くらす 制度障害者手帳

障害者手帳を取ろうか迷っている人へ|取ると何が変わるか

— 取ると何が得られて、何は変わらないのか

この記事の出どころ
  • 専門家・公的情報
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画像枠/img/banner/techou-merit.webp1200×675px(@2x で 2400×1350px)「障害者手帳を取ろうか迷っている人へ」の記事バナー。取ると何が得られて、何は変わらないのか

ポイント

  • 発達障害でも、日常生活・社会生活に相当な制限があれば手帳の対象になる
  • 実利が大きいのは所得税・住民税の障害者控除と、障害者雇用枠での就職
  • 手帳を持っていることが会社や周囲に自動的に知られることはない
目次を開く(16項目)
  1. 精神障害者保健福祉手帳とは
  2. メリット1:税金が安くなる(実利が一番大きい)
  3. メリット2:障害者雇用枠で働ける
  4. メリット3:公共料金・交通・施設の割引
  5. メリット4:支援サービスにつながりやすくなる
  6. デメリット・注意点
  7. 結局、取ったほうがいいのか
  8. 何が得られるか
  9. 何が変わらないか
  10. 発達障害でも取れるのか
  11. 持っていて不利になるか
  12. 使える場面の具体例
  13. 障害者雇用について
  14. 申請するかどうか迷ったら
  15. 申請の流れ
  16. この記事について

「発達障害と診断されたけれど、手帳って取ったほうがいいの?」——これは、とても多い質問です。

結論から言うと、手帳は「持っていると選べる選択肢が増えるカード」です。持ったからといって何かを強制されることはなく、使いたいときだけ使えます。ただし、期待していたほど万能ではない面もあります。この記事では、実際に何が得られて、何が得られないのかを整理します。

精神障害者保健福祉手帳とは

発達障害(ASD・ADHD・SLDなど)は、精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれます。「精神障害者」という名前に抵抗を感じる人は多いのですが、これは制度上の呼び方であり、うつ病・統合失調症・てんかん・発達障害などをまとめて扱う枠組みです。

等級は1級から3級まであり、日常生活・社会生活にどの程度の制限があるかで判定されます。大人の発達障害では3級や2級での交付が多いと言われますが、発達障害に限った等級別の公的統計はありません。あくまで目安として捉えてください。

等級おおよその状態像
1級日常生活のほとんどに他者の援助が必要
2級日常生活に著しい制限があり、援助が必要な場面が多い
3級日常生活・社会生活に制限を受ける、または制限を要する程度

重要なのは、診断名ではなく「生活のしづらさの程度」で判断されるという点です。同じ診断でも、就労や生活の状況によって等級は変わります。

メリット1:税金が安くなる(実利が一番大きい)

見落とされがちですが、金額的なインパクトが最も大きいのは税金です。

  • 所得税の障害者控除:27万円(1級は特別障害者として40万円)
  • 住民税の障害者控除:26万円(1級は30万円)

これは「27万円戻ってくる」という意味ではなく、課税対象の所得から差し引かれるという意味です。それでも、働いている人なら年間で数万円程度の負担軽減になることが多く、毎年続きます。会社員なら年末調整で申告できます。

さらに、控除とは別建てで住民税の非課税限度額の特例があります。本人が障害者の場合、前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税が非課税になります。非課税になると、そこから芋づる式に他の負担軽減につながることもあります。

メリット2:障害者雇用枠で働ける

これが手帳の最大の機能かもしれません。障害者雇用枠に応募するには、原則として手帳が必要です。

障害者雇用枠では、次のような配慮を前提に働けます。

  • 業務内容や指示の出し方を特性に合わせて調整してもらえる
  • 通院への配慮、勤務時間の相談がしやすい
  • 「できないこと」を最初から共有したうえで採用される

一方で、一般枠に比べて給与水準が低めになりやすい、職種の選択肢が限られるといった現実もあります。「オープンで働くか、クローズで働くか」は、手帳を取る/取らないとは別に、じっくり考える価値のあるテーマです。

メリット3:公共料金・交通・施設の割引

自治体や事業者によって内容が大きく異なりますが、代表的なものは次のとおりです。

  • JR旅客6社の運賃割引(2025年4月1日開始。3級でも片道100km超の普通乗車券が5割引)
  • 私鉄・バス・タクシーの運賃割引(自治体・事業者によって対象が違うので要確認)
  • 携帯電話料金の割引プラン
  • 美術館・博物館・動物園などの入場料減免
  • NHK受信料の減免(世帯の課税状況などの条件あり)
  • 上下水道料金の減免(自治体による)

交通については、2025年4月1日乗車分からJR旅客6社が精神障害者割引を開始しました。それ以前は身体・知的のみが対象だったため、古い情報が今もネット上に多く残っています。手帳1級が第1種、2級・3級が第2種の扱いで、第2種の単独利用は片道の営業キロが100kmを超える普通乗車券が5割引になります。

