イライラを抑えられない人へ|怒りで後悔しないために
— 怒りをなくすのではなく、出方を選べるようにします
ポイント
- 怒りは消すものではなく、出る前に気づいて距離を取るほうが現実的です
- 体に出るサインを3つ決めておくと、爆発の前に動けるようになります
- 睡眠不足や空腹など、沸点を下げている条件を減らすほうが早く効きます
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言い返したあとの、あの静かさ。相手の顔を見て、やってしまった、と思う。さっきまで頭の中は熱かったのに、急に冷えて、今度は後悔だけが残ります。
自分では、そこまで怒っているつもりはありませんでした。声が大きくなったのも、言葉が強くなったのも、あとから人に言われて気づきました。0から100まで、途中がなかったように感じます。
家に帰ってから、何度も再生します。あんな言い方をしなければよかった。明日どんな顔で会えばいいのか。怒っている時間より、そのあとの時間のほうが長くてつらい。 これは、けっこう多くの人が経験しています。
先に結論を書きます。怒りは、なくすものではありません。 危ないことや、無理をしていることを知らせる信号なので、消してしまうと不便です。困っているのは怒りそのものではなく、出るまでが速すぎて、出方を選べていないところです。ここは仕組みで変えられます。
この記事では、怒りの出方を自分で選べるようにする手順を書きます。
なぜ0から100に見えるのか
途中がないように感じるのは、途中がないからではありません。途中に気づけていないだけであることが多いです。
体のほうは、たいてい先に反応しています。あごに力が入る。肩が上がる。息が浅くなる。手が熱い。声の高さが変わる。ここに気づけると、まだ言葉を選べます。気づけないまま進むと、口から出たあとで初めて分かります。
気持ちの振れ幅そのものが大きく出やすい人もいます。成人のADHDで感情が大きく動きやすいことを扱った、研究をまとめた分析があります。腹が立ちやすいのは、心が狭いからでも、我慢が足りないからでもありません。
そしてもうひとつ大きいのが、土台のすり減りです。寝不足、空腹、うるさい場所、予定の詰めこみ、何日も断れなかったこと。ひとつひとつは小さくても、重なると沸点が下がります。同じ一言でも、月曜の朝と金曜の夜では、まったく違って聞こえます。
抑え込むだけにすると、形を変えて出てきます。あとから涙が出る、体調が悪くなる、関係のない人に冷たくなる。我慢は、消したことにはなりません。
必要なのは、根性ではありません。早く気づく仕掛けと、その場から離れる型です。
【いちばん効く1つ】自分のサインを3つ決めて、目に見える場所に書く
やることはこれだけです。
- これまで怒りが強く出た場面を、3つだけ思い出す
- その直前、体に何が起きていたかを書き出す(例:あごに力が入る、耳が熱い、早口になる)
- そのうちいちばん早く出るものを3つ選ぶ
- 手帳の1ページ目、スマホの待ち受け、机の引き出しの中など、毎日目に入る場所に書く
- サインが出たら、内容を考えずに次の行動へ移る(次の見出しで書きます)
大事なのは3番です。顔が赤くなるころには、もう遅いことが多いので、いちばん手前のサインを選んでください。
サインが分からない人は、1週間だけ記録してください。夜に1行、「今日ムッとした場面」と「そのとき体はどうだったか」を書くだけです。何日か続けると、同じ体の反応がくり返し出てくるのが見えてきます。
「あごに力が入ったら、席を立つ。」
決めておくのは、判断ではなく動作です。その場で「怒るべきか」を考えると、考えているあいだに言葉が出ます。
イライラを抑えられない人へ/その場を離れる言い方を、先に決めておく
その場を離れる言い方を、先に決めておく
黙って出ていくと、相手には無視や拒否に見えます。だから、離れるときの一言を先に用意します。ここは丸暗記でかまいません。
「ちょっと考えたいので、10分だけ時間をください。」 「大事な話なので、頭を冷やしてから返事します。」 「今すぐだとうまく言えないので、あとで続きをお願いします。」
3つとも、話を打ち切る言い方ではなく、続きを約束する言い方になっています。これがあると、逃げたと受け取られにくくなります。
離れたあとにやることも決めておきます。
- 立って、その場から見えないところまで移動する
