面接でうまく話せない人へ|暗記より台本の作り方
— 覚えようとするのをやめると、話せるようになります
ポイント
- 丸暗記した文章は、1か所ずれると全部止まります
- 1つの質問につき、覚えるのは単語3つだけにします
- 沈黙は失敗ではありません。逃げ道の言い方を先に用意します
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想定される質問を書き出して、答えも用意した。前の日は何度も読み返した。
それなのに、面接室に入って最初の質問で頭が真っ白になる。用意した文章の途中で次の言葉が出てこない。取りつくろうほど話が長くなって、自分でも何を言っているか分からなくなる。
帰り道になって、言うべきだったことを全部思い出す。
面接でうまく話せないのは、話す力が足りないからではありません。丸暗記した文章は、1か所ずれると全部止まるからです。 覚えるのをやめて、部品を用意します。
なぜ用意した答えが崩れるのか
一字一句だと、1語忘れた時点で止まる
文章まるごとで覚えるやり方は、途中の1語が出てこない瞬間に、続きも消えます。歌詞を1行飛ばすと、その先が歌えなくなるのに似ています。
思い出す作業に頭を全部使うので、相手の顔を見る余裕もなくなります。
質問は、用意した言い方では来ない
「志望動機を教えてください」を用意していても、実際には「うちのどこに興味を持ちましたか」と聞かれます。中身は同じなのに、覚えた文章はこの言い換えに反応してくれません。
緊張すると、思い出す力から先に落ちる
初対面、想定外、評価される場。この3つが重なると、普段できることができなくなります。能力が落ちたわけではなく、頭の力を緊張に取られている状態です。
面接は、会話の型が特殊
雑談でも報告でもありません。相手が話の主導権を持っていて、答えの長さも自分で決める必要があります。手がかりの少ない会話ほど、負担は大きくなります。
しかも、考える時間はほとんどありません。質問が終わってから話しはじめるまで、使えるのは数秒です。その場で作ろうとするから間に合わないのであって、材料が先にあれば足ります。
【いちばん効く1つ】文章ではなく、部品を3つ書く
1つの質問につき、覚えるのは単語3つだけにします。文章にはしません。
たとえば「これまでのお仕事について教えてください」なら、紙にはこう書きます。
- 事務職を3年
- 請求書の処理と入力
- 数字の確認が得意
当日はこれを見て、その場で文にします。「事務職を3年やっていました。請求書の処理と入力が中心で、数字の確認は得意でした」。
部品なら、順番が入れ替わっても話せます。 質問の言い方が変わっても、同じ3つを使い回せます。
並べる順番だけ、体に入れておく
順番は「結論 → 事実 → ひとこと」の3段です。
- 結論:何をしていたか、何をしたいか
- 事実:数字や、具体的な作業の名前
- ひとこと:そこから今につながる一文
この順番さえ決まっていれば、中身は毎回その場で作れます。 想定外の質問が来ても、同じ形に流し込めます。
面接でうまく話せない人へ/台本の作り方
台本の作り方
まとまった1時間があれば作れます。
- よく聞かれる質問を10個、紙に書き出す
- 1問につき、部品を3つだけ書く(文章にしない)
- 声に出して1回だけ話し、スマホで録音する
- 詰まったところにだけ、言葉を足す
- 紙1枚にまとめて、当日カバンに入れる
書いた文章を読み上げて覚える工程は、いりません。 覚えるほど、崩れやすくなります。
書き出す質問は、この10個から
何を書けばいいか分からないときは、そのまま使ってください。
- 自己紹介をお願いします
- これまでの仕事内容を教えてください
- 志望した理由は何ですか
- 前の職場を辞めた理由は何ですか
- 長所と短所を教えてください
- 仕事で大変だったことは何ですか
- 体調や通院の状況はどうですか
- どんな働き方を希望していますか
- いつから働けますか
- 最後に、何か質問はありますか
7番と9番は、答えを決めていないと詰まりやすいところです。 先に決めておいてください。
部品が書けないときは、材料が足りない
書けないのは話す力の問題ではなく、材料の問題です。先に棚おろしをします。
- やっていたことを、動詞で書き出す(入力する、確認する、案内する)
- 数字を1つ添える(3年、1日40件、5人の担当)
- 人から頼まれやすかったこと、褒められたことを思い出す
「強み」から考えようとすると止まります。 やったことから並べてください。書き出す作業が重いときは大きい仕事を前に固まってしまう人へのやり方が使えます。
練習は、一人でやらない
