薬を飲み忘れてしまう人へ|見える場所と決めごと
— 飲み忘れたときの対応は、先に主治医と決めておきます
ポイント
- 飲み忘れたときにどうするかは、必ず事前に主治医・薬剤師に確認しておく
- 薬は「見えない場所」に置くと存在ごと忘れる。毎日必ず見る場所に出す
- 既存の毎日の動作(歯みがき、コーヒー)に薬をくっつけると定着しやすい
目次を開く(24項目)
この記事は、薬の飲み方や量について助言するものではありません。 飲む量、時間、飲み忘れたときの対応は、すべて主治医と薬剤師が決めることです。ここで扱うのは、決められたとおりに飲むための生活側の工夫だけです。
最初にやること:飲み忘れたときの対応を確認する
飲み忘れは誰にでも起きます。問題は、そのあとの判断です。
次の受診のときに、主治医か薬剤師にこう聞いておいてください。
「飲み忘れに気づいたとき、どうすればいいですか。何時間以内なら飲んでよくて、それを過ぎたらどうしますか」
薬によって答えはまったく違います。「2回分まとめて飲む」は危険な薬が多くあります。 自己判断は絶対にしないでください。
聞いた答えは、その場でスマホにメモしてください。飲み忘れた瞬間の自分は焦っていて、正しく思い出せません。
自己判断で2回分をまとめて飲まないでください。
- 気づいた時間によって、対応が変わります
- 薬によって、指示が違います
いちばん確実なのは、薬局か処方した医師に聞くことです。
- 薬局には電話で聞けます
- もらった説明書に、飲み忘れたときの対応が書いてあることが多いです
1回聞いて、メモしておくと、次から自分で判断できます。
なぜ忘れるのか
成人ADHDでは、あとで行うことを覚えておく力に困難が出やすいことが実験で確かめられています。毎日決まった時刻に何かをする、というのは、この力を毎日使い続ける行為です。
「大事な薬だから忘れない」は成り立ちません。 大事かどうかと、思い出せるかどうかは別です。
見える場所に出す
引き出しや戸棚にしまうと、存在ごと忘れます。 毎日必ず目に入る場所に出してください。
| 飲むタイミング | 置き場所の例 |
|---|---|
| 朝食後 | 食卓の上、電気ケトルの横 |
| 就寝前 | 枕元、歯ブラシの横 |
| 昼(外出先) | 財布の中、カバンの常備ポーチ |
| 食後すぐ | 食卓の上(見えるところ) |
ただし、小さな子どもやペットが触れる場所は避けてください。 見える場所と手の届く場所は分けられます(棚の上など)。
すでにやっている動作にくっつける
新しい習慣を単独で作るのは難しいので、毎日必ずやっている動作の直後に置きます。
「歯をみがいたら飲む」 「朝のコーヒーを淹れたら飲む」
「もし〜したら〜する」と先に決めておくやり方は、目標を達成しやすくすると報告されています。習慣は同じ合図と行動の反復で育つことも研究で示されています。
「朝に飲む」ではなく、引き金の動作を1つ指定するのがコツです。
一包化・お薬カレンダーを相談する
一包化
複数の薬を1回分ずつまとめて包装してもらう方法です。薬局に相談できます。
飲む前の仕分けという工程が消えます。
お薬カレンダー/ピルケース
曜日ごとのポケットに入れておくと、飲んだかどうかが見ただけで分かります。
「今日飲んだっけ?」で悩む時間がなくなるのが、最大の利点です。
どちらも薬剤師さんに相談すれば教えてもらえます。
通知は「動ける時刻」に
スマホのアラームを使う場合、その時刻に実際に薬を飲める状況かを考えて設定してください。
通勤電車の中で鳴っても、消すだけになります。
そして通知を消す前に飲む。 「あとで飲もう」で消した通知は、二度と戻ってきません。
記録を残す
飲めた・飲めなかったの記録は、受診のときに役に立ちます。
「最近どうですか」と聞かれて「まあまあです」としか言えないより、
「今月は3回飲み忘れました。全部、夜遅く帰った日でした」
と言えるほうが、治療の調整に直結します。
ピルケースの空き具合を見るだけでも記録になります。 アプリでも紙でもかまいません。
薬を飲み忘れてしまう人へ/外出先・旅行のとき
外出先・旅行のとき
- 1日分を小分けにして持ち歩く(ピルケースが便利です)
- 旅行のときは、予備を数日分多めに持つ
- 飛行機に乗るときは、手荷物に入れる(預けた荷物が届かないことがあります)
