残業が減らない人へ|仕事を持ち帰ってしまう
— 働く時間ではなく、終わり方のほうを決めます
ポイント
- 残業が減らないのは、終わり方が決まっていないからです。根性の話ではありません
- 定時のあとに動かせない用事を置くと、帰る時刻が現実のものになります
- 引き受けすぎ・見積もりのずれ・終われない。どれが自分の中心かを先に見つけます
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「今日こそ定時で帰る」。朝はそう思っています。ところが夕方になると、手元にまだ3つ残っている。誰かに残れと言われたわけではありません。それでも席が立てません。
やっと帰る段になって、やりかけの資料をカバンに入れます。家で開いて、ほとんど進まないまま寝る。翌朝、疲れを持ったまま出勤する。その繰り返しです。
残業が減らないのは、気合いが足りないからではありません。終わり方が決まっていないからです。始まりは出社の時刻という形で外から決まっているのに、終わりだけが「終わったら」になっています。終わりのない仕事は、いつまでも終わりません。
先に結論を書きます。帰る時刻を守りたいなら、定時のあとに動かせない用事を1つ置いてください。自分の気持ちだけで決めた終業時刻は、ほとんど守れません。
なぜ残業が減らないのか
残業は、ひとつの原因では起きません。だいたい次の3つが重なっています。
- 入口:頼まれたその場で引き受けてしまう
- 途中:かかる時間を短く見積もっている
- 出口:切りのいいところまでやりたくて、手が止められない
このうち見積もりについては、大人のADHDでは時間の長さの感じ方や見積もりにずれが出やすいと、これまでの研究をまとめた報告があります。時間の使い方そのものを練習の対象にした国内の小さな研究もあります。少なくとも、だらしなさの話として片づけなくていいということです。
大事なのは、3つのうちどれが自分の中心かです。全部いっぺんに直そうとすると、たいてい途中で崩れます。
自分の残業がどのタイプか見分ける
先週の自分を思い出して、いちばん近いものを選んでください。
| よく口から出る言葉 | 中心 | 先に効く手 |
|---|---|---|
| 「気づいたら仕事が増えていた」 | 入口 | その場で答えない |
| 「思ったより時間がかかった」 | 途中 | かかった時間を測る |
| 「あと少しで終わるのに」 | 出口 | 終わる合図を外に置く |
3つとも当てはまる人もいます。その場合は出口から手をつけてください。終わる時刻が先に決まると、引き受け方も見積もりも、あとから締まってきます。
【いちばん効く1つ】定時のあとに用事を置く
やることは単純です。
- 今週は2日だけ選びます(いきなり毎日にはしません)
- その日の終業時刻の30分後に、動かせない用事を入れます
- 用事は、自分ひとりで完結しないものにします
- 職場のカレンダーにも入れて、周りから見える状態にします
動かせない用事とは、たとえばこういうものです。
- 予約が要るもの(歯科、美容室、整体、役所の夜間窓口)
- 人と会う約束(家族の迎え、友人との食事、習いごと)
- 開始の時刻が決まっているもの(映画、教室、オンラインの講座)
「今日は帰る」という決意は、相手のいない約束です。破っても誰も困りません。だから崩れます。相手のいる約束にすると、体のほうが先に動きます。
お金をかけたくない人は、夕方に時間を指定した荷物の受け取りでも同じ働きをします。これなら0円です。
残業が減らない人へ/帰る30分前を「撤収の時間」にする
帰る30分前を「撤収の時間」にする
終業のベルで急に終われる人は、あまりいません。終わるための時間を、仕事のうちに入れてしまいます。
- 終業の30分前にアラームを鳴らす(スマホでも社内カレンダーでも構いません)
- 手を止めて、今日はここまで、と線を引く
- 明日いちばん最初にやる一手を、1行だけメモに書く
- 机の上を空にして、パソコンを閉じる
とくに3が効きます。翌朝の「どこからだっけ」で15分溶けるのを防げるからです。
「明日は、見積書の数量の欄を埋めるところから」
この細かさで十分です。きれいな引き継ぎメモは要りません。
アラームは1回だけだと、止めてそのまま続けてしまいます。30分前と10分前の2回にしておくと、1回目を見逃した日を拾えます。音より、画面いっぱいに出る通知のほうが止まりやすい人もいます。
途中で止めるのが不安な人は、逆に考えてみてください。切りの悪いところで止めたほうが、翌朝の入りは軽くなります。
入口で引き受ける量を減らす
その場で「はい」と言ってしまう人は、返事を遅らせる言葉を1つ持っておくと変わります。
