長い文章が読めない・頭に入らない人へ
— 全部読むのをやめると、読めるようになります
ポイント
- 目が滑るのは、頭が別のことを考え始めているサインです
- 全部読むのをやめて、必要なところだけ取り出せば十分です
- 読み上げ機能を使うと、目で読むより入ってくる人がいます
目次を開く(20項目)
契約書を読もうとしても、3行で目が滑る。マニュアルが頭に入らない。長いメールを開いた瞬間に、読む気がなくなる。
読み終わっても、何が書いてあったか思い出せない。
全部読もうとするから、読めなくなります。
なぜ読めないのか
1. 途中で別のことを考え始める
読んでいる最中に、頭が別のところへ行く。そして気づいて最初に戻る。これを繰り返すと、疲れて終わります。
ADHDのある人では、場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいことが研究で検討されています。「集中しないといけない場面だから」という理由で、自動的に切り替わるわけではありません。
2. どこが大事か分からない
全部が同じ重さに見えると、全部を同じ強さで読むことになります。それでは疲れます。
3. 前に読んだところを覚えていられない
長い文章は、前半を覚えたまま後半を読む必要があります。覚えておく作業が重いと、意味がつながりません。
4. 見た目が読みにくい
行が長い、余白がない、文字が小さい。内容以前に、レイアウトのせいで読めないことがあります。
【いちばん効く1つ】全部読まない
長い文章を読むときの目的は、「必要な情報を取り出すこと」です。全部読むことではありません。
先に「何を知りたいか」を決める
読む前に、1行書いてください。
「知りたいこと:解約するときの条件」
探すものが決まっていると、目が滑りにくくなります。 そして、見つかったらそこで読むのをやめていいです。
見出しだけ先に読む
全体の構成をつかんでから、必要なところに戻ります。いきなり本文から入らないでください。
検索する
デジタルの文書なら、キーワードで検索するのがいちばん速いです。
「解約」「期限」「費用」「日付」。知りたい言葉で探して、その周辺だけ読む。
最初と最後だけ読む
メールや報告書は、用件が最初か最後に書いてあることがほとんどです。真ん中は背景の説明であることが多いです。
読み方を変える
1. 読み上げ機能を使う
目で読むより、耳で聞くほうが入ってくる人がいます。
- iPhone:設定 → アクセシビリティ → 読み上げコンテンツ
- Android:TalkBackや読み上げアプリ
- パソコン:ブラウザの拡張機能、Wordの「音声読み上げ」
歩きながら、家事をしながらでも聞けます。 これが合う人にはかなり効きます。
2. 指でなぞる
読んでいる行を、指かペンでなぞります。どこを読んでいるか分からなくなるのを防げます。
子どもっぽく見えるかもしれませんが、効きます。
3. 定規や紙で隠す
読んでいる行以外を隠すと、目に入る情報が減って、集中しやすくなります。
4. 印刷する
画面より紙のほうが読める人がいます。書き込みもできます。
5. 拡大する・行間を広げる
- 文字を大きくする
- 行間を広げる
- 背景の色を変える(白がまぶしい人はクリーム色に)
設定を変えるだけで読めるようになることがあります。まずここを試してください。
6. フォントを変える
読みやすいフォントは人によってちがいます。UDフォント(読みやすさを考えて作られた書体)が合う人もいます。
読んだことを残す
読めても覚えていられないなら、外に出してください。
1文でメモする
段落ごとに、1行だけメモします。「◯章=解約の条件」のように。
あとで探すときの目次になります。
印をつける
大事なところに線を引く、付箋を貼る。紙なら書き込むのがいちばん早いです。
読み終わったら3行にまとめる
- 何が書いてあったか
- 自分に関係するのはどこか
- 次に何をするか
この3行があれば、あとで全部読み直さずに済みます。
場面別
契約書・規約
全部読むのは、正直かなりつらいです。最低限、この3つを探してください。
- お金(いくら、いつ、追加費用)
- 期間(いつまで、自動更新か)
- やめ方(解約の条件、違約金)
分からなければ、聞いていいです。 「この契約で、解約するときの条件を教えてください」と。
マニュアル・手順書
いま必要な手順だけを読んでください。最初から最後まで読む必要はありません。
そして、自分用に短く書き直すと、次からラクです。
長いメール・チャット
- 最初と最後の段落
- 日付、数字、「お願いします」を探す
- 分からなければ「要点を教えていただけますか」と聞く
くわしくはメールの返信がどんどんたまる人へへ。
本
最後まで読まなくていいです。
- 目次を見て、興味のある章だけ読む
- 途中でやめても構わない
- 何冊か並行して読んでもいい
「読み切らなければいけない」というルールはありません。
勉強・試験の教材
範囲が決まっているぶん、やり方が作りやすいです。
- 過去問から見て、出るところだけ読む
- 音声教材があれば使う
- 短時間で区切る
くわしくは資格の勉強が続かない人へへ。
画面の文章
- ブラウザの「リーダーモード」を使う(広告や余計なものが消えます)
- 拡大する
- ダークモードを試す
職場でお願いできること
読むのが遅い・つらいのは、環境で軽くできる部分があります。
「長い文章だと読み落としが出るので、要点を箇条書きでいただけると助かります。」
「口頭の説明より、手順を書いたものがあるほうが正確にできます。」
職場の使いやすさには、仕事の手順も関わることが研究で報告されています。読みやすい形でもらうのは、正当な依頼です。
伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
長い文章が読めない・頭に入らない人へ/読むための環境
読むための環境
- 静かな場所(音がつらい人は人の声や生活音がつらい人へ)
- スマホを別の場所に置く
- 机の上を片づける
- 時間を区切る(15分読んで5分休む)
読める環境を作るほうが、頑張って読むより早いです。
読めない日がある
同じ文章でも、日によって読める量が違います。 これは普通のことです。
- 疲れている日
- 寝不足の日
- 音や光がつらい日
読めない日は、無理に読まないでください。 読み上げに切り替える、翌日に回す、要点だけ聞く。
「今日は読めない日」と分かるだけで、自分を責めずに済みます。
