人の名前が覚えられない人へ|覚えずに乗り切る方法
— 名前が出てこないまま、会話を続けられるようにします
ポイント
- 名前は覚えるものではなく、記録して引くものに変えたほうが早いです
- 別れた直後の10秒で書く。これだけで次に会うときが変わります
- 日本語の会話は、名前を呼ばなくてもほとんど成立します
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昨日会ったばかりの人の名前が出てきません。顔は分かります。どんな話をしたかも覚えています。名前のところだけ、すっぽり空いています。
2回目までなら聞けます。でも3回目に会ったときには、もう聞けません。それ以降は、名前を呼ばずに会話を続けることになります。あいさつだけして通り過ぎる。誰かに紹介する場面をさりげなく避ける。
覚える気がないわけではありません。毎回、覚えようとして、毎回失敗しています。
結論から書きます。名前は覚えるものではなく、記録して引くものに変えたほうが早いです。 覚える練習を続けるより、10秒で書く習慣と、名前を呼ばずに話す言い方を持っておくほうが確実です。
なぜ名前だけ覚えられないのか
名前には、ひっかかりがないから
顔、声、背の高さ、仕事の内容、話した中身。これらは互いにつながっているので、1つ思い出すと、そこから芋づる式に出てきます。
名前だけは事情が違います。その人と「佐藤」という音のあいだには、何のつながりもありません。理由のない情報は、頭に引っかかる場所がないのです。
覚えられないのは、名前という情報の性質のせいでもあります。
名乗られた瞬間、別の作業をしているから
初対面の場面は、やることが多いです。表情を作る、目線をどこに置くか決める、次に何を話すか探す、名刺を出す向きを確かめる。名前が読み上げられるのは、その真っただ中です。
音としては聞こえています。ただ、頭が別のほうを向いています。
一度に何人も紹介されるから
歓迎会や打ち合わせでは、5人、6人と続けて紹介されます。1人目を受け止めきる前に2人目が来て、3人目のあたりで全部流れていきます。
これは覚える力の問題というより、入ってくる速さの問題です。
全員を覚えようとすると、結局は全員が残りません。 その日に覚えるのは1人だけ、と決めてしまったほうが残ります。
必要な瞬間に取り出すのが苦手なことがあるから
必要な場面で必要なことを思い出す力には、人によって差があります。ADHDのある成人を対象にした研究では、あとでやることを覚えておく力に難しさが報告されています。
名前も同じです。しまってあっても、呼びかけるその瞬間に出てこなければ、覚えていないのと変わりません。
顔と名前が結びつきにくい人もいるから
そもそも顔を見分けるのが苦手、顔と名前が結びつきにくい、という人もいます。これは努力の量とは別の話です。
ここでは診断の話には立ち入りません。ただ、自分を責める材料にしないでください。生活に支障が出るほどなら、専門家に相談する道があります。
【いちばん効く1つ】別れて10秒で書く
覚えるのをやめます。代わりに、その場を離れた直後の10秒で書きます。
書く場所は1つに決めます。スマホのメモアプリに「人」という名前のメモを1枚作って、そこに足していくだけで十分です。
書く中身は4つだけです。
- 名前(漢字が分かれば漢字も)
- いつ、どこで会ったか
- 見た目か立場(青いメガネ、経理の人、など)
- 話した内容を1つ
「8/28 A社打ち合わせ/佐藤さん(漢字は佐藤)/背が高い・眼鏡/高校野球の話」
話した内容を1つ入れておくと、次に会ったときの会話にもそのまま使えます。
なぜ10秒なのか
建物を出るまでが勝負です。「あとでまとめて書こう」と思った時点で、たいてい消えます。エレベーターの中でも、駅までの道でもいいので、その場で開いてください。
書けるのが名前だけの日もあります。それで十分です。
見返すのは、次に会う前の1分
書くだけでは効きません。次に会う予定が入ったら、その直前に開きます。
カレンダーの予定の中に、その人の行を貼りつけておくのがいちばん楽です。開く手間が減るほど、続きます。
週に1回だけ、まとめて整える
足していくだけだと、そのうち探せなくなります。週末に3分だけ、会社ごとか場面ごとに並べ替えておきます。
全部を整理する必要はありません。今週書いた分だけで十分です。
人の名前が覚えられない人へ/名前を呼ばずに済ませる技術
名前を呼ばずに済ませる技術
日本語の会話は、名前を呼ばなくてもほとんど成立します。 ここを知っているだけで、緊張はかなり減ります。
