人に頼れない・相談できない人へ|頼り方の練習
— 小さい頼みごとから、順番に慣れていきます
ポイント
- 頼れないのは性格ではなく、頼み方を教わっていないだけのことが多いです
- 断られても困らない小さい頼みごとから、練習として始めます
- 相談先は身近な人だけではありません。関係の外にも置いておきます
目次を開く(11項目)
「手伝ってもらえますか」の一言が、どうしても口から出ない。頼めば早いと分かっているのに、言おうとすると喉の手前で止まる。結局ぜんぶ自分で抱えて、期限の前の日に一人で焦っています。
誰かに聞けば3分で終わることを、2時間かけて調べている。そういう日が積み重なると、疲れ方が普通ではなくなります。
そして、動けなくなってから「なんでもっと早く言わなかったの」と言われる。言えたら苦労していない、と思いながら謝ることになります。
先に結論を書きます。頼れないのは、あなたが強がっているからではありません。 頼る手順を教わったことがないだけです。手順は、大人になってからでも身につきます。
この記事では、仕事の報告のしかたではなく、人に頼ること自体が重いという話を扱います。
なぜ、頼るのがこんなに難しいのか
頼んだあとに何が起きるか、読めない
相手がどう感じるか、どこまでやってくれるか、そのあと自分は何をお返しすればいいのか。先が読めないものは、頭が「危ない」と判断します。 頼むのをためらうのは、その判断が働いているだけです。
一人でやるほうは、少なくとも見通しが立ちます。しんどいけれど、予想はできる。だから、しんどいほうを選んでしまいます。
「これくらいで頼んでいいのか」が測れない
自分がどれくらい困っているのかを、その場で数字にするのは難しいことです。疲れや行きづまりに気づきにくい人なら、なおさら測れません。
測れないと、判断の基準が「相手が嫌がらないか」だけになります。その基準では、いつまでも「まだ頼むほどではない」という答えしか出ません。
断られることが、人格の否定に感じる
用件を断られただけなのに、自分そのものを拒まれた気がする。この受け取り方をしていると、1回の「ごめん、今むり」がとても重くなります。
一度その痛みを味わうと、次から頼む前に「断られる場面」を想像するようになります。想像した時点で、もう疲れています。
頼って、嫌な顔をされた記憶がある
過去に相談して、「そんなことも分からないの」と言われた。困っていると伝えたら、大げさだと笑われた。そういう経験があると、体が先に止まります。
まわりに受け入れられている感覚と心の健康が関係している、という報告があります。受け入れられた経験が少ないまま、頼るのが怖くなっていったとしても、不思議ではありません。
【いちばん効く1つ】断られても困らないことから頼む
いきなり大事な相談から始めないでください。練習は、失敗しても損しないところでやります。
こういうものから始めます。
- コンビニで「袋をください」と言う
- 店員に「これ、どこにありますか」と聞く
- 同僚に「そのペン、1本もらえますか」と言う
- 家族に「先にお風呂に入っていい?」と聞く
断られても、1分後には忘れられる頼みごとです。中身に意味はありません。頼んで、返事をもらう。この往復を体に通すのが目的です。
1日1回で十分です。2週間続けると、口が動く感じが変わってきます。
なぜ小さいものから始めるのか
頼るのが怖い人は、たいてい「重い相談」しか経験がありません。追いつめられてから、勇気を出して、一世一代の告白のように頼む。だから毎回、心臓が壊れそうになります。
軽い頼みごとの回数が増えると、頼むこと自体の重さが下がります。 重さが下がってはじめて、大事な相談ができるようになります。
記録は、正の字でいい
続いているか分からなくなるので、数だけ数えてください。手帳やスマホのメモに、頼めた日は1本線を足す。内容も相手も書かなくていいです。 線が増えていくのを見るだけで、続きます。
人に頼れない・相談できない人へ/頼みごとは、気持ちではなく「動作」で言う
頼みごとは、気持ちではなく「動作」で言う
言えない人ほど、言い方が長くなります。事情の説明から入って、申し訳なさを足して、結局何をしてほしいのか伝わらない。
短くします。相手が体を動かせる形にするのがコツです。
✗「最近ちょっと余裕がなくて、いろいろ立て込んでいまして……」 ○「この資料の数字だけ、明日までに見てもらえませんか。」
ちがいは3つです。
- 何を(この資料の数字)
- いつまでに(明日まで)
- どうしてほしいか(見てほしい)
