障害者雇用と一般雇用で迷っている人へ|オープンとクローズの比較
— 何を優先するかで答えが変わります
ポイント
- オープンは配慮と定着率、クローズは給与とキャリアの選択肢で有利になりやすい
- 「半オープン」(人事のみに伝える等)という中間の選び方も実際には存在する
- 一度クローズで入っても、後から開示に切り替えることは可能
目次を開く(14項目)
手帳を取得すると、次に決めなければならないのが「オープンで働くか、クローズで働くか」です。
- オープン就労:障害を開示して働く(障害者雇用枠が中心)
- クローズ就労:開示せずに働く(一般雇用枠)
どちらにも明確なメリットとデメリットがあります。
4つの軸で比較する
軸1:給与
正直に書くと、平均的にはクローズ(一般枠)のほうが高くなります。障害者雇用枠は、業務範囲が限定される、補助的業務が多いといった理由から、給与水準が抑えられる傾向があります。
ただし、これは「必ず低い」という意味ではありません。専門スキルがある人が障害者雇用枠で専門職として採用されるケースもあり、その場合は一般枠と遜色ない条件になることがあります。特にIT、経理、専門事務の領域では、そうした求人が増えています。
また、収入を「時給」ではなく「生涯」で見る視点も必要です。クローズで高い給与を得ても、2年で離職して次まで1年空くなら、オープンで安定して10年働くほうが総額は上回ることがあります。
軸2:配慮
ここは圧倒的にオープンが有利です。
- 業務内容の調整(苦手な業務を外す)
- 指示の出し方の調整(口頭+テキストなど)
- 勤務時間・通院への配慮
- 静かな席、休憩の取り方への配慮
クローズの場合、これらを求める根拠を示せません。「なぜあの人だけ」という職場の視線に晒されるリスクもあります。
軸3:定着率
各種調査で一貫して示されているのは、開示して働いたほうが定着率が高いという傾向です。理由は単純で、無理を隠し続ける負荷がないからです。
クローズ就労では、「バレないようにする」ことに常時エネルギーを使います。ミスをしたときに理由を説明できず、単に能力不足と評価される。この積み重ねが離職につながります。
軸4:キャリアの選択肢
障害者雇用枠は、求人の絶対数が一般枠より少なく、職種の幅も狭くなります。昇進・昇格の機会が限られる企業もまだあります。
一方で近年は、障害者雇用でも管理職登用の道を用意する企業が増えてきました。入社前に「キャリアパスはどうなっているか」を確認することが重要です。
給与
一般的には、障害者雇用枠のほうが給与水準が低くなりやすいと言われます。求人の職種が限られることが多いためです。
ただし「必ず低い」わけではありません。専門スキルがあれば、専門職として採用されることもあります。 ITや経理、専門事務ではそうした求人が増えています。
配慮
ここが最大の違いです。
オープンなら、配慮を求める前提で入れます。 通院の時間、業務の調整、席の環境。最初から話ができます。
クローズだと、配慮を求めるたびに理由の説明が要ります。
定着率
一般に、配慮のある環境のほうが長く働けると言われます。ただし、日本でオープンとクローズを追跡して比べた公的な統計は限られています。
キャリア
障害者雇用枠は、求人の数が一般枠より少なく、職種の幅も狭くなります。 昇進の機会が限られる企業もまだあります。
一方で、長く働ければ経験が積めるという面もあります。無理をして働けなくなるより、生涯の収入が多くなることもあります。
| 項目 | オープン(障害者雇用) | クローズ(一般雇用) |
|---|---|---|
| 給与水準 | 低めになりやすい | 高くなりやすい |
| 求人数 | 少ない | 多い |
| 配慮 | 得やすい | 求めにくい |
| 定着率 | 高い傾向 | 低い傾向 |
| 精神的負荷 | 隠す負担がない | 隠す負担が常にある |
| キャリア | 制限される場合がある | 制限は少ない |
| 手帳 | 必要 | 不要 |
実は中間がある:「半オープン」という選択
見落とされがちですが、開示のしかたは0か100かではありません。
- 人事だけに伝える:現場の同僚には知らせず、人事と産業医のみが把握
- 直属の上司だけに伝える:日々の業務調整だけ相談できる
