文章がまとまらない・書き出せない人へ|順番は後から決める
— 先に材料を散らかしてから、あとで並べ替えます
ポイント
- 書けないのは、考えることと並べることを同時にやっているからです
- 思いついた順に短い文で出しきってから、あとで並べ替えると進みます
- 話し言葉で口に出したものを文字にすると、書き出しの重さが減ります
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提出は明日。中身は頭の中にあるはずなのに、1行目が決まりません。書いては消し、また書いては消して、30分たっても画面に残っているのは日付だけ。
やっと進んでも、読み返すと話があちこちへ飛んでいます。前の段落と後ろの段落がつながらない。直そうとして全部消して、また最初に戻ります。
まわりが15分で出しているものに、こちらは半日かかります。そのうえ提出したあとで「で、何が言いたいの」と聞き返されることもあります。
先に結論を書きます。書けないのは、考えることと並べることを同時にやっているからです。 この2つを切り離すと、文章はかなり出てきます。
なぜ文章がまとまらないのか
完成した形から書こうとしている
頭の中に「うまい文章」の見本があって、1行目からそこに合わせようとする。合わない言葉は全部だめに見えるので、書いた端から消えていきます。最初から整った順で出てくる人は、あまりいません。
3つの作業が一度に動いている
文章を書くとき、実は別々の作業が同時に走っています。何を言うか考える。どの順に置くか決める。日本語の形に整える。まとめて回そうとすると、どれも途中で止まります。
書いている途中で次を見失う
次に書くつもりだったことが、書いている最中に消える。思い出そうとして手が止まり、そのうち何の話をしていたかも分からなくなります。成人ADHDのある人では、「あとでやることを覚えておく力」が使いにくくなりやすいことを実験で調べた研究があります。頭の中だけで持ち続けるのは、それだけで重い作業です。
材料が足りないまま始めている
書けない理由の半分は、中身がまだ集まっていないことです。文章の力が足りないのではなく、材料の数が足りていないだけということがよくあります。言いたいことが1つに決まっていないと、文はどこにも向かいません。誰に読ませるのかが決まっていないときも同じで、どこまで説明すべきか判断できません。
【いちばん効く1つ】順番を決めずに、材料だけ出す
やることは1つです。書きたいことを、思いついた順に短い文で全部出します。 つながっていなくてかまいません。
- 紙かメモアプリを開く
- 頭に浮かんだことを1行ずつ書く。10行から20行
- 重複していても、矛盾していても、そのまま置いておく
- 出なくなったら手を止める
このとき守るのは1つだけです。書いたものを消さない。 消し始めた瞬間に、また完成品を作る作業に戻ってしまいます。
出すときの呼び水として、次の5つを自分に聞くと材料が集まりやすくなります。
・何があったのか ・それでどうなったのか ・自分は何をしたのか、これから何をするのか ・相手にしてほしいことは何か ・相手が知らないことは何か
10行出れば、もう書く材料はそろっています。ここまでで5分から10分です。
文章がまとまらない人へ/出した材料を並べ替える
出した材料を並べ替える
ここで初めて順番を考えます。新しい文は作りません。 さっき出した行を動かすだけです。
いちばん言いたい1行に印をつける
20行のうち、これだけは伝わってほしい、という行を1つ選びます。それが先頭に来ます。
選べないときは、相手がいちばん先に知りたいことはどれか、と考えると決まりやすくなります。
残りを3つの山に分ける
- 先頭の行を支える説明
- 具体的な例や数字
- どちらでもないもの
3つ目の山は、そのまま使いません。削るのではなく、下のほうに置いておくだけにすると、手放しやすくなります。
山の中を上から並べる
同じ山の中では、時間の順か、大事な順のどちらかで並べます。両方を混ぜると読みにくくなります。
ここまでで、順番の決まった箇条書きができています。この時点で、文章の8割は終わっています。
つなぎの言葉で接着する
最後に、箇条書きを文の形にします。使う言葉は少しで足ります。
| 前の行との関係 | 置く言葉 |
|---|---|
| 理由を足す | そのため/というのは |
| 具体例を出す | たとえば |
| 逆のことを言う | ただし/一方で |
| 順に進める | まず/次に/最後に |
| 結論に戻る | つまり |
行の頭にこれを置いて、語尾を整えるだけです。新しい内容をここで足さないのが大事です。足したくなったら、材料を出す段階に一度戻ります。
そして、箇条書きのまま出してよい場面もかなりあります。社内の連絡や共有なら、箇条書きのほうが読みやすいと言われることも多いです。文章の形にするかどうかは、相手と場面で決めてください。
書き出しが重いときの逃がし方
材料すら出てこない日があります。そのときは、書く以外の方法で出します。
口に出したものを文字にする
スマホの音声入力や録音を使って、誰かに話すつもりで説明します。 「あのね、今回のことなんだけど」と話し始めると、意外と続きます。
出てきた文字は話し言葉のままで問題ありません。並べ替えの材料としては十分です。手で書くのがつらい人にも、この方法は負担が軽くなります。
送り先を先に決める
宛先が空のまま書くと、どこまで説明するか決まりません。先に相手の顔を1人思い浮かべてから書き始めてください。
途中から書く
書き出しは、最後に書けばいい部分です。真ん中の、いちばん書きやすいところから手をつけて、頭は後から足します。
誰かにそばにいてもらう
家族や同僚に「これから30分書くので、そこにいてください」と頼むだけで手が動く人がいます。見張ってもらうのではなく、同じ空間で別々の作業をするだけで十分です。オンライン通話をつないだままにする形でもかまいません。やり方は一人だと何も進まない人へへ。
時間で区切る