この3つがそろっていれば、相手は「できる」「できない」をすぐ答えられます。判断させる手間を減らすことが、いちばんの気づかいです。
事情の説明は、あとでいい
理由から話すと、話が長くなって相手が身構えます。先に用件、あとから事情。順番を入れかえるだけで、頼みやすさが変わります。
「代わりにやって」ではなく「一部だけ」
全部を渡そうとすると、こちらも頼みにくく、相手も受けにくくなります。切り分けて、一部だけ頼んでください。
「全部でなくていいので、最初の1ページだけ一緒に見てもらえますか。」
一部だけなら、相手も引き受けやすくなります。そして一度受けてもらえると、次はもう少し頼みやすくなります。
口で言えないなら、文字で送っていい
声に出そうとすると止まる人でも、書くほうは動くことがあります。チャットでもメールでも、付せん1枚でもかまいません。
「お手すきのときで大丈夫です。◯◯の件、10分だけ相談させてください。」
文字なら、送る前に読み返せます。相手も、都合のいいときに読めます。頼めない自分を直すより、頼める手段を選ぶほうが早いです。
頼み先を、3つ以上に分けておく
一人にだけ頼っていると、その人が忙しい日に詰みます。そして、断られたときのダメージが大きくなります。
紙に書いて分けておいてください。
| 内容 | 頼む相手 |
|---|---|
| 仕事の進め方 | 直属の上司・先輩 |
| 手順が分からない | 同じ仕事をしている同僚 |
| 生活のこと | 家族・パートナー |
| 気持ちのこと | 友人・支援機関 |
| 制度やお金のこと | 役所・公的な窓口 |
全部を一人に頼ろうとすると、うまくいきません。 内容ごとに宛先を変えるだけで、頼みやすさが上がります。
「この人には、これを頼む」と決めておく
その場で「誰に言おう」と考えると、考えているうちに時間が過ぎます。先に宛先を決めておけば、迷う工程がなくなります。
お礼は短く、その場で
長いお礼の文を書こうとすると、書けないまま日が過ぎます。「助かりました。ありがとうございます」で十分です。 その場で言えたら、それで終わりにしてください。
お返しを何かしなければ、と考え始めると、次に頼むのが重くなります。お礼を言ったところで一度精算する。そう決めておくと、借りがたまりません。
人に頼れない・相談できない人へ/相談先は、人間関係の外にも置いておく
相談先は、人間関係の外にも置いておく
身近な人に言えないなら、無理に身近な人にしなくてかまいません。関係が続かない相手のほうが、話しやすいことがあります。
- 職場のことなら、厚生労働省の「こころの耳」に働く人向けの相談先がまとまっています
- 住んでいる地域の相談窓口は、診断や手帳がなくても使えるところがあります
- 医療機関、支援機関、電話やチャットの相談。入口は1つではありません
ここには、気をつかう関係がありません。 断られても明日の空気が悪くなりませんし、お返しも要りません。頼るのが苦手な人にとって、この「関係のなさ」はとても大きな助けになります。
何を話せばいいか分からないときは
窓口に電話する前に、3つだけメモしておきます。
- いま、いちばん困っていること
- それがいつから続いているか
- 何を知りたいか(分からなければ「何ができるか知りたい」でいい)
うまく説明できなくても大丈夫です。 整理するのは、相手の仕事です。
具体的な窓口の探し方は、この記事の最後にまとめてあります。
断られたときの、受け取り方
断られる日は必ず来ます。そのときの意味を、先に決めておいてください。
断られた = その人の、その日の都合が合わなかった
これだけです。頼んだ内容がだめだったのでも、あなたがだめなのでもありません。
そして、断られたら次に行きます。ここで止まらないために、頼み先を分けておきます。
「分かりました。ほかの方に聞いてみますね。」
この一言で終わらせて、名簿の次の人に行ってください。1回で通らないのが普通です。
断られ続けるときは、頼み方を1か所だけ変える
3回続けて断られたら、内容ではなく形を見直します。時間帯、相手、伝える手段のどれか1つだけ変えてみてください。忙しい時間に口で頼んでいたものを、朝いちばんに文字で送るだけで通ることがあります。
場面別の言い方
職場で
「5分だけ、教えてもらってもいいですか。」
先に時間を言うと、相手が受けやすくなります。用件は、そのあとで大丈夫です。
家族やパートナーに
「今週、洗い物だけ代わってもらえないかな。」
家の中では、頼みごとが評価のように受け取られることがあります。期間と範囲を区切ると、話が具体的になります。
