一人暮らしが不安な人へ|始める前に整えておくこと
— 気合いではなく、先に仕組みを置きます
ポイント
- 家事は全部やろうとせず、止まると生活が困る3つだけ先に決めます
- 家賃も光熱費も自動で引き落とす形にすると、毎月の判断が減ります
- 困ったときの連絡先は、困る前に紙に書いて貼っておきます
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内見が終わって、あとは契約するだけ。なのに頭に浮かぶのは家具の配置ではなく、「自分に生活が回せるんだろうか」という不安のほうだったりします。
実家にいるあいだも、部屋は散らかっていました。洗濯物は山になっていたし、ゴミの日はいつも忘れていた。それが今度は、全部ひとりに乗ってきます。
一人暮らしがしんどくなるのは、家事が難しいからではありません。 決めることと思い出すことの量が、いきなり増えるからです。
だから準備でやることは1つに絞れます。始めてから考えることを、始める前に減らしておく。 先に手を打つのは、お金の流れの自動化、家事の最小セット、困ったときの連絡先の3つです。
一人暮らしで先に潰れるのは「思い出す係」
家事は、ひとつずつ見ればどれも数分で終わります。洗剤を入れてボタンを押す。袋を縛って外に出す。画面を開いて振り込む。
しんどいのは作業そのものではなく、誰にも言われないのに自分で思い出すところです。実家では、家族の動きがそのまま合図になっていました。朝に玄関へゴミ袋が置かれていること。洗濯機の回る音。声をかけられること。一人暮らしでは、この合図がまとめてなくなります。
そのうえ、契約、支払い、近所づきあい、体調の管理まで、自分で決める場面が増えます。「気をつける」でなんとかなっていた部分が、一気に足りなくなるのがこの時期です。
「こういう場面になったら、これをする」と行動を先に決めておく方法には、目標を達成しやすくなる効果があるという研究のまとめがあります。一人暮らしの準備は、これを生活のあちこちに置いていく作業だと考えてください。
やる気を上げるのではなく、合図を作る。 この方針で組み立てます。
【いちばん効く1つ】お金の流れを、引っ越す前に自動にする
準備でどれかひとつだけ選ぶなら、これです。
一人暮らしで本当に困るのは、部屋が散らかることではありません。電気が止まる、家賃が遅れる、督促の封筒が届く。お金が回らないことのほうが、生活に直接ひびきます。 そして、ここだけは自動にできます。
- 給料や仕送りが入る口座を1つ決める
- 家賃・電気・ガス・水道・通信費を、すべてその口座からの引き落としか、クレジットカード払いにする
- カードの引き落とし先も、同じ口座にそろえる
- 食費や日用品に使う分だけ、別の口座かプリペイドに毎月自動で移す
紙の払込用紙が届く契約を残すと、それがそのまま延滞の入口になります。用紙が来る契約を1つも残さないのが目標です。
電気・ガス・水道は、申し込みのときに口座振替かカード払いを選べます。あとから切り替えるのは手間が増えるので、契約するその場で決めてしまうのが早いです。家賃も、振込ではなく引き落としにできないか不動産会社に聞いてみてください。対応している物件はたくさんあります。
口座の分け方そのものは給料日前にいつもお金がない人へにくわしく書いています。
部屋を選ぶときに見るところ
家賃と駅からの時間だけで選ぶと、住みはじめてから消耗することがあります。次の点を内見のときに見てください。
| 見るところ | 理由 |
|---|---|
| ゴミ集積所のルール | いつでも出せる集積所なら、曜日を覚えなくてよくなります |
| 洗濯機の置き場 | 室内か外かで、洗濯を始めるまでのハードルが変わります |
| 音 | 線路、幹線道路、上の階の足音。内見は夜にも行けると確実です |
| 明るさ | 照明を暗くできるか。まぶしさがつらい人は器具の種類も見ます |
| 買い物の距離 | 徒歩5分以内に食べ物が買える場所があると、食事が途切れにくくなります |
| 宅配ボックス | 再配達の電話や手続きが減ります |
内見では、部屋の様子をスマホで動画に撮っておくと確実です。あとから思い出そうとしても、細かいところは残りません。コンセントの位置と数も撮っておくと、家具を買うときに迷いません。
家賃が少し上がっても、消耗が減る条件のほうを取っていい場面はあります。毎月かかる差額と、毎日かかる負担を並べて考えてください。
一人暮らしが不安な人へ/家事は「止まると困る3つ」だけ決める
家事は「止まると困る3つ」だけ決める
全部の家事を回そうとすると、たいてい最初の月で崩れます。先に決めるのは3つだけで十分です。
