偏食で栄養が心配な人へ|食べられるものから組む
— 苦手を克服するより、食べられるものを数えます
ポイント
- 食べられない理由は味ではなく、食感・におい・見た目であることがよくあります
- 食べられるものを書き出すと、思っていたより多いことが分かります
- 苦手なものは形を変えると通ることがあります。追い込んで試すのは逆効果です
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食べられるものが、数えるほどしかありません。
まわりからは、好き嫌いが多いね、大人なんだから食べられるでしょう、と言われる。がんばって口に入れてみたけれど、飲み込めずに出してしまった。
そのうち、人と食事に行くこと自体がこわくなっていきます。栄養は足りているのか、という不安だけが残る。
大人になっても続く偏食は、しつけの失敗でも、わがままでもありません。
やることは、苦手なものを1つずつ克服することではありません。今食べられるものを起点にして、そこから組み立てることです。
食べられない理由は、味とはかぎりません
偏食というと味の好みの話に聞こえますが、実際につまずいているのは、別のところであることがよくあります。
- 食感(ぬるつく、ざらつく、噛みきれない、汁が出てくる)
- におい(口に入れる前に、においで喉が閉じる)
- 見た目(色、つや、形。中に何が入っているか分からないもの)
- 温度(熱すぎる、ぬるい、冷たすぎる)
- 混ざっていること(具が入り混じる、ソースがかかっている)
- 音(噛んだときの音そのものが苦しい)
自閉スペクトラム症に見られる感覚の処理のちがいを、神経のはたらきの面から整理した国内のまとめがあります。感覚の差は気のせいでもわがままでもない、と説明できる内容です。
また、感覚の負担が、外出や地域での活動のしにくさとつながることを、成人を対象に調べた研究もあります。食事は、感覚の負担がいちばん集まりやすい場面の1つです。
口に入れた瞬間に体が受け付けない。これは好き嫌いの強い版ではなく、反射に近い反応であることがあります。
音やにおいや光が、食事以外の場面でもつらいなら、音・光・においがつらい人へ も合わせて読んでみてください。
【いちばん効く1つ】食べられるものを書き出す
不安が大きくなるのは、自分が何を食べられるのかを、自分でも把握していないからです。まず在庫を数えます。
- 紙かスマホのメモに、確実に食べられるものを思いつくまま書く
- 主食/肉・魚・卵・豆/野菜・果物/乳製品/飲みもの、の5つに分けてみる
- 1つも書けない欄があっても、そのままにしておく
- 条件つきで食べられるものも別枠で書く(白いごはんなら平気、細かく刻めば平気、など)
書き出してみると、たいてい自分が思っていたより多いことが分かります。20個を超える人も珍しくありません。
そして空欄が見えたら、そこだけを考えればよくなります。全部を心配しなくてよくなることが、この作業のいちばんの効果です。
書き出すときは、栄養のことをいったん忘れてください。体にいいかどうかで選ぶと、手が止まります。 食べられるかどうかだけで数えます。
書いたメモは、外食のときにも、人に説明するときにも使えます。消さずに残しておいてください。
同じものを食べ続けても構いません
飽きないのなら、毎日似た食事でも問題ありません。判断も買い物も減るので、暮らしはむしろ安定します。
毎食ちがうものを並べるほうが良い、と言われがちです。ですが、続けられる形にしたほうが、結果として食事をとれる回数は増えます。
ただし、注意点が1つあります。主力が1品しかないと、それが手に入らなくなった日に困ります。
- よく食べるものは、同じ系統を2つか3つそろえておく(メーカー違い、味違い)
- 廃番や品切れに備えて、代わりになりそうなものを1つだけ試しておく
- 買う店を1か所に絞らない
いつものものが棚から消えた日に、食べられるものがゼロになる。これを防ぐための備えです。
偏食で栄養が心配な人へ/買うときに気をつけること
買うときに気をつけること
食べられるものは、味つけやパッケージが少し変わっただけで、食べられなくなることがあります。
- 気に入ったものは、商品名を写真で残す(同じものを買い直せます)
- はじめて買うものは、まとめ買いをせず、まず1つか2つにする
- 原材料や作り方が変わって味が動くことがあるので、食べられなかった日の自分を責めない
昨日は食べられたのに今日は無理だった、ということは起こります。気のせいではありません。
