給料日前にいつもお金がない人へ|口座を分けて守るやり方
— 残高を見て調整する、をやめます
ポイント
- 1つの口座で管理すると、残高を見て「まだある」と判断してしまいます
- 口座を3つに分けて、使っていい分だけを生活用に入れます
- 自動振替を設定すれば、毎月の判断がゼロになります
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給料が入る。月末になると、なぜか残っていない。何に使ったか思い出せない。貯金しようと思っているのに、毎月できない。
これは家計簿をつければ解決する、という話ではありません。
やることは1つです。使っていいお金を、物理的に分けます。
1つの口座だと、なぜダメなのか
すべてのお金が1つの口座に入っていると、残高を見たときに「まだある」と判断してしまいます。
でもその残高には、家賃も、光熱費も、カードの引き落としも、まだ入っています。「まだある」ように見えるだけです。
そして、ADHDの特性がある人は「あとで手に入る大きい得」より「いま手に入る小さい得」を選びやすいという研究があります。将来の支払いより、いまの残高のほうが強く見えます。
つまり、残高を見て毎回判断する形が、そもそも不利なんです。
口座を3つに分ける
いちばんシンプルな形です。
| 口座 | 役割 | 入れるもの |
|---|---|---|
| ①支払い用 | 引き落とし専用 | 家賃、光熱費、通信費、カード、保険 |
| ②生活用 | この月に使っていい分 | 食費、日用品、交際費、趣味 |
| ③貯める用 | 触らない | 貯金、将来の大きい支払い |
給料が入ったら、①と③に先に移して、残りが②です。
②の残高が、そのまま「今月あと使えるお金」になります。計算しなくていい。これが大きいです。
【手順1】まず固定費を数える(1時間)
①に毎月いくら必要かを出します。
- 家賃
- 電気・ガス・水道(平均でいい)
- 通信費(スマホ、ネット)
- サブスク(使っていないサブスクを払い続けている人へ)
- 保険
- カードの引き落とし(毎月の平均)
- 奨学金などの返済
通帳やアプリの明細を1〜2か月分見れば出ます。 完璧じゃなくていいので、多めに見積もってください。
【手順2】口座を用意する(1時間)
すでに口座が複数あるなら、それを使ってください。ないなら、ネット銀行を1つ作ると早いです(スマホで完結します)。
注意点が1つ。 給料が振り込まれる口座は、たいてい会社の指定です。そこを①か②にして、残りを別の銀行にするのが現実的です。
【手順3】自動で移す設定をする
これがいちばん大事です。手動でやると、必ずどこかでやらなくなります。
- 自動振替(自動送金):毎月◯日に、A口座からB口座へ決まった額を移す設定。多くの銀行にあります
- 積立定期預金:毎月決まった額を自動で貯める。引き出すのに手間がかかるので、③に向いています
- 給与の複数口座振込:会社によっては、給料を2つの口座に分けて振り込んでもらえます。人事に聞いてみてください
設定は1回。あとは毎月自動です。 判断がゼロになります。
②の残高を見えるようにする
生活用の口座は、いつでも残高が見える状態にしてください。
- 銀行アプリをホーム画面に置く
- 残高が見えるウィジェットをスマホに置く
- 週に1回、決まった曜日に見る
見る回数が多いほど、使いすぎに気づきやすくなります。
給料日前にいつもお金がない人へ/②に紐づけるカードを1枚だけにする
②に紐づけるカードを1枚だけにする
生活用の口座から引き落とされるカードを1枚決めて、普段の買い物はそれだけにします。
デビットカードにすると、その場で口座から引かれるので、残高がリアルタイムで減ります。使いすぎたら止まります。
複数のカードを使い分けると、いくら使ったか分からなくなります。
週ごとに分ける(さらに崩れにくい形)
月単位だと、月の前半で使いすぎることがあります。それを防ぐのが週単位です。
②の生活費を4等分して、週に1回だけ移すか、現金なら封筒を4つ用意して週ごとに分けます。
- 今週分を使い切ったら、来週まで待つ
- 余ったら次の週に繰り越していい
「今週あと3,000円」のほうが、「今月あと2万円」より判断しやすいです。
状況別|どう分けるか
一人暮らし・給料が毎月同じ
いちばん素直に3口座でいけます。給料日の翌日に自動振替をセットしてください。
収入が月によって変わる(フリーランス・シフト制)
いちばん少なかった月の金額を基準にしてください。それを超えた分は、③の貯める用に入れます。
多い月に生活の水準を上げると、少ない月に耐えられなくなります。生活費は少ない月に合わせるのが基本です。
ボーナスがある
ボーナスは入る前に使い道を決めておいてください。 入ってから考えると、たいてい消えます。
「半分は貯金、4分の1は大きい買い物、4分の1は自由」のように、割合で決めておくとラクです。
家族と暮らしていて、家計が共有
