ゲームがやめられない人へ|楽しみを守りながら区切る
— やめる力が足りないのではなく、終わりの合図が用意されていないだけです
ポイント
- ゲームには終わりの合図がなく、次の目標がいつでも用意されています
- 時刻ではなくゲームの中の区切りで終点を決めると、止まりやすくなります
- やめるかどうかより、翌日に何を失うかを先に見えるようにしてください
目次を開く(13項目)
「あと1回だけ」で始めた対戦が、気づけば5戦目。時計を見たら深夜1時30分。明日は7時に起きなければいけません。
コントローラーを置いたあと、楽しかった気持ちより先に「またやってしまった」が来ます。翌朝は寝不足で、日中ずっと頭が重い。そしてその日の夜、また同じことをする。
まわりからは「ゲームばかりしている」と言われます。自分でも、そう思っているかもしれません。
先に結論を書きます。止まらないのは終わる力がないからではなく、ゲームの側に終わりの合図がないからです。 やめる努力を足すのではなく、区切りを外から足します。
そしてこの記事では、ゲームをやめる方法は書きません。楽しみは残したまま、翌日を守ることだけを考えます。
なぜ「あと1回」で終わらないのか
終わりの合図が入っていない
本には最後のページがあり、映画にはエンドロールがあります。ゲームには、それがありません。
面をクリアすれば次の面が開き、レベルが上がれば次の目標が出ます。イベントは期間限定で、ログインボーナスは明日も待っています。どこで終わるかは、いつでも自分で決めるしかありません。
一晩に何十回も、まだ続けるかここでやめるかを自分で決めることになります。回数が増えるほど、そのうち「もう1回」のほうが通ります。
次の目標が、いつも手の届くところにある
あと少しでレベルが上がる。あと3個で素材がそろう。次に勝てばランクが戻る。
もう少しで届くという状態が、切れ目なく続きます。 これは作り手が時間をかけて設計したもので、よくできているほど止まりにくくなります。
腕が悪いから止まらないのではありません。よくできているから止まらないのです。
深く入り込むと、時間の感覚が薄くなる
何かに深く入り込む状態は、注意の一つの形として研究でも議論されています。ただし研究ごとに定義がそろっておらず、だれにでも当てはまる話にはできません。
入り込んでいる間は、時計を見る回数そのものが減ります。気づいたら3時間たっていた、は起こりうることとして扱ってください。
自分だけでは終われない作りのこともある
オンラインの対戦や協力プレイでは、抜けると相手に迷惑がかかります。ここはもう意志の話ではなく、人との約束の話です。あとで別に書きます。
【いちばん効く1つ】終わりを時刻ではなく区切りで決める
23時にアラームを鳴らす。よくある方法ですが、ゲームではあまり効きません。アラームは、たいてい試合の途中で鳴るからです。
途中でやめると、それまでの時間が無駄になります。だから止まりません。当然です。
そこで、終わりをゲームの中の言葉で決めます。
- あと3戦で終わり
- このクエストが終わったら終わり
- 次にセーブしたら終わり
- 素材が10個たまったら終わり
決めるのは、始める前です。始めたあとでは決められません。
決め方の手順
- コントローラーを持つ前に、終点を1つ決める
- 声に出すか、紙に書いて画面の横に置く
- アラームは終点の30分前にかける(止めるためではなく、終点が近いと知らせるため)
- 終点が来たら、次にやることを1行メモしてから閉じる
こうなったらこうする、と場面ごとに前もって決めておくやり方は、目標に届きやすくなると報告されています。やめる意志ではなく、決めておいた一文のほうが働きます。
4番を省かないでください。続きが分からない状態で閉じるのが、いちばんつらいからです。次にやることが1行あるだけで、閉じやすくなります。
鳴らしても効かないタイプのアラームの話はタイマーとアラームの使い方にまとめています。
翌日に払う分を、先に見えるようにする
夜のゲームで困るのは、ゲームそのものではなく翌日です。
睡眠が削られ、頭が働かず、仕事や学校でうまくいかず、その落ち込みを埋めるためにまた夜に長くやる。この輪をどこかで切ります。
明日の予定を、画面の横に置く
紙1枚に、明日の起きる時刻と最初の予定だけ書いて、モニターやテレビの横に貼ります。
「7時起き/9時に打ち合わせ」と目に入るだけで、5戦目に入る手前で止まる回数が増えます。
