運動が続かない人へ|3日坊主を前提に組む
— 続ける力ではなく、始まる合図のほうをつくります
ポイント
- 続かないのは意志ではなく、最初の設定が大きすぎることがほとんどです
- 2分で終わる形にして、すでに毎日やっている動作のうしろにくっつけます
- 途切れる前提で、戻り方を先に決めておくと再開が早くなります
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年明けにランニングシューズを買った。二日走って、三日目に雨が降った。それきり玄関に置きっぱなしになっている。
アプリを入れて、通知を切って、しばらくして削除した。ジムの会費だけが毎月引き落とされている。そのたびに「自分は何をやっても続かない」と思う。
この記事では、続ける力を鍛える方法は書きません。途切れる前提で組み直します。
結論を先に書きます。うまくいかない原因のほとんどは、最初に決めた量が大きすぎることです。 2分で終わる形にして、すでに毎日やっている動作のうしろにくっつける。これだけで、再開できる回数がかなり変わります。
そしてもうひとつ。いま体を動かさなくても困っていないなら、この記事は読まなくて大丈夫です。 健康のために何かしなければ、という気持ちだけで始めた運動は、たいてい長持ちしません。
なぜ三日でやめてしまうのか
最初の設定が大きすぎる
「毎日30分走る」「週3回ジムへ行く」。決めた日は気持ちが乗っているので、これができる気がします。
でも、続けるかどうかを決めるのは、気持ちが乗っていない日の自分です。疲れて帰ってきた日に30分走れるかどうかで考える必要があります。答えが「無理」なら、その設定はもう合っていません。
始めるまでの工程が多すぎる
着替える。靴下を探す。日焼け止めを塗る。イヤホンを充電する。天気を見る。動き出す前に5工程あれば、そのどこかで止まります。
止まったのは意志が弱いからではありません。工程が多いというだけの話です。
効いているかどうかが、しばらく見えない
体重も体力も、数日では変わりません。やった感じがしないまま続けるのは、どんな人でもきついです。
成人のADHDを対象に、体を動かすことと「我慢する力」の関係を調べた研究のまとめもあります。ただし人数は多くありません。「やれば必ずこう変わる」と言えるほどのものではないので、目に見える変化を期待して始めると、ほぼ確実に折れます。
一日抜けたところで、終わりにしてしまう
いちばんもったいないのがここです。
日常の中で習慣がどう育つかを追いかけた研究では、身につくまでの期間に非常に大きな個人差があること、そして一日抜けてもそれまでの積み重ねが消えるわけではないことが報告されています。
抜けた日に終わりにしているのは、研究ではなく自分の判断です。ここは変えられます。
人の記録と比べてしまう
画面をひらけば、毎日走っている人の記録が並んでいます。比べたとたん、自分の2分が無意味に見えてきます。
比べる相手は、動いていなかった先週の自分で十分です。他人の記録は、その人の生活の事情の話です。
【いちばん効く1つ】2分で終わる形にして、動作のうしろに置く
やることは2つだけです。
- 2分で終わる大きさに削る。 スクワット5回、その場で足踏み1分、玄関から外に出て戻るだけ、でも十分です
- すでに毎日100%やっている動作を1つ選び、そのうしろに置く。 歯みがき、コーヒーを淹れる、風呂から出る、パソコンを閉じる
書き方はこの形です。
「歯をみがき終わったら、その場でスクワットを5回する」
「パソコンを閉じたら、玄関まで歩いて肩を回す」
やる気が出た日に、その場で多めにやるのは自由です。ただし、決めた分量のほうは増やさないでください。上げた瞬間に、気持ちが乗らない日の自分が届かなくなります。
合図に選ぶ動作は、いまの自分が100%やれているものにします。「毎朝走ったあとに」のように、まだ習慣になっていないことのうしろへ置くと、合図ごと消えます。
「2分では意味がない」と感じるかもしれません。ここでの目的は体を鍛えることではなく、始まる合図を体に覚えさせることです。中身を増やすのは、合図が定着してからで間に合います。この決め方の考え方は「あとでやる」がいつまでもできない人へにまとめてあります。
運動が続かない人へ/準備の工程をゼロに近づける
準備の工程をゼロに近づける
始まらない原因の多くは、運動そのものではなく手前にあります。工程を1つ減らすたびに、動き出す確率が上がります。
- 着替えない形にする。 部屋着のままできる中身を選びます。着替えが要る運動は、それだけで一段重くなります
- 道具を出しっぱなしにする。 マットは敷いたまま、ダンベルは床に置いたまま。しまうと、それきり出てきません
