何度も遅刻してしまう人へ|時間の感覚のズレを埋める
— 「早く出れば間に合う」で解決しない理由があります
ポイント
- 遅刻の原因は「出発が遅い」より「かかる時間を短く見積もっている」ことです
- 見積もりを直そうとせず、実際にかかった時間で予定を組み直します
- 朝の判断を前の日の夜に移すと、当日の遅れが減ります
目次を開く(15項目)
何度も遅刻する。そのたびに謝る。「気をつけます」と言う。でもまた遅刻する。
だんだん自分が信用できなくなってくるし、周りからの信用も減っていく。
遅刻は、意識の問題ではないことが多いです。
遅刻の本当の原因
「出るのが遅いから遅刻する」と思われがちですが、実際にはもっと前の段階でズレています。
1. かかる時間を短く見積もっている
「駅まで8分」だと思っていたのが、実際は13分。「支度は20分」のつもりが40分。
成人ADHDでは、時間の見積もりや体感にズレが出やすいことが、この10年の研究をまとめたレビューで整理されています。
気をつけて直せるものではありません。 感覚そのものがズレているので、次も同じ見積もりが出ます。
2. 「作業と作業のあいだ」が抜けている
- 前の作業を終える
- 移動する
- 必要なものを探す
- 気持ちを切り替える
このつなぎの時間が、見積もりに入っていません。 予定を詰めるほど、ここでズレます。
3. 出る直前の「あと5分」
出発時刻の直前に、スマホを見る、片づけを始める、メールを1本返す。この5分が15分になります。
4. 朝に判断が多すぎる
何を着るか、何を持つか、傘は要るか。朝は一日でいちばん判断力が落ちている時間帯です。ここで詰まります。
【いちばん効く1つ】実測値を取る
やることは1つです。1週間だけ、実際にかかった時間を測ってください。
ストップウォッチでなくていいです。始めた時刻と終わった時刻をメモするだけ。
| 測るもの | 見積もりがち | 実測(記入例) |
|---|---|---|
| 起きてから家を出るまで | 30分 | 52分 |
| 自宅から駅まで | 8分 | 13分 |
| 職場の最寄り駅から会社まで | 5分 | 9分 |
| 支度(着替え〜化粧・髪) | 15分 | 28分 |
これで自分用の換算表ができます。
以後は、感覚で出した時間ではなく、この数字で予定を組みます。 「本気を出せば8分で行ける」は、遅刻する日には成立しません。
測るのがつらければ、朝の支度だけ3日でも構いません。1つでも実測値があれば、他の見積もりも疑えるようになります。
くわしくは「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へへ。
「何分遅れたか」ではなく、「毎朝、実際に何時に家を出たか」を1週間メモします。
7時50分のつもりが、実測が8時05分〜8時12分に固まっているなら、それがいまのあなたの実力値です。
そこから逆に、7時50分に出るには何を削ればいいかを考えます。感覚で「もっと早く動く」と決めても再現しません。
くわしくは「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へへ。
逆算をやめる
多くの人は逆算で予定を立てます。「9時に着く → 30分かかる → 8時30分に出る → 支度30分 → 8時に起きる」。
この方式は、どこか1か所ずれると全部が後ろにずれます。 そしてズレやすい人が、ズレない前提の方式を使っているわけです。
代わりに:出発時刻を固定する
「7時50分に玄関を出る」を、動かさないものにします。
そして、この時刻に合わせて工程のほうを削ります。 起床時刻を早めるのではありません。それだと睡眠時間が減って、翌朝もっとひどくなります。
出発時刻に「準備完了時刻」を足す
出発の10分前を「準備完了時刻」にします。この時刻には靴を履ける状態にしておく。
10分の余裕があると、鍵が見つからなくても間に合います。
前の日の夜に寄せる
朝の判断を減らすのが、いちばん確実です。
前の日にやる3つ
- 明日着る服を出す(上下・靴下・下着まで一式、椅子に置くだけ)
- 持ち物を玄関に置く(カバン、書類、返却物、傘)
- 天気を見る(傘と上着の判断を朝にしない)
この3つで、朝の判断はほぼゼロになります。
疲れて帰った日は、カバンを玄関に置くだけでも構いません。ゼロにしないことが大事です。
くわしくは朝バタバタして何も進まない人へへ。
何度も遅刻してしまう人へ/「あと5分」を物理的に潰す
「あと5分」を物理的に潰す
アラームの名前を動作にする