- 診断名は言わず、必要な配慮だけ伝える:「口頭指示のあとに要点をテキストでいただけると助かります」
3つ目は特に実用的です。診断名を明かさなくても、業務上の要望として伝えれば通ることは多いものです。合理的配慮の法的根拠は得られませんが、実務上のメリットは得られます。
実際には、二択ではありません。
| 形 | 内容 |
|---|---|
| フルオープン | 障害者雇用枠。会社全体が知っている |
| 半オープン | 一般枠だが、人事や直属の上司だけに伝える |
| クローズ | 誰にも言わない |
半オープンを選ぶ人はけっこういます。 必要な人にだけ伝えて、配慮を得る形です。
そして、一度クローズで入っても、あとから開示に切り替えることは可能です。最初の選択が最終決定ではありません。
どう選ぶか:判断のフローチャート
オープンを検討したほうがよい場合
- 過去に何度も離職しており、原因が特性と環境のミスマッチにある
- 通院が必要で、勤務時間の調整が要る
- 体調に波があり、無理をすると崩れる自覚がある
- 「隠しながら働く」ことに強いストレスを感じる
クローズを検討してよい場合
- すでに専門スキルがあり、配慮なしでも成果を出せている
- 現在の職場で問題なく働けている
- 収入を最優先せざるを得ない事情がある
- 特性が業務に影響していない(環境が合っている)
障害者雇用と一般雇用で迷っている人へ/後から変えることもできる
後から変えることもできる
重要な点として、クローズで入社した後に開示に切り替えることは可能です。体調を崩したとき、業務が変わってつらくなったときに、産業医や人事に相談する道は常に残っています。
逆に、オープンで入社した人が、その後一般枠に移ることもあります。一度決めたら固定、ではありません。
決められないときは
就労移行支援や地域障害者職業センターでは、この選択そのものについての相談ができます。第三者と一緒に、自分の特性と市場価値を整理してから決めるのも、十分に合理的なやり方です。
焦って決める必要はありません。判断材料を集めてから決めるほうが、結果的に早く着地します。
判断するときに見るところ
何に困っているかで決める
- 業務の進め方に配慮が要る(指示の出し方、優先順位、割り込み)→ オープンのほうが話が早い
- 体調・通院に配慮が要る(勤務時間、休憩、通院日)→ オープンか半オープン
- 困りごとが自分の工夫でおさまる→ クローズでも回ることがあります
手帳があるかどうか
障害者雇用枠で働くには、手帳が必要です。 手帳がないなら、そもそも選択肢に入りません。
手帳については障害者手帳を取ろうか迷っている人へをご覧ください。
その会社の実態を見る
同じ「障害者雇用」でも、会社によってまったく違います。
- 実際にどんな配慮をしているか
- 障害のある社員が何年勤めているか
- 昇給・昇進の実績があるか
面接で聞いていいことです。 答えられない会社は、実績がないということです。
相談できる場所
一人で決めなくていいです。
- ハローワークの専門援助部門(障害のある人の就職相談。求人も紹介してもらえます)
- 地域障害者職業センター(適性の評価、ジョブコーチの支援)
- 就労移行支援事業所(訓練から就職まで。就労移行支援を使ってみたい人へ)
「どちらがいいか」を一緒に考えてくれる人がいると、決めやすくなります。
障害者雇用と一般雇用で迷っている人へ/開示するときの伝え方
開示するときの伝え方
オープンや半オープンを選ぶ場合、何をどこまで伝えるかを決めておいてください。
- 診断名を言うか、困りごとだけ言うか
- どの範囲の人に伝えるか
- どんな配慮を求めるか
伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へにまとめました。
オープンにするときの伝え方
開示すると決めたら、伝える順番と内容を決めておくとスムーズです。
いつ伝えるか
- 応募の段階(求人が障害者雇用枠なら、最初から)
- 面接のとき
- 内定後、入社前
- 入社後、困りごとが出てから
早いほど配慮を受けやすく、遅いほど選考には影響しにくいという関係があります。どちらを優先するかで決めてください。
何を伝えるか
診断名だけでは、相手は何をすればいいか分かりません。セットで伝えてください。
- できること(実務で問題なくできること)