- 処方箋やお薬手帳の写真を撮っておく
旅行先で薬が切れると、けっこう困ります。 多めに持つのが基本です。
処方をもらいに行くのを忘れる
飲み忘れ以前に、処方をもらいに行くのを忘れるという問題もあります。
- 受診の予約を、その場でカレンダーに入れる
- 薬が残り1週間になったら通知が来るよう設定する
- 薬局の配達サービスを使う(対応しているところがあります)
くわしくは約束や予約をすっぽかしてしまう人へへ。
飲む時間を「行動」にくっつける
時刻で覚えようとすると、忘れます。
- 朝ごはんを食べ終わったら
- 歯をみがいたら
- 布団に入る前に
毎日必ずやることの直後に置いてください。
くわしくは「〜したら〜する」で行動が変わるへ。
目に入る場所に置く
引き出しの中にしまうと、忘れます。
- 食卓の上
- 歯ブラシの隣
- 枕元
「飲む場面が起きる場所」に置くのがいちばん効きます。
ただし、子どもやペットがいる家では、手の届かない場所にしてください。棚の高い位置など、自分の目には入るが取られない場所を選びます。
飲んだかどうか分からなくなる問題
「飲んだ気がするけど、自信がない」がいちばん困ります。
お薬カレンダー・ピルケースを使う
曜日ごとに分かれたケースに、1週間分を先にセットしておきます。
残っているかどうかで、飲んだか分かります。 記憶に頼らなくて済みます。
100円ショップにもありますし、薬局でも買えます。
一包化してもらう
薬局で「一包化してください」と頼むと、飲むタイミングごとに1袋にまとめてくれます。
- 何種類あっても1袋
- 袋に日付を印刷してもらえることもあります
- 無料ではありませんが、保険が使えます
飲む薬が多い人には、これがいちばん効きます。
通知を使う
アラームの名前を動作にする
「薬」ではなく、「薬を飲む」。
さらに、止めた瞬間に飲むと決めてください。「あとで」にすると、そのまま忘れます。
服薬管理アプリ
飲んだらチェックする形のアプリがあります。記録が残るので、飲んだか確認できます。
ただし、アプリを開くのが面倒で続かない人もいます。ピルケースのほうが確実な場合が多いです。
続けられないときは相談する
飲み忘れが続く、副作用がつらくて飲みたくない、飲む意味が分からなくなった。
これは正直に医師に伝えていい内容です。
- 飲む回数を減らせる薬に変えられることがあります
- 1日1回のタイプがある場合もあります
- 副作用の相談もできます
黙って飲まなくなるのが、いちばんよくない結果になります。
「忘れてしまうことが多い」と言うだけで、対応が変わることがあります。
薬のことで悩んでいる、副作用がつらい、飲む意味が分からなくなった——こうした気持ちは、記事ではなく主治医に話してください。
すぐに主治医に連絡がつかず、気持ちが追い込まれているときは 相談先・公的窓口 にある窓口も使えます。
飲む回数そのものを減らせないか
回数が多いほど、忘れます。
- 1日3回 → 1日1回のタイプがある薬もあります
- 飲む時間をそろえられることもあります
これは医師に相談していい内容です。
「昼の分をよく飲み忘れます。回数を減らせる方法はありますか。」
忘れることを正直に言うのが、いちばん早い解決になります。 黙って飲まなくなるのが、いちばんよくない結果です。
薬を飲み忘れてしまう人へ/家族に手伝ってもらう
家族に手伝ってもらう
一人で管理しきれないなら、外から声をかけてもらうのが確実です。
- 朝食のときに「飲んだ?」と聞いてもらう
- ピルケースの残りを一緒に確認する
「管理して」ではなく「声をかけて」くらいが、お互い負担になりません。
薬をなくす・切らす対策
飲み忘れと同じくらい多いのが、薬そのものを切らすことです。
残りが減ったら受診の予約を入れる
「あと1週間分」になった時点で、その場でカレンダーに受診日を入れてください。
なくなってから動くと、間に合いません。
予備を持ち歩く
1〜2回分をカバンのポーチに入れっぱなしにしておくと、出先で困りません。
入れ替えを忘れないよう、月に1回確認する日を決めてください。
薬局を1か所に決める
同じ薬局を使うと、飲み合わせの確認もしてもらえます。電話で相談もできます。
旅行・外泊のとき
- 日数分+2日分を持つ
- 手荷物に入れる(預けた荷物が届かないことがあります)
