じぶんを知る 合理的配慮制度仕事

合理的配慮って何を頼めるの?|職場と学校の具体例

— 決まったメニューはなく、話し合って中身を作る仕組みです

この記事の出どころ
  • 研究で検討
  • 専門家・公的情報
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ポイント

  • 配慮の中身は法律に一覧で書かれておらず、困っている場面から作っていきます
  • 職場・学校・お店それぞれに、実際に相談されている調整のしかたがあります
  • 重すぎる負担のときは断られることもあります。その先は代わりの案を探す話になります
目次を開く(11項目)
  1. 合理的配慮とは、何のことか
  2. 【いちばん大事な1つ】メニューがないから、場面を言葉にする
  3. 頼めることの具体例
  4. 配慮にあたらないと整理されていること
  5. どこに、どうやって申し出るのか
  6. 断られたあとに何が残るか
  7. 通ったあとに、決めておくとよいこと
  8. よくある質問
  9. 関連する困りごと
  10. まず今日、これだけやってみる
  11. この記事について

「合理的配慮」という言葉を、どこかで見た。診断のときに言われた、支援の本に書いてあった、会社の研修で聞いた。それでも、自分が何を頼めるのかは分からないままだ。

調べても、法律の名前と固い言い回しばかりが出てきます。「社会的障壁の除去」と書かれていても、明日の自分が誰に何を言えばいいのかにはつながりません。

先に結論を書きます。合理的配慮は、決まったメニューが用意されている制度ではありません。 必要なものは人によって違うので、困っている場面を出して、相手と話し合いながら中身を決めるという形になっています。

だから、「何がもらえるか」より「何がないと回らないか」から考えたほうが、話が早く進みます。


合理的配慮とは、何のことか

平たく言えば、やり方を少し変えて、同じ土俵に立てるようにする調整のことです。

段差があって入れない建物に、スロープをつける。これは分かりやすい例です。発達障害の場合、段差は目に見えない形で置かれています。口で言われるだけの指示。急に変わる予定。音や光の多い部屋。それを、その人が動ける形に変えるのが配慮です。

国の枠組みとしては、障害を理由とする差別をなくすための法律があり、内閣府がその内容を公開しています。押さえておくとよいのは3つです。

  1. 役所や公立の学校などは以前から、会社・お店・私立の学校といった事業者も2024年4月から、配慮を提供する義務があります
  2. 出発点は、本人からの申し出です。困っていることが伝わらないと、話は始まりません
  3. 重すぎる負担になる場合は例外とされています。何が重すぎるかは、事情によって判断が分かれます

働く場面については、障害者雇用に関する別の法律があり、事業主に配慮を求める仕組みが定められています(厚生労働省の公開情報)。どちらにしても、こちらから伝えるところから始まる点は同じです。


【いちばん大事な1つ】メニューがないから、場面を言葉にする

配慮の中身は、法律に一覧では書かれていません。書かれているのは、決め方の枠組みだけです。

不親切に見えますが、理由があります。同じ診断名でも、困る場面は人によってまるで違うからです。国内の論文でも、配慮は診断名ではなく、本人の困りごとと実際の仕事の中身に合わせて決めるものだと述べられています。

つまり、こうなります。

  • 「発達障害なので配慮をお願いします」→ 相手は何をすればいいか分かりません
  • 「〇〇の場面で△△が起きるので、□□にしてもらえると回ります」→ 検討できます

あなたが場面を言葉にしないと、相手は動きようがありません。 伝えるときの順番や言い方は職場に「これがつらい」と言えない人へにまとめています。この記事では、そもそも何を頼んでいいのかという材料のほうを並べます。


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合理的配慮って何を頼めるの?/頼めることの具体例

頼めることの具体例

以下は、実際に相談されることのある内容です。ここにあるものが必ず通るわけではありません。 相手の規模や仕事の中身によって、できることは変わります。

自閉スペクトラムのある働く人への聞き取り研究では、働きやすさを左右するものとして、場所そのもの・仕事の進め方・まわりの人という3つが挙げられています。どこを変えれば楽になるかを探すときの、見取り図として使えます。

職場で

情報の受け取り方について。

  • 朝の申し送りの内容を、あとから見返せる形にしてもらう
  • 仕事を渡してくる人を1人に決めてもらう
  • 手順を写真や動画で残す許可をもらう

時間の使い方について。

  • 出勤の時刻を1時間ずらす
  • 通院のある曜日を、固定の休みにしてもらう
  • 打ち合わせのあとに5分の空きを入れてもらう

場所と環境について。

  • 人の行き来が少ない席にしてもらう
  • 耳栓やイヤーマフを使う許可をもらう
  • 休憩を取る場所を決めておく

仕事の中身について。

  • 電話の一次対応を外し、その分ほかの作業を受け持つ
  • 同時に持つ件数の上限を決めてもらう
  • 急な差し込みは、いったん別の人が受ける形にしてもらう

学校で

  • 講義を録音する、資料を先にデータでもらう
  • 試験の時間を延ばす、別の部屋で受ける
  • 課題の出し方や期限を相談する
  • 座席を決めてもらう
  • 実習の進め方を、始まる前に相談する

