忘れます。メールを開いたら、まず添付をつけてから本文を書いてください。
順番を変えるだけです。
ミスの種類ごとの対策
よくあるミスを種類ごとに分けて、それぞれに効くやり方を書きます。自分に当てはまるところだけ読んでください。
誤字・脱字
- 音声読み上げ機能を使って、耳で聞く(パソコンにもスマホにも標準でついています)
- 文書ソフトの校正機能をオンにする
- 送る前に、タイトルと最初の1行と最後の1行だけは必ず読む
全部を完璧に見直そうとすると疲れて続きません。まちがえると恥ずかしい場所だけを重点的に見てください。
数字のまちがい
- 電卓の結果を手打ちしない。表計算ソフトで計算させる
- 桁の多い数字は、3桁ごとにカンマを入れて表示させる
- 金額は「税込か税抜か」を毎回声に出す
- 転記するときは、コピー&ペーストを使う
数字は目で追うと必ず飛ばします。 指でさすか、声に出すか、機械にやらせるかの3択です。
日付・曜日のまちがい
- カレンダーを見ながら書く。頭の中の日付を信じない
- 「来週の月曜」ではなく「9月8日(月)」と書く。曜日と日付を両方書くと、ずれに気づけます
- 締め切りを言われたら、その場でカレンダーに入れる
添付わすれ・宛先まちがい
- メールを開いたら、まず添付をつける
- 宛先は、本文を全部書いてから最後に入れる(誤送信を防げます)
- 送信を30秒遅らせる設定にする
- 社外あてのメールは、宛先を声に出して読む
「本文→添付→宛先」の順にすると、この3つのミスがまとめて減ります。
確認もれ・手順とばし
- 手順を紙に書いて、指でなぞりながら進める
- 頭の中でチェックしない。必ず目で見る
- 「たぶんやった」は「やっていない」と考える
聞きまちがい・言われたことの取りちがえ
- 聞いたことをその場で復唱する
- あとで文字にして送って、認識が合っているか確認する
- 電話中はメモだけ取って、切ってから作業する
言われたことが曖昧で困る場合は「適当にやっといて」で固まってしまう人へも見てください。
物をなくす・書類を紛失する
- 大事な書類は受け取った瞬間に写真を撮る
- 置き場所を1か所に決める
- 机に出しっぱなしにしない
同じミスを何度もして怒られる人へ/【ステップ4】人にチェックしてもらう
【ステップ4】人にチェックしてもらう
自分で全部やろうとしないでください。
12. 大事なものは誰かに見てもらう
金額が大きいもの、社外に出るもの、取り返しがつかないものは、出す前に誰かに見てもらうのがいちばん確実です。
「すみません、金額だけ見てもらえますか」と、見てほしい場所を1つに絞って頼むと、相手の負担も小さくて済みます。
13. ダブルチェックを仕組みにする
「気づいたら見てもらう」だと続きません。「この種類の書類は必ず◯◯さんに見せる」とルールにしてください。
上司に相談するときは、こう言えます。
「請求書の金額で何度かミスをしているので、出す前に一度確認していただく形にできませんか。5分もかかりません。」
ミスを隠すより、仕組みを提案するほうが評価されます。
14. 配慮としてお願いする道もある
くり返し同じところでミスが起きるなら、仕事のやり方そのものを変えてもらう相談ができます。
- 口頭の指示を、チャットでも残してもらう
- 数字を扱う作業を、確認者つきの手順にしてもらう
- 電話と入力を同時にやらない配置にしてもらう
言い方は職場に「これがつらい」と言えない人へにまとめました。
ミスをしてしまったあとの対応
対策をしても、ミスはゼロにはなりません。そのあとの動き方で、印象はかなり変わります。
すぐ言う
隠すのがいちばんダメです。時間がたつほど、被害も気まずさも大きくなります。
順番を守る
- 事実「請求書の金額を1桁まちがえて送ってしまいました」
- 影響「先方にはすでに届いています」
- 対応案「訂正版をすぐ送って、お詫びの連絡を入れます」
- お詫び「申し訳ありません」
言い訳を先に言わないでください。相手が知りたいのは、まず「何が起きたか」と「どうするか」です。
「次から気をつけます」で終わらせない
これを言うと、相手は「また同じことが起きる」と思います。代わりに、仕組みを言ってください。
「送信前のチェックリストを作って、金額は声に出して確認するようにします」
具体的なやり方を言うと、対策していることが伝わります。
落ち込む時間を短くする
ミスのあと、一日ずっと引きずっていると、その日の残りの仕事でもミスが増えます。悪循環です。
謝るのは1回。そのあとは普通に働く。引きずっている姿のほうが、周りには気になります。
ミスを責められて頭が真っ白になるときは、その場でメモを取ることに集中してください。言われた内容を書き取っていると、感情のほうに全部持っていかれずに済むことがあります。
記録に残しておく
同じことで何度も怒られるなら、言われた内容を日付つきで記録しておいてください。
- 何を指摘されたか
- どう直すことにしたか
- そのあとどうなったか
これは2つの意味で効きます。1つは、対策が実際に効いているか分かること。もう1つは、理不尽な叱責がくり返されている場合の記録になることです。
ミスの指摘を超えて、人格を否定されたり、大勢の前で長時間責められたりしているなら、それは指導ではありません。記録を持ったうえで、人事や社外の相談窓口に相談してください。
まず1週間、これだけやってみる
- ミスをメモする(何を・どんな状況で・何時ごろ)
- メールの送信を30秒遅らせる設定にする
- 大事なものは、印刷するか声に出して読んでから出す
1週間たったら、メモを見返してください。自分がどこでミスしているかが分かれば、対策する場所が決まります。
この記事について
作業を切り替えるときには手間がかかることが、研究で整理されています。「ながら作業でミスが増える」という実感には、ちゃんと裏づけがあります。また、ADHDのある大人は「あとでやること」を覚えておくのが苦手という研究もあります。「送る前に添付を確認する」は、まさにその力を使う作業です。
ここに書いた具体的なやり方は、そこから組み立てたものです。全部が研究で確かめられているわけではありません。 合わないものは飛ばして、自分に合うものだけ使ってください。
ミスが続いて仕事がつらい、怒られるのがこわい、という状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「なんで同じミスするの?」と言われて、いちばん困っているのは本人なんですよね。気をつけてないわけがない。気をつけても防げないから困っているんです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討合理的配慮(働きやすくするための調整)に基づく就労支援
この研究でわかっていること:配慮は診断名でなく本人の困りごとと職務に合わせて決める、という原則を示せます。
ここはまだ分かっていません:個別の配慮メニューの効果を比較した研究ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。