昼寝したら夕方まで潰れていた人へ|仮眠の設計
— 問題は寝たことではなく、切り上げ方を決めていないことです
ポイント
- 戻れなくなるのは、横になる前に切り上げ方を決めていないからです
- 20分で切って必ず立つ。これが1回できると、そのあとの時間が残ります
- 長く寝てしまった日は、夜を早めるより翌朝の起きる時刻をそろえます
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15分だけ、と思ってソファに横になる。次に目を開けたら、部屋がオレンジ色になっている。時計は17時40分。
洗濯も、買い物も、返すつもりだった連絡も、何ひとつ手がついていません。頭は重く、口の中は乾いていて、体はまだ寝たがっている。ここから動き出すのは、朝起きるよりつらいことがあります。
そして夜になると、今度は目がさえます。眠れないまま2時になり、翌朝また起きられない。この輪の中にいると、昼寝そのものが敵のように見えてきます。
先に結論を書きます。 昼寝は、やめなければいけないものではありません。つぶれてしまう原因は、横になる前に「いつ起きるか」と「どうやって起きるか」を決めていないことのほうです。決めてから寝れば、同じ横になるでも結果が変わります。
なぜ昼寝から戻れないのか
眠りが深いところまで進んでしまう
眠り始めてしばらくは浅く、そこから先はだんだん深くなります。深いところで起こされると、頭がぼんやりして、しばらく使いものになりません。
長く寝たから元気、ではなく、長く寝たから重いが起きます。だいたい30分を過ぎたあたりから、この重さが出やすくなります。
夜に足りていないぶんが、昼へ回っている
夜が細い日が続くと、体は昼にまとめて取り返そうとします。夜の眠りにつまずきやすい人がいることは、成人ADHDを対象にした研究のまとめでも示されています。
夜が足りていないほど、昼の一度の眠りは深く、長くなりやすいです。昼寝が長いのは、意志が弱いからではありません。
体の中の時計が、後ろにずれていることがある
眠る時間帯そのものが後ろへずれてしまっている人がいる、という報告もあります。時計が後ろにある人にとって、昼過ぎから夕方は、体感としてはまだ夜明け前に近い時間帯です。
そこで横になれば、短い仮眠ではなく本番の睡眠が始まります。時刻の設計が要るのは、このためです。
寝るための場所で寝ている
ベッドや布団は、体が「ここは眠る場所だ」と覚えてしまっている場所です。そこに入った時点で、短く切るのはかなり難しくなります。
起こす役が、どこにもいない
一人の家では、誰も声をかけません。アラームは手が勝手に止めます。止めた記憶がないのに止まっているのは、よくあることです。
ここを気合いに任せているかぎり、同じ夕方が何度でも来ます。仕掛けの側を変えます。
【いちばん効く1つ】20分で切って、必ず立つ
順番はこうです。横になる前に、5つとも済ませてください。
- 終わりの時刻を、声に出して言います。 「14時40分に立つ」。頭の中で思うだけだと、寝る前に消えます
- アラームを20分後にかけ、手の届かない場所に置きます。立たないと止められない距離が理想です
- 布団以外の場所を選びます。 ソファ、床、椅子、車の中。寝心地が少し悪いほうが向いています
- 靴下も上着も、脱ぎません。 くつろぐ格好にしないことが、そのまま歯止めになります
- 起きたあとにやることを、1つだけ決めておきます。カーテンを開ける、水を飲む、玄関の外に出る。どれか1つで十分です
鳴ったら、まず上体を起こします。そのまま横になっていると、まず二度寝します。座る、立つ、決めておいた1つをやる。 この順番だけ守ってください。
眠れなかった日も、この20分は成立しています。 まぶたを下ろして音と光をさえぎった時間そのものに意味があるので、寝つけないことを失敗として数えないでください。
20分では足りないと感じても、最初の1回は20分で切ってみてください。20分と60分で起きたあとの重さがどれくらい違うかを体で知ると、次から自分で選べるようになります。
昼寝したら夕方まで潰れていた人へ/何時までなら寝ていいかを決める
何時までなら寝ていいかを決める
長さと同じくらい、時刻が効きます。
まず15時を仮の門限にする
15時より後に眠ると、その夜の寝つきに響きやすくなります。まずは15時を過ぎたら横にならないと決めてみてください。仮の線でかまいません。
