計算・暗算がとても苦手な人へ|レジも割り勘も電卓でいい
— 暗算をやめると、そのぶん間違いが減ります
ポイント
- 暗算をやめて、どんなに小さな計算でも打ち込むところから始めます
- レジと割り勘は、計算する場面そのものを減らすと固まらずに済みます
- 計算だけが極端に苦手な形もあります。自分を責める前に相談先を知ってください
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レジで「1,032円です」と言われて、財布の中を見たまま手が止まる。どれを出せばお釣りが少なくなるのか、分からない。後ろに人が並んでいる気配がして、結局1万円札を出す。財布は今日も小銭でふくらみます。
飲み会の終わりに「1人いくらですか」と聞かれて、頭の中が真っ白になる。誰かが計算してくれるのを、下を向いて待っている。
仕事では、9,800円と98,000円を取り違える。見直したはずなのに、また同じところを間違えている。そのたびに、自分は不注意な人間なのだと思ってきたかもしれません。
暗算をやめて、どんなに小さな計算でも打ち込むと決めてください。 これだけで、間違いはかなり減ります。
計算が苦手なのは、練習の量が足りなかったからとは限りません。読むことや話すことは人並みにできるのに、数字のところだけがうまくいかない人がいます。
なぜ計算だけがうまくいかないのか
覚えながら考える、二重の作業になる
暗算は、途中の数字を頭の中に置いたまま、次の計算を進める作業です。「7と8で15、5を書いて、1は上に足して」と進めるあいだ、頭はずっと数字を握りっぱなしになります。
握っていられる数が少ないと、途中で落ちます。 落ちた時点でやり直しになるので、二度手間になって疲れます。
数字の並びが読み取りにくい
10000と100000。この2つを一目で見分けられる人は、そんなに多くありません。桁の区切りがない数字は、ただの記号の列に見えます。
0の数を数え直しているうちに、何を計算していたのか分からなくなる。これもよく起きます。
手順が多いと、どこにいるか見えなくなる
繰り上がり、繰り下がり、割り算のひっ算。手順が3つを超えたあたりから、自分がいま何段目にいるのかが見えなくなります。迷子になる場所は、たいてい同じところです。
急かされると全部飛ぶ
レジ、窓口、人前。見られている状態では、できるはずの計算もできません。 これは能力の問題ではなく、条件の問題です。静かな場所で紙に書けばできる、という人はたくさんいます。
「計算だけ」が極端に苦手な形もある
読む・書く・計算するといった特定の分野だけが極端に苦手になる形があることを、国の発達障害情報・支援センターが説明しています。
ただし、この記事を読んだだけで自分が当てはまるかどうかは決められません。名前を当てはめるより先に、生活が回る形を作るほうが早いです。
【いちばん効く1つ】暗算を全部やめる
電卓は、できない人が使う道具ではありません。間違えずに済ませたい人が使う道具です。
スマホの電卓を一等地に置く
- ホーム画面の1ページ目、親指が届く場所に置く
- iPhoneならコントロールセンターに電卓を入れておく
- Androidなら電卓アプリを画面の下段に固定する
探している数秒のあいだに、暗算を始めてしまうのを防ぐためです。開くまでが速いほど、打ち込む習慣は残ります。
声に出しながら打つ
「せん、はっぴゃく」と言いながら指を動かすと、打ち間違いに気づきやすくなります。声が出せない場所では、口の形だけ動かしても構いません。
同じ計算を2回打つ
足し算なら、2回目は順番を変えて打ちます。答えが同じなら合っています。違ったら3回目を打つ。 かかるのは10秒です。書き直しの手間に比べれば、ずっと安く済みます。
「計算しますね」と先に言ってしまう
人前で電卓を出すのが気まずいときは、口に出すと空気が変わります。
「合っているか確かめたいので、少し計算しますね。」
待たせているのではなく、間違えないようにしている。言葉にすると、そう伝わります。
計算・暗算がとても苦手な人へ/レジの前で固まらない
レジの前で固まらない
計算の速さを上げるより、計算する場面そのものを減らすほうが確実です。
- 支払いをキャッシュレスに寄せる。 小銭を選ぶ計算がまるごと消えます
- 現金の日はお札だけで払うと決める。 小銭は帰宅後に貯金箱へ入れます
- かごに入れるたびに電卓へ足していく。 レジに並ぶ前に合計が分かります
- 予算は持っていく額で決める。 財布に3,000円だけ入れれば、引き算が要りません
- 割引は必ず打ち込む。 3割引なら「もとの値段×0.7」と打ちます
お釣りはその場で数えない