声に出す相手がいると、自分が詰まる場所がはっきりします。ハローワークの窓口、支援機関の担当者、家族でも構いません。
外から声をかけてもらう伴走の形に意味がありうる、という国内の小さな研究もあります。頭の中で回すだけでは、当日と同じ状態になりません。
よく聞かれる質問と、組み立て方
自己紹介
30秒で十分です。名前、直近に何をしていたか、応募した理由をひとこと。
「△△と申します。事務職を3年、請求書の処理を担当していました。数字を扱う仕事を続けたいと思い、応募しました」
志望動機
会社を褒める必要はありません。募集内容と自分ができることが重なる点を、1つ言えれば十分です。
「求人にあった入力と確認の作業が、前の職場でいちばん長く担当してきた部分でした」
退職理由やブランク
正直に、短く。説明しすぎると、かえって言い訳に聞こえます。
「体調を崩して休んでいました。今は通院しながら安定していて、週5日働ける状態です」
うそはつかないほうがいいですが、細かく話す義務もありません。ひとことで言い切って、次の質問を待ちます。
転職の回数が多い場合も同じです。1社ずつ理由を並べると長くなるので、まとめてひとことにしてから、いま何を選びたいかを足してください。
「合わない環境が続いてしまいました。今回は、作業の内容がはっきりしている職場を選んでいます」
長所と短所
短所は、必ず対策とセットで言います。
「口頭だけの指示だと抜けることがあるので、その場でメモを取って、あとから確認するようにしています」
弱点を言うこと自体は、不利になりません。 手当てをしていない状態が不利になります。
逆質問
用意していない人が多いので、2つ書いていくだけで印象が変わります。
- 1日の仕事の流れ
- 入ってから最初に覚える仕事
- 分からないことを聞く相手は誰か
「特にありません」でも落ちはしませんが、働きやすさを確かめる機会を1つ捨てることになります。
沈黙が怖いときの言い方
黙るのは失敗ではありません。3秒ほどの沈黙を、面接官は気にしていません。 手元でメモを取っている時間のこともあります。
詰まったときの逃げ道を、先に3つ用意しておきます。
「少し考えさせてください」
「ご質問の意図を確認してもよろしいでしょうか」
「その経験はありません。近いことだと◯◯をしていました」
分かりませんと言えることは、評価を下げません。 その場でごまかすと、入ってから苦しくなります。
話が長くなってしまうとき
自分で終わりを決められないと、延々と続いてしまいます。「以上です」を口ぐせにしてください。 言い終わりの合図になり、面接官も次へ進めます。
頭が真っ白になったら
用意した紙を見て構いません。
「緊張しているので、少しメモを見てもよろしいでしょうか」
断られることは、まずありません。紙を見たこと自体が、落ちる理由になることはまずありません。
面接でうまく話せない人へ/特性や配慮を伝えるかどうか
特性や配慮を伝えるかどうか
伝えるか伝えないかは、どちらも選べます。決めるのは自分です。
- 伝える:働きやすくするための調整を頼める。応募できる求人は狭まることがある
- 伝えない:応募先は広い。入ってから調整を頼みにくい
くわしい比べ方は障害者雇用と一般雇用で迷っている人へにまとめました。
伝えるなら、3点セットにする
- 困りごと(どの場面で起きるか)
- 自分でやっている対処
- お願いしたいこと(1つか2つまで)
「口頭だけの指示だと抜けやすいので、要点を文字でいただけると確実に進められます。指示のあとに、こちらから復唱する形も取れます」
できませんではなく、こうすれば動けますの形にすると、話が前に進みます。伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へにまとめました。
言うタイミングは、面接の終わりごろが落ち着いて話せます。長所と短所を聞かれた流れで自然に出せることもあります。どこで言うかを決めておくだけで、面接中ずっと迷わずに済みます。
こちらから確かめておきたいこと
面接は、選ばれる場であると同時に、こちらが確かめる場でもあります。
- 指示は口頭が中心か、文字が中心か
- 電話や来客の対応があるか
- 静かに作業できる席があるか
自閉スペクトラムのある大人に向けた就労のプログラムは、研究としてまとめられている分野です。一人で就職活動を抱えず、支援機関を使う道もあります。→ 就労移行支援を使ってみたい人へ
当日の動き方
前の日
- 持ち物と服を出しておく
- 道順を調べて、家を出る時刻を決める
- 部品を書いた紙を1枚だけカバンに入れる
前の日に、新しい答えを作らないでください。 増やすほど当日に崩れます。