くわしくは気づいたら限界になっている人へへ。
読む前に環境を整える
同じ文章でも、読む場所と体勢で入り方が変わります。
- 手元を明るくする(部屋の照明より、デスクライト)
- 音が気になるなら耳栓かイヤホン
- 姿勢を変える(立って読む、ソファで読む)
- 15分で区切る(長く読み続けようとしない)
「読めない」の半分は、環境の問題であることがあります。
読んだあとに確認する
読み終わったつもりでも、内容がずれていることがあります。
「◯◯という理解で合っていますか。」
自分の理解を言葉にして、相手に確認する。 これでずれが分かります。
読み違えたまま進めると、やり直しになります。確認は1分、やり直しは1日です。
読まなくていいものを決める
全部に目を通そうとすると、必要なものまで読めなくなります。
読まなくていいもの:
- ダイレクトメール、広告
- 全員宛ての連絡(自分の名前がないもの)
- すでに知っている内容の資料
- 長いグループチャットの流れ
自分に関係するところだけ読む。 これは手抜きではなく、必要な取捨選択です。
何度も読み返してしまうとき
同じところを繰り返し読んでしまう場合、位置を見失っていることが多いです。
- 指かペンでなぞる
- 定規や紙で下の行を隠す
- 読み終えた段落に印をつける
「どこまで読んだか」が目で見えると、戻らずに済みます。
長い文章が読めない・頭に入らない人へ/読むのがつらい日の代わりの手
読むのがつらい日の代わりの手
- 読み上げ機能で聞く
- 要約してもらう(人に聞く)
- 明日に回す
- 見出しだけ拾って、必要なところに印をつけておく
「今日は読めない日」と認めて、別の形で処理するほうが、結果的に早いです。
書く側にお願いする
読みにくい文章は、書き方の問題であることも多いです。
「要点を先に3行でいただけると助かります。」 「箇条書きにしていただけますか。」
これは正当な依頼です。 そして、たいていの場合、他の人にとっても読みやすくなります。
自分が書くときも、同じようにしてください。長い文章を送られてつらいなら、自分も送らない。
読むのがつらいのは能力の問題ではない
- 文字の見え方が人によって違います
- 情報を目から入れるのが苦手な人がいます
- 疲れていると、誰でも読めなくなります
メガネをかけるように、読み上げや拡大を使っていいです。
読み方を変えて入るようになるなら、それは読めているということです。
読むことに強いつらさが続く、目が痛くなる、文字が動いて見える。こういうときは、目や読み方について専門的に相談できる場合があります。困りごとが続くときは相談先の探し方をご覧ください。
読む量そのものを減らす
いちばん確実なのは、読む対象を減らすことです。
- メルマガを解除する
- 全員宛ての連絡は自分の名前があるところだけ見る
- 長い資料は、要点だけもらえないか聞く
- 説明書は必要になったときに検索する
読むべきものが減ると、大事なものにたどり着けます。
まとめ:読めないときの5つ
- 読む前に「知りたいこと」を1行書く
- 見出しだけ先に読んで、必要なところに戻る
- 読み上げ機能で聞いてみる
- 指でなぞる、定規で隠す
- 読み終わったら3行にまとめる
全部やらなくていいです。 3番が合う人は、それだけで変わります。
まず今日、これだけやってみる
- 読む前に「知りたいこと」を1行書く
- 見出しだけ先に読む
- 読み上げ機能を1回試してみる
全部読まなくていいです。 必要なところが取り出せれば、それで十分です。
関連する困りごと
- メールが読めない → メールの返信がどんどんたまる人へ
- 指示が分からない → 「なるはやで」と言われて動けない人へ
- 勉強が進まない → 勉強しなきゃと思うほど手がつかない人へ
- 集中できない → 机に向かっても気が散る人へ
この記事について
ADHDのある人では、場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいことが研究で検討されています。読んでいる最中に別のことを考え始めるのは、意志の問題ではありません。
作業を切り替えるときには手間がかかることも研究で整理されています。読んでは戻り、を繰り返すと疲れるのはそのためです。
また、ADHDのある大人は「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいという研究もあります。読んだ内容を覚えておくのが難しいのは、この延長で説明できます。
職場の使いやすさに仕事の手順が関わることは、質的研究で報告されています。
そのうえで、ここに書いた読み方は、研究で確かめられたものではありません。 合うものだけ使ってください。
読み書きに強い困りごとがある場合は、学習障害(LD)が関係していることもあります。気になるときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
3行読んで、気づいたら別のことを考えていて、また最初に戻る。これを5回繰り返すやつ、しんどいですよね。読み方を変えるとラクになります。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討ADHDにおける、場面に応じた「思考のさまよい」の調整
(原題:Context Regulation of Mind Wandering in ADHD)
この研究でわかっていること:「気づいたら別のことを考えている」を、意志ではなく調整の問題として説明できます。
ここはまだ分かっていません:対策の効果を示す研究ではありません。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
研究で検討「車いすの人にとってのスロープのようなもの」:自閉スペクトラム症のある従業員にとっての職場の使いやすさ
(原題:"It’s like a ramp for a person in a wheelchair": Workplace accessibility for employees with autism)
この研究でわかっていること:物理環境・手順・人の3つが働きやすさを左右すると整理できます。
ここはまだ分かっていません:聞き取りをもとにした研究であり、配慮の効果量を示すものではありません。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。