最終開始時刻を決める
終わる時刻ではなく、始めていい最後の時刻を決めます。
寝たい時刻から、1回分の長さを引いた時刻です。1試合15分なら、23時に寝たい人の最終開始時刻は22時45分になります。
終わりを守るより、始まりを守るほうが簡単です。
思いきりやる夜を、先に決める
毎日我慢するのは無理があります。週に1日か2日、翌日に予定がない夜を選んで、そこで好きなだけやってください。
今日は我慢する日、と考えるより、金曜が思いきりやる日、と決めるほうが続きます。
眠れないこと自体で困っているときは夜、なかなか眠れない人へもあわせてご覧ください。
ゲームがやめられない人へ/オンラインで抜けられないときの伝え方
オンラインで抜けられないときの伝え方
途中で抜けると、味方が不利になります。ここで我慢して続けるのは、まじめさであって弱さではありません。
対策は、ゲームの中ではなく人への伝え方にあります。
入る前に言っておく
「今日は23時までです。それまでよろしくお願いします。」
入るときに言っておけば、抜けるときに言わずに済みます。終わりぎわは、いちばん言い出しにくいタイミングです。
最後の1戦を、その前に宣言する
終わった直後には、もう次の募集が始まっています。入る前に伝えるほうが確実です。
「次で最後にします。ありがとうございました。」
モードによって長さが決まると知っておく
ランクマッチや長時間の協力プレイは、入った時点で終わる時刻が自分の手から離れます。
平日の夜は短いモード、休日は長いモード。そう分けておくだけで事故が減ります。
一人で遊ぶ日を作る
一人用なら、いつでも止められます。平日の夜は一人用と決めておくのも、立派な対策です。
ゲームの種類で、止まりにくさがちがう
同じゲームでも、区切りのつけやすさはかなりちがいます。自分が長くなるのはどれかを知っておくと、対策を選べます。
スマホの基本無料ゲーム
毎日のノルマ、時間で回復する仕組み、期間限定のイベント。やらないと損をする形が多く、続けるほど抜けにくくなります。
通知を切る、周回する曜日を決める、イベントを全部は追わないと決める。全部取りにいかないと決めるのが、いちばん効きます。
オンラインの対戦・協力プレイ
止まりにくさの理由が、自分の外にあります。上に書いた伝え方で区切ってください。
物語のあるゲーム
章やセーブポイントという区切りが、もともと入っています。終点にしやすいので、平日の夜に向いています。
1回が短くて、何度もできるもの
1回5分だと「もう1回」が軽く、いちばん時間が溶けます。回数で決めてください。 あと3回、という決め方です。時間で決めても、たいてい効きません。
手数を入れ替える
始めるまでを少しだけ面倒にして、終わったあとを少しだけ楽にします。
- 遊び終わったらコントローラーを引き出しにしまう(出す手間が1つ増えます)
- スマホのゲームは、ホーム画面の1ページ目から外す
- ログインボーナスやスタミナ回復の通知を切る(外から呼び出される回数が減ります)
- 遊ぶ時間を、あらかじめ予定として入れておく
最後の1つは意外に効きます。予定として入っていれば、終わりも予定になります。
逆に、本体を押し入れにしまう、アプリを消す、といった強い方法はおすすめしません。取り上げられた感覚が残ると、反動が来ます。
ゲームがやめられない人へ/休日が丸ごと溶けるとき
休日が丸ごと溶けるとき
平日の夜より、休日のほうが被害が大きいことがあります。予定のない日は、起きてすぐ始めて、気づくと外が暗くなっています。
- 外に出る用事を1つ入れる(買い物でも散歩でもかまいません)
- 始める前に、ごはんの時刻だけ決めておく
- 昼にやることを先に片づけてから始める
今日は一日やる、と決めた日なら問題ありません。決めていない日が溶けるほうが、あとでこたえます。
お金の区切りも決めておく
課金は、時間とは別の問題として区切ります。
- 月に使っていい上限を決める(1,000円でも3,000円でもかまいません)
- チャージにはプリペイドカードを使い、クレジットカードは登録しない
- 期間限定の表示が出たら、その場で買わずに翌日決める
上限の金額は、少なすぎると守れません。いま実際に使っている額より少し下から始めてください。
買い物全般で止まらないときは衝動買いが止まらない人へへ。
よくある質問
家族に「ゲームばかり」と言われます
