食べすぎ・間食が止まらない人へ|禁止しない置き換え
— 意志の量ではなく、手の届く範囲を変えます
ポイント
- 手が伸びる理由は空腹だけではなく、気持ちの動きと手持ちぶさたが混ざっています
- 止める場所は口の前ではなく、買う前と、しまう場所です
- ゼロを目標にすると反動が来ます。行き先を先に用意しておきます
目次を開く(15項目)
今日はやめておこうと思っていたのに、気づくと袋が空になっています。
夕食を終えたばかりなのに、また台所の前に立っている。嫌なことがあった日ほど、手が止まらない。
そして食べ終わったあとに、決まって自分を責める。この落ち込みの時間が、いちばんしんどいところです。
手が止まらないのは、意志が弱いからではありません。
やることは、我慢の量を増やすことではありません。手の届く範囲と、口に入るものの形を変えることです。
この記事は体重や体型をどうするかの話ではありません。食べたあとの落ち込みを減らして、暮らしを回しやすくするための工夫をまとめました。
なぜ手が止まらなくなるのか
食べたくなる理由は、お腹が空いているからだけではありません。だいたい、次の3つが混ざっています。
- 本当の空腹(食事の間隔が空きすぎている)
- 気持ちの動き(不安、いらだち、退屈、緊張がゆるんだあと)
- 手持ちぶさた(手と口が空いている時間が長い)
成人ADHDのある人の感情の揺れやすさについて、研究をまとめた分析があります。気持ちが大きく動きやすいことは、性格ではなく特性の一部として説明できると報告されています。
気持ちが動いたとき、いちばん早く効く手当てが食べることだとしたら、手が伸びるのは自然なことです。変えるのは性格ではなく、手当ての選択肢の数です。
空腹の信号が遅れて届く人もいます
空腹や疲れ、のどの渇きといった体の内側の感覚は、気づきやすさに個人差があります。自閉スペクトラム症のある人を対象に研究をまとめた分析でも、本人の実感としての差が報告されています。
昼を抜いて、夕方に一気に食べてしまう。これは自制心の話ではなく、空腹の信号が届くのが遅れているだけかもしれません。信号が遅れる人ほど、我慢を足すと反動が大きくなります。
【いちばん効く1つ】しまう場所を1段遠くする
食べる量を決めているのは、意志よりも距離です。5秒で届くものは、5秒で口に入ります。
- 袋のまま机の上に置かない。別の部屋か、届かない棚に移す
- 台所では、いちばん上の段か、ふた付きの箱にしまう
- 机の上に置くのは、すぐ食べられないものにする(水、お茶、氷)
- 目に入るところに出しておくのは、食べていいと決めたものだけ
やっているのは禁止ではなく、取りに行く手間を1つ増やすことです。
立ち上がる、ふたを開ける、はさみを探す。この3秒から10秒の間に、我に返れる日があります。
袋から直接食べるのをやめて、小皿に出してから食べるのも同じ理屈です。量を測るためではなく、ひと呼吸を入れるためにやります。
空腹かどうかを、3つの質問で分ける
手が伸びたとき、自分に3つ聞いてみてください。
- 最後に食べたのは何時間前か
- 今ほしいのは特定の1品か、何でもいいか
- その直前に、何があったか
3時間以上あいていて、何でもよくて、特に何もなかった。これは本当の空腹の可能性が高いので、食べてください。
30分前に食べていて、特定のお菓子だけが浮かんでいて、直前に嫌なことがあった。これは気持ちの動きのほうです。
見分けがつかない日もあります。そのときのために、こう決めておいてください。
「まず水かお茶を1杯飲んで、5分たっても食べたければ食べる」
5分待って食べても、まったく問題ありません。目的は正解を当てることではなく、手が伸びる前に一度止まることです。
食べすぎ・間食が止まらない人へ/買い方のほうを設計する
買い方のほうを設計する
家にないものは食べられません。止める場所は口の前ではなく、レジの前です。
1. 空腹のまま店に入らない
お腹が空いた状態で買い物に行くと、選ぶ基準が甘くなります。買い物は食後にするか、行く前に何か1つ口に入れてから。
2. 大袋を選ばない
同じお菓子でも、個包装のものにすると、1回で区切りがつきやすくなります。1個あたりの値段は上がりますが、月で見ると数百円の差です。
3. 買うものを先に書いておく
家を出る前に、買うおやつをメモに1つか2つだけ書きます。書いていないものは今日は買わない、と決めておく。
4. 店内を歩かない方法を使う
ネットスーパーや宅配は、棚の前を通らないぶん、目に入るものが減ります。ついで買いが起きにくいのが利点です。
買い物そのものが毎回うまくいかないなら、買い忘れと二重買いが多い人へ も合わせてどうぞ。
ゼロにしないで、行き先を用意する
間食を完全になくそうとすると、たいてい反動が来ます。ゼロを目標にしないでください。