- お薬手帳も持っていく
- 時差がある場合は、事前に飲み方を確認しておく
「泊まりセット」に薬を入れる場所を決めておくと、毎回考えなくて済みます。
副作用がつらくて飲みたくないとき
これも正直に伝えていい内容です。
- 別の薬に変えられることがあります
- 量を調整できることがあります
- 飲む時間を変えるだけで軽くなることもあります
自己判断でやめないでください。 やめ方にも順番があります。
困りごとが続くときは、相談先の探し方もご覧ください。
場面別
朝の薬
朝はいちばん時間がなく、忘れやすい時間帯です。
食卓か、歯ブラシの隣に置いてください。「食べ終わったら飲む」と決めます。
昼の薬
外にいることが多く、いちばん忘れられます。
- カバンのポーチに入れっぱなしにする
- 昼食の場所に置いておく(職場のデスクなど)
- 1日1〜2回の薬に変えられないか相談する
夜・寝る前の薬
眠くなってから思い出すと、起きるのが面倒でやめてしまいます。
枕元に置いて、水も一緒に置いておいてください。
頓服(必要なときに飲む薬)
いつ飲んだか分からなくなりがちです。飲んだらスマホにメモするか、日付の書けるケースを使ってください。
飲み忘れを責めない
飲み忘れるのは、意志の問題ではありません。仕組みがないと、誰でも忘れます。
責めて落ち込むと、通院自体が嫌になることがあります。それがいちばん困る結果です。
「今日は忘れた。明日は置き場所を変える」くらいで、次に進んでください。
まとめ:飲み忘れを減らす5つ
- 目に入る場所に置く(食卓、歯ブラシの隣、枕元)
- 毎日やっている行動にくっつける(食後、歯みがきのあと)
- お薬カレンダーかピルケースを使う(飲んだか分かります)
- 薬局で一包化を相談する
- 飲み忘れたときの対応を、先に確認しておく
1つずつ試してください。 3番がいちばん確実です。
まず今日、これだけやってみる
- 薬を、毎日必ず目に入る場所(食卓・歯ブラシの隣)に移す
- 薬局で「一包化できますか」と聞いてみる
- 飲み忘れたときの対応を、薬局か説明書で確認してメモする
この記事について
ADHDのある大人は、「あとでやることを覚えておく力」に困りごとが出やすいことが実験で確かめられています。毎日決まった時刻に何かをするのは、この力を毎日使う作業です。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。習慣が同じ合図と行動のくり返しで育つことも研究で示されています。
一方で、一包化やお薬カレンダーがどれだけ飲み忘れを減らすかを、発達障害のある成人を対象に調べた研究は見つかっていません。 ここに書いたのは、日常で試せる形に組み立てたものです。
そして、薬の量・時刻・飲み忘れたときの対応は、主治医と薬剤師にご相談ください。 この記事は、その指示を守りやすくするための工夫だけを扱っています。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
- 編集部で試行中
- この工夫そのものを調べた研究は見つかっていません。仕組みとしては筋が通るので、小さく試してみてください。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
研究で検討習慣はどうやってできるのか:日常生活での習慣づくりを追った研究
(原題:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world)
この研究でわかっていること:同じ合図と同じ行動の反復が習慣化を支えること、定着に個人差が大きいことを示せます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDを対象にした研究ではありません。「21日で習慣化」も本研究の結論ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
専門家・公的情報まもろうよ こころ(相談窓口一覧)
この研究でわかっていること:緊急性のあるときの案内先として使えます。
ここはまだ分かっていません:サイトの記事は相談・受診の代わりになりません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。