足りない分は、形を変えて足す
栄養が気になるとき、苦手な食材そのものに正面から挑むと、たいてい続きません。同じ材料でも、形が変われば通ることがあります。
- 細かくする(刻む、すりおろす、ミキサーにかける)
- 飲みものにする(スープ、ポタージュ、果物や野菜の飲料)
- 見えなくする(ハンバーグ、カレー、お好み焼きに混ぜ込む)
- 乾かす(ふりかけ、のり、フリーズドライ)
- 温度を変える(冷やすと食べられる、温めると食べられる人がいます)
食べられる主食に、ふりかけやのりを1つ足すだけでも、組み合わせは変わります。一度に増やそうとせず、1つずつでいいです。
栄養補助食品や、飲むタイプの栄養食品を使う手もあります。ただし、何をどれだけ足すかを自己判断しないでください。 体調の心配があるなら、医師や管理栄養士に聞いたほうが確実です。この記事は栄養についての助言ではありません。
試すときは、追い込まない
食べてみたら意外と平気だった、ということは起こります。ただし、無理やり試すと逆に働きます。一度こわい思いをした食べものは、そのあと長く受け付けなくなることがあるからです。
- 量は一口より少なくする(ひとかけら、なめるだけでも構いません)
- 別の皿に置く(食べられるものと触れさせない)
- 食べなくていい前提で出す(見る、においをかぐ、で終わってよい)
- 体調のいい日にする(疲れている日は感覚が鋭くなりやすいです)
- 無理だと思ったら、その日はそこで終わりにする
うまくいかなくても、失敗ではありません。試したこと自体が情報になります。 この食感は無理だと分かれば、次から避けられます。
試す回数にも決まりはありません。月に1つでも、まったく試さなくても構いません。 今食べられるもので暮らしが回っているなら、それで足ります。
作る側の負担も、いっしょに減らす
食べられるものが決まっていると、作る工程はむしろ単純になります。増やそうとするのは、余裕がある日だけで十分です。
- 同じものを続けて作る前提で、材料をまとめて買う
- 加熱するだけ、混ぜるだけの形を定番にする
- 食べられる市販品を見つけたら、在庫を切らさない
そもそも作るところで力尽きるなら、自炊が続かない人へ のほうが先に効きます。
偏食で栄養が心配な人へ/職場や学校の昼ごはん
職場や学校の昼ごはん
外で食べる昼は、選べる幅が狭くて消耗しやすい場面です。毎日同じにしてしまうのが、いちばん楽になります。
- 食べられるものを詰めるだけの弁当にする(おかずは1品か2品で十分です)
- コンビニで買うものを固定する(同じ棚の同じ商品にすれば、探す時間も減ります)
- 社員食堂や学食は、単品で頼めるかを先に確かめておく
- 昼にどうしても食べられないなら、朝と夜に寄せる形でも構いません
まわりに合わせて食べられないものを頼むと、午後がまるごとつらくなります。昼は自分の消耗を優先していい場面です。
外食と、人と食べる場面
食べられるものが少ないと、外食は場そのものが負担になります。当日に考えないで済むよう、先に決めておきます。
店を選べるとき
- メニューを先にネットで見る(その場で選ばない)
- 食べられるものが1つでもある店を、自分の定番として3店だけ持っておく
- チェーン店は味と見た目が安定しているので、読みやすいです
店を選べないとき
- 頼めるものが本当にないなら、飲みものだけでも構いません
- 先に何か食べておいて、その場にいること自体を目的にする
- 苦手なものが出てきたら、静かに残していいです
聞かれたときの返し方
「食べられないものが多くて。自分のぶんは頼むので、気にしないでください」
理由を長く話す必要はありません。短く伝えて、話題を変えるのがいちばん消耗しません。
家族や同居人に伝えるとき
作ってくれる人がいる場合、せっかく作ったのに、という気持ちとぶつかりやすいところです。伝える順番を変えると、話が通りやすくなります。
- お礼を先に言う
- 好き嫌いではないと説明する(味ではなく食感やにおいで受け付けないこと)
- してほしいことを1つだけ頼む
「作ってもらえて助かってます。わがままじゃなくて、この食感がどうしても飲み込めなくて。ソースだけ別にしてもらえたら食べられます」
全部を分かってもらおうとしなくて大丈夫です。具体的なお願いを1つに絞るほうが、通ります。
なかなか伝わらないときは、家族に特性を分かってもらえない人へ も参考になります。
心配なときは、相談していい
次のようなときは、工夫だけで抱え込まないでください。
