字を書くのがつらい・字が汚い人へ|手書きを減らす整え方
— きれいに書く練習より、書く量を減らすほうが早いです
ポイント
- きれいに書く練習より、手で書く場面そのものを減らすほうが早く楽になります
- 音声入力・写真・住所印を使うと、書く回数はかなり削れます
- 学校や職場には、申し出て話し合って決めるという頼み方の道があります
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窓口で渡された用紙。枠が小さくて、名前がはみ出す。書き直したら、さっきより崩れる。「もう一度お書きください」と言われて、うつむいたまま同じ字を書く。
会議で必死に取ったメモが、あとで自分でも読めない。書いたことは覚えているのに、何と書いたのかが分からない。
少し書くと、指の付け根が固まって痛くなる。年賀状の季節が、毎年ひそかに憂うつになる。
きれいに書く練習をするより、手で書く場面そのものを減らすほうが確実です。
字の崩れは、性格のあらわれでも、気持ちのこもり方でもありません。話すのは得意なのに、書くところだけがうまくいかない人がいます。
なぜ書くのがつらいのか
書く動作そのものに力がいる
ペンを一定の強さで持ち、手首と指を細かく動かし続ける。力の加減をこまかく調整するのが苦手だと、書くだけで消耗します。
筆圧が強すぎて紙がへこむ人も、薄すぎて読めない人もいます。どちらも「気をつけて」で直るものではありません。
形と位置を同時に合わせている
文字の形を思い出しながら、枠の中に収める。2つのことを同時にやっているので、どちらかが崩れます。
マスに入れようとすると形が崩れ、形を整えると枠からはみ出す。行き来しているうちに、書き終わりません。
考える速さと書く速さが合わない
話を聞きながら書くと、書いているあいだに次の話が進みます。追いつこうとして速く書けば、読めない字になる。
思いついたことは、書き終わる前に消えていきます。 速さの問題ではなく、順番が合っていないだけです。
見られていると手が止まる
人に見られる字だと思うと、書き出せません。一度書き直すと、もっと気になる。気にするほど遅くなり、遅いことでまた気になります。
「書くことだけ」が苦手な形もある
読む・書く・計算するといった特定の分野だけが極端に苦手になる形があることを、国の発達障害情報・支援センターが説明しています。
ただし、ここを読んで自分で当てはめる必要はありません。名前をはっきりさせる前に、書かなくて済む形を作るほうが早いです。
【いちばん効く1つ】手で書く場面を数えて、減らす
まず1週間、手で書いた場面をスマホのメモに残してください。 数えてみると、たいてい思っていたより少ないことが分かります。そのうえで、移せるものから移していきます。
声で入れる
スマホのキーボードにあるマイクの印を押すだけです。話した言葉がそのまま文字になります。書くより速く、手も痛くなりません。
- 買い物の覚え書き
- 思いついたことの走り書き
- 長い文章の下書き
変換の間違いは残ります。それでも、あとから直すほうが、最初から書き直すより軽いです。
写すのをやめて、撮る
ホワイトボード、掲示物、もらった紙。写し取らずに撮ってしまいます。撮ったあとに一言だけ添えておくと、あとで探せます。
同じことを何度も書かない
住所・氏名・電話番号は、何度も書くわりに間違えられない情報です。
- 住所印を作る。千円台から作れます
- 宛名のシールをまとめて印刷しておく
- 正しい表記をスマホのメモに1つ入れて、それを見ながら書く
口座番号などの漏れると困る情報は、メモアプリに置かないでください。
よく使う文をひな形にしておく
似た文面を毎回ゼロから書いているなら、ひな形を1つ作って使い回します。名前と日付だけ替えれば出せる形にしておくと、書き出すまでの時間がいちばん縮みます。
手で書くのは署名だけにする
契約や申請でも、手書きでなければいけないのは署名の欄だけということがよくあります。ほかは入力で通るか、窓口で聞いてみてください。
どうしても手で書く場面の道具
ペンを変える
- 少ない力で書けるゲルインクのもの
- 太さは0.7mm前後。細いほど力が要ります
- 軸が太いものを選ぶ。補助グリップは100円ショップでも買えます
2、3本試すだけで、書きやすさは変わります。 合うペンが見つかったら、同じものをまとめ買いしてカバンと職場に置いておきます。
紙を変える
- 枠の大きい用紙がないか窓口で聞く
