病院に行けない・予約ができない人へ|先延ばしを止める手順
— 詰まっているのは病気の話ではなく、予約の一手であることが多いです
ポイント
- 受診は工程が多い手続きです。どこか一段で止まると全体が止まります
- まずネットで予約できるところに絞ると、電話という関門が消えます
- 予約が取れた瞬間に通知を3回仕込むと、当日に思い出せます
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「予約の電話をしよう」と思ってから、もう三週間が過ぎている。番号は調べてある。診療時間も知っている。それでも、スマホを開いては閉じている。
調子は変わらない。むしろ少し悪くなっている気もする。それなのに、その一手だけが動かない。
これは、自分の体を大事にしていないからではありません。受診は、たどり着くまでに用事が何段も積み上がっている手続きです。探す、選ぶ、予約する、日を決める、当日に思い出す、家を出る、待つ、話す。どこか一段で止まれば、全部が止まります。
結論を先に書きます。まず、ネットで予約できるところだけを探してください。 詰まっている場所は、たいてい病気の話ではなく、電話です。
なぜ病院だけが後回しになるのか
止まる場所は、だいたい次のどれかです。
- 電話が関門になっている。相手の都合が読めない、聞き取りにくい、話しながらメモが取れない
- 予約日が先すぎる。2週間後の予定は、その日になると頭から消えています
- 何を言えばいいか決まっていない。伝える内容が固まらないうちは、動き出しにくくなります
- 結果を聞くのが怖い。悪い話を聞くくらいなら、先に延ばしておきたくなります
- 手続きが1回で終わらない。予約、当日、次回の予約と続くのが分かっているので、入口が重くなります
ここで知っておいてほしいことがあります。ADHDの傾向がある人では、「あとでやることを覚えておく力」が、先延ばしとの関係を部分的に説明するという研究があります。避けていたのではなく、思い出せていなかっただけ、ということが実際に起こります。また、行動を場面と結びつけて先に決めておく方法は、目標の達成を助けると報告されています。
忘れていた自分を責めるより、思い出さなくて済む形にするほうが早いです。
【いちばん効く1つ】ネット予約できるところに絞って選ぶ
いちばん効くのは、電話という工程を丸ごと外すことです。
- 検索窓に「地域名 + 診療科 + ネット予約」と入れる
- 予約ページがあるところだけを残す(3つ見つかれば十分です)
- そのなかで、いちばん早く空いている枠を取る
- 予約完了のメールを、そのままカレンダーに登録する
- 選び終わったら、他の病院のページは閉じる
「いちばん良いところ」を探し始めると、終わりません。 口コミの点数より、予約が取れることと、通える距離にあることを先に見てください。近ければ、当日の移動でも脱落しにくくなります。
「何科なのか分からない」で止まったとき
ここは自分で決めなくて大丈夫です。判断を人に渡す方法があります。
- かかりつけの内科があるなら、まずそこで相談して、必要なら紹介してもらう
- 自治体の健康相談の窓口や、地域の相談センターに電話で聞く
- 予約サイトの問い合わせフォームに、困っている状態をそのまま書いて送る
- 受付に「こういう状態ですが、そちらで診てもらえますか」と確認してから予約する
どの科が合うかは、症状や経過を実際に見た人が判断することです。この記事では決めません。分からないまま相談していい、というところだけ持ち帰ってください。
病院に行けない・予約ができない人へ/ネット予約に絞って選ぶ
電話でしか取れないときの型
ネット予約がないところもあります。その場合は、当たって砕けるのではなく、型を用意してからかけます。
- かける時刻を先に決める。受付開始の直後と昼休み明けは混みやすいので、14時台などが取りやすいです
- 紙に3行だけ書く。初診かどうか、希望の時期、聞きたいこと
- 立ってからかける。座ったままだと、開始の一歩が重くなります
- メモ用の紙とペンを、かける前に手元に置く
言うことは、ほとんど決まっています。