大学では、多くの場合、学生本人が窓口に申し出るところから始まります。 高校までは、保護者を通して学校と話すことも多く、進め方が変わります。

小中学校では、通級による指導のように、学校教育の側にも別の仕組みがあります。学校の段階によって、使える枠組みそのものが違うということです。どれが当てはまるかは、学校か教育委員会の窓口で確かめてください。

お店・病院・役所で

  • 順番を待つ間、外や車で待たせてもらう
  • 口で説明されたことを、紙に書いてもらう
  • 書類の記入を手伝ってもらう
  • 空いている時間帯や、静かな場所に案内してもらう

この場面で頼めることは、あまり知られていません。 言ってみると、あっさり通ることもあります。


配慮にあたらないと整理されていること

何でも通るわけではありません。国の考え方では、次のようなものは配慮とは別のものとして整理されています。

  • もともとの目的そのものを変えてしまうもの。たとえば、試験で測ろうとしている力そのものをなくす形は、配慮とは別だとされています
  • 重すぎる負担になるもの。費用、人手、体制から見て無理があるかどうかで判断されます
  • 仕事や利用の内容と、関係のない要求

ただし、この線引きは場面ごとに動きます。 同じ依頼でも、人手のある会社なら通り、小さなお店では難しいことがあります。断られたからといって、わがままだったということにはなりません。

もうひとつ。あらかじめ全員のために整えておくことがあります。手順書を用意する、案内を分かりやすくする、といったものです。これは、目の前の一人のために調整することとは別のものとして扱われます。前者が進んでいる場所ほど、個別に頼むことは少なくて済みます。


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合理的配慮って何を頼めるの?/どこに、どうやって申し出るのか

どこに、どうやって申し出るのか

相手は、場面ごとに変わります。

  • 職場 — 直属の上司、人事、産業医。相談窓口が置かれている会社もあります
  • 学校 — 障害学生支援室、学生相談室、担任や学年の主任
  • お店・病院・役所 — その場の担当者に言えば足ります

言い方は、口頭でも文章でもかまいません。 記録に残したいなら、メールやチャットのほうが確実です。あとで「言った・聞いていない」で揉めずに済みます。

診断書や意見書を求められることがあります。いつでも必要というわけではありません が、話が進みにくいときには材料になります。手元にないなら、「診断書は要りますか」と先に聞いてしまうのが早いです。

家族や支援者が代わりに伝えることもできます。ひとりで言い切るのがしんどいなら、同席してもらうだけでも構いません。


断られたあとに何が残るか

配慮の話は、頼んだ瞬間に決まるものではありません。やりとりを重ねて着地点を探すのが前提の仕組みです。

だから、最初の答えが「難しい」でも、そこで終わりにしなくて大丈夫です。次の3つが残っています。

  1. 理由を聞く — 何が引っかかっているのかが分かると、別の案が出せます
  2. 範囲を小さくする — 全部ではなく、いちばん困る場面だけに絞る
  3. 形を変える — 同じ目的を、別の方法で満たせないか考える

たとえば「在宅勤務にしてほしい」が難しくても、「通勤の時間をずらす」なら通ることがあります。目的は移動の負担を減らすことなので、手段は1つではありません。

社内で行き詰まったときは、外の窓口に相談できます。どこに相談できるかは相談先の探し方にまとめました。


通ったあとに、決めておくとよいこと

配慮は、決まった時点で終わりではありません。そのあと続かなくなるのは、たいてい次の3つが抜けているからです。

  1. いつ見直すか — 「3か月後にもう一度話す」と決めておくと、合わなかったときに言い出しやすくなります
  2. どこに残すか — 決まった内容をメールや紙で残しておきます。担当者が代わったときに、これがないと一からやり直しになります
  3. 誰まで知っているか — 上司だけが知っている状態だと、その人がいない日に止まります。どこまで共有するかは、あなたが決めていい部分です

とくに大事なのは、記録を残すことです。 口約束は、忙しい時期に消えます。「先日お話しした件をまとめました」と1通送っておくだけで、あとが違います。

うまく回りだしたら、それを続ける理由も伝えておいてください。「この形にしてもらってから、やり直しが減りました」のように、相手にとっての結果を短く言うと、続きやすくなります。