- 食べられるものが、以前より減り続けている
- 体重が落ちてきた、立ちくらみやふらつきが増えた
- 食事のことを考えると強い不安が出て、食事の時間そのものを避けている
- 食べたあとに吐いてしまうことが続いている
偏食そのものが病気だ、という話ではありません。ただ、体に影響が出ているかどうかは、自分では判断できません。内科でも、かかりつけの医療機関でも構いません。
「食べられるものが少なくて、体調が心配です」
この一言で十分です。うまく説明できなくても大丈夫です。
よくある質問
大人になれば食べられるようになりますか
人によります。年齢とともに食べられるものが増える人もいれば、あまり変わらない人もいます。
いつか治るという前提で待つと、今の暮らしの工夫が後回しになります。 増えたらもうけもの、くらいに考えて、今食べられるもので回すほうが現実的です。
子どものころは食べられたのに、食べられなくなりました
そういう変化もあります。体調や疲れの度合いで、感覚の受け取り方は動きます。一度つらい思いをした食べものが、そのあと食べられなくなることもあります。
自分が後退したと受け取らないでください。時期によって幅がある、というだけの話です。
服や歯みがきも苦手なのですが、関係ありますか
食べものだけでなく、布や歯ブラシの感触もつらい人はいます。同じ感覚の話として並べて考えると、対策が共通することがあります。
服の感触がつらいなら、服のタグや縫い目が痛い人へ にくわしく書いています。
関連する困りごと
- 音や光もつらい → 音・光・においがつらい人へ
- 服の感触がつらい → 服のタグや縫い目が痛い人へ
- 作るところで力尽きる → 自炊が続かない人へ
- 家族に分かってもらえない → 家族に特性を分かってもらえない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 食べられるものを、10分だけ書き出す(数えるだけで構いません)
- よく食べるものを、もう1つ買い足しておく(切らさないため)
- 外食用の定番の店を、1つだけ決める
克服の計画は要りません。1つ目の書き出しだけで、今日の分は十分です。
この記事について
この記事は、次の情報をもとに書いています。
自閉スペクトラム症に見られる感覚の処理のちがいについては、神経のはたらきの面から整理した国内のまとめがあります。感覚の差が気のせいでもわがままでもない、という説明の裏づけになります。ただし、これは個別の対策の効き目を調べたものではありません。 偏食そのものを調べた研究でもありません。
感覚の負担と、外出や地域での活動のしにくさの関係は、自閉スペクトラム症のある成人を対象にした研究で調べられています。ただし、対策をすれば参加できるようになる、と示した研究ではありません。
そのうえで、「食べられるものを書き出す」「別の皿でひとかけらだけ試す」といったやり方は、研究で確かめられたものではありません。 合うかどうかは人によります。
また、この記事は栄養や食事量についての助言ではありません。 何をどれだけ食べるべきかは、記事では決められません。
体重の変化や体調の不安があるとき、食べられるものが減り続けているときは、一人で抱えないで専門家に相談してください。相談できる場所は相談先・公的窓口にまとめています。
食べられないものを数えるから苦しくなるんですよね。食べられるものを数えると、だいたい思っていたより多いんです。そこから組めば足ります。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
研究で検討自閉スペクトラム症のある成人における感覚の処理と、地域での活動への参加
(原題:Sensory Processing and Community Participation in Autistic Adults)
この研究でわかっていること:感覚の負担が外出のしづらさにつながることを、成人対象の研究として示せます。
ここはまだ分かっていません:「対策すれば外出できる」という実際に何かを試して調べた研究ではありません。
研究で検討自閉スペクトラム症に見られる感覚処理障害の臨床神経生理学
この研究でわかっていること:感覚の違いが「気のせい」でも「わがまま」でもないことの裏づけになります。
ここはまだ分かっていません:個別の対策グッズ(イヤーマフ等)の効果を調べた研究ではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。