やることは、手が伸びたときの行き先を先に決めておくことです。そこに何が置いてあるかで、結果が変わります。
- かむ回数が多いもの(ナッツ、するめ、こんぶ、りんご、にんじん)
- 温かい飲みもの(お茶、スープ、ココア)
- 冷たいもの(氷、炭酸水、凍らせたぶどう)
- 手間がかかるもの(皮をむく果物、殻つきのもの)
選ぶ基準は、体にいいかどうかではありません。口が満たされるかどうかです。味気ないものを置くと、結局そのあと本命に手が出ます。
冷蔵庫の一段を「食べていいものの場所」と決めて、そこだけは切らさない。探し回る時間が減って、迷いも減ります。
食事そのものが不規則で、間食で埋めている状態なら、自炊が続かない人へ のほうが先に効きます。
手と口を、ほかのことに使う
手持ちぶさたで食べているときは、食べもの以外で手と口を埋めるだけで、回数が減ることがあります。
- 手を使う(手元で触れるもの、編み物、爪の手入れ、洗い物を1つ片づける)
- 口を使う(ガム、歯みがき、うがい、炭酸水)
- その場を離れる(3分だけ外に出る、階段を1往復する)
作業の切れ目に食べたくなる人は、休んだときに何をするかを先に決めておくと楽になります。休憩の中身が食べることしかないと、休むたびに食べることになるからです。
夜になると止まらないとき
夜の食べすぎには、たいてい別の理由がくっついています。
- 日中の食事が足りていない(昼が軽すぎる)
- 疲れきっていて、選ぶ力が残っていない
- 寝たくないので、口を動かして起きている
昼をしっかり食べるほうが、夜は静かになります。 夜の我慢を増やすより、日中の食事を1回増やすほうが早いです。
疲れに気づかないまま夜まで走ってしまう人は、気づいたら限界になっている人へ も見てみてください。
一日の食事を終える合図を決める
「歯をみがいたら、その日の食事はおしまい」
こう決めておくと、判断する回数が減ります。歯みがきを夕食のすぐあとに前倒しするのも手です。
それでも食べたい日は、決めておいた1品にします(汁物、ヨーグルト、果物など)。禁止ではなく、行き先を用意しておく形です。
食べすぎ・間食が止まらない人へ/買い足しは、お金のほうが先に苦しくなる
買い足しは、お金のほうが先に苦しくなる
コンビニでの買い足しは、1回400円でも、週に5回なら月8,000円ほどになります。体より先に、家計のほうが痛むことがあります。
- 寄る回数の上限を決める(例:週2回まで)
- 買い足し用の現金だけを持って出る
- 月のはじめに、おやつの予算を切り分けておく
買う勢いそのものが止まらない感じがあるなら、衝動買いが止まらない人へ にくわしく書いています。
記録するなら、量ではなく場面を
食べた量を書き出すやり方は、続かないうえに、自分を責める材料が増えがちです。書くなら、そのとき何があったかにしてください。
- 時間(だいたい何時ごろか)
- 直前にしていたこと
- そのときの気分(ひとことで十分です)
1週間分たまると、手を出しやすい時間帯が見えてきます。多いのは、帰宅した直後、夕食のあと、締め切りの前です。
見えてきたら、その時間帯にだけ手当てを置きます。一日中がんばる必要はありません。
場面別に考える
在宅で作業している日
台所が近いことが、いちばんの負担になります。作業する部屋に食べものを持ち込まないのが基本です。飲みものは水筒に入れて、席のそばに用意しておく。
職場のデスクで
引き出しの買い置きは、残りの量が見えないぶん止まりにくくなります。その日に食べるぶんだけ持って行く形にすると、区切りがつきます。
家族と暮らしている家で
全部を隠すのは無理なので、自分の棚を1つ作らせてもらうのが早いです。よく手を出すものだけ、置き場所を変えてもらいます。
理由を先に伝えておくと、協力してもらいやすくなります。
「意志の問題じゃなくて、目に入ると手が出るから、置き場所だけ変えさせてほしい」
つらさが大きいときは、工夫の外に出る
次のようなことが続いているときは、この記事の工夫だけで抱えないでください。
- 一度食べ始めると止められず、あとで吐いてしまう
- 食べたことを、強く隠したくなる
- 食べることと体重のことで、一日の大半が埋まってしまう
- 食事をとらない日が、何日も続いている
これは意志の問題ではありません。 早めに相談したほうが、回り道が短くなります。内科でも心療内科でも、話しやすいところで構いません。どこに行けばいいか迷うときは、住んでいる地域の保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。
この記事の工夫は、そうした状態そのものに向けたものではありません。
よくある質問
我慢しないと変わらないのでは?