「初診の予約をお願いしたいのですが、いまお時間よろしいでしょうか」
「来週以降で、いちばん早く空いている枠でお願いします」
「保険証のほかに、持っていくものはありますか」
この3つで、たいていの通話は3分ほどで終わります。長い説明は、電話の時点では求められません。
途中で分からなくなったとき
聞き取れなかったら、そのまま言って構いません。
「すみません、もう一度お願いできますか」
言い直してもらうのは失礼ではありません。聞き返す前提で電話をかけると、緊張が減ります。
一人では無理な日
家族や友人にそばにいてもらう、あるいは代わりにかけてもらう方法もあります。代わりにかけてもらうのは、逃げではなく手段です。
折り返しをお願いしてもいい
かけた先が混んでいて、待たされるのがつらいときは、こちらから切って構いません。留守番電話につながった場合も、名前と用件だけ残せば十分です。
「初診の予約の件でお電話しました。◯◯と申します。折り返しをお願いできますでしょうか」
一度で終わらせなくていいと決めておくと、かけるときの重さが下がります。
予約した日に、たどり着くための準備
予約が取れた瞬間が、いちばん忘れにくい時間です。ここで先の仕込みまで済ませます。
- その場でカレンダーに入れる。前日の20時・当日の朝・出発の1時間前の3回に通知を設定する
- 持ち物を1つの袋にまとめて、玄関に置く(保険証、診察券、お薬手帳、書いたメモ、現金)
- 当日の移動手段を先に決める。体調が読めないなら、タクシーを選択肢に入れておく
- 予約は、可能ならいちばん近い日で取る。先の日ほど気持ちが離れます
片道1,000円のタクシー代がかかっても、3か月行けないまま過ぎるより安いと考えて大丈夫です。
待ち時間の負担を先に減らす
待合室そのものがつらくて足が遠のく人もいます。予約のときに、待ち時間の見込みを聞いておくと計画が立てられます。
- 混む時間帯を避ける。午前の受付開始直後は待ちが長くなりがちです
- 順番が近づくと知らせてくれる仕組みがあるか確認する。あれば外で待てます
- 耳栓やイヤホン、読むものを1つ持っていく
- 受診の後に予定を入れない。その日はそれで終わりにしておく
キャンセルしてしまったとき
そこで終わりにしないでください。連絡と同時に次を取ります。
「本日うかがえませんでした。次の予約をお願いできますか」
キャンセルの連絡と次の予約を、1回の通話にまとめると、気まずさを二度味わわずに済みます。行けなかった日があること自体は、珍しいことではありません。
病院に行けない・予約ができない人へ/診察の前に3行だけ書く
診察の前に、3行だけ書いておく
診察室では時間が短く、緊張もします。話す内容を紙にしておくと、言い忘れが減ります。
- いつからその状態が続いているか
- 生活のどこが止まっているか(仕事、家事、睡眠、食事)
- 今日いちばん聞きたいことを1つだけ
「3か月前から、朝に頭が重い日が週4日あります。そのせいで、月に2日ほど仕事を休んでいます。まず何を調べればいいか知りたいです。」
うまく話せる自信がなければ、この紙をそのまま渡して構いません。 「書いてきました」と言えば、受け取ってもらえることが多いです。
言い忘れを減らす
診察室を出てから「あれを言えばよかった」と気づくことがあります。メモの下に、聞きたいことの控えを2つだけ書き足しておいてください。上から順に読めば足ります。
通院が続きそうなときは、言われたことを同じ紙の裏に一行だけ残しておくと、次の診察でつながります。紙でもスマホのメモでも構いません。覚えておこうとしないことが、いちばん確実です。
どこで止まっているかを1つだけ選ぶ
受診は段が多いので、「行けない」とひとまとめにすると手が出せなくなります。止まっている場所は、たいてい1か所だけです。
| 止まっているところ | 今日やる1つ |
|---|---|
| 病院が決まっていない | 検索して1つブックマークする |
| 電話が重い | ネット予約のあるところに変える |
| 予約は取れたが忘れる | 通知を3回入れる |
| 当日に家を出られない | 前の夜に持ち物を玄関へ置く |
| 何を話すか決まらない | 3行のメモを書く |