- 行の幅が広いノート、方眼のノート
- 下敷きを1枚入れる。机の凹凸が消えて書きやすくなります
小さく書こうとしない
小さくまとめようとするほど崩れる人がいます。枠が許すなら、大きめに書くほうが読める字になります。
姿勢と紙の置き方を変える
- 机が高すぎると手首が浮いて、よけいな力が入ります。ひじが直角になる高さに合わせます
- 紙を少しななめに置く。まっすぐ置くより手が動かしやすい人がいます
- 長く書く日は、10分ごとに手を開いて閉じる
書く時間そのものを短く区切るほうが、痛みは出にくくなります。
消せるペンには気をつける
こすると消えるペンは便利ですが、役所や金融機関に出す書類では使えないことがあります。 提出するものは、消えないペンで書いてください。
字を書くのがつらい・字が汚い人へ/書類の記入をラクにする
書類の記入をラクにする
- 記入例をもらう。 窓口にはたいてい見本があります
- 下書きしてから清書しない。 2回書けば2倍疲れます。薄く当たりをつけて上からなぞるほうが1回で済みます
- 書き損じたら、直すより新しい用紙をもらう。 訂正のほうが手間になることが多いです
- 代筆を頼めるか聞く。 職員が書いてくれる窓口もあります
- 紙の前に、画面で出せないか調べる。 郵送より窓口、窓口より電子申請のほうが軽いことがあります
「書くのが苦手なので手伝ってください」と言っていい場面です。窓口の人は、それを断る立場にはいません。
メモを手書きから外す
会議は録音か入力に寄せる
録音するときは、ひとこと断ります。
「あとで正確に整理したいので、録音してもよろしいですか。」
断られたら、要点だけを入力で拾います。全部を書き取ろうとしないことが大事です。
予定は紙の手帳から出す
紙の手帳が続かない理由が「書くのがつらい」ことなら、予定はスマホのカレンダーに寄せてしまうほうが早いです。書く量がまるごとゼロになります。
手で書いたものは、その日のうちに撮る
自分で読めるうちに写真にしておくと、あとで解読しなくて済みます。残し方はメモを取っても後で読めない人へにまとめています。
学校や職場で頼めること
大学には、調整を決めるまでの手順が整理されています。本人が申し出て、状況を確かめ、話し合ったうえで決める、という流れです。黙って耐えるほかにも道があるということです。
学生なら、障害のある学生を支援する窓口や学生相談室が入口になります。
「手書きだと時間がかかるので、レポートは入力での提出でもよいでしょうか。」
働いている人でも、頼み方の形は似ています。
「手書きの報告書だと時間がかかります。同じ内容をメールで送る形でもいいですか。」
ただし、大学での仕組みが、そのまま職場に当てはまるわけではありません。 制度も、相手との関係も違います。職場での切り出し方は職場に「これがつらい」と言えない人へを参考にしてください。
字を書くのがつらい・字が汚い人へ/場面別|手で書くのを避けにくいとき
場面別|手で書くのを避けにくいとき
冠婚葬祭の記帳
受付の芳名帳は、人が並んでいるうえに書き直せません。先に家で名前と住所を書いた紙を用意して、それを見ながら写すと落ち着いて書けます。
薄墨や筆ペンがどうしても苦手なら、細字のサインペンでも失礼にはあたりません。道具より、名前が読めることのほうが大事です。
年賀状やお礼状
宛名は印刷、本文も印刷、手で書くのは最後のひとことだけ。これで気持ちは十分に伝わります。
そのひとことも書けない年は、出さない年があってもいいです。
履歴書
手書きを求める会社はまだありますが、入力での提出を認めるところは増えています。 応募の前に確認して、選べるほうを選んでください。
宅配の送り状
送り状は、アプリで作って印刷できます。コンビニの端末で出せる場合もあります。手書きの伝票は、もう必須ではありません。
毎日書くもの
子どもの連絡帳や日誌のように、毎日書くものは言い回しを3つ決めて使い回すと軽くなります。毎回考えるから重くなります。
書ける日と書けない日がある
同じ人でも、日によって書ける量は変わります。疲れている日、寝不足の日、急かされている日。手が動かない日に字が崩れるのは、当たり前のことです。
大事な書類は、体力の残っている時間帯に回すほうが、結果として速く終わります。夜に無理して書いて翌朝また書き直すより、朝に1回で書くほうが軽く済みます。
書けない日は、音声で入れる、明日に回す、人に頼む。別の手に切り替えるのは、逃げではなく段取りです。
