引っ越しの荷造りが進まない人へ|箱が埋まらない
— 手が止まるのは、荷造りと片づけを同時にやろうとしているからです
ポイント
- 荷造り中は要る要らないを決めず、迷ったものは全部箱に入れて運びます
- 1箱に1部屋、番号と中身3語。詰め方を先に決めると手が動きます
- 20分のタイマーと範囲の指定だけで、箱の数は毎日ひとつずつ増えます
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段ボールが10枚、玄関に立てかけたまま3日たちました。ガムテープも買ってあります。それでも、どの箱に何を入れるかを考えはじめると、手が止まります。
引っ越しの日は決まっています。決まっているのに、部屋は先週と同じ景色のままです。結局、前の日の夜に全部やることになるという予感だけがあります。
引き出しを開けたら、昔の写真が出てきて30分たっていた。そんな日もあったはずです。
先に結論を書きます。荷造りが止まるいちばんの理由は、荷造りと片づけを同時にやろうとしていることです。 ものを手に取るたびに、持っていくか捨てるかを決めていたら、箱は埋まりません。
この記事では、引っ越しが終わるまで捨てる判断をしないやり方で進めます。
なぜ箱が埋まらないのか
一つの大きなかたまりに見えている
やることリストに「荷造り」と1行書いてあると、それは1つの作業に見えます。実際には、部屋の数だけ、引き出しの数だけ、別々の作業です。
大きすぎて始まらないのであって、面倒だから始まらないのではありません。
手に取るたびに判断が発生する
引き出しを1つ開けると、そこには数十個のものがあります。1個ずつ持っていくか捨てるか売るかを決めていくと、判断の数だけ時間が消えます。
ものをため込みやすい傾向が、うっかりしやすさと結びついていたという報告もあります。片づかないことを、だらしなさとして扱わないでください。
途中で別の作業が始まる
アルバムが出てきて30分。読みかけの本が出てきて20分。懐かしいものが出てくるのは荷造りの副作用で、避けられません。避けられないので、出てこない順番で進めます。
終わりが遠くて、実感がない
引っ越しが2週間先だと、今日やらない理由はいくらでも作れます。直前にならないと本気になれないのは、多くの人がそうです。 そのうえで、前日にできる量には限りがあります。
【いちばん効く1つ】引っ越しが終わるまで、捨てる判断をしない
荷造り中は、要る要らないを決めません。迷ったものは、全部持っていきます。
せっかくだから片づけよう、と思った瞬間に、荷造りが片づけに変わります。期限のある作業が、期限のない作業に飲み込まれます。
- 迷ったら、中身を見ずに箱へ入れる
- その場で外に出すのは、明らかなゴミだけ(空き箱、期限切れの食品、壊れた家電)
- 選ぶのは、引っ越し先で開けるとき
運ぶ量は少し増えます。 それでも、間に合うほうが大事です。
引っ越し先で箱を開けたとき、その中身は「しばらく使わなかったもの」として見られます。そのほうが決めやすいです。手放す作業そのものはものが捨てられない人へにまとめています。
詰め方を、先に決めてしまう
詰めながら考えると、そこで止まります。次の6つを決めておけば、あとは手が動きます。
- 1箱に1部屋のものだけ入れる(部屋をまたがない)
- 箱に通し番号を書く(1、2、3…)
- 中身は3語まで(台所・鍋・ざる)
- 上の面と側面の両方に書く(積むと上の面が見えません)
- 重いものは小さい箱に、軽いものは大きい箱に
- 8割で閉じる(詰めすぎると持ち上がりません)
書くのはマジックで直接です。ラベルを作ろうとすると、そこで一日終わります。
番号と中身の対応をメモに残す
紙でもスマホのメモでもかまいません。
1 台所・鍋・ざる/2 本・仕事の資料/3 冬服・毛布
荷解きのとき、この1枚があるかないかで、かかる日数が変わります。
引っ越しの荷造りが進まない人へ/どこから詰めるか
どこから詰めるか
いま使っていないものからです。順番を決めておけば、迷いません。
- 季節外れの服・寝具
- 本、資料、趣味のもの
- 来客用の食器、使っていない家電
- 飾りもの
- ふだん使う食器・服(直前)
- 洗面用具、充電器、薬(当日)
思い出のものは、いちばん最後に回してください。 最初に手をつけると、その日はそれで終わります。
すぐ開ける箱を、最初に作る
引っ越し先で最初に開ける箱を1つ、いちばん先に用意します。
- トイレットペーパー、ゴミ袋