- 冷たい水で手を洗うか、外の空気に触れる
- 息を吐くほうを長くして、10回数える
- 戻る時刻を決める(5分でも10分でも)
戻る時刻を決めるのが重要です。 時刻がないと、話が途中で切れたまま終わり、相手には投げ出されたように見えます。10分で足りなければ、「今日は無理なので、明日の朝に」でもかまいません。
言う前に、温度だけ測る
離れるほどではないときは、今の怒りの強さに、心の中で0から10の点数をつけてください。3までなら言ってよし、7を超えたら口を閉じる。 そんなふうに、あらかじめ線を1本引いておきます。
点数をつけているあいだ、頭は数える作業をしています。そのぶん、言葉が出るまでに数秒のすきまができます。そのすきまが、言い方を選ぶ時間になります。
家族が相手だと、離れにくい
同じ家にいると、物理的に離れる場所がありません。あらかじめ、行き先を1つ決めておいてください。ベランダ、風呂場、車の中、コンビニまでの往復。行き先が決まっていると、勢いで玄関を飛び出さずにすみます。
家族には、落ち着いているときにこう伝えておくと、誤解が減ります。
「怒って黙るのは、あなたを無視しているんじゃなくて、ひどい言い方をしないためです。10分で戻ります。」
職場で席を立てないとき
会議中や接客中は、離れられないことがあります。その場合は、言葉を減らすほうに切り替えてください。 「確認して、あとでお返事します」だけ言って、その話を先送りします。メモに書きなぐるのも、口の代わりになります。
沸点を下げているものを、先に減らす
同じ出来事でも、怒りの大きさは日によって違います。ここを整えるほうが、その場のこらえ方より効きます。
- 眠れていない日は、まず言い方が短くなります。前の晩の睡眠が削れた日は、大事な話を入れない
- 空腹は、はっきり出ます。午後の会議の前に、何か口に入れておく
- 音と光が多い場所では、余裕が先に減ります。耳をふさぐ道具、席の位置、休憩の場所を確保する
- 予定の詰めこみは、遅れるたびに小さく腹が立ちます。移動のあいだに10分の余白を入れる
- 断れずに引き受けた仕事は、後から怒りに変わります。引き受ける前の一拍が、いちばん安い対策です
- 痛みや体調の悪さがあるときは、我慢の量がすでに増えています。無理を重ねない
全部そろえる必要はありません。自分が崩れやすい条件を2つ知っているだけで、避けられる日が増えます。
週に1回、たまり具合を数字で見る
日曜の夜に、1週間を10点満点で採点してください。点数が低い週は、次の週の予定を1つ減らします。予防は、怒った日ではなく、怒っていない日にしかできません。
イライラを抑えられない人へ/出てしまったあとの、戻し方
出てしまったあとの、戻し方
出てしまう日はあります。そこからの戻し方も、先に決めておくと安心です。
早いうちに、短く伝える
長い説明は、言い訳に見えます。言い方について一言だけにしてください。
「さっきは言い方がきつくなりました。すみません。」
中身まで全部取り消す必要はありません。言い方と、伝えたかった内容は分けられます。 内容に理由があるなら、落ち着いてから、もう一度伝えれば大丈夫です。
自分を責める時間に、上限を決める
後悔が長引くほど、次の場面に使える余裕は削られていきます。責める時間は10分までにして、そのあとは「次に同じ場面が来たらどう動くか」を1つだけ書いてください。
同じ相手と、同じ話を蒸し返さない
一度謝った件を何度も持ち出すと、相手はまた身構えます。終わったことは終わったことにして、次の1回で信用を戻すほうが早いです。
よくある質問
怒っていること自体が悪いことに思えます
怒りは、線を越えられたときに出る反応です。怒れなくなると、自分が損をしていることに気づけなくなります。 直したいのは出方であって、感じること自体ではありません。
怒りを飲みこんだら、涙が出てきます
我慢すると、別の形で出ることがあります。よくあることで、弱いからではありません。その場をいったん離れて、あとから文章で伝えるほうが、伝わることも多いです。
怒りが人やものに向かってしまいます
怒りが人に向いてしまう、ものを強く扱ってしまう。そのことで自分でも困っているなら、工夫を足すより先に、その場から離れる仕組みを最優先で作ってください。 そして、一人で抱えないでください。早めに専門家や公的な窓口に相談するのが、いちばん確実です。
家族にだけ強く出てしまいます