直前の30分
近くの店に入って、紙を1回だけ読みます。声に出す必要はありません。思い出すのは3つだけと決めておくと、待ち時間の不安が減ります。
終わったあと
反省会は、その日はやりません。帰り道は、何も考えなくていいです。 翌日に、次から足す部品を1つだけ書けば十分です。
場面別
オンラインの面接
紙をカメラの横に貼っておけます。画面越しには分かりません。音が悪いと聞き返しが増えるので、イヤホンを用意してください。通信が切れたときの連絡先を、手元に置いておくと慌てません。
集団面接
順番が来るまで、ほかの人の答えを聞き続けることになります。自分の部品だけ思い出して、あとは聞き流して構いません。 前の人と内容がかぶっても、問題ありません。
二次面接で聞かれることが変わる
一次は経歴、二次は「一緒に働けそうか」を見ていることが多いです。部品は同じで構いません。 変えるのは、どこを長めに話すかだけです。
何社も落ちて動けなくなった
落ちた理由は、たいてい教えてもらえません。自分の話し方だけのせいにしないでください。 条件が合わなかっただけ、ということが本当によくあります。
応募する数を減らして、1社ずつ準備するほうが、結果的に早いこともあります。
関連する困りごと
- 伝えるか黙るかで迷う → 障害者雇用と一般雇用で迷っている人へ
- 入ってから調整を頼みたい → 職場に「これがつらい」と言えない人へ
- 一人での就職活動がしんどい → 就労移行支援を使ってみたい人へ
- そもそも何を選べばいいか分からない → ADHDに向いてる仕事を知りたい人へ
まず今日、これだけやってみる
- よく聞かれる質問を10個、紙に書き出す(答えはまだ書かない)
- 1問につき、単語を3つだけ書く
- 自己紹介だけ、声に出して録音してみる
この記事について
自閉スペクトラムのある大人に向けた就労のプログラムや支援は、たくさんの研究をまとめて調べられている分野です。ただし、そのまとめ自体が、研究の数と質に限界があると述べています。「こうすれば受かる」と言える段階ではありません。
障害のある人の職業リハビリテーションについては、国の研究機関である障害者職業総合センターが、調査や実務向けの資料を公開しています。制度や支援の全体像を知るのには役立ちますが、個別の会社がどう対応するかを保証するものではありません。
外から声をかけてもらう伴走の形については、国内の成人10名を対象にした研究で、日常生活の困りごとが改善したと報告されています。10名で、比べる相手のいない小さな研究なので、効果の大きさまでは分かっていません。
この記事に書いた「部品を3つにする」「以上ですと言い切る」といったやり方は、面接の現場で使われている工夫で、研究で確かめられたものではありません。合う人と合わない人がいます。
面接のたびに強い不安が出て眠れない、就職活動そのものが進められない、ということもあります。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
面接の帰り道に、言えばよかったことを全部思い出すんですよね。あれは頭が悪いんじゃなくて、思い出す力が緊張に持っていかれていただけです。覚える量を減らせば、その分が戻ってきます。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人向けの就労プログラムと支援:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Employment programmes and interventions targeting adults with autism spectrum disorder: A systematic review)
この研究でわかっていること:就労支援プログラムが研究されている領域だと示せます。
ここはまだ分かっていません:研究数と質に限界があるとレビュー自体が述べています。
専門家・公的情報障害者職業総合センター(NIVR)
この研究でわかっていること:就労支援の研究・実務資料の出どころとして使えます。
ここはまだ分かっていません:個別の職場の対応を保証するものではありません。
研究で検討ADHDのある成人に対するコーチングの効果—10名のADHD成人への臨床研究
この研究でわかっていること:外から声をかけてもらう仕組み(伴走)に意味がありうる、と示唆できます。
ここはまだ分かっていません:10名で、比べる相手のいない研究です。効果の大きさは分かっていません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。