寝る前スマホがやめられない人へ|取り返し夜ふかしの正体
— 眠れないのではなく、眠りたくないのかもしれません
ポイント
- 眠れなくて起きているのではなく、眠りたくなくて起きている夜があります
- 夜を取り締まるより、昼のうちに自分の時間を先取りするほうが効きます
- 閉じる合図を外側に置くと、判断しなくて済むぶんラクになります
目次を開く(10項目)
夜の11時。眠くないわけではありません。まぶたは重いし、明日も早い。それなのに指だけが動いて、次の画面へ進んでいきます。
見たいものがあるわけでもありません。おもしろいわけでもない。ただ、ここで画面を消したら今日が終わってしまう。そう思うと、消せません。
気がつくと1時半。歯みがきすら面倒になっている。明日の自分に悪いなと思いながら、それでもあと5分だけ、と手が伸びます。
先に結論を書きます。夜を削るより、昼のうちに自分の時間を先取りするほうが早いです。 夜の側だけ取り締まっても、取り返したい気持ちのほうは残るからです。
これは意志が弱いのではありません。一日のどこにも自分の時間がなかった人が、最後に残った時間を手放せなくなっているだけです。
眠れないのではなく、眠らない選択をしている
寝つけなくて困っている状態と、眠れるのに寝ない状態は、別のものです。この記事は後者を扱います。
自由な時間が、そこにしか残っていない
朝は支度に追われ、日中は人に合わせ、帰ったら家のことをする。自分で決めていい時間が寝る前しか残っていない日があります。
そこで素直に眠ってしまうと、その日は一度も自分の時間がなかったことになります。だから閉じられません。理屈としては、かなり筋が通った行動です。
一日が終わった感じがしない
やり残しがあると、区切りがつきません。終わっていない感覚のまま目を閉じるのは、思っているよりしんどいものです。
その埋め合わせに画面を見ていることがあります。何かを見て、少しは得をした気持ちになってから今日を閉じたい。国内では、やることを後ろへ送ることと眠りが結びついているという報告もあります。
画面の側に、終わりの合図がない
本には最後のページがあります。番組にも終わりが来ます。多くのアプリは、終わりが来ないように作られています。
自分で止めるしかない道具を、一日でいちばん疲れている時間に握らされている。止まらないほうが自然です。
疲れているほど、決めるのが重くなる
「もう寝よう」と決めるのも、ひとつの決断です。決める力が残っていない時間に決断を求められているので、手が動くほうへ流れていきます。
夜のほうが頭が冴える感じがする人もいます。それ自体は悪いことではありませんが、翌日の分を前借りしていることは覚えておいてください。
これが「取り返し夜ふかし」です
この夜ふかしは、休むためのものではありません。足りなかった自由を取り返しに行っている時間です。
だから「早く寝たほうが得だよ」と言われても動けません。損得の話ではなく、今日という日を自分の手で終わらせたいという話だからです。
ここを取りちがえたまま「夜ふかしをやめる」と決めると、たいてい三日で戻ります。取り返す先を用意しないまま、取り返す時間だけ取り上げているからです。
【いちばん効く1つ】昼のうちに自分の時間を先取りする
15分でかまいません。夜以外の場所に、自分だけの時間を先に置きます。
- 一日の中で必ず一人になれる場所を1つ探す(昼休みの後半、帰りの電車、風呂上がりなど)
- そこに「自分の時間」と名前をつけて、カレンダーに予定として入れる
- その15分は好きなことをしていい時間にする。役に立つことをしない
- 夜に閉じられなかった日ほど、翌日はこの15分を必ず取る
これは夜の代わりを昼に作る作業です。取り返す場所が昼にできると、夜の1時間の重みが下がります。
「12時40分から12時55分は、動画を見ていい時間」
ばかばかしく感じるかもしれません。それでも先に決めておいてください。空いたら取る、では一生空きません。
この15分を、家事や勉強の時間にしないでください。役に立つことを入れた瞬間に、それは自分の時間ではなくなります。何もしなかった日があってもかまいません。その時間が自分のものだと確認できることが目的です。
日中ずっと人に合わせて消耗している自覚がある人は、人といると異常に疲れる人へもあわせて読んでみてください。夜に自由を取り戻したくなる理由が、そちらに書いてあることがあります。
寝る前スマホがやめられない人へ/閉じる合図を、自分の外側に置く
閉じる合図を、自分の外側に置く