共有の口座と、個人の口座を分けてください。混ざっていると、どこまで自由に使っていいか分かりません。
「生活費は共有口座から、お小遣いは個人口座から」とすると、お互いに気を使わなくて済みます。
実家暮らし
固定費が少ないぶん、貯まらないと気づきにくいのが落とし穴です。
家に入れるお金と、貯金を先に引いてしまってください。手元に残ったぶんだけ使う形にします。
学生・収入が少ない
3口座は多いかもしれません。「使う用」と「触らない用」の2つで十分です。
まずは月3,000円でもいいので、触らない口座に自動で移してください。
よくある疑問
「口座を増やすと管理が大変では?」
逆です。分けたほうが管理する項目が減ります。
1つの口座だと「残高から固定費を引いて、貯金の分を考えて……」という計算が毎回必要です。分けてあれば、生活用の残高を見るだけです。
「手数料がもったいない」
ネット銀行なら、条件を満たすと振込手数料が無料になることが多いです。同じ銀行の自分の口座間なら、たいてい無料です。
自動振替の手数料も、無料の銀行があります。 作るときに確認してください。
「途中で足りなくなったらどうするの?」
足りなくなったら、その月はそこまでです。それが分かることが目的なので、足りなくなること自体は失敗ではありません。
ただし、どうしても必要な支出(医療費など)は別です。そのために③に少し余裕を持たせておいてください。
「家計簿もつけないとダメ?」
つけなくていいです。口座を分けてあれば、残高が家計簿の代わりになります。
家計簿が続かない人は家計簿が3日で終わる人へも見てみてください。
現金派の人向け
ネットの操作が苦手なら、封筒でも同じことができます。
- 給料日に、必要な現金をおろす
- 封筒を4つ用意して、週ごとに分けて入れる
- その週はその封筒からだけ使う
目に見えて減るので、実感はこちらのほうが強いという人もいます。
固定費を下げるチェックリスト
分けてみて足りないと分かったら、まず固定費を見直します。一度下げれば、毎月ずっと効きます。
スマホ代
大手キャリアで月8,000円払っているなら、格安プランで2,000〜3,000円になることがあります。月5,000円下がれば、年6万円です。
手続きが面倒で放置している人が多いところなので、いちばん効果が出やすいです。
サブスク
契約したまま使っていないものを、全部止めます。使っていないサブスクを払い続けている人へに手順を書きました。
保険
内容を理解しないまま入っているものがあれば、一度見直してください。必要な保障だけに絞ると、大きく下がることがあります。
電気・ガス
契約する会社を変えられる地域が増えています。手続きはネットで完結することが多いです。
使っていないジム・習い事
「そのうち行く」と思って払い続けているものは、いったん止めてください。また行きたくなったら入り直せます。
家賃
いちばん大きい固定費です。更新のタイミングで見直す価値があります。
自治体によっては家賃の補助制度があります。収入が減っているときは、必ず調べてください。
使える制度を調べておく
お金が厳しいときに使える制度は、意外とあります。申請しないと使えないものがほとんどなので、知っているかどうかで差が出ます。
- 医療費が高額になったときの払い戻し
- 障害者手帳による税の控除(精神障害者保健福祉手帳のメリット・デメリット完全ガイド)
- 自立支援医療(通院の自己負担が軽くなる制度)
- 自治体の家賃補助、生活資金の貸付
まず市区町村の窓口で「いま使える制度はありますか」と聞くのがいちばん早いです。
給料日前にいつもお金がない人へ/起きがちなトラブルと対策
起きがちなトラブルと対策
引き落としの残高が足りなくなる
支払い用の口座には、必ず1か月分の余裕を持たせてください。ギリギリだと、金額が変動したときに落ちません。
引き落とし日をカレンダーに入れておくのも有効です。くわしくは支払いを忘れて延滞してしまう人へへ。
生活費が足りなくなって貯金から引き出す
これをやると、分けた意味がなくなります。貯める用は引き出しにくい形にしてください。
- 定期預金にする(解約に手間がかかります)
- キャッシュカードを家に置いておく
- 別の銀行にして、アプリを消しておく
そもそも足りない
分けてみて「固定費だけで給料が消える」と分かったら、それは大事な情報です。 使いすぎではなく、収支が合っていないということです。
- 固定費を下げる(スマホ、保険、サブスク)
- 支援制度を調べる(家賃補助、医療費の助成)
- 収入を増やす方法を考える
「自分がだらしないから」で終わらせないでください。 数字を見て初めて分かることがあります。
設定が面倒でできない
一気にやろうとしなくていいです。まず「貯める用」の自動積立を月5,000円だけ設定する。それだけでも始まりです。
最初にやること
1. 口座を用意する
すでに持っている口座を使い回して構いません。足りなければ、ネット銀行なら家から10分で作れます。