- スマホの充電器
- カッター、はさみ、ドライバー
- タオル、着替え1日分、常備薬
- 手や体を洗えるもの、すぐ食べられるもの
この箱には大きく印を書いて、当日は自分で運びます。 初日に困るかどうかは、この箱で決まります。
箱に入れないものを、先によけておく
次のものは、箱に入れません。
- 現金、通帳、印鑑、キャッシュカード
- 契約書、保険証、マイナンバーカード、年金手帳
- 新しい家と、いまの家の鍵
- 毎日飲んでいる薬、めがね
- 仕事のパソコンと、記録を入れてある機器
これらは当日持ち歩く1つのかばんにまとめます。 箱に入れると、必要になった瞬間にどの箱かが分からなくなります。
かばんは、荷造りを始める前に用意して玄関に置いてください。あとから集めようとすると、たいてい1つ足りません。
1日20分で回す
まとまった時間ができるのを待っていると、その時間は来ません。20分を毎日のほうが、確実に進みます。
手順
- タイマーを20分にかける
- 引き出し1つ、棚1段だけを範囲に決める
- その範囲のものを、箱に入れる
- 鳴ったら、途中でも手を止める
範囲を決めるのが肝心です。 今日は台所、だと広すぎて、どこから手をつけるかで止まります。
始める合図を決めておく
時間があるときにやる、では始まりません。すでに毎日やっていることのうしろにくっつけます。
帰ってきて手を洗ったら、タイマーを20分かける
先に「こういうときはこうする」と場面ごとに決めておくやり方は、目標に届きやすくなると報告されています。決めた一文を紙に書いて玄関に貼っておくと、さらに忘れにくくなります。
最後の3分で、箱を閉じる
荷造りを始めると、部屋は一度もっとちらかります。中身を出した状態が、どうしても生まれるからです。
出しっぱなしにしないために、20分のうち最後の3分は、箱を閉じて名前を書く時間に使ってください。閉じた箱を壁ぎわに積んでいけば、床は少しずつ広くなります。
進み具合は、箱の数で見る
あと何割終わったかは分かりません。積み上がった箱の数なら見えます。
昨日より1つ増えている。それが見えるだけで、翌日も続けやすくなります。
そもそも最初の1箱に手がつかないときは最初の一歩がどうしても踏み出せない人へへ。
引っ越しの荷造りが進まない人へ/お金と人で解決できるところ
お金と人で解決できるところ
ここは自分だけで抱えなくて大丈夫です。
業者のプランを上げる
荷造りまで頼めるプランがあります。費用は荷物の量と距離で大きく変わるので、見積もりのときに、荷造りありの金額も一緒に聞いておいてください。
全部を頼まなくても、台所だけ、衣類だけ、と部分的に頼める場合もあります。台所は品数が多く、割れ物も多いので、そこだけ頼むとかなり楽になります。
不用品の処分は、先に予約する
粗大ごみは、申し込んでから回収まで2週間ほど待つことがあります。日程が決まったら、まずここを押さえてください。あとから気づくと間に合いません。
自治体の回収のほかに、有料の回収業者もあります。金額と、何を引き取ってもらえるかを先に確認してください。
人に来てもらう
作業を代わってもらわなくてもかまいません。そばにいてもらうだけで手が動くことがあります。だれかがいると動ける理由は一人だとまったく進まない人へをご覧ください。
家族や同居人がいるとき
自分のものと、共有のものを分けます。先に自分のものだけ進めてください。
- 共有の場所(台所、洗面所、居間)は、直前にまとめてやる
- 相手のものを勝手に箱に入れない(あとで必ず揉めます)
- 子どもがいる場合は、おもちゃを1つだけ手元に残す
分担は、作業ではなく部屋で分けるほうが揉めにくいです。あなたは寝室、私は台所、という決め方なら、どこまでが自分の担当かがはっきりします。
荷造り以外にやることは、分けて書く
住所の変更や解約は、荷造りとは別の作業です。同じリストに混ぜると、どちらも進みません。
- 電気・ガス・水道(1週間前までに連絡)
- インターネット(工事がいる場合は早めに)
- 役所の転出・転入の届け出
- 郵便の転送届
- 運転免許、銀行、カード、保険、よく使う通販サイトの住所
それぞれ、やる日をカレンダーに入れてください。 リストのまま置いておくと、いつまでも残ります。
前日と当日にやること
前日までに済ませておくと、当日が静かになります。
- 冷蔵庫の中身を空にして、電源を前日の夜に切る(霜取りと水抜きに時間がかかります)