外で使った分の余裕が、家に残っていないだけかもしれません。帰宅から30分は、話しかけない・話しかけられない時間にできないか、相談してみてください。順番を変えるだけで減ることがあります。
頭に血が上ると、あとで何を言ったか覚えていません
強い気持ちが出ているあいだ、細かい記憶は残りにくくなります。覚えていないことを責めても進まないので、思い出すより、次に同じ場面が来たときの動作を決めるほうに時間を使ってください。 相手に「何を言ったか教えてほしい」と頼むのは、落ち着いたあとにします。
相手が明らかに理不尽です
その場合、問題は自分の性格ではありません。怒りを消すのではなく、距離と回数を減らすほうを考えてください。人によっては、記録を残しておくことも役に立ちます。
関連する困りごと
- 引き受けすぎて、あとから腹が立つなら → 頼まれごとを断れない人へ|角を立てずに断る言い方
- 疲れや空腹に気づけないまま沸点が下がっているなら → 気づいたら限界になっている人へ|疲れや空腹に気づけない
- 音でイライラが増えていると感じるなら → 人の声や生活音がつらい人へ|音を減らす道具と使い方
- 家の中でぶつかることが多いなら → 家族に特性を分かってもらえない人へ|伝え方の順番
まず今日、これだけやってみる
- 今週ムッとした場面を1つ思い出して、そのとき体に出ていたことを書く
- その場を離れる一言を1つ選んで、声に出して練習する(「10分だけ時間をください」など)
- 明日の予定に、10分の余白を1つ入れる
3つとも重いなら、1つめだけで十分です。自分のサインを1つ知っているだけで、選べる場面は確実に増えます。
この記事について
成人のADHDでは、気持ちが大きく動きやすいことを扱った、研究をまとめた分析があります(13の研究・2,535名)。怒りが強く出やすいことを、性格や我慢の量ではなく特性の一部として説明できます。ただしこの分析は、どうすれば怒りが小さくなるかを調べたものではありません。 ここに書いた手順が研究で確かめられている、という意味ではないということです。
また、まわりに受け入れられている感覚と心の健康が関係している、という報告もあります。ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。安心して過ごせる場所が、怒りの出やすさにも関わりそうだ、という程度に読んでください。
ここに書いたサインの決め方も、離れ方も、合う人と合わない人がいます。効かなかったものは、あなたに問題があったわけではなく、合わなかっただけです。
怒りが人やものに向かってしまう、生活や人間関係にはっきり出ている、そのことで自分を強く責め続けている。そういうときは、工夫だけで抱えないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
怒った自分がいちばん嫌いになるんですよね。でも、怒りそのものが悪いわけじゃないんです。困っているのは出方のほうなので、直すのも出方のほうでいいんですよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける感情の調節のしにくさ:研究をまとめた分析
(原題:Emotion dysregulation in adults with attention deficit hyperactivity disorder: a meta-analysis)
この研究でわかっていること:感情が大きく動きやすいことを、性格ではなく特性の一部として説明できます。
ここはまだ分かっていません:対処法の効果を調べたものではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における「受け入れられた経験」と心の健康
(原題:Experiences of Autism Acceptance and Mental Health in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:周囲に受け入れられている感覚と心の健康が関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:ある時点で調べたもので、どちらが原因かまでは分かりません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。