「30分後に、いまの状況を見て返事します」
そのうえで、断るのではなく順番の相談にします。
「お受けできますが、そうすると先週いただいた分が明後日になります。どちらを先にしましょうか」 「今日はもう手が空かないので、明日の午前からでも大丈夫ですか」
できませんと言い切る必要はありません。 順番と期限の相談に置き換えると、話が通りやすくなります。
引き受けること自体が苦しい人は、頼まれごとを断れない人へもあわせて読んでみてください。
1日に受ける件数に上限をつける
上限がないと、入ってきた分だけ増えます。だから、数のほうを先に決めてしまいます。
- 今日やると決めるのは3件までにします(件数は自分の仕事に合わせて調整してください)
- 4件目が来たら、明日の欄に書きます
- どうしても今日やるなら、3件のうち1件を明日へ移します
大事なのは、入れ替えるところを人に見せることです。黙って全部やってしまうと、周りからは余裕があるように見えます。見えないものは減りません。
「今日は3件で埋まっているので、この分は明日の午前に回します。急ぎであれば、先にどれを外すか決めさせてください」
上限を決めると、断りやすくもなります。自分の気分ではなく、決めておいた数で話せるからです。
見積もりを現実の数字に寄せる
3日でいいので、実際にかかった時間を書き残してください。ふせん1枚で足ります。
- 始めた時刻と終わった時刻だけ書く
- 途中で中断した回数も書く(ここが見落とされがちです)
- 3日たったら、頭の中の予定と見比べる
多くの場合、思っていた時間の1.5倍から2倍かかっています。次からは、その実際の数字で組みます。
見積もりから抜け落ちやすいのは、移動、人の返事待ち、戻ってきたときの立ち上げ直しです。この3つを足すだけでも、夕方の慌て方が変わります。
測り方をもっと知りたい人は「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へへどうぞ。
残業が減らない人へ/家に持ち帰るのをやめる
家に持ち帰るのをやめる
持ち帰った仕事が家で本当に進んだ日は、この1か月でどれくらいありましたか。
- パソコンを持ち帰らない曜日を、先に2日決める
- 持ち帰るなら、何時から何時までかを家を出る前に決める
- カバンに入れるのは1件だけにする
- 家では毎回同じ場所でやる(あちこちに広げない)
家で進まないのは、意志が弱いからではありません。始まりと終わりの合図がない場所だからです。ここは家で働くときと同じ問題なので、在宅勤務だとまったく仕事が進まない人への考え方が使えます。
持ち帰りをゼロにするのが難しいなら、まず「持ち帰るのは水曜だけ」のように曜日を1つに寄せてください。毎日少しずつよりも、体はずっと楽です。
重いカバンを持って帰ったのに、結局ひらかないまま朝を迎えた。そういう日が続いているなら、持ち帰らない日を作るほうが、次の日の回復は早くなります。手ぶらで帰った日の翌朝が、どれくらい違うかを1度だけ試してみてください。
夜のほうが仕事が進んでしまう
「みんなが帰ったあとが、いちばん進む」。これは思い込みではなく、実際にそうなっている人が多いです。話しかけられない、電話が鳴らない、急ぎの用が飛んでこない。静かだから進みます。
でも、夜が優れているわけではありません。昼の環境が、進みにくい形になっているだけです。だから、夜にできていることを昼に移す方法を考えます。
- 朝いちばんの1時間を、自分の仕事だけの時間として予定表に入れる
- 週に2回、空いている会議室や別の席で作業する
- その時間だけ、通知とチャットを切る
- 「10時から11時は集中します」と、あらかじめ周りに言っておく
夜に得ている静けさを、昼のうちに1時間だけ再現する。これができると、残業の必要そのものが小さくなります。
場面別|残業になりやすい日
会議が続いた日
会議のあいだ、自分の仕事は止まっています。会議のあとの30分を、会議として予定表に押さえてください。空いていると、そこに別の会議が入ります。
締め切りが重なった日
全部を今日やろうとすると、全部が中途半端になります。今日中に手を離すのは1件だけと決めて、残りは着手する日を書き込みます。やり方は締め切り直前まで動けない人へにあります。
人が抜けて仕事が回ってきた日
一時的なのか、そのまま自分の担当になるのかを、その日のうちに聞いてください。あいまいなまま引き受けると、静かに固定されます。
集中が乗ってしまった日
進むこと自体は良いことです。ただ、乗っている日ほど時計を見ません。手を止める合図は、人か音に任せてください。くわしくはやり始めると止まれない人へへ。
職場に相談するときの言い方