よくある質問

障害者手帳がないと頼めませんか

国の説明では、対象は手帳を持っている人に限られていません。 障害や社会の側の壁によって、生活に相当な制限を受けている状態かどうかで考えられています。

ただし、実際の運用では手帳や診断書を求められることもあります。制度上の考え方と、目の前の相手の対応は、必ずしも一致しません。

診断名を言わないといけませんか

言う義務はありません。 「この場面でこうなるので、こうしてほしい」という形だけでも頼めます。

伝えるかどうかで迷っているなら、障害者雇用と一般雇用、どっちを選ぶ?も読んでみてください。一度言うと取り消せないので、急いで決めなくて大丈夫です。

小さな会社やお店でも義務ですか

規模による例外はありません。 事業者であれば、配慮を提供する義務があるとされています。

ただし、できることの幅は規模によって変わります。 人手のない職場では、重すぎる負担にあたると判断されることもあります。だからこそ、相手の手間が小さい頼み方から始めるほうが通りやすくなります。

家族が代わりに頼んでもいいですか

代わりに伝えることもできます。 未成年の場合や、本人が説明しづらい場合に、家族や支援者が申し出る形は想定されています。

ただし、大人になってからは本人の意向がいちばん重く扱われます。 家族と本人で希望が違うときは、先にすり合わせておいてください。

通ったのに、うまくいきませんでした

よくあることです。やってみて合わなければ、変えてもらってかまいません。

配慮は一度決めたら固定、というものではありません。「この形だと別の困りごとが出たので、こう変えられませんか」と伝えてください。試して直すこと自体が、この仕組みの前提です。


関連する困りごと


まず今日、これだけやってみる

  1. この1週間で「これがなければ回ったのに」と思った場面を、3つ書き出す
  2. その中から、相手の手間がいちばん小さそうなものを1つ選ぶ
  3. 誰に言えばいいか(上司・窓口・担当者)を決めて、名前を書き添える

この記事について

配慮を求める法的な土台と、重すぎる負担のときは例外になることは、内閣府の公開情報にあります。ただし、どこからが重すぎる負担かは、事案ごとに判断が分かれます。

働く場面の制度については、厚生労働省が障害者雇用の情報を公開しています。個々の会社が実際にどう運用しているかは、そこには含まれていません。

配慮を診断名ではなく、本人の困りごとと仕事の中身に合わせて決めるという原則は、国内の論文で述べられています。ただし、どの配慮がどれだけ効くかを比べた研究ではありません。

働きやすさに場所・進め方・人が関わることは、自閉スペクトラムのある就労者への聞き取り研究で報告されています。聞き取りをもとにした研究なので、効果の大きさを示すものではありません。

この記事は法的な助言ではありません。 実際に争いになっている場合や、判断に迷う場合は、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。

とら先生のひとこと

「配慮」という言葉が固いので、特別扱いを頼むみたいに感じるんですよね。実際は、同じ土俵に立つための調整です。眼鏡をかけて黒板を見るのと、そう遠くない話なんです。

この記事の出どころ

研究で検討
論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
専門家・公的情報
厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
  1. 専門家・公的情報障害を理由とする差別の解消の推進

    内閣府/2026(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:合理的配慮(働きやすくするための調整)を求める法的な土台を示せます。

    ここはまだ分かっていません:どこまでが「重すぎる負担」にあたるかは、事情によって判断が分かれます。

  2. 研究で検討合理的配慮(働きやすくするための調整)に基づく就労支援

    発達障害研究掲載論文/2020/発達障害研究 41(4), 276–287(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:配慮は診断名でなく本人の困りごとと職務に合わせて決める、という原則を示せます。

    ここはまだ分かっていません:個別の配慮メニューの効果を比較した研究ではありません。

  3. 研究で検討「車いすの人にとってのスロープのようなもの」:自閉スペクトラム症のある従業員にとっての職場の使いやすさ

    (原題:"It’s like a ramp for a person in a wheelchair": Workplace accessibility for employees with autism)

    Waisman-Nitzan M, Gal E, Schreuer N/2021/Research in Developmental Disabilities 114, 103959(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:物理環境・手順・人の3つが働きやすさを左右すると整理できます。

    ここはまだ分かっていません:聞き取りをもとにした研究であり、配慮の効果量を示すものではありません。

  4. 専門家・公的情報障害者雇用対策

    厚生労働省/2026(2026-08-27 確認)

    この研究でわかっていること:障害者雇用の制度説明に使えます。

    ここはまだ分かっていません:個々の企業の運用実態は含まれません。

制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。

合わなかったら、別のやり方を試してください

ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。