自分の門限は、記録で見つける
人によって、響く時刻は違います。手帳の隅に3つだけ書きます。
- 横になった時刻
- 起きた時刻
- その夜、布団に入ってから眠るまでの体感
5日ぶん並べると、たいてい境目が見えます。14時半までなら平気、15時を過ぎるとその夜がだめ。 そういう線が自分にもあります。線が分かれば、毎回その場で迷わずに済みます。
門限を過ぎて眠くなったら、寝ないで動く
15時以降に来た眠気は、寝てしのぐと夜に跳ね返ります。かわりに置くのは、体が動くことです。
- 玄関を出て、5分だけ歩く
- 洗い物や洗濯物など、立ってやる家事を1つ
- 冷たい水を飲む
- 明るい部屋に移る
眠気と戦うのではなく、寝られない用事を先に置いておくほうが楽です。夕方に宅配の受け取りや短い買い物を入れておくのも、同じ考え方です。
起きられる仕掛けを、寝る前に置く
意志ではなく配置で解きます。全部やらなくていいので、2つ選んでください。
光を残しておく
カーテンは閉めずに横になります。 部屋が明るいままだと深く落ちにくく、目も覚めやすくなります。日差しが強すぎるならレースだけにします。
音を二重にする
アラームを2つ用意します。1つ目は枕元、2つ目は別の部屋か、玄関に置いて5分後に鳴らします。1つ目で止まれず、2つ目で必ず立つことになります。
毛布までにする
かけるものは薄いものを1枚。温かくしすぎると戻れません。 少し肌寒いくらいが、切り上げやすい温度です。
起きた直後に、人との約束を置く
夕方に短い電話、オンラインの集まり、散歩の待ち合わせ。相手のいる予定は、アラームより強いです。 週に1回でも置いておくと、その日は確実に戻れます。
水を先に飲んでおく
横になる前にコップ1杯。起きたときの口の乾きが軽くなり、立ち上がりが少し楽になります。
昼寝したら夕方まで潰れていた人へ/長く寝てしまった日の立て直し
長く寝てしまった日の立て直し
門限も長さも守れない日は来ます。そこからどう戻すかを、先に決めておきます。
- 反省は後回しにします。 起きた直後は判断力が落ちています。落ち込む作業は、明日の自分に渡してください
- とにかく立って、明るいところへ行きます。 外に出るのがいちばん早いです。曇りでも、室内よりずっと明るいです
- その夜、早く寝ようとしません。 ここがいちばん大事です。眠くないのに布団に入ると、眠れない時間が長引いて、翌日の不安が増えます
- 翌朝の起きる時刻だけ、いつも通りにそろえます。 一晩の乱れは、翌朝でならします。寝る時刻ではなく、起きる時刻で戻すほうが安全です
- その日の残りは、1つに絞ります。 全部取り返そうとすると、たいてい何も終わりません
「今日はもう終わった」と感じても、実際にはまだ数時間あります。その数時間で1つだけやると決めるほうが、次の日の自分が助かります。
場面別
休日に、一日寝てしまう
平日の不足がまとめて出ている状態です。責める場面ではありません。ただ、休日に長く寝ると月曜がつらくなるので、起きる時刻を平日プラス1時間までにとどめて、足りないぶんは午後の短い仮眠で足すほうが、翌日が楽です。
在宅で働いている
寝る場所が仕事場のすぐそばにあるのが、いちばんの難所です。日中は寝室の扉を閉める、椅子でしか仮眠しない、と決めておいてください。→ 在宅勤務だとまったく仕事が進まない人へ
学校や授業のあと
帰宅してすぐ横になると、そのまま朝までいくことがあります。着替える前に、20分のアラームをかけてから座る。 順番を固定しておくと、玄関で崩れにくくなります。
夜勤やシフトがある
生活の時刻が動く働き方では、一般的な門限がそのまま当てはまりません。勤務前の2時間は仮眠に使わないなど、自分のシフトに合わせた線を作ってください。勤務のあとに長く眠るのは、この場合は必要な睡眠です。
家族に「また寝てる」と言われる
やり取りが減るように、先に言っておくと楽です。「20分で起きるから、鳴ったら声かけて」と頼めると、いちばん強い仕掛けになります。→ 家族に発達障害のことを伝えたい人へ
よくある質問
昼寝はやめたほうがいいですか
やめる必要はありません。短く切れているなら、午後の消耗を減らす助けになります。困るのは長さと時刻が決まっていないときだけです。ゼロにするより、形を決めるほうが現実的です。
アラームを止めた記憶がありません