- 場所を1か所に決める。 「ここに立ったらやる」と決めておくと、迷う時間が消えます
- 靴を玄関の真ん中に置く。 外に出る形にするなら、靴だけは前日に出しておきます
- 音楽や動画を用意しない。 選ぶ時間のほうが長くなります
「やる気が出たら準備する」ではなく「準備してあるからやる」の順にします。準備が済んでいる状態を、その日の合格ラインにしてしまう手もあります。
片づけたくなったら、週に一度だけ片づける日を決めてください。毎回しまう形にすると、出す手間のところで止まります。
中身は先に3つだけ決めておく
その日に何をやるか考えるところから始めると、考えているうちに時間が過ぎます。中身は先に3つ決めて、あとは選ぶだけにします。
| その日の調子 | やること |
|---|---|
| 動ける日 | 外に出て10分歩く |
| ふつうの日 | スクワット5回と、肩を回す |
| しんどい日 | 立ち上がって、その場で足踏みを1分 |
大事なのは、しんどい日の欄をつくっておくことです。ここが空白だと、しんどい日は自動的に「なし」になります。なしの日が続くと、そのまま終わります。
3つとも同じ場所でできる形にしておくと、さらに迷いません。
運動が続かない人へ/記録はつけない。つけるなら丸だけ
記録はつけない。つけるなら丸だけ
アプリで距離や回数を記録し始めると、記録のほうが先に途切れます。 そして記録が途切れると、運動も一緒に終わります。
つけるなら、紙のカレンダーに丸を書くだけにしてください。数字は書きません。やったかどうかだけです。
- 続いている日数は数えない(途切れた日のダメージが大きくなります)
- 週の終わりに丸の数だけ見る。3個あれば十分です
- 丸が0個の週があっても、そのカレンダーは捨てない
体重計に毎日乗るのも、この時期はおすすめしません。数字が動かない日が続くと、それだけでやめる理由になります。見るのは、動いたかどうかだけにしておきます。
丸が並んだカレンダーは、うまくいっていない時期の支えにもなります。「先月は8回できている」と目で分かるだけで、再開までの時間が短くなります。
途切れたあとの戻り方を、先に決めておく
必ず途切れます。旅行、体調不良、締め切り、天気。三日坊主は失敗ではなく、予定に入っている出来事です。
だから、始める日に「戻り方」もセットで決めておきます。
- 何日空いてもいい。気づいた日にその日の分だけやる
- 空いた日を取り返さない。まとめてやろうとすると、また止まります
- 戻る日はいちばん小さい形にする。スクワット5回でいいです
- 「今日から仕切り直し」と紙に書く。仕切り直しは何回でもしていいことにしておく
「三日空いたら、次に気づいた日にスクワットを5回だけやる」
戻る日そのものを決めておくのも効きます。「月曜が来たら、そこから再開」と決めておけば、途中で何日空いても、次の月曜は必ず来ます。再開の日が向こうからやって来る形にしておくのがコツです。
再開のハードルを下げておくと、やめた期間が短くなります。 一年のうち何日やったかで見れば、途切れながら戻った人のほうが、きれいに続けようとして一度で終わった人より多く動いています。
「運動」と呼ぶのをやめる
運動という言葉には、着替えて、時間を取って、きちんとやる、という重さがくっついています。この重さが手前にあるだけで、動きにくくなる人がいます。
生活の中に混ぜてしまうほうが、結果的に体は動きます。
- 一駅前で降りる、ではなく帰り道だけ遠回りする(朝は余裕がないので夜にします)
- エレベーターを使わない、ではなく降りるときだけ階段
- 買い物をまとめず、少しずつ買いに行く
- 電話するときは立って歩きながら話す
- 皿を洗いながら、かかとの上げ下げをする
まとまった時間が取れない人ほど、この形が向いています。湯が沸くまでの間、洗濯機が回っている間、家族が動画を見ている5分。時間を新しく作るのではなく、すでにある待ち時間に置きます。
これらを「運動をした」と数えなくてかまいません。数えないほうが気楽ですし、気楽なほうが回数は増えます。
外に出ること自体が消耗する人もいます。その場合は無理に外へ出さず、家の中で完結する形にしてください。外出後にしばらく動けなくなるなら、外出したあと2日動けない人へもあわせてご覧ください。
よくある質問
2分の運動に意味はありますか
体づくりという意味では、2分だけでは大きな変化は出ません。ここでの目的は別です。
始めるまでのハードルを下げて、動く日を増やすところから始めます。2分が当たり前になった人は、自然と5分、10分に伸びていきます。伸びなくても、0分よりは動いています。
やる気が出る方法はありますか
やる気を待つ形にすると、出ない日に何も起きません。合図で動く形にしておくと、やる気の有無に関係なく回ります。