利用には、手帳に「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額」の第1種/第2種の記載と顔写真の貼付が必要です。それ以前に交付された手帳には記載がないことがあるため、自治体の窓口で記載の追加を申請してください。

なお、私鉄・バス・タクシーの割引は事業者や自治体ごとに対象等級がまちまちです。「どこでも半額」と期待すると実態とはずれるので、よく使う路線を個別に確認するのが確実です。

メリット4:支援サービスにつながりやすくなる

就労移行支援や自立訓練などの障害福祉サービスは、実は手帳がなくても医師の意見書等で利用できるケースがあります。ただし、手帳があると手続きが早く進むことが多く、支援機関の側も状況を把握しやすくなります。

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障害者手帳を取ろうか迷っている人へ/デメリット・注意点

デメリット・注意点

会社に自動的に知られることはない

もっとも多い誤解がこれです。手帳を取得したことが、勝手に勤務先へ通知される仕組みはありません。年末調整で障害者控除を申告すれば会社の担当者に知られますが、控除を申告せず自分で確定申告する方法もあります。つまり、知られるかどうかは自分でコントロールできます。

更新が必要(2年ごと)

手帳の有効期限は2年(申請受理日から2年後の月末まで)です。更新のたびに診断書(作成日が申請日から3か月以内のもの)が必要になり、費用も手間もかかります。更新時に等級が変わる、あるいは非該当になることもあります。

なお「初診日から6か月経過」は新規申請のときの要件で、更新時には関係ありません。

診断書の費用がかかる

申請には医師の診断書が必要で、自費で5,000〜10,000円程度かかるのが一般的です(医療機関により異なります)。障害年金の申請と違い、ここは自己負担です。

「取ったのに使わなかった」もよくある

割引や控除を使う場面が生活の中に少ない人だと、更新の手間だけが残ることもあります。ただし、後述のように「持っておいて損はない」場面のほうが多いのも事実です。

正直に書いておきます。

手続きに時間がかかる

申請から交付まで、全体で2〜3か月を見ておいてください。

心理的な抵抗

「障害者」という言葉に抵抗がある人もいます。それは自然な感情です。

ただ、手帳は「使える制度の会員証」くらいに考えても構いません。使いたいときだけ出せばいいものです。

結局、取ったほうがいいのか

次のいずれかに当てはまるなら、取得を検討する価値が高いといえます。

  1. 障害者雇用枠での就職・転職を選択肢に入れたい
  2. 現在働いていて、所得税・住民税を払っている(控除の効果が出る)
  3. 就労移行支援などの福祉サービスを使う予定がある
  4. 生活の中で公共交通や公共施設をよく利用する

逆に、いずれにも当てはまらず、更新の手間が精神的な負担になりそうなら、急いで取る必要はありません。必要になったときに申請すればいい制度です。

何が得られるか

税金が安くなる

いちばん実利が大きいところです。

  • 所得税の障害者控除(27万円の控除。1級は40万円)
  • 住民税の障害者控除(26万円の控除。1級は30万円)

会社員なら、年末調整で申告できます。確定申告をする人は、そこで申告します。

手帳を持っているだけでは適用されません。 自分から申告する必要があります。

障害者雇用枠で応募できる

配慮を前提に働けます。手帳が必要な唯一の制度と言ってもいいところです。

判断材料は障害者雇用と一般雇用で迷っている人へへ。

公共料金・交通の割引

  • NHK受信料の免除(世帯の課税状況によります)
  • 鉄道・バスの運賃割引(事業者によります)
  • 携帯電話の割引
  • 公共施設・美術館の割引

ここは自治体と事業者によって差が大きいところです。窓口で一覧をもらってください。

自治体独自の制度

  • タクシー券
  • 上下水道料金の減免
  • 公営住宅の優遇
  • 医療費の助成

自治体によってまったく違います。 必ず窓口で確認してください。


何が変わらないか

期待しすぎないために、こちらも書いておきます。

生活が自動的に変わるわけではない

使える制度が増えるだけです。使うか使わないかは、そのつど自分で決められます。

診断名が変わるわけではない

手帳は「制度を使うための証明」であって、診断そのものではありません。

一生持ち続けるものではない

有効期限は2年です。更新しなければ失効します。返納することもできます。


発達障害でも取れるのか

取れます。

精神障害者保健福祉手帳は、発達障害も対象です。ただし、「診断があること」ではなく「日常生活・社会生活に相当な制限があること」が基準になります。

だから、困っている状態を主治医に正確に伝えることが大事です。診察で「まあまあです」と答えていると、実態が伝わりません。

困っている場面を具体的にメモして持っていくのがおすすめです。


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障害者手帳を取ろうか迷っている人へ/持っていて不利になるか

