説明が下手と言われる人へ|順序立てて話せないとき
— 話し始める前に、聞き手へ地図を渡します
ポイント
- 伝わらないのは、聞き手が今どこの話かを見失っているからです
- 話し始める前に、話題と結論と個数の3つを渡すと迷子になりません
- 話がそれたときは、言い直さずに戻すと宣言するだけで足ります
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友達に昨日の出来事を話していたら、途中で「え、それ誰の話?」と止められました。家族に来週の予定を伝えたら、伝わっていなくて予定が重なりました。
自分の中では、時間の順にきちんと並べて話しているつもりです。でも相手はいつも途中で分からなくなります。補おうとして説明を足すと、余計に長くなって、最後には「もういいや」という顔をされます。
子どものころから「何が言いたいの」と言われてきた人もいると思います。そのたびに、自分の頭が悪いのだと思ってきたかもしれません。
先に結論を書きます。伝わらないのは、聞き手が今どこの話をされているのか分からないからです。 話の中身より先に、地図を渡してください。
この記事は、友達や家族や店員さんとの、日常の説明の話です。仕事の報告は求められる形が違うので、報告のタイミングが分からない人へを見てください。
なぜ順序立てて話せないのか
自分の頭の中では、全部が同時に見えている
出来事も、理由も、感想も、頭の中では一枚の絵として同時にあります。それを1本の線にほどいて出すのが、説明という作業です。絵を持っていない相手に、絵のまま渡しても届きません。
話しながら順番を決めている
口を動かしながら、次に何を言うかを決め、相手の反応も見ています。作業を切り替えるたびに手間がかかることは、認知の研究で古くから整理されています。同時に3つやれば、どれかが崩れます。
相手が何を知っているか分からない
相手の頭の中は見えません。どこから話すべきか決められないので、念のため最初から全部話すことになり、長くなります。
大事なところを選べない
自分にとっては、細かいところも全部大事です。何時だったか、誰がどう言ったか、そのとき自分がどう感じたか。削ると嘘になる気がして削れない。 その結果、聞き手は重い荷物を全部渡されます。
【いちばん効く1つ】最初の10秒で地図を渡す
中身を話す前に、3つだけ言います。これだけで、伝わり方がはっきり変わります。
- 何の話か(話題の名前)
- どうなったか(結論を先に一言)
- いくつあるか(話の個数、または長さ)
「来週の土曜の予定の話です。行けなくなりました。理由は2つあります。」
たった3つですが、聞き手はこれで「土曜の話を聞く箱」を用意できます。箱を持っている人は、途中で迷子になりません。
なぜ地図が効くのか
人は、話を聞きながら頭の中に置き場所を作っています。置き場所がないと、聞いた言葉が積み上がらず、こぼれていきます。
先に「これから何の話か」を伝えるのは、相手にこぼさない入れ物を渡すことです。あなたが説明を上手にする必要はありません。相手の準備を助けるだけです。
長さを宣言する
聞き手がいちばん不安なのは、この話がいつ終わるか分からないことです。
「1分で終わります。」 「3つあります。1つ目が長いです。」
先に長さを言うと、相手は最後まで聞く構えを作れます。 短く話す自信がなくても、宣言だけならできます。
説明が下手と言われる人へ/順番の型は4つだけ
順番の型は4つだけ
地図を渡したら、あとはこの順に並べます。毎回同じ順でかまいません。
1. 何が起きたか、どうしたいか
いちばん重いところを先に置きます。時間の順に始めないのがこつです。「朝起きたら」から始めると、相手は結論まで待たされます。
2. なぜそうなったか
理由は、多くても2つまでにします。3つ目からは、たいてい相手の関心の外です。
3. たとえばどういうことか
具体を1つだけ足します。例は説明を短くします。 抽象的な言葉を3回言い換えるより、例が1つあるほうが速く届きます。
4. 相手にどうしてほしいか
聞くだけでいいのか、意見がほしいのか、動いてほしいのか。ここを言わないと、相手は反応の仕方に困ります。
「聞いてくれるだけで大丈夫です。」 「どっちがいいと思うか、教えてほしいです。」
最初は、この4つを紙に書いて手元に置いておいてかまいません。何度か使ううちに、順番のほうが体に残ります。その場で組み立てないための型なので、見ながらで十分です。
4つ全部を言う必要はありません。足りないと感じたら足す。 最初から足しておかないほうが、たいていうまくいきます。
相手の持っている前提をそろえる
説明が長くなる人の多くは、どこから話すか迷っています。迷ったら、聞いてしまうのが早いです。
「◯◯の件、どこまで知っていますか。」 「前に話したところから話しますか。それとも最初からのほうがいいですか。」
聞くのは失礼ではありません。 むしろ、相手の時間を大事にしている行動です。
登場人物が複数いる話では、先に名前と関係だけ渡しておきます。
「出てくるのは3人です。上司と、隣の課の人と、私です。」
これだけで「それ誰?」で止められる回数が減ります。一人で直そうとせずに、誰かに外から声をかけてもらう形にも意味がありそうだと報告した、国内の小さな研究もあります。
話がそれたときの戻り方
途中でそれるのは、そんなに悪いことではありません。問題は、それたまま帰ってこないことです。
気づいたら、宣言して戻す
「すみません、話がそれました。土曜の予定の話に戻します。」
言い直そうとして最初から説明し直す必要はありません。戻ると宣言するだけで、相手はもう一度ついてきてくれます。
相手が困った顔をしたときも同じです。慌てて言葉を足すと、話はもっと広がります。一度止まって、話題の名前をもう一度言うほうが早く戻れます。
それやすい合図を覚えておく
- 「そういえば」と言ったとき
- 人の名前を新しく出したとき
- 相手が相づちを打たなくなったとき
この3つが出たら、一度止まって地図を確認します。
途中で確認する
長くなりそうなときは、真ん中で一度聞きます。
「ここまで大丈夫ですか。」