出したお札とお釣りが合っているかを、レジの前で確かめようとすると固まります。レシートを財布に入れて、家で照らし合わせるほうが落ち着いてできます。
単価の比べ方
100グラムあたりの値段は、たいてい棚の値札に小さく書いてあります。自分で割らずに、書いてある数字を読む。 それだけで済みます。
書いていない店では、比べるのをやめていつも買うほうを買えば十分です。5分かけて数十円を得するより、決めてある物をさっと買って帰るほうが消耗しません。
割り勘と立て替えをその場で終わらせる
会計は、苦手な人にとっていちばん苦しい場面のひとつです。人数、端数、飲んだ人と飲んでいない人。条件が増えるほど固まります。
幹事を引き受けない選択もある
断ってよい場面です。 予約や当日の連絡はできるけれど会計は苦手、という分け方でも構いません。
「お店の予約はやります。会計だけ、どなたかお願いできますか。」
引き受けたときの手順
- お店で人数分に分けてもらえるか聞く。 対応してくれる店は増えています
- 総額をその場で打ち、人数で割る。 端数は自分が多めに持つと先に決めておきます
- 送金アプリでその場で受け取る。 あとから思い出す作業が消えます
- 無理なら持ち帰る。 「あとで送ります」と伝えて、落ち着いた場所で打ち直します
立て替えたらその場で残す
レシートを撮って、誰の分かをひとこと書き添えます。あとで覚えているという前提を、使わないでください。
思い出せなくなった立て替えは、たいてい請求できないまま消えます。数百円ならまだしも、宿泊費やチケット代だと痛手になります。
仕事で数字を扱うとき
金額や個数を扱う仕事では、間違えない形を先に作っておくほうが、注意深さより頼りになります。
手で打ち直さない
- 数字の転記は、写して貼り付ける
- 表計算ソフトには式を入れる。手で出した答えを打ち込まない
- 紙から入れるときは、写真から読み取る機能を試す
打ち直す回数が減るほど、間違いは減ります。
桁を見えるようにする
- 3桁ごとの区切りを、必ず表示する設定にしておく
- 単位を書く。円か千円か、個か箱か
- 大きな数は「万」「億」に言い換えて口で確認する
確認を人に頼む
数字の確認は、頼んでいい種類の仕事です。
「金額のところだけ、もう一度見ていただけますか。」
一人で3回見るより、二人で1回ずつ見るほうが見つかります。 言い出しにくいときは職場に「これがつらい」と言えない人へも参考にしてください。
どこが厳密かを先に聞く
すべての数字が1円まで合っている必要はありません。厳密な場所と、だいたいでよい場所を先に聞いておくと、力の入れどころが決まります。
計算・暗算がとても苦手な人へ/桁の読み違いを防ぐ
桁の読み違いを防ぐ
読んでいる数字を押さえる
目だけで追うより、読んでいる行に付箋の端を当てるほうが、ずれにくくなります。
声に出して読み方を変える
「イチ・ゼロ・ゼロ・ゼロ」ではなく「せんえん」と読みます。音にすると桁が体に入ります。
見分けやすい書体にする
0とO、1と7、6と8。画面の書体を変えるだけで、読み違いが減る人がいます。
紙に出して印をつける
画面だと流れてしまう人は、印刷して1つずつ印をつけると確実です。
時間の計算も、道具に渡していい
苦手なのはお金だけではありません。時刻の引き算も、同じ種類の作業です。
9時に着くには何時に家を出ればいいか。これを頭の中でやろうとすると、乗り換えの時間、支度の時間、余裕の分が一度に乗ってきて、答えが出る前に力尽きます。
- 出発時刻は乗換案内アプリに出してもらう。自分で引き算しない
- 出る時刻を、そのままアラームにする。頭に置いておかない
- 料理は残り時間を数えず、タイマーを2つ動かす
- 「あと何分」ではなく「何時何分に終わり」に言い直す
数字を頭に置いている時間が短いほど、落とさずに済みます。 時間の読みが毎回ずれる人は「15分で終わる」が毎回1時間かかる人へも合わせてご覧ください。
間違えたあとの立て直し
打ち間違いも、桁の読み違いも、ゼロにはなりません。起きたあとにどうするかを先に決めておくほうが現実的です。
- 気づいた時点ですぐ言う。 黙って直そうとするほど大ごとになります
- どこで間違えたかを1行だけ残す。 「単位を千円と円で取り違えた」で十分です
- 同じ場所で2回間違えたら、その工程にだけ道具を足す
「先ほどお伝えした数字に誤りがありました。正しくは◯◯です。」
謝る言葉より、正しい数字を先に伝えるほうが相手は助かります。言い方は短くて構いません。
間違いが続くと、自分の頭が悪いからだと思いたくなります。けれど、同じ場所で繰り返し起きる間違いは、やり方の側に原因があることがほとんどです。人を変えるより、手順を変えるほうが早く直ります。
