服のタグや縫い目が痛い人へ|着られる服の探し方
— 「我慢して着る」をやめると、一日が変わります
ポイント
- ASDのある人は、触覚が過敏になることがあります。好き嫌いとは別のことです
- 気になる服を着ていると、一日中そこに注意が持っていかれます
- 着られる服が見つかったら、同じものをまとめて買うのがいちばん確実です
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服のタグが首に当たって気になる。セーターがチクチクして着られない。ジーンズの生地が固くて無理。靴下の縫い目が足の指に当たって、一日中それが気になる。
そして「そんなの気にしすぎ」と言われる。
気にしすぎではありません。 ASD(自閉スペクトラム症)のある人は、触覚が過敏になることがあります。
服のつらさは、一日中続く
音や光はその場を離れれば消えますが、服は着ているあいだずっとです。
そして、気になっているあいだは、そこに注意が持っていかれます。仕事にも会話にも集中できません。
感覚の敏感さと暮らしにくさに関係があることや、感覚の負担が外出のしづらさにつながることが、研究でも報告されています。「服くらい我慢すれば」という話ではありません。
【まずやること】いま持っている服を仕分ける
新しく買う前に、手持ちの服を分けてください。
- 問題なく着られる
- なんとか着られるが、気になる
- 着られない
そして、3は手放してください。 「もったいない」と思っても、着ないなら場所を取るだけです。
そして大事なのはここです。1に入った服の共通点を探してください。
- 素材は何か(綿、レーヨン、ポリエステル)
- 縫い目はどうなっているか
- タグはついているか
- 締めつけはどうか
共通点が分かれば、次に買うものが決まります。
つらさの原因になりやすいところ
タグ
いちばん多い原因です。
- 切る。ただし切り口が残ると余計に痛いので、根元から。縫い目ごと外れるタイプもあります
- タグのない服(プリントタグ)を選ぶ。最近は増えています
縫い目
- 縫い目が外側にあるインナーがあります(もともと感覚過敏向けに作られたもの)
- 靴下はつま先の縫い目がフラットなものを選ぶ
素材
人によって、耐えられる素材はまったくちがいます。
| つらいことが多い | 平気なことが多い |
|---|---|
| ウール、モヘア | 綿100% |
| 化繊のざらつくもの | シルク、レーヨン |
| 麻(チクチクするもの) | 柔らかいスウェット地 |
| 固いデニム | 柔らかいストレッチ素材 |
あくまで傾向です。 自分の1に入った服の素材を確認してください。
締めつけ
- ウエストのゴム → ゴムのないもの、ゆるいもの
- 袖口・首まわり → 広めのもの
- 下着のワイヤーやゴム → ノンワイヤー、ゆるいもの
締めつけがつらい人は、ワンサイズ大きいものを選ぶだけで解決することがあります。
洗剤・柔軟剤
服そのものではなく、洗剤が原因のことがあります。
- 無香料に変える
- 柔軟剤をやめてみる(逆に、柔軟剤で柔らかくなると平気になる人もいます)
- すすぎの回数を増やす
1回試すだけなので、やってみる価値があります。
買うときのコツ
必ず触ってから買う
ネットで買うと、届いてから着られないと分かります。店で触って確かめるのがいちばん確実です。
ネットで買うなら、返品できるところを選んでください。
試着で「1分」着てみる
一瞬触っただけでは分かりません。着てから1分待つと、気になるかどうかが分かります。
合ったら、同じものを買う
これがいちばん大事です。
着られる服が見つかったら、同じものを2〜3着まとめて買ってください。 色ちがいでもいいです。
服は廃番になります。「またあとで買おう」だと、二度と手に入らないことがあります。
型番を控えておく
買ったものの型番やタグの情報を、スマホに記録しておいてください。買い足すときに探せます。
同じブランドで揃える
一度合ったブランドは、他の商品も合う可能性が高いです。探す手間が減ります。
服のタグや縫い目が痛い人へ/場面別
場面別
仕事着・制服
- 中に着るインナーで調整する(肌に触れるのはインナーだけにする)
- 制服が指定なら、サイズを変えられないか相談する
- ネクタイやベルトがつらいなら、代替を相談する
配慮としてお願いできることもあります。伝え方は職場に「これがつらい」と言えない人へへ。
スーツ・フォーマル