- 洗濯機の水抜きをする(やり方は説明書か、機種名で調べると出てきます)
- ゴミの収集日を確認する(引っ越したあとには出せません)
- 支払い方法を確かめる(現金なのか、カードが使えるのか)
- 掃除道具は、最後に運ぶ箱に入れる
当日は朝いちばんに、すぐ開ける箱と貴重品のかばんを手元に確保します。ここさえ守れれば、あとは多少ちらかっても取り返せます。
よくある質問
引っ越しまで、あと3日しかありません
順番を変えます。
- すぐ開ける箱を作る
- 割れ物と貴重品だけ、ていねいに詰める
- 残りは種類を分けずに箱へ入れる(部屋だけそろえる)
- 入りきらない分は、袋のまま運ぶ
きれいに詰めることは、いま捨てていい目標です。 割れずに届けば十分です。
思い出のものが出てきて、進みません
見ないで箱に入れます。それでも見てしまうなら、思い出用の箱を1つ用意して、中身を見ずにそこへ入れてください。 開けるのは、引っ越し先で時間のある日です。
一人暮らしで、手伝ってくれる人がいません
20分を毎日に加えて、当日の朝に自分で運ぶものだけを先に決めておいてください。当日の混乱がかなり減ります。
友人に頼むときは、日付と時間帯をこちらから決めて聞くほうが、相手も答えやすくなります。
引っ越したのに、箱が開きません
よくあることです。すぐ開ける箱と、毎日使うものの箱さえ開ければ、生活は回ります。
残りは開ける日を決めてください。時間ができたら、では開きません。1つの箱を20分で開ける、を続ければ、いつか空になります。
関連する困りごと
- 捨てる判断で止まる → ものが捨てられない人へ
- 大きい作業が割れない → 大きい仕事を前に固まってしまう人へ
- 最初の一歩が出ない → 最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ
- 片づけの手順を知りたい → 部屋が片づかない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 段ボールを1箱だけ組み立てて、玄関に置く
- すぐ開ける箱に入れるものを、紙に5つ書く
- 粗大ごみの回収を予約する(日にちがいちばん動かせません)
1番だけでもかまいません。組み立てた箱が目に入ると、次の日に入れるものが浮かびます。
気力が残っていない日は、そこでやめて寝てください。1箱でも詰めてあれば、引っ越し前日の自分が助かります。
この記事について
先に場面を決めて、そこに行動を結びつけておくやり方は、目標に届きやすくなると、研究をまとめた分析で報告されています。ただしこれは発達障害のある人だけを対象にした研究ではなく、引っ越しを扱ったものでもありません。
ものをため込みやすい傾向については、成人ADHDで高く、とくにうっかりしやすさと結びついていたという報告があります。ここから言えるのは、片づかないことを性格の問題として扱わなくてよいということまでで、どの片づけ方がよいかを調べた研究ではありません。
そのうえで、この記事に書いた進め方(捨てる判断を後回しにする、1箱1部屋、20分のタイマー、番号のメモ)は、研究で効果が確かめられたものではありません。 費用がかからず、途中でやめても損をしないという理由で紹介しています。しっくりこないものは、読み飛ばしてください。
引っ越しは、期限があって、判断が多くて、環境が丸ごと変わる作業です。しんどくなるのは自然なことです。 眠れない、食べられないといった状態が続くときは、無理に進めないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
荷造りが止まる人って、たいてい途中で片づけを始めてるんですよね。期限のある作業が、期限のない作業に食べられてる状態です。捨てるのは引っ越したあとでいいんです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
研究で検討ADHDでのため込み傾向の高さ:不注意との特別な結びつき
(原題:Elevated levels of hoarding in ADHD: A special link with inattention)
この研究でわかっていること:片付かないことを「だらしなさ」ではなく不注意と結びつけて説明できます。
ここはまだ分かっていません:どの片づけ方がよいかを調べた研究ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。