持っていて不利になるか

いちばん心配されるところなので、先に書いておきます。

  • 職場や周囲に自動的に知らされる仕組みはありません
  • 使いたくない場面では、出さなければいいだけです
  • 返還(返すこと)もできます
  • 更新しなければ、自然に失効します
  • 履歴書に書く義務はありません

選択肢を1つ増やすものだと考えてください。


使える場面の具体例

自治体やサービスによって内容は変わりますが、よくあるものを挙げます。

お金に関わるもの

  • 所得税・住民税の控除(年末調整や確定申告で申請します)
  • 自動車税・軽自動車税の減免
  • NHK受信料の減免(条件があります)
  • 携帯料金の割引プラン

税の控除は、年間で数万円変わることがあります。 見落としやすいので、会社の年末調整のときに申告してください。

移動に関わるもの

  • 鉄道・バスの運賃割引(自治体・事業者によって内容が違います
  • タクシー券の交付
  • 有料道路の割引

施設

  • 美術館、博物館、動物園、映画館などの割引や無料

「◯◯市 精神障害者保健福祉手帳 割引」で検索すると、地域の一覧が出てきます。

働くこと

  • 障害者雇用枠で応募できる
  • 就労支援サービスが使いやすくなる
  • 職場に配慮を求めるときの根拠になる

障害者雇用について

手帳があると、障害者雇用枠で働くという選択肢が増えます。

いいところ

  • 配慮を前提に採用される
  • 通院や体調に理解がある
  • 定着支援を受けられることがある

考えておくこと

  • 給与が一般枠より低いことがあります
  • 職種が限られることがあります
  • 一般枠で応募することもできます(手帳を使う義務はありません)

両方を見て、自分で選べるのが、手帳を持つ意味です。


申請するかどうか迷ったら

今すぐ必要か

  • 働き方を変えたい → 検討する価値があります
  • 医療費が負担 → 自立支援医療(手帳とは別の制度)のほうが先かもしれません
  • 特に困っていない → 急がなくていいです

相談してから決める

  • 市区町村の障害福祉の窓口
  • 発達障害者支援センター
  • 主治医

「申請するとどうなりますか」と聞くだけでも構いません。 申請の義務は発生しません。


申請の流れ

初診から6か月以上たっていることが条件です。

診断書が必要で、交付まで1〜2か月かかります。

くわしくは精神障害者保健福祉手帳の申し方3級で使えるサービスへ。

手帳がまだない段階で使える支援は、手帳がなくても使える支援にまとめています。


くわしくは障害者手帳の申請のしかたが分からない人へにまとめました。

流れだけ書いておくと、

  1. 自治体のサイトで様式をダウンロード
  2. 主治医に診断書を依頼(初診から6か月以上必要)
  3. 市区町村の窓口へ提出
  4. 審査(1〜2か月)
  5. 交付

この記事について

ここに書いたのは、制度の話です。 医学的な効果の話は一切していません。

内容は、厚生労働省(手帳制度)、国税庁(障害者控除)、NHK(受信料免除)、自治体(鉄道割引・自動車税の減免)の公開情報にもとづいています。すべて確認日を入れています。

ただし、使える制度は住んでいる自治体によって変わります。 この記事に載せた例(東京都・山口県)は、差があることを示すためのもので、あなたの地域に当てはまるとは限りません。金額と要件も改定されます。

最新の情報は、必ずお住まいの窓口でご確認ください。 どこに聞けばいいか分からないときは相談先・公的窓口をご覧ください。

とら先生のひとこと

「手帳を取ったら人生が変わる」わけではありません。使える制度が増えるだけです。使うか使わないかは、そのつど自分で決められます。

この記事の出どころ

専門家・公的情報
厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
  1. 専門家・公的情報精神障害者保健福祉手帳

    厚生労働省/2026(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:手帳制度の一次情報として使えます。

    ここはまだ分かっていません:自治体独自の上乗せ制度は含まれません。

  2. 専門家・公的情報No.1160 障害者控除

    国税庁/2026(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:税の控除額を示せます。

    ここはまだ分かっていません:住民税や自治体ごとの減免については、別に確認が必要です。

  3. 専門家・公的情報放送受信料の免除について

    NHK/2026(2026-08-16 確認)

    この研究でわかっていること:免除条件を示せます。

    ここはまだ分かっていません:世帯の課税状況により結果が変わります。

  4. 専門家・公的情報JR旅客会社の精神障害者割引制度について

    山口県/2026(2026-08-16 確認)

    この研究でわかっていること:鉄道割引の適用範囲を示せます。

    ここはまだ分かっていません:事業者・路線により運用が異なります。

  5. 専門家・公的情報自動車税の減免

    東京都主税局/2026(2026-08-16 確認)

    この研究でわかっていること:自治体ごとに差がある例として示せます。

    ここはまだ分かっていません:ほかの道府県には当てはまりません。

制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。

合わなかったら、別のやり方を試してください

ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。