年に数回しか着ないものでも、着る日はつらいです。
- ストレッチの入ったものを選ぶ
- インナーで肌に触れる面積を減らす
- 着る時間を短くする(会場で着替える)
冬の重ね着
重ね着すると、触れる面がその分増えます。
- 1枚を厚くするほうが、重ねるより負担が少ないことがあります
- 肌に直接触れるインナーだけ、こだわって選ぶ
靴・靴下
一日中歩くので、影響が大きいところです。
- 靴下は縫い目がフラットなもの
- 靴は必ず試着して、店内を歩いてから買う
- 中敷きを変えると変わることがあります
寝るとき
パジャマとシーツの触りごこちで、眠りやすさが変わります。
- タグのないパジャマ
- 洗いこんで柔らかくなったもの
- シーツの素材を変えてみる
くわしくは夜、なかなか眠れない人へも見てみてください。
家族の服・子どもの服
自分ではなく、家族が触覚に敏感な場合の話です。
「わがまま」として扱わない
子どもが特定の服を着たがらないとき、しつけの問題として扱うと、その子はずっと我慢することになります。
「痛い」と言っているなら、痛いのだと受け取ってください。
選択肢を持たせる
「これを着なさい」ではなく、着られるものを何着か用意して、その中から選んでもらうほうがうまくいきます。
制服・体操服が無理なとき
学校や園に相談できます。インナーで調整する、サイズを変えるなどの対応が取れることがあります。
「甘やかし」ではなく、その子が一日を過ごせるようにするための調整です。
洗剤を変えてみる
家族全員の服を同じ洗剤で洗っているなら、無香料に変えるだけで解決することがあります。試す価値があります。
家族が「服が着られない」と言うとき、わがままとして扱わないでください。
- 「これくらい我慢して」と言わない
- タグを切る、素材を変えるなど、できることから試す
- 着られる服が見つかったら、まとめて買う
とくに子どもの場合、うまく言葉にできず「着たくない」としか言えないことがあります。
素材やタグを変えるだけで、朝の戦いがなくなることがあります。
周りに説明するとき
「服がチクチクする」だけだと伝わりにくいので、影響を言ってください。
「肌に合わない服を着ていると、一日中そのことが気になって、仕事に集中できないんです。」
「痛い」より「集中できない」のほうが伝わることがあります。
買い替えのタイミングで一気に整える
一度にすべて買い替えるのは大変なので、買い替えのタイミングで少しずつ入れ替えていくのが現実的です。
優先順位
- 肌に直接触れるもの(下着、インナー、靴下、パジャマ)← ここがいちばん影響が大きい
- 毎日着るもの(仕事着、部屋着)
- たまに着るもの
1だけ整えても、体感はかなり変わります。
予算の考え方
合う服が見つかったら多めに買うので、一時的に出費が増えます。でも、
- 合わない服を買って着ないより安い
- 一日の快適さが変わる
「服にお金をかけている」のではなく、「一日を過ごせるようにしている」と考えてください。
服のタグや縫い目が痛い人へ/洗い方で変わる
洗い方で変わる
同じ服でも、洗い方で触りごこちが変わります。
柔軟剤を試す/やめる
柔軟剤で楽になる人と、においがつらくなる人がいます。
無香料のものを試してみてください。合わなければ、柔軟剤を使わないという選択もあります。
新品は一度洗う
買ってすぐは、糊やのりが残っていてごわつきます。 一度洗うと変わることがあります。
洗剤を変える
肌に合わない洗剤だと、かゆみが出ることがあります。無香料・肌にやさしいタイプを試してみてください。
買ったら「合った服リスト」を残す
いちばん役に立つ記録です。
- ブランド名
- 商品名・型番
- サイズ
- 買った店
スマホのメモに残しておくと、買い足すときに探せます。
服は廃番になるので、気に入ったらまとめて買っておくのが正解です。
我慢しなくていい
「これくらいで」と思う必要はありません。
同じ服を着ても、感じ方は人によって違います。 あなたが不快なら、それが事実です。
一日中つらい状態でいると、集中力も気力も削られます。 服を変えるのは、生活の質に直接効きます。
かゆみや発疹が出る、痛みがあるという場合は、肌の病気が関係していることもあります。 困りごとが続くときは、相談先の探し方をご覧ください。
まず今週、これだけやってみる
- いま持っている服を「着られる/気になる/着られない」の3つに分ける
- 「着られる」に入った服の素材とタグを確認する