どうしても始められないときは、運動より前の段階でつまずいているのかもしれません。最初の一歩がどうしても踏み出せない人へが近い話です。
ジムの会費を払っているのがもったいないです
行っていないなら、いったんやめてしまうのも手です。「行かなかった」という記録が毎月届くのは、それだけで消耗します。
家で2分の形が定着してから、あらためて入り直しても遅くありません。
動くと、かえって疲れてしまいます
その日の体力を超えていた、ということです。量を半分にしてください。半分でもきついなら、その週は休みます。
疲れているかどうかに自分で気づきにくい人もいます。動いたあとに何日も動けなくなるようなら、量ではなく回復のほうを先に整えてください。
関連する困りごと
- 最初の一歩が踏み出せない → 最初の一歩がどうしても踏み出せない人へ
- 合図で動く仕組みを知りたい → 「あとでやる」がいつまでもできない人へ
- やらなきゃと思うほど動けない → やらなきゃいけないのに手がつかない人へ
- 出かけたあと動けなくなる → 外出したあと2日動けない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 2分で終わる中身を1つ決める(スクワット5回、足踏み1分、玄関を出て戻る)
- 毎日必ずやっている動作を1つ選んで、そのうしろに置くと紙に書く
- 道具か靴を、その場所に出しっぱなしにする
明日できなくてもかまいません。三日空いたら、四日目に5回だけやる。 それで元どおりです。
書いた紙は、目に入る場所に貼ってください。引き出しにしまうと、そのまま忘れます。
この記事について
体を動かすことと成人ADHDの「我慢する力」の関係については、研究をまとめた分析があり、一定の関係が報告されています。ただし対象になった人数は多くなく、どの運動がどれだけよいかまでは分かっていません。 運動が治療の代わりになるという意味でもありません。
習慣の育ち方については、日常生活を追いかけた研究で、定着までの期間に大きな個人差があることと、一日抜けても積み重ねが消えるわけではないことが示されています。「何日やれば習慣になる」という数字は、この研究の結論ではありません。
行動を場面と結びつけて先に決めておく方法には、目標を達成しやすくするという報告があります。ただしこれは発達障害のある人だけを対象にした研究ではありません。
そのうえで、「2分にする」「記録をつけない」「戻り方を先に決める」といったこの記事のやり方そのものは、研究で確かめられたものではありません。お金がかからず、体に無理をさせずに試せるという理由で紹介しています。合わなければ、遠慮なく捨ててください。
体を動かしたあとに強い痛みや不調が出るとき、持病があって運動の可否が分からないときは、自分で判断せず医療機関で確認してください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先は相談先・公的窓口にまとめています。
三日でやめた回数を数えて落ち込む人が多いんですが、数えるならむしろ再開した回数のほうです。途切れること自体は、失敗ではないんですよね。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討体を動かすことが成人ADHDの「抑える力」に与える影響:たくさんの研究をまとめた分析と研究をまとめた分析
(原題:The impact of physical activity on inhibitory control of adult ADHD: a systematic review and meta-analysis)
この研究でわかっていること:体を動かすことが「我慢する力」の面で成人ADHDにも効きうると、成人対象の根拠として示せます。
ここはまだ分かっていません:対象の人数が少なく、運動の種類ごとの比較ははっきりしていません。運動が治療の代わりになるとは言えません。
研究で検討習慣はどうやってできるのか:日常生活での習慣づくりを追った研究
(原題:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world)
この研究でわかっていること:同じ合図と同じ行動の反復が習慣化を支えること、定着に個人差が大きいことを示せます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDを対象にした研究ではありません。「21日で習慣化」も本研究の結論ではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。