ゴミ、洗濯、食事。この3つが止まると、部屋のにおいと着るものと体調に直接ひびきます。掃除と片づけは、生活が落ち着いてからで間に合います。
3つそれぞれに、やる合図を決めます。
| 家事 | 合図 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| ゴミ | 前の晩、寝る前に玄関へ出す | 何曜日に何を出すかを紙に書いて貼る |
| 洗濯 | 下着の残りが2枚になったら回す | 干す場所を1か所に固定する |
| 食事 | 帰り道に、その日の分を買う | 作らない日の中身を先に決める |
ポイントは、洗濯を曜日で決めないことです。曜日は忘れますが、下着が残り2枚なのは目に入ります。 モノの残りを合図にすると、忘れても気づけます。
掃除については、最初の3か月は「ゴミ袋を1つ埋める」だけで十分です。床が見えていれば生活は回ります。手順を組み立てるのは、暮らしが落ち着いてからで間に合います。
ゴミの分別ルールは自治体ごとに違います。引っ越した週に、市区町村のサイトからカレンダーを印刷して玄関に貼ってください。スマホの中に入れておくだけだと、出す直前に開かないことがあります。
食事は、作れない日を先に決めておく
自炊ができる前提で計画を立てると、疲れた週に何も食べない日が出ます。作れない日があることを、最初から予定に入れてください。
家に置いておくと安心なものの目安です。
- 冷凍のごはん、冷凍のうどんやパスタ
- レトルトのカレーや丼の具、常温で保存できるスープ
- カット野菜、冷凍の野菜、缶詰
- 食べきりサイズのお菓子ではないもの(ナッツ、ゼリー飲料など)
3食分ではなく、「何も作れない日が3日続いても持つ量」を目安にすると余裕が出ます。
買い物の場所も1つに決めてしまうと迷いません。店を選ぶところから始めると、それだけで動けなくなる日があります。自炊が続かないときの組み立ては自炊が続かない人へを見てください。
モノの置き場所は、荷ほどきの前に決める
引っ越しの片づけで消耗するのは、物を運ぶ作業よりも「どこに置くか」を決め続けることです。段ボールを開ける前に、次の5つの置き場所だけ決めてしまいます。
- 鍵
- 財布
- スマホと充電器
- 保険証と診察券
- 印鑑と重要書類
この5つは、玄関から1メートル以内にまとめるのがおすすめです。帰ってきて最初に手放す場所と、出かける前に最後に触る場所が同じになります。
置き場所は、家具より先に決めて構いません。むしろ先に決めたほうが、必要な棚の大きさが分かります。玄関まわりの作り方は玄関に仕組みを作るにまとめています。
一人暮らしが不安な人へ/困ったときの連絡先を、困る前に紙に書く
困ったときの連絡先を、困る前に紙に書く
一人暮らしで一番こわいのは、困ったときにどこに連絡すればいいか分からない状態です。水が止まらない、鍵をなくした、体調が悪い。こういうときに調べる力は残っていません。
引っ越したその日に、A4の紙1枚に次を書いて冷蔵庫に貼ってください。
- 管理会社・大家さんの電話番号(水漏れ、鍵、設備の故障)
- 電気・ガス・水道の緊急連絡先
- 頼れる家族や友人を1人
- 市区町村の役所の代表番号
- 近くの内科と、夜間や休日の相談先
スマホの中だけに入れないでください。充電が切れているとき、慌てているときに探せません。
生活そのものがきついと感じたら、障害福祉サービスという選択肢もあります。国が出している説明では、一人暮らしを続けるための相談や訪問の支援、働くことへの支援などが並んでいます。使えるかどうかを決めるのは市区町村の窓口なので、自分で「対象外だろう」と判断せず、まず聞いてみてください。
体調を崩したときの備えを、元気なうちにする
一人暮らしで熱を出すと、買い物にも病院にも行けなくなります。動けるうちに用意しておくと、その日が来ても詰みません。
- 経口補水液とスポーツドリンクを2本ずつ
- レトルトのおかゆ、ゼリー飲料
- 体温計と、飲み慣れている市販の薬
- 保険証と診察券を、いつもの置き場所に
そして、元気なうちに近所の内科へ一度行っておくことをおすすめします。健康診断のことでも、花粉症のことでも構いません。一度かかっておくと、次に行くときの気持ちのハードルがかなり下がります。初めての病院に、高い熱を出しながら電話をかけるのはきつい作業です。
ネットで予約できる病院かどうかも、そのとき確かめておくと確実です。
引っ越しまでの順番
やることが多いので、時期で区切ります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1か月前 | 部屋を決める。初期費用の支払い方法を確認する |