止められないのは、終わりの判断が自分の中にしかないからです。外に出してしまいます。
時刻ではなく、動作を終わりにする
時刻のアラームは無視できます。動作なら体が覚えます。歯をみがく、充電器に挿す、天井の照明を消す。この動作をしたら今日は終わりと1つだけ決めてください。
動作は毎晩同じものにします。同じ合図をくり返すほど、迷いが減ります。
アラームは2回に分ける
- 1回目:終わり支度の合図(歯みがき・着替え・充電)
- 2回目:画面を置く合図
1回目がないと、いきなり取り上げられる感じがして反発が出ます。間に15分から30分はさんでください。
最後の30分は「終わるもの」に替える
次が自動で始まるものから、終わりが向こうから来るものへ替えます。紙の本、決まった長さの音声、話数の決まっている作品。
そのうえで、その30分は新しい情報を入れないものにしてください。何度も見たもの、結末を知っているもののほうが、閉じやすくなります。
「今日はここまで」と声に出す
小さいことですが、効く人がいます。頭の中だけで終わらせると、あとから交渉が始まります。声にすると、その交渉が少し止まります。
手が届かない場所へ移す
意志で我慢するのはやめて、距離のほうを変えます。
- 充電器を寝室の外に置く。 充電しに行くという動作が、そのまま部屋を出る合図になります
- 目覚まし時計を1つ買う(1,000円前後)。 枕元にスマホを置く理由をなくします
- 枕元には別のものを置く。 本、水、メモ帳。手が空だと、結局取りに行きます
- 夜だけ通知を全部切る。 家族の着信だけ通す設定にしておくと、不安なく離せます
「見ないようにする」と「届かなくする」は別物です。距離の作り方は作業中につい スマホを触ってしまう人へにくわしく書いてあります。
寝室に持ち込まないと決めたのに戻してしまう夜もあります。そういう日は、布団から起き上がらないと届かない距離まで下げるだけでも違います。ゼロか百かにしないでください。
置き場所を変えるときは、戻す作業をしなくていい形にしておくのがコツです。毎晩どこかへ運ぶ決まりにすると、疲れた日にその一手間が省かれます。充電器ごと動かして、そこが定位置だという状態にしてしまうほうが確実です。
寝る前スマホがやめられない人へ/2週間の進め方
2週間の進め方
いっぺんに全部変えると、何が効いたのか分からないまま疲れます。動かすのは1週に1つだけにします。
- 1週目:昼の15分を予定に入れる。夜は何も変えない。閉じた時刻だけメモに書く
- 2週目:終わりの動作を1つ決めて、充電器を寝室の外へ移す
- 見直し:2週間分のメモを並べて、閉じる時刻が少しでも前へ動いたかだけ見る
うまくいっているかどうかは、早く寝られた日数では測りません。 見るのは次の2つです。
- 閉じた時刻の、いちばん遅い日が前より軽くなったか
- 翌朝に「昨日はやりすぎた」と思う回数が減ったか
平均で見ないのがコツです。いちばんひどかった日が浅くなれば、それで前進とみなしてください。
2週間たっても何も動かないなら、原因はスマホではないのかもしれません。日中の負荷が大きすぎる、そもそも眠くならない、といった別の話が下にあることがあります。その場合はこの記事をいったん置いて、そちらから手をつけたほうが早いです。
それでも見てしまった夜の、損を小さくする
夜ふかしはまた起きます。起きたときに被害を広げない手だけ、先に決めておきます。
何時に閉じたかだけ、1行残す
反省文はいりません。閉じた時刻だけをメモに書きます。数字が並ぶと、増えているのか減っているのかが自分で分かります。
うまくいった日を数えるより、戻ってこられた日を数えるほうが続きます。
翌日の予定を1つ減らす
寝不足の日にいつもの量をこなそうとすると、失敗が増えて自己嫌悪まで来ます。朝のうちに1つ削ると決めておいてください。
責める時間を作らない
自分を責めている時間も、起きている時間です。翌日の夜がさらに遅くなります。責めるより、その日の昼の15分を確保するほうが役に立ちます。
翌朝の起きる時刻は動かさない
ここだけは、できる範囲で守ってください。朝が動くと、次の夜がもっと後ろへずれます。朝が重い人は朝どうしても起きられない人へを先に読んでください。
場面別
家族が寝てからしか静かにならない
静けさが目当てなら、時間帯を変えるより場所を変えられないか考えてみてください。朝の30分、通勤中、休憩室。同じ静けさが手に入るなら、夜でなくてもかまいません。
仕事の連絡が夜に来る