出発の10分前にアラームをかけます。名前は「出発準備」ではなく、「靴を履く」にします。
鳴った瞬間に何をするか決まっていないと、止めて終わりになります。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標達成の研究でも支持されています。
玄関でスマホを見ない
玄関で通知を見た瞬間に5分溶けます。スマホはカバンに入れてから玄関に行くと決めてください。
朝はテレビ・動画をつけない
「区切りまで」が必ず伸びます。
出る前に片づけを始めない
「ついでにこれだけ」で遅刻します。朝は片づけをしないと決めてください。
それでも間に合わないとき
遅れると分かった瞬間に連絡する
気づいた時点で送ってください。 到着してから謝るのがいちばん印象が悪くなります。
スマホのメモに定型文を入れておくと、あせっていても送れます。
「おはようございます。◯時ごろの到着になります。ご迷惑をおかけします。」
理由を長く説明しない
相手が知りたいのは「いつ来るか」だけです。長い言い訳は、かえって印象を悪くします。
同じ相手に3回続いたら、仕組みを変える
謝罪より、仕組みを変えるほうが効きます。「次から気をつけます」を3回言ったら、それは効いていないということです。
働く時間そのものを動かせないか
フレックス、時差出勤、在宅勤務。朝に合わせるのをやめるという選択もあります。
相談の仕方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
朝型に合わせられないのは、能力の問題ではありません。
場面別
通勤・通学
- 1本早い電車を「基本」にする(遅れても間に合います)
- 定期の経路を1つに固定する(毎回考えると時間を使います)
- 遅延を想定して、10分の余裕を標準にする
待ち合わせ
- 「◯時に着く」ではなく「◯時に出る」で覚える
- 場所を先に調べておく(当日に地図を見ると遅れます)
- 早く着いたときの過ごし方を決めておく(カフェ、コンビニ)
「早く着くと待つのが嫌だから、ぎりぎりに出る」という人は多いですが、待つ時間の使い道を先に決めておくと、早く出やすくなります。
病院・役所の予約
遅刻すると受けられないことがあります。予約時刻の30分前に着く前提で組んでください。
会議
移動と切り替えの時間を、予定に別枠で入れてください。くわしくは会議に毎回ちょっと遅れる人へへ。
子どもの送り迎え
自分の準備と子どもの準備を、両方朝にやるのは無理があります。 前の晩に両方そろえてください。
朝そのものが起きられない
これは遅刻とは別の問題です。朝どうしても起きられない人へを先に読んでください。
移動時間を長めに見る
遅刻の原因の多くは、「◯分で着く」の見積もりが短すぎることです。
ドアツードアで測る
乗り換え案内アプリの時間は、駅から駅までです。
- 家から駅まで(信号待ち含む)
- 駅の中の移動
- 駅から目的地まで
- 建物の中の移動(受付、エレベーター)
これを全部足すと、アプリの表示より10〜20分長くなります。
1本前の電車に乗ると決める
「間に合う電車」ではなく、「その1本前」に乗ると決めてください。
遅れても間に合います。 早く着いたら、カフェで待てばいいだけです。
初めての場所は30分早く
道に迷う、入口が分からない、受付で待つ。初めての場所は必ず何か起きます。
何度も遅刻してしまう人へ/遅れそうなときの連絡
遅れそうなときの連絡
すぐ連絡する
気づいた瞬間に連絡してください。 遅れるほど、相手の予定が崩れます。
「申し訳ありません、10分ほど遅れます。◯時◯分に着きます。」
「何分遅れるか」を必ず入れる。 「遅れます」だけだと、相手は待ち方を決められません。
文面を作っておく
とっさに書けないなら、スマホのメモに定型文を入れておいてください。コピーして送るだけになります。
言い訳を長く書かない
理由の説明より、「いつ着くか」と「すみません」のほうが、相手には大事です。
遅刻が続くとき
記録を取る
「どこで何分ロスしたか」を1週間だけ書いてみてください。
- 起きるのが遅い → 毎朝ぎりぎりで起きられない人へ
- 準備に時間がかかる → 朝バタバタして何も進まない人へ
- 家を出るのが遅い → 出発のアラームを使う
- 移動時間の見積もりが甘い → 1本前に乗る
原因が分かれば、打つ手が変わります。
職場に相談する
朝がどうしても難しいなら、時差出勤やフレックスを相談する価値があります。
「朝が弱い」ではなく、「10時始業なら安定して働けます」という言い方のほうが通りやすいです。
伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
まず1週間、これだけやってみる
- 朝、家を出た時刻を毎日メモする(実測値を取る)
- 前の日の夜に、服と持ち物を出しておく
- 出発10分前にアラームをかける。名前は「靴を履く」
1週間後、自分が実際に何時に出ているかが分かります。 そこから予定を組み直してください。
よくある質問
早く着きすぎるのも苦手です
着いてからやることを決めておいてください。 本を読む、メールを返す、コーヒーを飲む。
「早く着いても時間がむだにならない」と分かっていると、早めに出られます。
相手が遅れることもあるのに、自分だけ責められます
回数の問題です。続くと信用の話になります。
まずは「遅れるときは必ず、何分遅れるかを連絡する」だけ守ってください。それだけで印象が変わります。
遅刻しそうになると頭が真っ白になります
連絡の文面を、あらかじめスマホのメモに入れておいてください。 コピーして送るだけになります。
考えなくていい状態にしておくのがコツです。
関連する困りごと
- 朝起きられない → 毎朝ぎりぎりで起きられない人へ
- 準備が終わらない → 朝バタバタして何も進まない人へ
- 見積もりがずれる → 「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へ
- 会議に遅れる → 会議や約束の時間に間に合わない人へ
まとめ:遅刻を減らす5つ
- 1週間、実際の出発時刻を記録する
- 出発時刻を固定して、そこから逆算しない
- 前の晩に、服とカバンを準備する
- 1本前の電車に乗ると決める
- 遅れるときは、何分遅れるかを必ず入れて連絡する
「もっと早く動く」では変わりません。 実測値から組み直してください。
この記事について
成人ADHDでは、時間の見積もりや体感にズレが出やすいことが、この10年の研究をまとめたレビューで整理されています。「気をつける」で直らないのは、感覚そのものがズレているためです。
また、時間の使い方や整理・計画のスキルを練習する方法を調べた研究では、うっかりしやすさの改善が報告されています。国内でも、時間管理に焦点を当てた集団での取り組みで改善が報告されています(8名の予備的な研究です)。時間管理は、工夫と練習の対象になります。
行動をきっかけと結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
そのうえで、「実測値を取る」「出発時刻を固定する」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 合うものだけ使ってください。
遅刻がどうしても減らず、仕事や生活がつらい状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「あと5分でいける」が毎回15分かかるなら、それがあなたの実測値です。感覚のほうを直そうとせず、予定のほうを実測値で組み直しましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDの時間の感じ方:この10年の研究のまとめ
(原題:Time Perception in Adult ADHD: Findings from a Decade—A Review)
この研究でわかっていること:時間の見積もりや体感にズレが出やすいことを、性格ではなく認知の特徴として説明できます。
ここはまだ分かっていません:特定のタイマー法・時計の効果を直接調べたものではありません。
研究で検討成人注意欠如・多動症の時間管理に焦点を当てた集団認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)の効果の小さな規模の検討
この研究でわかっていること:時間管理そのものを訓練の対象にできる、という考え方の国内での裏づけになります。
ここはまだ分かっていません:8名・対照群なしの予備研究。特定のアプリやタイマーの効果を示すものではありません。
研究で検討成人ADHDに対するメタ認知療法の効果
(原題:Efficacy of Meta-Cognitive Therapy for Adult ADHD)
この研究でわかっていること:時間管理・整理・計画のスキルの練習が成人ADHDのうっかりしやすさを減らしうると言えます。
ここはまだ分かっていません:個々の道具(付箋・アプリ等)単独の効果を調べたものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。