よくある質問
電卓を使うのは、ずるいことですか
ずるくありません。仕事で見られているのは、速さではなく合っているかどうかです。
学校のテストでは道具が制限されますが、大人の生活にその制限はありません。眼鏡をかけるのと同じように使ってください。
練習すれば暗算はできるようになりますか
伸びる人もいますし、あまり変わらない人もいます。人によります。
ただ、暮らしを回すために暗算が必要な場面は、思っているほど多くありません。練習に時間を使うより、道具でまわす形を先に作るほうが、日々は軽くなります。
「算数障害」かどうかは、どこで分かりますか
自分で決めることはできません。医療機関や専門の相談機関で話を聞いてもらい、必要に応じて検査を受けることになります。
名前がつかなくても、この記事の工夫は使えます。 名前がつくかどうかと、生活が回るかどうかは別の話です。
子どもの宿題を見てあげられません
見てあげられないことと、親としての値打ちは関係ありません。学校や学習の相談先に、正直に伝えて構いません。 得意な人に代わってもらうのは、投げ出すこととは違います。
関連する困りごと
- お金がいつのまにか消える → お金が残らない人へ
- 記録をつけようとして挫折する → 家計簿が3日で終わる人へ
- 使っていい額が分からなくなる → 給料日前にいつもお金がない人へ
- 自分の苦手を知りたい → 発達障害かもと思ったら
まず今日、これだけやってみる
- スマホの電卓を、ホーム画面の親指が届く場所に移す
- 次の買い物で、かごに入れるたびに金額を足していく
- 今日いちばん大きい計算を、順番を変えてもう1回打ってみる
3つ全部でなくて構いません。1番だけでも、暗算に戻る回数は減ります。
この記事について
読む・書く・計算するといった特定の分野だけが極端に苦手になる形があることは、国の発達障害情報・支援センターが公開している説明にもとづいています。ただしこれは基本的な説明であり、ここに書いた個別の工夫の効き目を保証するものではありません。
お金の場面については、ADHDの症状とリスクの高いお金の使い方の関連を調べた研究があります。あとの大きい得より、いまの小さい得を選びやすい傾向もあわせて見たものです。急ぎの判断ほど手元の数字に引っぱられやすい、という背景の説明として引きました。
この研究は、本人が答えたアンケートをもとにした小さな規模の分析です。 家計のやり方の効き目を示したものではありませんし、計算の苦手さそのものを調べた研究でもありません。
電卓を使う、2回打つ、記録をその場で残すといったやり方についても、この形を直接調べた研究があるわけではありません。 お金がかからず、うまくいかなくても失うものが少ないという理由で紹介しています。合わないものは飛ばしてください。
数字を扱う場面でのつらさが強い、仕事で同じ間違いが続いて追いつめられている。そういうときは、工夫だけで抱えないでください。困りごとが続くときは、専門家に相談してください。相談先の探し方にまとめています。
電卓を出すのが恥ずかしい、という人が本当に多いんですよね。でも仕事で見られているのは、速さじゃなくて合っているかどうかのほうです。堂々と打っていいと思いますよ。
この記事の出どころ
- 研究で検討
- 論文で調べられている内容です。ただし、どんな人を対象にした研究かは記事ごとにちがいます。
- 専門家・公的情報
- 厚生労働省などの公的な機関や、専門家が出している情報をもとにしています。
専門家・公的情報発達障害情報・支援センター
この研究でわかっていること:発達障害の基本的な説明と支援情報の一次情報として使えます。
ここはまだ分かっていません:個別の生活術を保証する情報ではありません。
研究で検討ADHDと、目先の得を選びやすい傾向、そしてリスクの高いお金の使い方
(原題:Attention-deficit/hyperactivity disorder, delay discounting, and risky financial behaviors)
この研究でわかっていること:「あとの大きい得より、いまの小さい得」を選びやすい傾向を説明できます。
ここはまだ分かっていません:本人が答えたアンケートをもとにした、小さな規模の分析です。家計術の効果を示すものではありません。
制度の内容・金額は改定される場合があります。最新の情報は各窓口・公式ページでご確認ください。 出典の考え方は 情報の出どころの見方 にまとめています。
合わなかったら、別のやり方を試してください
ここに書いたことが全員に効くわけではありません。ひとつ試して合わなければ、それは失敗ではなく「自分に合わない方法が1つ分かった」ということです。