一人の工夫で減らせる量には限りがあります。仕事の量そのものが多いときは、相談したほうが早く片づきます。
- 「忙しくて」ではなく、件数と影響で話す
- 減らしてほしいものを1つに絞る
- 相手が判断できる形(順番・期限・分担)にして持っていく
「今週は5件を担当していて、定時のなかだと2件が入りきりません。順番を決めていただけますか」
伝えること自体が重い人は、職場に「これがつらい」と言えない人へに準備のしかたをまとめてあります。
よくある質問
定時で帰ると評価が下がりませんか
評価のされ方は職場によります。ただ、遅くまでいることと、仕事が進んでいることは別です。進み具合が見えていないと、時間の長さで見られやすくなります。週に一度、途中経過を短く伝えるだけでも受け取られ方は変わります。
まわりが残っていて帰りにくいです
「お先に失礼します」を口に出す練習だけしておくと、少し軽くなります。重いのは最初の1回か2回で、そのあとは驚くほど何も起きません。帰る曜日を先に決めておくと、その日は迷わずに済みます。
残業代がないと生活が回りません
これは工夫では動かせません。収入の組み立て方として、別に考える必要があります。ただ、体調を崩して働けなくなれば、その残業代も入らなくなります。減らす順番を決めて、少しずつにしてください。
早く帰ってもやることが減りません
減らすより先に、順番を決めるほうが効きます。何から手をつけるかで迷う時間が長い人は、優先順位がつけられない人へを見てください。
関連する困りごと
- 見積もりがずれる → 「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へ
- 引き受けすぎてしまう → 頼まれごとを断れない人へ
- 手が止められない → やり始めると止まれない人へ
- 何からやるか決まらない → 優先順位がつけられない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 今週のうち2日、終業の30分後に動かせない用事を入れる
- 終業の30分前にアラームをかけて、明日の一手を1行だけ書く
- 今日の仕事を1件だけ、実際にかかった時間を測って残す
うまくいかない日があっても大丈夫です。週に2日戻せれば、月に8回分の夜が返ってきます。
この記事について
この記事は、大人のADHDにおける時間の感じ方の研究をまとめた報告と、時間の使い方に焦点をあてた国内の集団プログラムの研究をもとにしています。時間の見積もりや体感にずれが出やすいことは、性格の問題ではなく、時間の受け取り方の特徴として説明できると報告されています。時間の使い方そのものを練習の対象にしてよい、という考え方の裏づけにもなります。
そのうえで、言えないことも書いておきます。国内の研究は8名で、比べる相手のいない予備的なものです。特定のアプリやタイマーの効果を示したものではありません。時間の感じ方をまとめた報告も、どの時計やタイマーが良いかを試したものではありません。
つまり、ここに書いた手順そのものが研究で確かめられたわけではありません。合うものだけ残して、合わないものはやめてください。 職場の事情によっては使えないやり方もあります。
残業が続いて眠れない、気分が落ちたままだ。そういう状態が長く続くときは、我慢を重ねないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
「今日は早く帰ろう」って自分と約束しても、だいたい破れるんですよね。相手のいる約束を先に外に置いたほうが、体は素直に動いてくれます。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討成人ADHDの時間の感じ方:この10年の研究のまとめ
(原題:Time Perception in Adult ADHD: Findings from a Decade—A Review)
この研究でわかっていること:時間の見積もりや体感にズレが出やすいことを、性格ではなく認知の特徴として説明できます。
ここはまだ分かっていません:特定のタイマー法・時計の効果を直接調べたものではありません。
研究で検討成人注意欠如・多動症の時間管理に焦点を当てた集団認知行動療法(考え方と行動を整える心理的な治療)の効果の小さな規模の検討
この研究でわかっていること:時間管理そのものを訓練の対象にできる、という考え方の国内での裏づけになります。
ここはまだ分かっていません:8名・対照群なしの予備研究。特定のアプリやタイマーの効果を示すものではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。