気づいたら2時間 動画を見ていた人へ|時間が溶ける仕組み
— 止められないのは、止まらないように作られているからです
ポイント
- やめられないのは意志の問題ではなく、次が自動で始まる設計になっているからです
- 「やめる」を頑張るより、始めるまでの手数を増やすほうが効きます
- まず1週間、設定を変えずに使用時間を測ってみてください
目次を開く(12項目)
寝る前に少しだけ見るつもりが、気づけば深夜2時。作業の合間に開いたSNSから戻れない。
そして翌日つらくて、また夜に取り返そうとする。
これは意志の弱さの話ではありません。
「次が自動で始まる」設計になっている
動画アプリもSNSも、終わりが来ないように作られています。
- 次の動画が自動で再生される
- タイムラインは無限に続く
- おすすめが次々に出てくる
区切りがないので、やめる判断を自分で毎回出す必要があります。
そして、ADHDの特性がある人は「あとで手に入る大きい得」より「いま手に入る小さい得」を選びやすい傾向があると報告されています。
いまの快と、明日の眠気を天秤にかけると、いまの快が勝ちやすいということです。
さらに、場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいことも研究で検討されています。「明日つらいから寝よう」という理由で、自動的に切り替わるわけではありません。
対策は「やめる」ではなく「始めにくくする」
止めるのは難しいです。だから、始めるまでの手数を増やします。
1. 自動再生を切る(いちばん手軽で効く)
動画アプリの設定で、自動再生をオフにします。
次の動画が始まらないだけで、そこが自然な区切りになります。
設定を1回変えるだけです。費用対効果がいちばん高い対策です。
2. ホーム画面から消す
アプリを削除しなくても、ホーム画面から外すだけで効果があります。検索して起動する手間が増えるからです。
- iPhoneなら「Appライブラリ」へ移動
- Androidならホームから削除
アイコンが目に入らないだけで、開く回数は減ります。
3. ログアウトしておく
SNSはログアウトした状態にしておくと、開くたびにパスワードが必要になります。パスワードの自動入力も切っておくと、さらに手数が増えます。
4. 通知を全部切る
通知は「始めるきっかけ」を外から送ってくる仕組みです。
SNSと動画アプリの通知は、全部オフにして問題ありません。 本当に急ぎの連絡は、電話かメッセージで来ます。
5. 見る場所を決める
「ベッドでは見ない」「机では見ない」と場所を決めます。
行動を場面と結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
寝室にスマホを持ち込まないのが最も効きますが、目覚まし代わりに使っている場合は、目覚まし時計を1つ買ってください(1,000円前後)。
6. 白黒表示にする
画面をグレースケールにすると、動画やサムネイルの魅力が落ちます。
設定のアクセシビリティから変えられます。合う人には効きます。
制限アプリは「効くなら使う」
使用時間の上限を設定する機能もあります。
ただし、自分で解除できる制限は解除されます。 効く人には効きますが、効かない人には効きません。
効かなかった場合、それは意志の問題ではなく制限の設計が弱かっただけです。
上のアプローチ(自動再生オフ、ホームから消す、ログアウト)のほうが、解除の手数が多いぶん強力なことがあります。
家族に設定してもらう
パスワードを家族に設定してもらうと、自分では解除できなくなります。恥ずかしいことではありません。
気づいたら2時間 動画を見ていた人へ/時間帯別の対処
時間帯別の対処
夜
夜に時間が溶けるのは、眠れないことの結果であることもあります。
「スマホを見ているから眠れない」のか「眠れないからスマホを見ている」のか、順番が逆のことがあります。
夜、なかなか眠れない人へもあわせてご覧ください。
朝
起きた直後にスマホを見ると、そのまま30分溶けて、遅刻します。
スマホを別の部屋に置いて寝ると、この問題は起きません。
仕事中
作業中に触ってしまう問題は作業中につい スマホを触ってしまう人へにまとめました。
休日
一日中見てしまって、何もできずに終わる。
外に出る予定を1つ入れておくのが確実です。用事がないと、家から出ない日は必ずスマホの日になります。
夜がいちばん溶ける
- スマホを別の部屋に置く
- 動画の自動再生を切る(これだけで1時間戻ることがあります)
- 「23時に寝る」ではなく「22時30分に部屋を暗くする」と決める
くわしくは夜、なかなか眠れない人へへ。
「全部やめる」を目指さない
動画もSNSも、楽しみとして価値があります。ゼロにする必要はありません。
問題は、そのせいで生活が回らなくなることです。
見ていい時間を決める
「夜9時から10時まで」のように決めておくと、それ以外の時間は我慢しやすくなります。
「あとで見られる」と分かっていると、いま見なくて済みます。
見る場所を1つにする
「リビングのソファでだけ見る」と決めると、ベッドや机では見なくなります。
罪悪感を減らす
「見てしまった」と落ち込むと、その気分をまぎらわすためにまた見る、という循環が起きます。
時間を決めて、その中では罪悪感なく楽しむほうが、結果的に総量が減ります。
だらだらする時間が悪いわけではありません。
- 休む時間は必要です
- 何もしない時間も必要です
問題なのは、「休んだつもりで休めていない」時間です。
SNSを見ている2時間は、休憩ではなく情報を受け取り続けている時間です。本当に休みたいなら、画面から離れてください。
だらだらした時間があっても、それ自体は問題ではありません。
問題なのは、「休んだつもりで休めていない」時間です。
SNSを2時間見るのは、休憩ではなく情報を受け取り続けている時間です。本当に休みたいなら、画面から離れてください。
何に時間を使ったか、1回だけ見る
推測ではなく、記録を見てください。
スマホの使用時間を見る
- iPhone:設定 → スクリーンタイム
- Android:設定 → Digital Wellbeing
すでに記録されています。 見るだけです。
「1日3時間」と出て驚く人が多いです。週21時間。 ここが最大の使いどころです。
一日の流れをざっくり書く
正確でなくていいです。1日だけ。