| 結果を聞くのが怖い | 聞きたいことを1つだけ決める |
全部を直そうとすると、また止まります。左の列から自分に当たるものを1つ選んで、右の列だけをやってください。
同じ日に2つ入れない
受診の日に買い物や用事を重ねると、当日の負担が増えて行きにくくなります。前後を空けておくほうが、結果として続きます。
よくある質問
予約したのに、当日になると行きたくなくなります
よくあります。前日の夜に、行ったあとの予定を1つ入れておくのが手です。近くのカフェでも本屋でも構いません。病院だけの外出にしないと、家を出る理由が増えます。
症状をうまく説明できる気がしません
「うまく」でなくて大丈夫です。困っていることをそのまま並べるだけで足ります。専門の言葉に置き換える必要はありません。前に書いた3行のメモがあれば十分です。
前に受診して、嫌な思いをしました
その経験があると、次の一歩がとても重くなります。無理に同じところに戻らなくて構いません。別のところを選ぶのは、わがままではありません。 相性の問題として扱ってください。
費用が心配で動けません
初診でかかるおおよその費用は、電話や病院のサイトで事前に確認できます。「初診はだいたいいくらですか」と聞いてよい質問です。負担を軽くする公的な制度がある場合もあるので、自治体の窓口でも相談できます。
関連する困りごと
- 動き出せないところで止まっているとき → やらなきゃいけないのに手がつかない人へ
- 予約の日そのものを忘れてしまうとき → 約束や予約をすっぽかしてしまう人へ
- 予定の置き場所が散らばっているとき → 予定が抜ける人へ
- 通い始めたあとの飲み忘れが心配なとき → 薬を飲み忘れてしまう人へ
まず今日、これだけやってみる
- 「地域名 + 診療科 + ネット予約」で検索して、候補を1つブックマークする
- 予約が取れたら、その場でカレンダーに3回の通知を入れる
- ネット予約がなければ、電話をかける時刻だけ決めてアラームにする
この記事について
この記事は2つの研究を土台にしています。ひとつは、ADHDの症状と先延ばしの関係を、「あとでやることを覚えておく力」が部分的に説明するという研究です。予約や受診が抜けるのを、意欲の問題として片づけないための根拠にしています。ただしこの研究は、ある時点での関連を調べたものが中心で、対策の効果を確かめたものではありません。
もうひとつは、行動を場面と結びつけて先に決めておく方法が目標の達成を助けるという、研究をまとめた分析です。「予約が取れた瞬間に通知を入れる」「かける時刻を先に決める」という形は、ここから来ています。この分析は発達障害のある人だけを対象にしたものではなく、一般に向けた知見を当てはめています。
そのうえで、この記事に書いた電話の型や持ち物の作り方は、受診という場面で効果を確かめた研究があるわけではありません。 仕組みとして筋が通る、という段階のものです。
また、どの診療科にかかるべきか、その症状が何を意味するかについては、ここでは一切判断していません。それは実際に診た人が決めることです。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
行けていないのは、体のことを軽く見ているからじゃないんですよね。だいたいは、電話をかけるところで止まっているだけです。だったら、電話のいらない道を先に探しましょう。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討「あとでやることを覚えておく力」は、ADHD症状と先延ばしの関係を部分的に説明する
(原題:Prospective memory (partially) mediates the link between ADHD symptoms and procrastination)
この研究でわかっていること:先延ばしの一部が「やること自体を思い出せない」ことに由来しうると言えます。
ここはまだ分かっていません:横断的な関連が中心。対策の効果を示すものではありません。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。