呼びかけずに話し始める
「おはようございます」「お疲れさまです」だけで、呼びかけとしては足ります。名前を付けないことが失礼になる場面は、思っているより少ないです。
体と目線を向ける
複数人がいる場で誰に話しているか示したいときは、名前ではなく、体ごとその人のほうを向きます。それで指名になります。
前の話を手がかりにする
「さっきのお話なんですが。」 「先週うかがった件で、1つ確認させてください。」
相手の話を受けたことは、これで伝わります。
自分から先に名乗る
いちばん困るのは、誰かに紹介しなければいけない場面です。そういうときは、自分が先に名乗ります。
「はじめまして、◯◯と申します。」
名乗られた人は、たいてい名乗り返してくれます。相手の口から名前が出れば、それを聞き取ってメモできます。
知っているほうだけを紹介する
「こちら、同じ部署の△△です。」
知っている側だけを紹介すると、もう一方は自分から名乗ってくれることがほとんどです。
聞き直しの型
早く聞くほど、気まずくない
1回目に聞き直すのは、まったく失礼ではありません。 気まずくなるのは、何か月もたってから聞くときだけです。迷ったらその場で聞くと決めておくと、あとが楽になります。
「もう一度お名前をうかがってもいいですか。漢字も教えていただけますか。」
漢字を確かめるのは自然な質問なので、聞き直しの入り口として使いやすいです。聞きながら書けば、そのまま記録になります。
呼び方まで聞いておく
名字で呼ぶのか、下の名前なのか、社内での呼ばれ方があるのか。
「なんとお呼びすればいいですか。」
初対面でよく使われる質問です。呼び方が決まると、次に会うときの負担が減ります。
間違えてしまったとき
「失礼しました。◯◯さんですね。」
言い直して、そのまま話を続けます。長く謝ると、相手のほうが気を使います。
時間がたってしまったとき
「お恥ずかしいのですが、お名前をもう一度教えてください。顔と名前を覚えるのが昔から苦手で。」
苦手だと先に言ってしまうと、相手は「そういう人なんだな」と受け取ります。隠しながら会い続けるより、一度言ってしまったほうが軽くなります。
名前が出てこないまま、相手の前に立ったとき
会ってしまってから固まる瞬間があります。頭の中で名前を探しながら会話を続けるのは、ほとんど無理です。探すのをやめてください。
探すのをやめて、話の中身に戻る
思い出そうとしているあいだ、相手の話は入ってきません。名前はいったんあきらめて、話の中身に集中したほうが、結果として印象はよくなります。
手がかりを会話から拾う
「今はどちらにいらっしゃるんですか。」 「あのときのみなさん、お元気ですか。」
会社名や当時の場面が出てくれば、あとからメモを引けます。その場で分からなくても、帰ってから照らし合わせれば済みます。
思い出す前に、まず見る
名札、配られた資料、画面の表示名。目の前に答えが書いてあることは、意外と多いです。記憶をたどる前に、見えるところを確認します。
人の名前が覚えられない人へ/呼び間違いと混同を防ぐ
呼び間違いと混同を防ぐ
覚えられないことより、取り違えのほうが実害になります。ここだけは仕組みで守ります。
似た名前の人は、区別できる情報をセットで書く
同じ名字の人が2人いる部署では、名字だけのメモは役に立ちません。「佐藤(経理・眼鏡)」「佐藤(営業・背が高い)」のように、見分けられる情報を必ずセットで書きます。
書くときは、記憶から書かない
メールやチャットは、思い出さずに済む場面です。宛名を書く前に、名刺かアドレス帳を開いて写します。話し言葉と違い、書き間違いは記録として残ります。
呼び方が変わった人は、その日に直す
結婚や異動で呼び方が変わることがあります。古いままにしておくと、うっかり出てしまいます。変わったと聞いた日のうちに、メモを上書きしておきます。
覚えずに調べられるようにしておく
記録の置き場所を増やしておくと、思い出す必要そのものが減ります。
顔写真つきの名簿を使う
社内システムやチャットのプロフィールに顔写真があるなら、それがいちばん強い道具です。会議の前に一覧を開いておきます。
名刺はその日のうちに処理する
もらった日のうちに写真を撮って、メモと結びつけます。裏に日付と場面を書いておくと、あとから探せます。
たまった名刺を月末にまとめて処理しようとすると、たいてい誰が誰か分からなくなります。
座席表や名札を写真に残す
会議室の座席、研修の名札、集合写真。撮っていいか一言確認したうえで、1枚撮っておくと名簿の代わりになります。
オンライン会議は名前が見えているうちに写す