時間の長さで言い返すより、困っていることを1つに絞って話すほうが伝わります。
「夜のゲームで寝る時刻が遅くなってる。23時に一度声をかけてくれる?」
やめさせてほしいと頼むと、たいてい揉めます。声をかけてほしいと頼むほうがうまくいきます。声をかけてもらったら、不機嫌にならずにお礼を言ってください。次から言ってもらえます。
自分でもだめだと思っています
生活が回っているなら、遊ぶこと自体は問題ではありません。困っているのは、たいてい睡眠と翌日のほうです。そこだけを扱ってください。
ゲームを減らした自分が偉い、という考え方はしなくて大丈夫です。
やめたら、ほかにやることがありません
大事な質問です。空いた時間に何を入れるか決めていないと、必ず戻ります。
寝る、風呂に入る、翌日の準備をする。最初はその程度で十分です。
途中でやめると気持ち悪くて眠れません
区切りのいいところまでやってから閉じるほうが、結果として早く寝られます。だからこそ、区切りは先に決めておく必要があります。
平日に一度も遊べないと、しんどいです
遊ぶ量をゼロにしなくて大丈夫です。30分だけ遊ぶ日を作ってください。短いモードを選べば、30分でも遊べます。
責めなくていい
長いあいだ「ゲームばかり」と言われてきた人ほど、遊ぶこと自体に後ろめたさを持ちます。でも、区切りがつかないことと、遊ぶこと自体は別の問題です。
- 遊ぶ時間があること自体は、責める理由になりません
- 困っているのは、睡眠と翌日の分だけです
- そこさえ守れれば、あとは好きなだけ遊んでかまいません
取り上げる方向で考えると、たいてい反動が来ます。 残す方向で組んでください。
関連する困りごと
- 動画で時間が溶ける → 気づいたら2時間 動画を見ていた人へ
- 何をしていても止まれない → やり始めると止まれない人へ
- 夜、寝つけない → 夜、なかなか眠れない人へ
- 課金が止まらない → 衝動買いが止まらない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 今夜の終点を、始める前に1つ決めて紙に書く(あと3戦、このクエストまで、など)
- 明日の起きる時刻と最初の予定を紙に書いて、画面の横に貼る
- ログインボーナスとスタミナ回復の通知を切る
3つとも、ゲームを減らす作業ではありません。終わりの合図を足す作業です。
この記事について
深く入り込む状態(過集中)は、注意の一つの形として研究で議論されています。ただし研究ごとに定義がそろっていないことがレビューで指摘されており、発達障害があればゲームに入り込む、という話にはできません。入り込む人もいれば、そうでない人もいます。
場面と行動を組にして前もって決めておくやり方については、研究をまとめた分析で、目標に届きやすくなるという報告が出ています。ただしこれは発達障害のある人だけを対象にした研究ではなく、ゲームを扱ったものでもありません。
そのうえで、この記事に書いた区切り方(終点をゲームの言葉で決める、最終開始時刻を決める、コントローラーをしまう)は、研究で効果が確かめられたものではありません。 お金がかからず、楽しみを取り上げずに試せるという理由で紹介しています。合わないと感じたものは、そのまま置いていってください。
なお、この記事ではゲームのやりすぎを病気として扱っていません。診断に関わる判断は、ここではできません。眠れない状態が続くとき、仕事や学校に行けない状態が続くときは、ゲームの話としてではなく、その困りごととして相談してください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
ゲームだけ意志が弱いと言われるの、変な話なんですよね。仕事の資料は途中で閉じられるのに、ゲームは閉じられない。それは中身の作りがちがうからです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討過集中:忘れられてきた注意の領域
(原題:Hyperfocus: the forgotten frontier of attention)
この研究でわかっていること:過集中が注意の一形態として議論されていると示せます。
ここはまだ分かっていません:定義が定まっておらず、「ADHDの人は過集中する」と一般化はできません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。