よくあることです。手が届く場所にあるかぎり、記憶に残らないまま止まります。部屋を分けるのがいちばん確実です。 目覚まし用の安い時計を1つ買って、別の部屋に置くのも手です。
20分で起きても、頭が働きません
立ってから5分ほどは、誰でもぼんやりします。すぐに難しい作業を入れず、水を飲む、顔を洗う、外の空気を吸うといった軽い動きを先に置いてください。それでも1時間以上重さが残るなら、寝すぎか、夜の睡眠が足りていない合図です。
昼寝をした日は、夜まったく眠れなくなります
その場合は長さか時刻のどちらかが合っていません。まずは15時より前・20分までに寄せてみてください。それでも夜がだめなら、しばらく仮眠を休んで夜の側を整えるほうが早いことがあります。
疲れているのに、昼寝ができません
横になっても眠れないなら、無理に眠ろうとしないでください。目を閉じて15分座っているだけでも、休憩としては成り立ちます。眠ることを目標にすると、休むこと自体がうまくいかなくなります。
関連する困りごと
- 夜の側が細いと、昼の眠りは深く長くなります → 夜、なかなか眠れない人へ
- 生活の時刻ごとずれているとき → 昼夜逆転を直したい人へ
- 職場での眠気は、別の対処になります → 仕事中の眠気がひどい人へ
- 眠気は疲れの出方のひとつです → 気づいたら限界になっている人へ
まず今日、これだけやってみる
- 横になる前に、起きる時刻を声に出して言う
- アラームを20分後にかけて、別の部屋に置く
- 起きたらやること(カーテン・水・外)を1つだけ決めておく
この記事について
この記事の土台のひとつは、成人ADHDの睡眠を扱った研究をたくさん集めてまとめた分析です。そこでは、眠りにまつわる困りごとが起きやすいことが示されています。ただし、この分析はどう眠れば楽になるかを調べたものではありません。
もうひとつは、寝つきに困っている成人ADHDを調べた研究です。眠る時間帯と、眠気に関わるホルモンが出はじめる時刻の両方が、後ろへずれていたと報告されています。参加した人数は多くありません。 昼寝を扱った研究でもないので、そういう人がいる、という説明までが言える範囲です。
この記事に書いた20分という長さや15時という門限は、多くの解説で目安として使われている数字をもとにしています。ただし、何分がいちばんよいかを発達障害のある人で比べた研究は見つかっていません。 自分の記録で線を引き直してください。
長さを整えても一日じゅう眠い、座っているだけで眠り込んでしまう、眠っているあいだのいびきや息の止まりを家族から指摘された。こういうことがあるなら、眠りそのものを一度みてもらうほうが近道になることがあります。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
ちょっとだけのつもりが夕方だった日、ありますよね。あれ、寝たこと自体より「いつ起きるか決めずに横になった」ほうが効いてるんです。決めてから寝れば、同じ横になるでも別物になりますよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDの睡眠:本人の実感と測定データを合わせたたくさんの研究をまとめた分析と研究をまとめた分析
(原題:Sleep in adults with ADHD: Systematic review and meta-analysis of subjective and objective studies)
この研究でわかっていること:成人ADHDで睡眠の問題が起きやすいことを、まとまった根拠として示せます。
ここはまだ分かっていません:どうすれば眠れるようになるかを調べた研究ではありません。
(原題:Delayed Circadian Rhythm in Adults with ADHD and Chronic Sleep-Onset Insomnia)
この研究でわかっていること:夜型がなおらないことを、体内時計のずれとして説明できます。
ここはまだ分かっていません:人数の少ない研究。どうすれば時計が戻るかまでは分かりません。
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合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。