我慢の量を増やすやり方は、うまくいく日と、まったく効かない日の差が大きくなります。疲れた日にかぎって効かないのが問題です。
手の届く場所を変えるやり方なら、疲れていても効き目が変わりません。 続けやすいのはこちらです。
やめられた日と、だめな日の差が激しいです
差が出るのは自然です。寝不足の日、予定が詰まった日、人と長く話した日は、たいてい手が伸びやすくなります。
その日を「失敗」と数えるのをやめて、手が伸びやすい日として先に見込んでおくと、当日の落ち込みが減ります。
食べたあとに、自分を責めてしまいます
責める時間は、次の1回を減らしません。むしろ、気持ちが沈んだぶん、また手が伸びやすくなります。
食べたあとにやることを1つだけ決めておいてください。歯をみがく、コップを洗う、外の空気を吸う。行動で場面を切り替えるほうが、早く抜けられます。
関連する困りごと
- 買う勢いが止まらない → 衝動買いが止まらない人へ
- 疲れや空腹に気づけない → 気づいたら限界になっている人へ
- 食事づくりが回らない → 自炊が続かない人へ
- 買い物のたびに困る → 買い忘れと二重買いが多い人へ
まず今日、これだけやってみる
- 机の上の袋を、別の場所にしまう(捨てなくていいです)
- 水かお茶を1杯飲んで5分待つを、今日1回だけやってみる
- 食べていいものを1つ買っておく(切らさないことが目的です)
3つ全部でなくて構いません。1つ目だけでも、今日の分は変わります。
この記事について
この記事は、次の情報をもとに書いています。
成人ADHDのある人の感情の揺れやすさについては、研究をまとめた分析があり、気持ちが大きく動きやすいことを性格ではなく特性の一部として説明できるとされています。ただし、これは対処法の効き目を調べたものではありません。 「気持ちが動くと食べたくなる」という個々の流れを証明した研究でもありません。
体の内側の感覚への気づきにくさは、自閉スペクトラム症のある人を対象にした研究をまとめた分析で、本人の実感としての差が報告されています。実験で測った結果では、はっきりした差は出ていません。体の感覚が客観的に鈍い、と単純に言い切れる話ではない点に注意してください。
そのうえで、「しまう場所を1段遠くする」「5分待つ」といった具体的なやり方は、研究で確かめられたものではありません。 合う合わないは人によります。
食事量や栄養の判断、体重についての助言は当サイトの範囲外です。食べ方の乱れが続いてつらいときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
食べたあとに自分を責める時間が、いちばん体力を削るんですよね。減らすのは食べる量より先に、その落ち込みのほうでいいと思います。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける感情の調節のしにくさ:研究をまとめた分析
(原題:Emotion dysregulation in adults with attention deficit hyperactivity disorder: a meta-analysis)
この研究でわかっていること:感情が大きく動きやすいことを、性格ではなく特性の一部として説明できます。
ここはまだ分かっていません:対処法の効果を調べたものではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症における「体の内側の感覚」のちがい:症例対照研究のたくさんの研究をまとめた分析と研究をまとめた分析
(原題:Characterizing Interoceptive Differences in Autism: A Systematic Review and Meta-analysis of Case–control Studies)
この研究でわかっていること:「疲れや空腹に気づきにくい」という自己報告の訴えに、まとまった裏づけがあると言えます。
ここはまだ分かっていません:体の感覚が客観的に鈍い、と単純に言い切ることはできません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。