画面に表示名が出るのは大きな助けです。会議が終わると消えてしまうので、見えているあいだにメモへ写しておきます。
場面別|こう乗り切る
職場に新しい人が入ってきた
最初の1週間は、名前を呼ばずに済ませて構いません。その間に、座席表とメモで覚え直します。焦って呼ぶと、たいてい間違えます。
取引先で何人もと名刺交換した
その場で覚えるのはあきらめます。並んでいた順にメモして、あとで名刺と突き合わせます。順番だけは、その場でしか分かりません。
久しぶりに会った人に声をかけられた
「お久しぶりです。その節はありがとうございました。」
名前を出さずに返しておいて、会話の中から手がかりを探します。相手が会社名や当時の場面を言ってくれることが多いです。
子ども関係やご近所づきあい
名字ではなく「◯◯ちゃんのお母さん」という呼び方が普通に使われる場です。無理に名前で呼ばず、その場のやり方に合わせて構いません。
よくある質問
名前を覚えないのは失礼ではありませんか
呼び間違えたまま放置するほうが、相手には残ります。覚えられないこと自体より、確かめないことのほうが問題です。聞き直しは、ていねいな行動として受け取られます。
目の前でメモを取るのは、冷たく見えませんか
仕事の場面では、むしろ真剣に聞いていると受け取られることが多いです。気になるなら、席を離れてから書けば十分です。
何度も聞き直すのが怖いです
1人につき1回までと決めて、聞いたその場で書いてください。聞き直しがくり返されるのは、聞いたあとに記録していないからです。記録が残っていれば、2回目の聞き直しはぐっと減ります。
覚える練習はしなくていいのですか
してもいいですが、順番としては後です。記録の仕組みを先に作っておくと、覚えられなかったときの困りごとが小さくなります。うまくいく日といかない日の差も、気にならなくなります。
関連する困りごと
- 書いたメモがあとで使えないなら → メモを取っても後で読めない人へ|あとで使えるメモの取り方
- 会話そのものがしんどいなら → 雑談がしんどい人へ|何を話せばいいか分からないとき
- 会議の内容が残らないなら → 会議の内容が頭に入らない人へ|聞き漏らしを減らすやり方
- 約束や予定も抜けてしまうなら → 約束や予約をすっぽかしてしまう人へ|覚えておくのをやめる
まず今日、これだけやってみる
- スマホのメモアプリに「人」というメモを1枚作る
- 今日会った人を1人だけ、名前と場面と特徴で書く
- 次に会う予定の直前に、そのメモを開いてみる
1人分でかまいません。全員を記録しようとすると、その日でやめてしまいます。
この記事について
必要な場面で必要なことを思い出す力について、成人ADHDでは困難があると報告した実験研究があります。名前が出てこないことを、やる気や関心の低さとして説明する必要はない、という裏づけになります。
ただし、この研究が調べたのは、あとで予定を実行するような課題です。人の名前を覚える力そのものを調べたものではありません。また、メモやリマインダーのように記憶を外に出す道具が効くかどうかは、まだ確かめられていない領域です。
顔と名前が結びつきにくいことについては、この記事では医学的な説明をしていません。原因の見立てや診断は、記事で決められることではないからです。
そのうえで、ここに書いた10秒のメモ、名前を呼ばずに済ませる言い方、聞き直しの文例は、研究で効果を確かめたものではありません。仕組みとして筋が通ると考えて整理したものです。合いそうなものだけ、小さく試してください。
困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
顔も話した内容も覚えてるのに、名前だけ出てこないんですよね。あれは記憶力の問題というより、名前という情報がひっかかりにくいだけなので、覚えるのはいったんあきらめていいですよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDにおける「あとでやることを覚えておく力」の困難
(原題:Complex Prospective Memory in Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder)
この研究でわかっていること:予定や約束を忘れるのは記憶の使い方の問題で、意欲の問題ではないと説明できます。
ここはまだ分かっていません:リマインダーなど外部化の道具そのものの効果はまだ調べられていません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。