夜に画面を開く理由が残っていると、そこから別のものへ流れます。返信の締め切りを自分で決めて、それ以降は見ない形にできないか、職場と相談してみてください。
ゲームや対戦で、自分では切れない
相手がいると途中で抜けられません。始める前に「あと何回」を決めるほうが現実的です。終わりの時刻ではなく、回数で区切ってください。
眠くならないから見ている
眠くないのに布団で粘るのは逆効果になることがあります。その場合は夜ふかしとは別の対処が要ります。夜、なかなか眠れない人へをご覧ください。
昼に一人になれる時間が本当にない
15分が無理なら5分にしてください。トイレでも、車の中でもかまいません。長さより、自分で決めた時間であることのほうが大事です。
小さい子どもがいて、夜しか手が空かない
家のことが終わるのが夜中になる家庭もあります。この場合は夜ふかしを減らす前に、やらないことを決めるほうが先です。
明日でいい家事を1つ選んで、寝る前の持ち場から外してください。1つでは足りないと感じても、まず1つで試すほうが続きます。
休みの前の日だけひどくなる
翌日に予定がないと、止まる理由がなくなります。休みの前でも、翌朝に小さい約束を1つ入れておくと歯止めになります。
買い物、洗濯、散歩。誰かとの約束でなくてかまいません。「明日の10時に何かある」という状態を作るのが目的です。
関連する困りごと
- 布団に入っても目がさえて寝つけない → 夜、なかなか眠れない人へ
- 作業中にスマホへ手が伸びてしまう → 作業中につい スマホを触ってしまう人へ
- 動画を見ていたら何時間も溶けている → 気づいたら2時間 動画を見ていた人へ
- 人に合わせ続けて日中に消耗している → 人といると異常に疲れる人へ
まず今日、これだけやってみる
- 明日の昼に15分、自分の時間をカレンダーへ入れる
- 充電器を寝室の外へ移す
- 今夜、画面を閉じた時刻だけメモに1行書く
三日で崩れてもかまいません。崩れたら、また1番から始めてください。やり直しやすい形にしておくことが、この工夫のいちばん大事なところです。
この記事について
この記事は、夜に画面を見ることそのものを悪いと言うためのものではありません。眠れるのに自分から起きている夜を、責めずに扱う方法をまとめています。
背景として、成人のADHDでは眠りに関する困りごとが起きやすいことが、たくさんの研究をまとめた分析で報告されています。また国内には、やることを後ろへ送る傾向と睡眠の関係を調べた学会報告もあります。
ただし、どちらも「寝る前のスマホをどうすればやめられるか」を調べた研究ではありません。 前者は眠りの困りごとが多いことを示すもので、対処法を確かめたものではありません。後者は学会での報告で、先延ばしが夜ふかしの原因だと決めた研究でもありません。
この記事のやり方そのものを調べた研究もありません。 昼に自分の時間を先に取る、閉じる合図を外に置くという組み立ては、お金がかからず、小さく試して戻せるという理由で紹介しています。効果を約束するものではなく、合わない人もいます。
眠れない日や日中の強い眠気が何週間も続くとき、気分の落ち込みが抜けないときは、生活の工夫の範囲を超えていることがあります。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
画面を閉じたら今日が終わってしまう。あの感じ、よく分かります。あれは怠けているんじゃなくて、一日のどこにも自分の時間がなかったサインなんですよね。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討ADHD傾向者における先延ばし行動が睡眠に及ぼす影響の検討
この研究でわかっていること:先延ばしと睡眠が結びついていることの示唆になります。
ここはまだ分かっていません:学会抄録であり、因果関係を示すものではありません。
研究で検討成人ADHDの睡眠:本人の実感と測定データを合わせたたくさんの研究をまとめた分析と研究をまとめた分析
(原題:Sleep in adults with ADHD: Systematic review and meta-analysis of subjective and objective studies)
この研究でわかっていること:成人ADHDで睡眠の問題が起きやすいことを、まとまった根拠として示せます。
ここはまだ分かっていません:どうすれば眠れるようになるかを調べた研究ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。