止まる場所を作ると、相手も質問しやすくなります。質問が来る説明は、伝わっている説明です。
説明が下手と言われる人へ/場面別の伝え方
場面別の伝え方
道や場所を説明するとき
言葉で伝えようとしないでください。地図アプリの画面を送るか、目印を3つだけ言います。曲がる回数が多い道を口で説明するのは、誰にとっても難しい作業です。
見たものや読んだものを人に話すとき
あらすじを最初から話すと、まず伝わりません。「どういう話か」を一文にしてから始めます。
「兄弟がずっとけんかして、最後に仲直りする話です。」
そのあとで、好きな場面を1つだけ足せば十分です。
病院や窓口で自分のことを説明するとき
その場で組み立てず、行く前に紙かスマホに3行書いて持っていきます。いつから/どんなふうに/いちばん困っていること、の3つで足ります。
読み上げても、見せてもかまいません。書いたものを渡すのは、手を抜いていることにはなりません。
電話で用件を伝えるとき
顔が見えないぶん、地図はもっと短く渡します。名乗ったあとに用件の名前と、かかる時間だけを先に言ってください。
「◯◯の予約の件で、2分だけお願いします。」
話す内容は、かける前にメモに3行書いておくと、途中で飛びません。
家族に予定を伝えるとき
口で言うと、たいてい残りません。日付と時間だけは文字で送ってください。話すのは、その補足だけにします。
口で説明しないで済ませる
そもそも、全部を言葉にする必要はありません。渡せるものは渡してしまうほうが速いです。
現物や画面を見せる
買ったものの話なら、商品のページを開いて見せる。行った場所の話なら、写真を1枚見せる。見せてから話すと、説明はほとんど要らなくなります。
先に文字で送っておく
込み入った相談は、会う前にメッセージで送っておきます。相手は読んでから来るので、その場では確認だけで済みます。
紙に丸と線を書く
登場人物や物の流れがある話は、丸を3つ書いて線でつなぐだけで通じます。絵の上手さは関係ありません。紙があると、相手の目線が同じ場所に来ます。
よくある質問
「で、結局何?」と言われるのがつらいです
その一言は、あなたを責めているというより、相手が置き場所を見つけられていない合図です。次の一言で結論だけ言い直せば十分です。うまく説明し直そうとしなくて大丈夫です。
短くすると、冷たいと思われませんか
短さと冷たさは別のものです。心配なら、最後に気持ちを一言だけ足してください。「急に言ってごめんね」で十分伝わります。
書くのは平気なのに、話すとだめになります
その場で作るのが重いだけで、伝える力がないわけではありません。説明そのものを文字に寄せてかまいません。 話す場面で言葉が出なくなる人は、話そうとすると頭が真っ白になる人へもあわせて読んでください。
相手によって伝わったり伝わらなかったりします
伝わり方は、片方だけの問題ではありません。同じ説明でも、前提を共有している相手には短くて済みます。伝わらなかった相手には、次から地図を長めに渡すと決めておけば十分です。
説明が長くなって、相手が飽きているのが分かります
途中で気づけているのは強みです。気づいた時点で「まとめます」と言って結論に飛んでください。中断は失礼にはあたりません。
関連する困りごと
- 言葉が出てこない → 話そうとすると頭が真っ白になる人へ
- 話が止まらなくなる → 話しすぎてしまう人へ
- 仕事の報告が難しい → 報告のタイミングが分からない人へ
- 雑談が続かない → 雑談が苦手な人へ
まず今日、これだけやってみる
- 話し始める前に「◯◯の話です」と話題の名前だけ言う
- 結論と、話の個数を先に足す
- それたと気づいたら「戻します」と言って戻る
3つとも、話の中身を変えるものではありません。渡し方を変えるだけなので、今日の夕方の会話から使えます。
うまく話そうとするのを、今日でやめてください。 相手に地図を渡すだけで、伝わり方は変わります。
この記事について
作業を切り替えるたびに手間がかかることは、認知科学の分野で、研究をまとめた形で整理されています。話しながら順番を決めて相手の反応も見る、という状態が重くなるのは、一般的な頭の働きとして説明できます。
外から声をかけてもらう形については、ADHDのある成人へのコーチング(そばで伴走してもらう支援)を調べた国内の研究が、日常生活の困りごとに改善があったと報告しています。
ただし、正直に書いておきます。切り替えの研究はADHDやASDに固有のものではありません。 コーチングの研究も10名で、比べる相手のいない小さな研究です。効果の大きさは分かっていません。ここで紹介した地図の渡し方や順番の型は、これらの考え方に沿って組んだもので、やり方そのものを確かめた研究があるわけではありません。
説明が伝わらないことが続いて、人と関わるのがつらくなっているときは、一人で抱えないでください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
自分の中ではちゃんと筋が通っているのに、相手が困った顔をする。あれ、話す力の問題というより、相手が最初に地図を持っていないだけのことが多いんですよ。地図は10秒で渡せます。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討ADHDのある成人に対するコーチングの効果—10名のADHD成人への臨床研究
この研究でわかっていること:外から声をかけてもらう仕組み(伴走)に意味がありうる、と示唆できます。
ここはまだ分かっていません:10名で、比べる相手のいない研究です。効果の大きさは分かっていません。
研究で検討作業の切り替えについて
(原題:Task switching)
この研究でわかっていること:割り込みや並行作業が実際に効率を落とすことを、一般的な認知の性質として説明できます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASD固有の研究ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。