7:00 起床/8:00 出発/9-12 仕事/12-13 昼/13-18 仕事/19 帰宅/19-21 スマホ/21-22 食事/24 就寝
書くと、「思っていたのと違う」ところが見つかります。
自分がどれくらい使っているかを、正確に把握している人はほとんどいません。
- iPhoneの「スクリーンタイム」
- Androidの「Digital Wellbeing」
まず1週間、設定を何も変えずに測るだけにしてください。
「1日30分くらい」だと思っていたものが3時間半だった、という結果が出ることがあります。
数字を見てから対策を選ぶほうが、やる気が続きます。
気づいたら2時間 動画を見ていた人へ/よくある時間の使いどころ
よくある時間の使いどころ
スマホ・動画・SNS
いちばん大きいです。
- 使用時間の上限を設定する
- ホーム画面から消す
- 画面を白黒にする
くわしくは気づくとスマホを触っている人へへ。
探しもの
鍵、財布、書類、ファイル。1日10分探していれば、年60時間です。
- 置き場所を決める
- 紛失防止タグを使う
くわしくは家の中で毎日何かをなくす人へへ。
迷う時間
何を着るか、何を食べるか、どれからやるか。
決めておけば、ゼロになります。
- 服を固定する(毎朝どの服を着るか決められない人へ)
- 平日の朝ごはんを固定する
- やることを3つに絞る(何から手をつければいいか分からない人へ)
切り替えと割り込み
回数が多いほど時間が溶けます。
- 通知を切る
- 同じ種類の作業をまとめる
くわしくは作業を切り替えるたびに疲れる人へへ。
「始められない時間」
やることは決まっているのに、始まらない30分。これがいちばん見えにくい時間です。
くわしくは最初の一歩がどうしても踏み出せない人へへ。
減らしたあとに何を入れるか
空いた時間を決めておかないと、また同じことで埋まります。
- 寝る
- 散歩する
- やりたかったことを1つ入れる
「減らす」だけでは続きません。 入れるものを決めてください。
まず今日、これだけやってみる
- 動画アプリの自動再生をオフにする(1分・いちばん効きます)
- SNSと動画アプリの通知を全部オフにする(3分)
- スクリーンタイムを開いて、先週の使用時間を見る
まず数字を見てください。 そこから決めれば十分です。
関連する困りごと
- スマホを触ってしまう → 気づくとスマホを触っている人へ
- 見積もりがずれる → 「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へ
- 始められない → 最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ
- 予定が多すぎる → 予定を詰め込みすぎる人へ
空いた時間に何を入れるかまで決めて、はじめて減ります。
- 切り替えで疲れる → 作業を切り替えるたびに疲れる人へ
- 夜眠れない → 夜、なかなか眠れない人へ
だらだらする時間が悪いわけではありません。 休めていない時間が問題です。
よくある質問
記録するのが面倒です
記録しなくていいです。スマホの使用時間は、すでに自動で記録されています。
設定を開いて、1回見るだけで十分です。
減らした時間で何をすればいいか分かりません
先に決めておいてください。 決めていないと、また同じことで埋まります。
寝る、散歩する、やりたかったことを1つやる。それで十分です。
効率化しすぎて疲れます
全部を効率化しなくていいです。休む時間と、何もしない時間は必要です。
問題なのは「休んだつもりで休めていない」時間だけです。
睡眠時間を削ってしまいます
いちばん影響が大きいところです。寝る時刻にアラームをかけてください。起きる時刻ではなく、寝る時刻です。
スマホを寝室に持ち込まないのが、いちばん効きます。
家族との時間まで削られています
先に予定として入れてください。 空いている時間は、必ず別のもので埋まります。
この記事について
ADHDの特性がある人は、「あとで手に入る大きい得」より「いま手に入る小さい得」を選びやすい傾向があると報告されています(本人の回答をもとにした、まだ小さな規模の研究です)。
また、場面に応じて思考のさまよいを抑える調整が効きにくいことも、ADHDを対象にした研究で検討されています。
行動を場面と結びつけて先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。
一方で、自動再生をオフにする、ホーム画面から消す、といった具体策の効果を調べた研究は見つかっていません。 また、スマホの使用時間と発達障害の関係を扱った研究の多くは、関係があるかどうかを見たもので、どちらが原因かを示すものではありません。
この記事は、実際のアプリの仕様と上の知見を組み合わせたものです。合うものだけ使ってください。
生活が回らない状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
「5分だけ」で開いたアプリが2時間になるのは、そのアプリがそう作られているからです。あなたが弱いのではありません。設計には設計で対抗しましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討ADHDにおける、場面に応じた「思考のさまよい」の調整
(原題:Context Regulation of Mind Wandering in ADHD)
この研究でわかっていること:「気づいたら別のことを考えている」を、意志ではなく調整の問題として説明できます。
ここはまだ分かっていません:対策の効果を示す研究ではありません。
研究で検討ADHDと、目先の得を選びやすい傾向、そしてリスクの高いお金の使い方
(原題:Attention-deficit/hyperactivity disorder, delay discounting, and risky financial behaviors)
この研究でわかっていること:「あとの大きい得より、いまの小さい得」を選びやすい傾向を説明できます。
ここはまだ分かっていません:本人が答えたアンケートをもとにした、小さな規模の分析です。家計術の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。