- 苦手なこと(具体的な場面で)
- どうしてもらえると働けるか(配慮の内容)
「口頭の指示だと抜けが出るので、要点をメールでもいただけると、ミスがなくなります。」
「配慮があれば戦力になる」という形で話せると、話が前に進みます。
クローズで働きながら配慮を得る
診断名を出さずに、困りごとだけ伝えるという中間の選び方もあります。
- 「口頭だと抜けます」
- 「電話をしながらメモを取るのが苦手です」
診断名は「なぜ」の説明であって、必須ではありません。
伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
よくある質問
あとからオープンに変えられますか
変えられます。 入社後に手帳を取得して、途中から障害者雇用に切り替える人もいます。
ただし、会社の制度によって扱いが変わるので、人事に確認してから動いてください。
障害者雇用だと給与が低いと聞きました
職種と勤務時間の影響が大きいです。フルタイムの専門職なら、一般雇用と変わらない求人もあります。
求人票の給与だけで判断せず、続けられるかどうかも含めて比べてください。
手帳がないとオープンにできませんか
障害者雇用枠で働くには手帳が要ります。ただし、一般枠で配慮を相談することは、手帳がなくてもできます。
くわしくは手帳がなくても使える支援へ。
家族に反対されています
決めるのはあなたです。 続けられる形を選ぶのが、いちばん大事です。
判断に迷うなら、ハローワークの専門窓口や就労移行支援に相談してみてください。第三者の意見があると、話しやすくなります。
関連する困りごと
- 手帳を検討したい → 障害者手帳って持つと何が変わるの?
- 職場に言いにくい → 職場に「これがつらい」と言えない人へ
- 仕事が続かない → 仕事が続かない人へ
- 診断がない → グレーゾーンで仕事がつらい人へ
まとめ:選ぶときの5つ
- 給与・配慮・続けやすさ・キャリアの4つで比べる
- いま優先したいものを1つ決める
- 診断名を出さずに配慮を相談する「半オープン」も選べる
- あとから変えることもできる
- 一人で決めず、支援機関に相談する
正解は人によって違います。 今の自分にとってどちらが働きやすいかで選んでください。
この記事について
障害者雇用の枠組みと合理的配慮の位置づけは厚生労働省、事業者に配慮の提供義務が生じる法的な土台は内閣府(障害者差別解消法)の公開情報にもとづいています。
配慮の決め方については、診断名ではなく本人の困りごとと職務に合わせるべきだと国内の論文が述べています。
一方で、オープン就労とクローズ就労を比べて給与・定着率・キャリアがどう違うかを日本で追跡した公的な統計は限られています。 この記事の比較は、制度上の違いと現場で語られる傾向を整理したもので、数字を保証するものではありません。実際の条件は企業ごとに大きく異なります。
迷ったときは、ハローワークの専門援助部門や地域障害者職業センターで相談できます。相談先・公的窓口をご覧ください。
どちらが正解ということはありません。ただ、無理をして働けなくなるくらいなら、配慮を得て長く働けるほうが、生涯の収入は多くなることもあります。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
専門家・公的情報障害者雇用対策
この研究でわかっていること:障害者雇用の制度説明に使えます。
ここはまだ分かっていません:個々の企業の運用実態は含まれません。
専門家・公的情報障害を理由とする差別の解消の推進
この研究でわかっていること:合理的配慮(働きやすくするための調整)を求める法的な土台を示せます。
ここはまだ分かっていません:どこまでが「重すぎる負担」にあたるかは、事情によって判断が分かれます。
研究で検討合理的配慮(働きやすくするための調整)に基づく就労支援
この研究でわかっていること:配慮は診断名でなく本人の困りごとと職務に合わせて決める、という原則を示せます。
ここはまだ分かっていません:個別の配慮メニューの効果を比較した研究ではありません。
- 厚生労働省 障害者雇用対策(2026-08-16 確認)
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。