15分だけ書く、と決めて始めます。終わらなくても手を止めて、翌日に残りをやります。一気に完成させようとするほど、始まりません。
文章がまとまらない人へ/場面別の書き方
場面別の書き方
報告書や議事録
材料出しの前に、過去に出した同じ種類の文書を1つ開いてください。見出しをそのまま借りると、材料を出す枠ができます。
議事録なら、決まったこと・保留になったこと・次に誰が何をするか、の3つだけで足ります。
長いメールやチャットの返信
長くなりそうなときは、用件の数を最初に書くと自分も迷いません。
「2点ご相談です。1つ目は日程、2つ目は費用についてです。」
返信そのものが書けずに止まっているなら、メールの返信ができない人へもあわせて読んでください。
レポートや小論文
学校の課題は、材料出しの前に問いを1文に言い切ることから始めます。「◯◯について」ではなく「◯◯は△△なのか」の形にすると、材料が集まります。
書く量や提出の形について、大学には申し出て話し合う窓口があります。国内の論文でも、申し出て、状況を伝えて、話し合って決めるという手順が紹介されています。使い方は大学の授業やレポートがつらい人へへ。
謝るときや、気の重い連絡
言いにくい文章ほど、書き出しで止まります。この場合だけは、先に事実の1行だけ書いてください。
「◯日にお送りする予定だった資料が、間に合いませんでした。」
気持ちや理由は、そのあとに足せば十分です。
よく書くものは、型を保存しておく
毎回ゼロから考えるから重くなります。同じ種類の文章は、同じ枠を使い回してください。
週報、日程の相談、断りの連絡。この3つだけでも枠を作っておくと、書く時間はかなり減ります。枠はメモアプリに置いて、書くたびに複製します。
【週報の枠】 今週やったこと/来週やること/困っていること
【日程相談の枠】 用件/候補の日時を3つ/所要時間/場所か方法
枠がある文章は、材料出しをしなくても埋めるだけで終わります。枠を増やすほど、白い画面と向き合う回数が減ります。
過去に自分が書いて、うまく伝わったものを保存しておくのもおすすめです。人が書いた見本より、自分の言葉のほうが埋めやすくなります。
書いたあとの直し方
直し始めると終わらなくなる人が多いところです。回数を決めてしまいます。
声に出して1回だけ読む
黙って読むと目が滑ります。小さい声でいいので、口を動かして読んでください。息が続かないところが、長すぎる文です。そこで文を2つに割ります。
読み上げ機能に読ませても同じことができます。
直すのは1周だけと決める
2周目に入ると、たいてい元より悪くなります。1周終わったら出すと先に決めておいてください。
どうしても気になるときは、直したい箇所をメモに書き出して、次に同じものを書くときに使います。
時間があるなら一晩おく
翌朝に読むと、直すべきところが5分で見つかります。5分しかないときは、席を立って一度画面から離れるだけでも変わります。
よくある質問
音声入力を使うと、変換の間違いが多くて疲れます
直しながら話さないでください。間違ったまま最後まで出しきって、あとでまとめて直すほうが速く終わります。
書くとどうしても長くなります
長さは、材料を出す段階ではなく並べ替えで調整します。3つ目の山に入れた行を戻さないと決めるだけで、かなり短くなります。
箇条書きなら書けるのに、文章にすると崩れます
つなぎの言葉を置く段階で、中身をふくらませてしまっている可能性があります。語尾を整える以外は何もしないと決めて、もう一度やってみてください。
完成させないと出せない気持ちが強いです
出す前に人に見せる形にすると、少し軽くなります。「途中ですが、方向だけ見てもらえますか」と添えて渡すのは、失礼にはあたりません。
関連する困りごと
- 手がつかない → やる気はあるのに手がつかない人へ
- 読むほうもつらい → 長い文章が読めない・頭に入らない人へ
- 手で書くのがつらい → 字を書くのがつらい・字が汚い人へ
- 返信が止まる → メールの返信ができない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 書きたいことを、順番を気にせず10行だけ出す
- その中から、いちばん言いたい1行に印をつけて先頭に動かす
- 残りを上から並べて、つなぎの言葉を置く
1行目から書き始めるのを、今日でやめてください。 順番は、材料がそろってから決めれば間に合います。
この記事について
書いている途中で次に書くことを見失う話は、成人ADHDの「あとでやることを覚えておく力」を実験で調べた研究をもとにしています。忘れやすさは、やる気ではなく記憶の使い方の側の話だと説明されています。
学校での配慮については、大学生への合理的配慮を扱った国内の論文が、申し出て、状況を伝え、話し合って決める手順を示しています。
そのうえで正直に書いておきます。この研究は、あとでやることを覚えておく力そのものを調べたもので、材料を出してから並べ替えるという書き方の効果を確かめたものではありません。 大学での知見も、職場にそのまま当てはまるとは限りません。ここで紹介した手順は、作業を分けるという考え方に沿って組んだものです。合う合わないは人によります。
書けないことで責められ続けてつらいときは、一人で抱え込まないでください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
1行目が決まらないまま、白い画面と30分にらみ合う。あれ、書く力の問題ではないですよ。頭の中で完成品を組み立てようとしているだけなので、まず材料を床にばらまいてしまいましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討神経発達障害の大学生に対する合理的配慮(働きやすくするための調整)
この研究でわかっていること:「申し出 → 対話 → 決定」という配慮の手続きの型を示せます。
ここはまだ分かっていません:大学での知見。職場は制度も力関係も違うため、そのままは当てはめられません。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。