| 2週間前 | 電気・ガス・水道・通信の申し込み。支払い方法をすべて自動にする |
| 1週間前 | 置き場所5つを決める。ゴミの分別ルールを印刷する |
| 引っ越し当日 | 連絡先の紙を冷蔵庫に貼る。食べ物を3日分入れる |
| 最初の1週間 | ゴミ、洗濯、食事の合図を試す。合わなければ変える |
最初の1週間で完成させようとしないでください。 合図は使ってみないと合うかどうか分かりません。3週間くらいかけて調整するつもりでいると、うまくいかない日があっても崩れません。
よくある質問
家事ができる自信がありません。実家にいたほうがいいですか
人によります。ただ、判断の材料にできることはあります。実家で消耗しているのが家事の量なのか、人との距離なのかを分けてみてください。人との距離が原因なら、一人暮らしで楽になる部分があります。家事の量が原因なら、家事を減らす仕組みを先に用意してから動くと安全です。
いくら貯めてから始めればいいですか
家賃のほかに、敷金・礼金・仲介手数料・引っ越し代・家具家電がかかります。目安として家賃の4〜6か月分に加えて、生活費の1か月分を別に残しておくと安心です。金額は地域や物件でかなり変わるので、不動産会社に総額を出してもらってください。
親が心配して反対しています
「心配」と「反対」を分けて聞いてみてください。多くの場合、心配されているのは具体的な項目です。支払いが止まらないか、食べているか、体調を崩したときにどうするか。この記事で作った仕組みと連絡先の紙を見せると、話が具体的になります。
途中で無理だと分かったらどうすればいいですか
戻ることも、引っ越すことも、失敗ではありません。合わない条件が1つ分かったという結果です。ただし賃貸契約には解約の予告期間があります。契約時に「何か月前に言えばいいか」だけ確認しておくと、いざというときに動けます。
関連する困りごと
- お金が毎月残らない → 給料日前にいつもお金がない人へ
- 支払いを忘れて延滞してしまう → 支払いを忘れてしまう人へ
- ゴミの日に出せない → ゴミが出せない人へ
- 作る前に力尽きる → 自炊が続かない人へ
まず今日、これだけやってみる
- 引き落としにできる支払いを紙に書き出す(家賃、電気、ガス、水道、通信)
- 鍵・財布・スマホの置き場所を、玄関から1メートル以内に決める
- 管理会社と役所の番号を、紙1枚に書いて冷蔵庫に貼る
この記事について
行動を「こういう場面になったら、これをする」と先に決めておく方法については、目標を達成しやすくなるという研究のまとめがあります。この記事で合図を決める形をすすめているのは、この考え方に沿ったものです。ただし発達障害のある人だけを対象にした研究ではありません。一般の人を対象にした知見を当てはめているので、効き方には個人差があります。
一人暮らしを支える福祉サービスの内容は、厚生労働省が公開している障害福祉サービスの説明を参照しました。サービスの種類と対象は示せますが、実際に使えるかどうかを判断するのは市区町村です。この記事から利用の可否は分かりません。
部屋の選び方、家事の合図、置き場所の決め方は、この記事で紹介した研究が確かめたものではありません。仕組みとしては筋が通るやり方ですが、合わなければ変えてください。
生活の困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
一人暮らしって、自由になるぶん決めることが一気に増えるんですよね。始めてから考えると全部が同時に来ます。だから、判断の回数を先に減らしておくのがいちばん効くんです。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
研究で検討「もし〜なら〜する」と先に決めておく方法が目標達成に与える効果の研究をまとめた分析
(原題:A Meta-Analysis of the Effects of Mental Contrasting With Implementation Intentions on Goal Attainment)
この研究でわかっていること:行動を「場面」と結びつけて決めておく方法に一定の効果があると言えます。
ここはまだ分かっていません:ADHD・ASDだけを対象にした研究ではありません。一般の人向けの知見を当てはめています。
専門家・公的情報障害福祉サービスの内容
この研究でわかっていること:福祉サービスの種類と対象の説明に使えます。
ここはまだ分かっていません:使えるかどうかを判断するのは市区町村です。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。