友人に
「愚痴を10分だけ聞いてほしいんだけど、大丈夫?」
助言がほしいのか、聞いてほしいだけなのか。先に言っておくと、お互いが楽になります。
病院や窓口で
「うまく説明できないので、メモを見ながら話してもいいですか。」
読み上げてかまいません。ここでうまく話す必要は、まったくありません。
よくある質問
迷惑をかけるのが、どうしても怖いです
早めに頼まれた小さいことより、限界になってからの立て直しのほうが、まわりの手間は大きくなります。 迷惑をかけたくないなら、早く頼むほうが理屈に合っています。
頼るのは甘えではないですか
一人でできることの量は、人によってちがいます。同じ量をこなしても、疲れ方はちがいます。同じやり方で足りない部分を、別のやり方で埋めているだけです。
相談しても分かってもらえませんでした
相手が1人だっただけです。合う相手に当たるまで、人数を試してください。 3人目で通じることも珍しくありません。分かってもらえなかった経験を、全員に広げないでください。
頼ったあとに、罪悪感が残ります
頼った直後にその気持ちが出るのは、よくあることです。その日のうちに消そうとしないでください。 お礼を1回言って、その件は終わりにします。気持ちのほうは、回数を重ねるうちに小さくなっていきます。
関連する困りごと
- 職場で「これがつらい」と伝えたいなら → 職場に「これがつらい」と言えない人へ|配慮のお願いのしかた
- 頼まれるほうを断れなくて苦しいなら → 頼まれごとを断れない人へ|角を立てずに断る言い方
- 家族に分かってもらえないなら → 家族に特性を分かってもらえない人へ|伝え方の順番
- 仕事でいつ言えばいいか分からないなら → 報告のタイミングが分からない人へ|いつ何を言えばいいか
まず今日、これだけやってみる
- 断られても困らない頼みごとを、1つだけ口に出す(袋、ペン、道を聞く、なんでもいい)
- 頼み先を紙に3つ書く(仕事/生活/気持ち、で分ける)
- 次に頼みたいことを、何を・いつまでに・どうしてほしいか の3つで1行にする
全部できなくて大丈夫です。1つめだけでも、今日の練習としては十分です。大事な相談ができるようになるのは、軽い頼みごとを何回もしたあとです。順番を飛ばさなくていいんです。
この記事について
まわりに受け入れられている感覚と、心の健康が関係している、という研究の報告があります。頼るのが怖くなる背景に、それまでの受け止められ方が関わっている可能性を示せます。ただしある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。 「受け入れられなかったから頼れなくなった」と決めつけられるものではない、ということです。
働く人向けの相談先は、厚生労働省の「こころの耳」にまとまっています。職場の悩みの入口として案内できますが、医療機関の代わりではありません。 体や心の不調があるときは、そちらは別に相談してください。
この記事に書いた練習のしかたや言い方そのものは、研究で確かめられたものではありません。仕組みとしては筋が通ると考えて書いていますが、合う人と合わない人がいます。小さく試して、残ったものだけ使ってください。うまくいかなくても、あなたの努力が足りなかったわけではありません。
誰にも言えないまま、眠れない日や体が動かない日が続いているときは、そこで止まらないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
「これくらいで頼むのは申し訳ない」って思っているうちに、いつも限界まで来ちゃうんですよね。頼るって気持ちの問題に見えて、実は言い方を知っているかどうかの話だったりしますよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
専門家・公的情報こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)
この研究でわかっていること:職場の悩みの相談先として案内できます。
ここはまだ分かっていません:医療機関の代わりではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における「受け入れられた経験」と心の健康
(原題:Experiences of Autism Acceptance and Mental Health in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。