- タグが原因なら、全部切ってみる(3の前に洗濯表示の写真を撮っておくと安心です)
着られる服だけで生活していいです。 おしゃれの幅より、一日の快適さのほうが大事です。
よくある質問
タグを切ると穴が残ってちくちくします
根元ぎりぎりで切らず、少し残して切るか、ほどいてください。
最近はタグを印刷している服も増えています。買うときに確認すると、そもそも切らずに済みます。
家族に「気にしすぎ」と言われます
同じ服を着ても、感じ方は人によって違います。 あなたが不快なら、それが事実です。
一日中つらい状態でいると、集中力も気力も削られます。服を変えるのは、生活の質に直接効きます。
着られる服が少なくて困っています
合ったものを見つけたら、まとめて買ってください。 服は廃番になります。
型番をメモしておくと、買い足すときに探せます。
子どもが服を嫌がって着替えません
わがままとして扱わないでください。 タグ、縫い目、素材のどれかがつらいことがあります。
1つずつ変えて試すと、着られる服が見つかることがあります。
スーツや制服が指定でつらいです
サイズや素材を変えられないか相談してください。 同じデザインでも、生地が違うだけで着られることがあります。
肌に触れるのはインナーだけにする、という調整も有効です。
関連する困りごと
- 感覚全般がつらい → 感覚過敏で生活がつらい人へ
- 服が決められない → 毎朝どの服を着るか決められない人へ
- 眠りにくい → 夜、なかなか眠れない人へ
- 職場に言いにくい → 職場に「これがつらい」と言えない人へ
まとめ:服のつらさを減らす5つ
- タグを切る・縫い目のない下着に変える
- 必ず触って、着てから1分待って買う
- 合った服は、同じものを2〜3枚買う
- 型番をメモしておく
- 肌に触れる面はインナーで調整する
我慢して慣れるものではありません。
この記事について
ASD(自閉スペクトラム症)のある人では、感覚が過敏になることがあると、国内の研究で整理されています。触覚もそのひとつです。
感覚の敏感さと暮らしにくさに関係があることが、複数の研究をまとめたレビューで報告されています(関係があるという話で、対策すれば生活の質が上がると示したものではありません)。感覚の負担が外出のしづらさにつながることを示した研究もあります。
そのうえで、ここに書いた服の選び方は、研究で確かめられたものではありません。 合う素材や形は人によってまったくちがうので、自分の実感を優先してください。
服のことで生活に支障が出ている、外に出られないというときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
タグが1枚当たっているだけで、一日中そのことしか考えられなくなる。この感覚、経験がない人にはなかなか伝わらないんですよね。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討自閉スペクトラム症に見られる感覚処理障害の臨床神経生理学
この研究でわかっていること:感覚の違いが「気のせい」でも「わがまま」でもないことの裏づけになります。
ここはまだ分かっていません:個別の対策グッズ(イヤーマフ等)の効果を調べた研究ではありません。
研究で検討感覚の処理のしかたと生活の質の関係:たくさんの研究をまとめた分析
(原題:Relationship between Sensory Processing and Quality of Life: A Systematic Review)
この研究でわかっていること:感覚の敏感さが暮らしにくさと関連することを示せます。
ここはまだ分かっていません:関係があるという話で、感覚の対策をすれば生活の質が上がるとまでは言えません。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における感覚の処理と、地域での活動への参加
(原題:Sensory Processing and Community Participation in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:感覚の負担が外出のしづらさにつながることを、成人対象の研究として示せます。
ここはまだ分かっていません:「対策すれば外出できる」という実際に何かを試して調べた研究ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。