字の見た目で自分を測らない
- ペンを動かす力の加減には、人によって差があります
- 書く速さと、考える速さは別のものです
- 読める字が書ければ、仕事も暮らしも回ります
子どものころに字のことで何度も直されてきた人は、書くという行為そのものに気持ちが重くなっていることがあります。それは、あなたが手を抜いてきたからではありません。
文字を残す方法は、手で書くことだけではありません。別の方法で残したからといって、中身が薄くなるわけではありません。
よくある質問
練習すれば字はきれいになりますか
変わる人もいますし、あまり変わらない人もいます。人によります。
ただ、大人の生活で必要なのは「読める字」であって「美しい字」ではありません。読めれば十分です。 練習に時間を使うより、書かずに済む形を先に作るほうが、日々は軽くなります。
「字は人柄が出る」と言われます
字の見た目と、その人の誠実さは別のものです。気にする人がいるのは事実ですが、それに合わせて自分を削る必要はありません。
大事な相手には、印刷した文書に署名だけ手で添える形でも失礼になりません。
書いていると手が痛くなります
道具や持ち方で軽くなることもあります。ただ、痛みが続く、しびれる、力が入らないというときは、自分で判断せずに医療機関で相談してください。
子どもが書くのを嫌がります
理由は一つではありません。学校の先生や、学習について相談できる機関に、見えている様子をそのまま伝えるところから始めてください。
家で書き取りの量を増やすことが答えとは限りません。
関連する困りごと
- 長い文章が頭に入らない → 長い文章が読めない・頭に入らない人へ
- メモが後で読めない → メモを取っても後で読めない人へ
- 職場に言い出せない → 職場に「これがつらい」と言えない人へ
- 紙が片づかない → 書類が山になっている人へ
まず今日、これだけやってみる
- スマホのキーボードでマイクを1回押して、音声で1文だけ入れてみる
- 手で書いた紙を1枚、写真に撮ってメモに入れる
- 書きやすそうなペンを1本だけ買って、いつも使うカバンに入れる
全部やらなくて構いません。1番が合う人は、それだけで書く量が半分になります。
この記事について
読む・書く・計算するといった特定の分野だけが極端に苦手になる形があることは、国の発達障害情報・支援センターが公開している説明にもとづいています。これは発達障害についての基本的な説明であり、ここに書いた道具や手順の効き目を保証するものではありません。
学校や職場への頼み方については、大学で神経発達障害のある学生への調整をどう決めるかを扱った論文を参考にしました。申し出て、状況を確かめ、話し合って決めるという手順が整理されています。
ただし、これは大学での知見です。 職場は制度も、相手との力関係も違います。同じやり方がそのまま通るとは限りませんし、通らなかったときにあなたの伝え方が悪かったわけでもありません。
ペンや紙の選び方、音声で入れるやり方については、この形を直接調べた研究があるわけではありません。 お金がほとんどかからず、合わなければやめられるという理由で紹介しています。
書くことのつらさが強い、手が痛くて仕事が続けられない、子どものころから書くことでずっと責められてきた。そういうときは、一人で抱えないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
「丁寧に書きなさい」って、たぶん子どものころから何百回も言われてきたんですよね。丁寧に書いているのにそう言われ続けたなら、それはもう気持ちの問題ではないと思いますよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
専門家・公的情報発達障害情報・支援センター
この研究でわかっていること:発達障害の基本的な説明と支援情報の一次情報として使えます。
ここはまだ分かっていません:個別の生活術を保証する情報ではありません。
研究で検討神経発達障害の大学生に対する合理的配慮(働きやすくするための調整)
この研究でわかっていること:「申し出 → 対話 → 決定」という配慮の手続きの型を示せます。
ここはまだ分かっていません:大学での知見。職場は制度も力関係も違うため、そのままは当てはめられません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。