- 引き落とし用(今使っている口座でOK)
- 使っていい用
- 貯金用
2. 固定費の合計を出す
過去3か月の引き落としを見て、平均を出してください。
- 家賃
- 光熱費
- 通信費
- 保険
- サブスク(サブスクを解約できない人へ)
この合計が、毎月「引き落とし用」に入れる額です。
3. 自動送金を設定する
給料日の翌日に、自動で移すよう設定します。
- 多くの銀行が、無料か数十円でやってくれます
- ネットバンキングから設定できます
- 1回設定すれば、あとは何もしなくていいです
ここが最大のポイントです。 手で移す方式にすると、必ず続きません。
使っていい口座の残高だけ見る
これが、この方法のいちばんの利点です。
- 記録しない
- レシートを取っておかない
- 分類しない
残高を見るだけで、使いすぎかどうかが分かります。
月末に足りなくなりそうなら、その週は使わない。それだけです。
週で区切るとさらに分かりやすい
月の予算を4で割って、「今週はいくらまで」と決めると、感覚がつかみやすくなります。
「今日は15日で、残りが半分ある」なら順調、という見方ができます。
使いすぎを止める
デビットカードにする
残高以上に使えません。 あとから請求が来ることもありません。
週に1回チャージする
プリペイドやスマホ決済に、週の予算だけチャージする方法もあります。
クレジットカードの上限を下げる
カード会社に連絡すれば、利用限度額を下げられます。 無料です。
くわしくはお金の管理ができない人へへ。
貯金用の口座は「使いにくく」する
貯まらない原因は、引き出せてしまうことです。
- キャッシュカードを持ち歩かない(家に置く)
- ネットバンキングのアプリを入れない
- 引き出すのに手間がかかる銀行を選ぶ
「面倒だから引き出さない」が、いちばん効きます。
うまく回らないとき
使っていい口座が月末に足りなくなる
固定費が多すぎる可能性があります。
携帯代、保険、サブスク。1回見直すだけで、毎月効き続けます。
引き落としが落ちなかった
引き落とし用の口座に、1か月分より少し多めに入れておいてください。
残高が一定額を下回ったら通知する設定が、多くの銀行アプリにあります。無料です。
くわしくは支払いを忘れて止められる人へへ。
口座が多すぎて分からなくなった
3つで十分です。増やさないでください。
まず今週、これだけやってみる
- 明細を見て、毎月の固定費の合計を出す(1時間)
- 銀行アプリで「自動振替」の設定を1つだけ作る(貯める用に月5,000円でいい)
- 普段使うカードを1枚に決める
完璧な家計管理を目指さないでください。 「使っていい分が見える」状態になれば、それで十分です。
この記事について
ADHDの特性がある人は、「あとで手に入る大きい得」より「いま手に入る小さい得」を選びやすい傾向があると報告されています(本人の回答をもとにした、まだ小さな規模の研究です)。残高を見ながら毎回判断するやり方が向きにくいのは、このためだと説明できます。
また、「もし〜したら〜する」と先に決めておく方法は、目標を達成しやすくすると報告されています。自動振替は、この考え方を機械にやらせているようなものです。
そのうえで、口座を3つに分けることの効果を調べた研究は見つかっていません。ここに書いたのは、日常で試せる形に組み立てたものです。
借金が減らない、生活が立ち行かないという状態が続くときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
残高を見ながら「今月はあと2万円か」と調整するのは、けっこう高度な作業です。最初から分けておけば、その計算がいらなくなります。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討ADHDと、目先の得を選びやすい傾向、そしてリスクの高いお金の使い方
(原題:Attention-deficit/hyperactivity disorder, delay discounting, and risky financial behaviors)
この研究でわかっていること:「あとの大きい得より、いまの小さい得」を選びやすい傾向を説明できます。
ここはまだ分かっていません:本人が答えたアンケートをもとにした、小さな規模の分析です。家計術の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
研究で検討大人の注意欠如多動症の認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)
この研究でわかっていること:整理・計画・先延ばしを「性格」ではなく介入対象として扱う枠組みを示せます。
ここはまだ分かっていません:レビューであり、個々の生活術の効果量を示すものではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。